5月第2金曜日

4 ストーカー女と世界一強い女 その1

『白昼堂々、住宅街に謎の馬に乗った少年が出現!』

 大きな見出しが躍った。昨日の騒動は新聞に大きく取りあげられていた。おかげで登校する間「昨日、馬に乗っていなかったか?」「お前の家から馬が出てくるのを見たと言う人がいたんだ」と会う人会う人に訊かれた。その中には知り合いもいたが、ほとんどが赤の他人だった。

 高校の教室に入った瞬間、間城に呼びかけられる。

「あ、江久保、おは」

「人ちがいだ! 馬になんかのってない。だいいち乗馬経験自体がまったくない」

「まだなにも言ってないよ」

「見まちがいだ!! 一般の民家で馬が飼えるわけない。だいいち馬を飼える設備もなければ、金もない」

「おはようってあいさつしようと思っただけなのに……」涙目になる間城だった。

「ごめん、クセになってたんだ」

「そうなんだ。いろいろと大変みたいだね」

「全部あいつのせいだ」黒井を睨みつける。

 ギロッ。星野に睨み返された。

「お前じゃない。となりにいる黒井だよ、黒井」

「えっ、ぼくなんかした?」

 無邪気に聞き返す黒井を見ていると、怒る気力が失せてくる。

 なんだかこいつとマジメに対話すること自体がバカバカしい。

 背後からカン、カン、という甲高い音が聞えてくる。なにかと思い振りかえったら、熱川の痛ましい姿がそこにいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る