いきなり増殖ですか? いいえお約束ですよ 6

 この調子だ!

 ここからは僕の聞きたいことを聴けるけるように、徐々にシフトチェンジだ!

 魅せつけてやれ! トーク力!

 「まだあるよ! 小春の褒め........」

 「ん? まぁ....聞いてあげるけど?」

 食いつき、はやっ!

 こっちが事を言い終わる前に、シスター少女は声を弾ませる。

 「えっとねぇ。背がちっこいくせに尻がどすこいで安産型だって」

 「........................................................」

 

 ............あれ? 喜んでない?

 

 さっきまで喜んでいた一瞬のうちに無表情に早変わり。

 今、僕はまずいこと言っちゃた? 

 子孫繁栄できるから、バッチグゥの発言だと思ったのだが........。

 目の前には、自分の尻を両手で鷲掴みしている彼女の姿。

 年頃の女ってほんとわかんねぇな。

 ........身体的なことを褒めていくのは控えとくか。

 「っていうのは多分僕の空耳で、素直って言ってた」

 

 よしっ。


 瞬時に笑った顔に逆戻り。

 コロコロ表情を変えるので、見ていて面白くはあるし、分かりやすい。

 「............でっですよねぇ。ぜんぜん尻どすこいしてないし、むしろ元気な赤ちゃん生めない的な?」

 それはダメだろ。

 「そうそう、生めない的な」

 ノリで生きてます。

 「ところで、素直で元気な赤ちゃんを生めない君に聞きたいことがあるんだけど?」

 「なに? 私の名前は聖岸せいがん 舞陽まひろなのだけど。聖なるの『せい』に、岸辺の『きし』に、舞うの『まい』に、陽気の『よう』で聖岸 舞陽なのだけど........名前で呼ぶといんじゃない?」

 あっさりと僕の発言が通り、逆に驚いた。

 会話が少し弾んで、少しは打ち解けてくれたのかな?

 だとしたら、ダイレクトに名前で呼ぶことにするか。彼女もそれを望んでるけだし。

 「じゃあ、舞陽」

 「いきなり名前とか、馴れ馴れしい奴だなぁ~~。ま、いいけど」

 ジト目で僕を見てるくるが、ツッコんだら負けだ。

 これでやっと本題に入れる。

 

 「っで聞きたいんだけど、なんで修道院で僕を見た時、『めちゃくちゃ強い魔王みたいな奴』って言ったの?」

 

 舞陽に大きな反応がない。

 つまらなそうな表情で、くだらない者を見るかのような視線が僕を刺す。

 「なんでって、無理して筋トレしてるような細マッチョだから。あと何族かは分からないけど、角がドラゴンみたいだし、ドラゴンっていったら強いなぁだし、『魔王』も強そうだし、そんなんでいいや、みたいな?」

 

 ............................................はぁ?

 

 偶然に偶然ですか?

 僕はなんも考えてない小娘の、なんとなくの言葉に踊らされてたの?

 馬鹿馬鹿しい。くそくらえ!

 舞陽に怒りの感情はない。ただ、自分を貶したい気持ちはヒシヒシとこみ上げてくる。

 「ねぇ、そんだけ?」

 覗き込むように、腐れシスターは僕の顔色を伺った。

 力が全身から抜けて、ふにゃふにゃになりそうだ。

 「........そんだけ」

 むすっとした表情を浮かべ、舞陽は僕を指さす。

 「それ、ここじゃなくてもよかったんじゃない!? 」

 的確に痛いところをついてきやがる。

 あなたのおっしゃる通り、このままだとどこか不自然な奴になってしまう。

 『本当は告白でした』みたいにすれば、事態の収集がギリギリつくのだが、そんなわけににもいかないし。好きじゃないし。

 まぁ別にこっちが思うほど、あっちは気にしていないのが現状なのだろうけど........。

 僕は気にしてしまう。目の上のたんこぶだ。

 何かいい方法はないものか? 

 目線には腐れシスターの舞陽。

 

 腐れシスター? ....................シスター。


 シスターってのは、悩みとかを聞く生き物なはず。

 ならば、「実は悩みがあるんだよ。シスターで小春と『親友』の舞陽に」

 他人から求められる事を良しとしたのか、やるき満々の顔を僕に向けてきた。

 「なにかな?」

 「実は僕、小春と友達になりたいんだけど、どうしていいか分からないんだ。それでその気持ちが先走ちゃってこんなところに連れてきてしまったんだ。........ほら、誰かにこういうの聞かれるの恥ずかしいから」

 これはリアルな質問だ。実際、どうしていいか分からない。

 無理もいないだろう? 友達なんて一度も出来たことないんだから。

 ほっとしたような安堵の笑み、気の抜けたような大きな鼻息。舞陽の目は僕の目をしっかりと見つめた。

 

 「あなたは本当におばかさんなのですね。........ねぇ? 小春」

 

 彼女は視線を路地裏から日の当たる表道に向ける。

 不意を突かれたように僕もそこに目をやった。

 すると、少しほっぺたを赤くして、いけないことをした子供のような目使で、小春が道角からそっと姿を覗かせる。

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