第43話 遠くへ行こう

ふと、衝動に駆られる。


海へ行こう。

山へ分け入ろう。

ここではないどこか遠くへ。


私はこの衝動に、しょっちゅう駆られます。


でもせっかく時間をかけて遠出したのに、気分が晴れなかったり、移動で疲れきってしまったりなんてこと、ありませんか?


むしろ徒歩20分圏内で、旬の果物を買ったり、店の人と話したり、

もはや徒歩ゼロ分で、家の中でお気に入りの作家さんの本を読んだり、映画を観たりした方が、羽が軽くなったことがあります。


その日、「気持ちが遠くへ行くことが大事だ」と気づきました。


最近の《冒険》は、高架下の草原にひっそり立つ、塗りのない木肌の鳥居を潜ったことです。

これは自転車で10分の場所で、以前から気になっていたんです。

でも分かれ道で、社を見る前に逃げ帰りました。なぜかって、片方には神社と関係なさそうな古い小屋があり、もう片方には栗の実が転がっていたからです。

それだけ?いえいえ、栗が好きな熊に遭うかもしれない。そう気付いた時、風に吹かれた草の音がざらざらと鳴り響いたように感じました。そして自分でも驚くほど、ささーっと逃げたのです。


たった数分間のことでしたが、記憶に刻まれた瞬間です。


「遠くへ行く」のは、物理的な旅だけではなく、

むしろ精神的に遠くへ、心が旅することが大事だと考えています。


もちろん、物理的にも精神的にも遠くへ行けるのが一番でしょうね。

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