これから! これから 6
舞陽、小春、僕の三人は鈴川さんの敷地から外へ出た。
二人には依頼内容を『町の記録をカメラに収める』と伝えておいた。
「どこら辺を撮るでござるか?」
鈴川家の門でカウボーイハットを被ると、小春は僕に尋ねた。
「えーと、とりあえずここで一枚撮っとくか。町長さんの家の門を背景に」
写真なんてやったことないのにうまく取れるかな?
カシャ。シャッターをきり、鈴川家の門の写真を一枚撮る。まずは風景だけのものだ。
問題は次、舞陽の写真をどう撮るかだが........ストレートに聞けばいいや。どうせバレないし。
「じゃあ、ついでに舞陽写ってみようか?」
「えぇ、やだ」
嫌というよりも、だるいという感情が舞陽の顔から滲み出る。
........面倒くさいがゴマをするか。
「それは残念だ。いや、もう絶望的にがっかり。かわいい、かわいい舞陽の写真が撮れないなんて........」
ターゲット補足!
舞陽の鼻の穴が少し大きくなる。
彼女がドヤ顔をする時の癖だ。
どうやら、やる気をフルにしてくれたようです。
「まぁ........そこまで言われると、やっちゃう的な流れだよね」
気分爽快のシスター少女は、鈴川家の門の前に行くと、両手でピースを作った。
僕はそれにカメラのレンズを向け、
「はい、いくよ。........はいチーズ」
自信満々に笑う舞陽の写真を一枚撮った。
「いいの撮れたでござるな」
ウキウキした様子で小春はニコリと微笑む。
「さて、次いくか」
そう僕は気分良く言い、二人に一回ずつ視線を送った。
「初の依頼紹介したんだから、報酬でたら奢りな♪」
舞陽は鼻歌を歌い、独りでに歩き始めた。修道院のある方角にだ。
「舞陽、修道院戻るの?」
「うん? いや、あれじゃん。この『ココロナ』に一つしかない修道院を、カメラに収めなきゃダメじゃん」
よかった。これでまだいろんな場所で写真を撮れる。
安堵から大きく息を吐き、僕は胸を撫で降ろした。
「小春、行こう」
「う、うん」
不意を突かれたように小春は微笑みを作った。
なんか........その笑顔が胸に引っかかる。
気のせいか?
「なんか........嫌な思いしたか?」
小春は横に大きく二回首を振ると、
「なんにもないでござるよ」
そう明るく僕に返した。
「なら、いいんだけど」
「うん、ほら行くでござるよ」
少し遠くなった舞陽の背中を追いかけるように、小春は早歩きで僕の横を通り過ぎていった。
だから、歩幅を合わせるように彼女の隣を自分も歩いていく。
しばらくして、三人横列で修道院の前へと着いた。
「ほら、カッコよく撮るんじゃ!」
舞陽が僕の背中を軽く叩いた。
張り手を食らわしてきたシスターは、ニッシシッとハニカんでいる。
僕は持っているカメラのレンズを修道院に向け、
カシャ。シャッタを押す。なかなかいいアングルで撮れた。
さて、舞陽の写真を撮らなければ。
こっちが鈴川さんの依頼のメインだからな。
「次、舞陽も写らないか? シスター写ってた方が修道院っぽいだろ?」
「しょうがないなぁ」
まんざら嫌な様子ではない。
自分がシスターってことを気に入ってるのかな?
修道院の前に舞陽は行き、片手でグッドの形を作る。
僕はカメラのレンズを彼女にあわせ、
「はい、いくよ。はいチーズ」
カシャ。あどけない笑みを浮かべる、ブロンズアイのシスターを写真に収めた。
「いい感じ、いい感じ。次行ってみよう!」
ふと、隣にいる小春に目をやる。
「次はどこの写真を撮りにいこうか?」
ハッとしたようにこっちを見る彼女。
笑っていなかった顔を微笑みに変え、
「........どこでもいいでござるよ」
明るくはない、普通の声で返した。
その様子に僕は少し違和感を持ちながらも、
調子が悪いのかな? そのぐらいしか思わなかった。
「じゃあ、あの喫茶店に行こうか?」
「うん」
それを言う小春の顔が一瞬、笑みが消えたように感じがしたが........、
気の迷いからくる、僕の目の錯覚なんだと思う。
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