見守るもの 3
あなたは本当に自身の命を捨てる覚悟なのですね。
「魔王様、それはおやめになって頂きたいとじいやは強く思います」
「いや、この計画は必ず遂行する。そのために作った『魔界総理内閣制度』だろ?」
『魔界内閣制度』それは現時点の『魔王』が死んでしまった時に効果を発動する制度。
ゆえに、発動していないこの法を知る者は、これを作った『魔王様』と相談役である私だけ。内密にする理由は単純で、現時点の『魔王』を暗殺しようとするものがすくなからず出てくるからである。
制度内容は『魔王』の死後、王という身分を廃止し、政治的に優秀な者達で三つの『政党』を立ち上げるというもの。
『政党』が複数なのにも訳がある。
それは一つのところに『政権』を任せると、『政治』に偏りができやすく、『改革案』を競わせることができないからである。
なお『選挙』も一年に一度ある。国民一人一人に『選別紙』を渡し、どこの『政党』に『政権』を任せたいかを記入し『投票』してもらう。
一番『投票』が多い『政党』には『政権』が与えられ、『総理』は当選した党内の議員達が、三人一組勝ち抜きジャンケンをし決める。
「ですが。魔王様が自ら命を絶つような選択は........とても堪え難いものです」
「いや、耐えて欲しい。息子には未練を断ち切って生きて欲しいのだ。........吾輩があいつの中で『悪』として奴に殺されれば、親を求めていた潜在意識もふっきれるように消え、あいつもスッキリ余生を歩めるというもの。そのためには、息子にできた『大切』をこちらが奪い、それをしたのが吾輩だと思わせなければならないのだ」
やはり、あなた様は........。
「『大切』とは? やはり........」
「あぁ、もちろんあいつがこれから作る『深い繋がり』のことだ。じいや、まだ少し先の話かもしれんがやってくれるな?」
声からは決意と、暖かさが感じられます。
信頼を一心に向けて下さるのですね。
あなた様がそう強く決断したならば........。
「はい。このじいや、この心を『魔王様』の忠誠のもとに」
「ありがとう。これはあいつに『守るもの』という存在を認識させるためでもある。奪ってはいいが........殺してはいけぬぞ」
「はい、分かっておりますよ」
「そうか。吾輩はじいやに会え、よかった。ありがとう」
笑い混じりの声からは、少年のような輝きがあった。
私、じいやは大きく鼻から息を吐き出すと、
「よしてください。あなたは最高の『旦那様』です」
そう思うばかりなのです。
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