これから! これから 4

 開けたのは洗練された笑みを浮かべるおねえさん。すらっとした長い黒髪、知的な黒い瞳には眼鏡、身長も僕と同じくらいで........足が若干、次期魔王だった男より長かったりするは気のせいだろうか? 

 とりあえず、全体的に発育してらっしゃる。

 「いらっしゃい、みんなよく来たわね。さぁ上がって、上がって」

 ドアノブを握り、いかにもしとやかタイプの声を振りまく彼女。

 「相変わらずいい匂い振りまいてんな!」眼鏡美女に指をさし、大きく息を吸う舞陽。

 ドヤ顔でそれを言えるシスター様。ほんと尊敬するわ。

 「もう、セクハラだよ」痛くも痒くもなさそうな『めっ♡』的なデコピンを、眼鏡美女が目線を舞陽に合わせてすると、

 「紹介とかはなかでしようか? 靴は履いたままでいいですからね」

 ドアノブを抑えながら、中に招くため入り口通路を確保する。

 普通、行動がここまで洗礼されていると、相手側が気持ち的に萎縮してしまうだろうが、彼女の笑顔とか声に独特の優しさみたいなものを感じるからか、ぎこちない空気は感じない。

 「おじゃまします」「おじゃまするん」「おじゃまするで候」

 三人とも語尾が違う挨拶をすると、家の中へおじゃました。

 

 

 三人横列でそれぞれが腕を伸ばしても、壁と壁に手のひらが届かないような広い廊下を通り、噴水が意味もなくある広間を抜け、僕と小春と舞陽はホテルのスイートルームみたいな部屋へと、眼鏡美女に案内された。

 室内の真ん中、大きな黒いソファへ案内人は目線を置く。

 「さぁ、そこに腰掛けて」

 「はい」「ありがとでござる」

 僕が言った後に、小春も一声かけて座る。

 舞陽はというと、

 「フッカフカなやつやぁ~」

 はしゃぎ声を出し、もうすでに腰掛けている。

 僕らが座るソファの向かい側には、黒いテーブルを間にして、もう一つ同じソファがある。

 眼鏡美女はそこに右手から触れ、腰を下ろす。

 座り方にも気品を感じる。

 ソファで尻トランポリンする、隣のシスター様にも見習って欲しいものだ。

 優しく微笑む眼鏡美女は、

 「お菓子でもどう?」

 と、前にある黒いテーブルの上にあるクッキーの入った箱を勧める。

 その横には『おーい、緑茶』と書いてある缶瓶も三つある。

 ........気を使ってもらって悪いなぁ。

 「いえ、僕は大丈夫です」「遠慮せず、いただくで候」

 小春と僕の声がダブったのがおもしろかったのか、眼鏡美女はクスっと笑った。

 「二人とも楽にしてくださいな」さらに彼女は僕に視線を送る。「あと、遠慮なんてするもんじゃいよ?」

 「........じゃあ、遠慮せずいただきます」

 それを聞くと、眼鏡美女はニッコリ笑みをこぼす。

「さて自己紹介がまだでしたんね名前は鈴川すずかわ 彩音あやね。鈴の『すず』と、川下りの『かわ』に、色彩の『さい』と、音の『』で、鈴川 彩音ね。この町の町長をしています」

 カウボーイハットを頭から太ももの上に置き、小春が口を開く。

 「私の名前は野山 小春で候。野山の『野山』に、小さい春で『小春』でござる。よろしくで候」《ルビを入力…》

 「はい、よろしくね。可愛らしいカウボーイさん」

 少し照れる小春。帽子をつけていないと、耳を覆うぐらいの少し癖毛な茶色髪があらわになる。それに碧緑色の目が相乗効果になって........ちょっとそこら辺にはいない可愛らしさだ。

 ........次は僕の番ですね?

 「僕の名前は山田 紺太です。山田は皆さんお馴染みの『山田』で、紺色の『紺』と、音色の『色』で、山田 紺太です」

 「はい、紺太君ね。よろしくね」

 それを僕に言うと、鈴川さんが舞陽に視線を送る。

 「ところで舞陽。今日はなにか相談でもあるのかしら?」

 シスター様は、両手に持ったたクッキーを二つとも口に入れ、ペットボトルのお茶で流し込む。

 「えっとねぇ」舞陽が僕を指差す。「こいつの太ももの上に『こちらなんでも屋』って旗あんじゃん。んで、依頼を探しに来たよ」

 そんな軽いノリでいいのか?

 こんなこと思うとあれだけど、『なんでも屋』自体うさんくさいからな。

 もうちょっと、この怪しさを消すような発言をして欲しかったよ........。

 鈴川さんの視線が僕の顔に向けられる。「なにができますか?」

 「えっと、一方的に利害が一致しないこと以外はなんでもできます」

 少し言いすぎのような気もするがアピールは大事、大切、重要だ!

 「では、お願いしちゃおうかな」

 彼女は明るい笑顔を見せた。

 この瞬間、『テレデデッテレェ』という効果音が僕の心の中でこだました。

 どうやら、山田 紺太の『ここにいてもいいんだレベル』が五ぐらい上がったらしい。

 「本当ですか! ありがとうございます! 早速、依頼内容を聞かせてください!」

 「やったぁ! 紺くん」小春も横で喜んでくれている。

 「ちょっとだけ、二人で話しいいかな?」

 二人で話し? 極秘的な依頼なのだろうか?

 「はい」

 鈴川さんが舞陽と小春に、一度ずつ笑顔を配る。

 「二人とも、ちょっとここで待っててね。すぐ戻ってるから」

 「いいよん」「はい」

 彼女が微笑む顔を僕にも向ける。「それじゃあ、いきましょうか」

 「はい!」

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