これから! これから 1

僕、紺太は小春のいるこの町『ココロナ』に来て一ヶ月。まだまだ真夏の炎天下。

 

 現状の自分を確認すると。

  ① 金髪さんから奪ったポト金貨と、ポト銀貨がもうすぐ底を尽く。

  ② 居候という身分で、野山家に住まわせてもらっている。

  ③ でもこれは大変申し訳ないと思い、二週間前ぐらいから働き出した。

  ④職業は『なんでも屋』だ!


 今だって、町を『こちらなんでも屋』と書いた旗を持ち、のらりくらりと歩くことおよそ二時間。

 問題なのは誰も依頼をしてこないこと。

 真っ昼間の町道をぶらりぶらりと歩き、『なにをしているんだろう?』と思わなくもないが、ここであきらめてはいけないのだ!

 隣には小春がいる。

 碧緑色の目をパチパチと瞬きさせ、いきなり僕を見て笑顔を飛ばす彼女。

 なにがそんなにおもしろいのだろうか? 僕の顔だろうか?

 ........そろそろ、いいところ魅せとかないと笑顔が消えそうで逆に恐いのだけど。

 「小春、こんなことに付き合って楽しい?」 

 これは本当に疑問だ。

 散歩気分ですか? ニッコリ笑っているのが通常なのか?

 「楽しいでござる。『なんでも屋』なんて正義のヒーローみたいでかちょいいで候」

 かっちょいいっ........なわけ。

 端から見たら........ちょっと活発なニートだよ。

 世間から後ろ指ですよ? この野郎!

 

 ハァ~。

 

 ため息を大きくついてしまった。

 ........もうあれだ。いっそのこと金髪さんからおいはぎした時のように、怪盗として生きてみようかな?

 「なんもかっこ良くないよ」

 「なんで? 生活に行き詰まってるのに、泥棒もせず働こうと闘志を燃やす........それはすごいことでござる!」

 よし、もう盗みはしないでおこう。


 町道を行ったり、来たり。

 いつの間にか、『ココロナ』に一つしかない修道院を横にしていた。 

 「ねぇねぇ、修道院よっていってはくれまいか?」

 小春が僕の横でささやいた。

 あすこには奴がいる。

 そう、聖岸せいがん 舞陽まひろ

 年は小春と同じく、十四歳ということが本人の話で分かった。

 はっきりいって、あんまり僕の得意なタイプではない。

 元気、明るい、陽気、の豪華三点盛りを相手にすると非常に疲れるのだ。

 「いいよ」

 そう垢抜けた声で僕は返した。

 別に舞陽を嫌いということではないのだ。得意じゃないだけ。

 小春が修道院の門扉を開く。

 外から見た中の様子は、あいかわらず人がポツリポツリだ。

 平行に規則正く並ぶベンチみたいな複数の椅子。その中のちょうど真ん中辺りから、こちらに手を大きく振るシスターが一人、

 「お二人さん、ちょい待ち、ちょい待ち!」

 もちろん舞陽だ。

 先に修道院に足を踏み入れる小春の後ろ姿を見て、僕も『魔気』を身体に鎮めてからそれに続く。(『魔気』を鎮めたのは『聖女騎士』の像が反応してしまうため)

 舞陽は待ってましたと言わんばかりに、こちらに駆けてくると、ニッシシと少し悪い子みたいな笑顔を浮かべる。

 「そろそろ付き合った?」

 それを言うシスターの両手は、自身の胸の前でハート型を作っていた。

 「そ........そんな違うでよ!」

 小春ちゃんは噛んだのかな?

 落ち着いていこうぜ!

 もうこんな感じなれたと、ドヤ顔で僕は舞陽を見る。

 「じゃあ、そろそろ顔も見たことだし行くよ」 

 「そんなこと言っていいのかな? その『なんでも屋』ってのに仕事あげれるかもしれない方法を今思いついたのに」

 どういうことだ? こいつが依頼を頼むのか?

 唐突すぎるが気になる。

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