第16話 早桜

桜に先を越された。


何があったかと言いますと、書き直した原稿に根本的なダメがついたのです。


本日、河原の桜並木は満開でした。新しい春が来る前に、昨年から続く改作を終えたかったのですが、間に合いませんでした。


これは、応える。


3度、大きく構造を変えてきた物語。これは鬼門なのか、しかし乗り越えるべき壁なのか。正直、落胆は大きいです。そして、完全に迷っています。


もともと伝えたかったことはどこにあるのか、どうやったら伝わるのか、禁じ手扱いになった表現は本当にダメなのか。


いや、もう考えるのは止めなければ。今は新しい答えを探すのみ。

桜の季節、4度目の挑戦になってしまいました。


ただし、同じ手は使わない。複数の作品を創ることに決めました。ひとつの作品に懸けていると、ダメな時の衝撃が大きい。だから、時間の使い方は辛くなるが、複数創るほかない。険しくても、可能性を広げることにしました。


春に越された今、もはや後方走者を気にすることはありません。焦らず、勝者の桜を讃えることにします。悔しいが、ライバルは美しい。



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