これから! これから 3

ぶらりのらりと、舞陽を先頭にして僕らは道なき道を歩いていく。

 「なぁ、あてがあるって、近いのか?」

 そう、僕はささやくように舞陽に確認を取る。

 「えーと、五分かかんないよ」

 「そいつは近くていいや」

 「そうでしょ?」

 「ちなみに、どんな依頼をする方なんだ?」

 「えーと、どんなんだろう? とにかく問題山てんこ盛りで持ってると思うよ」

 ........へぇ。なかなか事件が多そうな方なんだ。

 でも、問題が山てんこってことは、僕にとってはうれしいかぎりだ。

 「その人は舞陽ちゃんとどんな関係なのでござるか?」

 気になったのか小春が尋ねた。

 「うーん、どんなだろう? 昔から良くしてくれる人........かな?」

 「なるほど! テンション上がってきたできたで候!」

 三人で歩く土の町道。前に進むにつれ、景色は少しずつ変わっていく。

 ここは木造建築の横に、ちょっとしたビルがあったりと少し変わった町並みでおもしろい。まるで古いと新しいのゴーヤチャンプルだ。

 舞陽が小春の方にくるりと顔を振り向かせる。表情は『あっそうそう』と話を切り出す時のような感じだ。

 「そういえば、辰郎元気してる?」

 「兄貴はいつでも元気でござるよ」

 「そっか。最近会ってないからなぁ。今度、野山家に遊びに行くよ」

 派手やかに小春は微笑み、

 「うんうん、やきとり焼いて待ってるよ」

 二回コクリコクリとうなずいた。

 僕は野山家にただ住みさせてもらってるから。代償として三日に一回、単独で町の外に出向き、空に飛ぶ野鳥を一羽狩っている。(小春と辰朗には、罠を仕掛けて捕っているということにしてある。流石に磁石みたいに吸い寄せてとは言えない)

 小春の好物はやきとり。狩った鳥を持ってくと大変喜ぶ。

 料理も得意。生きた鳥を血抜きしてから解体できる十四歳なんて珍しい。

 ニシッとハニカム舞陽は顔を斜め前に向け、視線の先に指をさす。

 「ここだよ」

 彼女の示す先には、二メートルほどの鉄の檻のような門がある城塞壁。

 その奥にはちょっとした城と思えるぐらい大きな茶色い家があり、周りを緑の芝生でできた大庭が囲っている。

 小春が驚きながら舞陽を見つめる。

 「ここ、町長さんのお家でござるよ!」

 「うん、だから言ったじゃん。問題山てんこ盛りで持ってるって」 

 確かに問題はどっさり持っていそうだな。 

 気がかりなのは、本当に舞陽が町長と仲がいいか。

 「んじゃあ、中に入るか」

 当然のことのように舞陽はささやくと、門の少し横側にある黒いボタンを押す。


 ピンポーン。


 野山家のインターホンと同じ音。

 案外、そこは一般とかわらないのか。

 「はい、もしもし。こちら町長です」

 黒いボタンに寄る僕たちに向けて、門の上にあるスピーカーから音声が出た。

 聞こえた高い声からして、女だろう。

 「おーい、舞陽だよ。とりあえず開けておくれ!」

 自分が押したボタンに目掛けて、舞陽は呼びかけた。

 「じゃあ、とりあえず開ける」

 「うん」

 

 すぅ~~~。


 門の横の城塞壁に人が一人出入できるような隙間ができる。

 どうやら、カラクリのスライドドアらしい。

 「すっげぇ! 半端ないで候!」

 アリ地獄を覗く幼女のような瞳で、小春はできた入り口を見つめている。

 どんなことを思っているだろう? あなたの胸に耳を押し当てていいですか?

 いや、不純な目的じゃなくて、心の声を聞く的なアレで。

 「ほらほら行くよ!」舞陽が先頭を切り、入り口を通った。

 僕と小春もそれに続き、中へと入る。

 すると、カラクリドアはまた横にスライドし、城塞壁の一部に戻った。

 手入れされている芝生を踏みながら、舞陽を先頭に茶色い家へと三人は歩いていく。

 それにしても、舞陽が本当に町長と知り合いだったとは........。

 本当にどうゆう関係なんだ?

 そんな疑問を少し抱きながら、僕は、愉快な仲間達と茶色い家の前に着く。玄関にある左右両開きするタイプのドアの上には、ベルがかけられており、ちょっぴりおしゃれなだなと思った。

 コンコン。「おーい、開けてちょ!」舞陽がドアをノックした。

 このシスター少女、フレンドリー感ぱないな。

 

 ガチャ。


 三秒もしない間に、右ドアが家側に引く形で開いた。........待ち伏せでもしてたのか?

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