第6話

 毎日使うがあまり気に留めない、という物は色々あると思うが、その中の一つがトイレットペーパーではないだろうか。

 固くてごわごわじゃなければ何でもいい、という方が多いと思うし、私自身もそのクチである。しかし実際にドラッグストアに行ってみると様々な種類のトイレットペーパーが販売されていて、いったいどれを選んでいいのやら、と悩むこと請け合いだ。

 シングル・ダブルはもちろん、匂いや色付き、再生紙使用、さらには消臭効果をうたったものまである。人類は自分のお尻に大変な優しさを持って接しているのだ。

 我が家では母親が適当に購入してくるので決まったメーカーのものばかり使うことはあまりなく、いくつかの種類がローテーションされる感じになる。こだわり派の人にとってはため息をついてしまうような生活事情かもしれぬが、私はダブルでさえあれば別に構わない。ふっくら柔らか、とか書いてあれば大抵柔らかいのでそれで充分なのだ(どうでもいいがトイレットペーパーと食パンが同じ宣伝文句で通用する、というのは何かアレですな、ゆりかごから墓場までというか、食物から排泄物まで、というか。いや失敬)。


 そんな私だが、トイレットペーパーに関して一つだけイラつきポイントがある。

 それはずばりペーパーを切るときの、ミシン目とミシン目との間の距離だ。

 ピンと来ない方もいるだろうが、実際にトイレットペーパーを使うときにちょっと気を付けてみて欲しい。

 カラカラカラ、と紙を巻き取った後、紙を切る。

 このとき、「巻き取った一塊の端」と「ペーパーホルダーの蓋」との中間にミシン目があれば綺麗に切れるのだが、そうでないことが多々あるのだ。

 ミシン目が中間にない場合は手元で変なふうにビリッと破れてしまうし、ちょうど蓋のラインの真下にミシン目が来てしまったときは次の紙を出すのに蓋を一度上げてから引っ張り出さなくてはならずイライラする。

「何をみみっちいことを。自分で気を付けて調整すればいいじゃないか」

 そんな声が聞こえてきそうだが、朝の忙しい時間などは紙を巻く手も急ぎがち。そこでのこれは割とストレスになるのだ。快適なトイレライフのために作られたトイレットペーパーで逆に便秘になってしまうではないか。

 それだけ何とかなればなあ、と常々思っていたのであるが、このたび我が家にやってきた新勢力を見て私は腰を抜かした。

 クリネックス。

 この名前を見るだけで「ははーっ」とひれ伏してしまいそうだ。

 元々は我が家圏内のドラッグストアでは置いていなかったのだが、新しく近所に出来たお店で母親が購入してきたのである。

 何の気なしにそれを使っていた私は、紙を切るときに「あれっ?」と首を傾げた。さっきから何回切っても失敗がない。よく見るとミシン目がさっきで言う「中間」に必ずあるのだ。

 ミシン目が多い! こいつ、多いぞ!

 アムロ・レイばりに驚いた私は、あとでわざわざメジャーを持って計測してみた。

 ミシン目は約11.5センチ間隔で入っている。比べてみたところ、これは通常より半分のピッチであった。つまり単純に考えると普通のトイレットペーパーより倍の切れやすさを誇っているのだ。

 なんという素晴らしさであろうか。

 ずっと使っていると、さすがに「蓋ラインぴったり現象」はたまーに起きてしまうが、それでも他に比べてストレスはかなり少ないと言える。

 この発想はまさに革命であろう。むしろなぜ今までなかったのかと思うぐらいだ(いやまあ単に私の勉強不足で他にも存在しているのかもしれないが)。

 人類は常に進化を続けている。その実感はたとえトイレの中でも感じることができるのだ。

 そんなクリネックスに一言だけもの申すならば、紙質がふんわり柔らかというよりややしっかり系なので、うーん、個人的にはもうちょっと柔らかいのが好みかなあ。

 とはいえ、しっかり派の男性などには是非ともオススメできる商品である。

 トイレットペーパーなんてその日に特売になってるヤツで充分だろ。どれもそんなに変わらないしさ。私もそんな意見に賛成だ。

 ただ、もし値段が大して変わらないのであれば、そして私のようにミシン目でイラッとしたことがあるならば、一度クリネックスや普段買わない種類のものを試してみてもいいかもしれない。そこに新たな発見があれば儲けもの。別に一緒だなあ、と思ったならば、文字通り水に流していただけるとこれ幸い。


 ところでトイレットペーパーを値段で選ぶ際の注意点だが、1ロールが何メートルになっているかをチェックすべきだ。基本は30メートル(シングルで60)だが、あっこれ安いじゃん、と思って手に取ると25メートルだったりする。この場合、価格を1.2倍して比較するとどちらが割安なのかが算出可能。

 ティッシュペーパーも同様で、200組(400枚)もあるが最近は180組、160組が主流になっているような気がする。もちろん紙質の差も影響してくるわけで、量・質・値段とそれぞれに目を向けることが大切なのだ。ケチ? ふふん、褒め言葉だね。

 ちなみに今回ちょっとググって判明したのは、

・クリネックスとスコッティは同じ会社が作ってる

・トイレットペーパーをトイパと略している我が家はかなり少数派

 という二点である。考えてみたら私も家族以外にはトイパと言った記憶がない。皆さんも外で「ウチのトイパはクリネなんだけどさあ」などと言わないように気を付けていただきたい。

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