これってつまりフリーダム 3
早くどっか町にいきたい! その気持ちが勝っているから。
三十秒ほどの短い食事を終え、ツナ缶のゴミを金髪さん懐において置く。正義心に熱える勇者様なら、きっと持ち帰ってくれるだろう。
「ありがと、金髪さん」
冗談混じりにの笑いを彼に向けると大空を見渡す。
キレイな青空だ。雲一つない。
夏空なのだろうか? 太陽の光も白く眩しい。
そうか、そうか。魔界と季節が逆だから今はちょうど初夏ぐらいだろう。
魔気を操り、えぐれた芝生の上、空に舞い上がる。
さぁ、どんな場所があるだろう?
広がる青の中、とりあえず時速四十キロぐらいでまっすぐ北に進む。視点は右に左に、どこになにがあるかを探す一方だ。
右には小さな村。左には大きな村。まっすぐにはちょっとした町並みがぼんやりとだけど見える。
行く場所は特にまだ決まってなかったけど、シティーボーイになりたいとか思っちゃったりなんかしてなわけで。僕は迷わず、まっすぐ進むことにした。
速度を四十キロぐらいから百キロぐらいにあげる。速度をあげすぎないのは、めぼしい所が他にもあるかもしれないからだ。
上から見る下界の様子は進むにつれ、森があったり、動物がいたり、写る景色は顔を少しずつ変わっていく。
また、自分の速度で湧き上がる強めな風が身体にまとわりつき、もうなんか来世は渡り鳥になってもいいかもしれないなんて思えてくる。
........渡り鳥かぁ。あれはおいしいのだろうか? 食べたことが無い。
鶏は大好物なのだけど。味は劇的に違ってくるものなのだろうか?
好奇心旺盛な僕は周りの空を見渡す。
すると五十メートル先に、名前も分からない白い鳥が三羽飛んでいる。
あんなに近くにいるなら食べてみるか。安易な考えが時に生きる楽しさを育むとじいやも言っていたことだし。
左手を開き、群れの一匹に向ける。
「がぁぁぁーー」
魔力でその一匹を自分の左脇に磁石のように吸い寄せた。こいつは今晩の晩飯。鮮度を保つため殺すのは後で。
「お前、うまそうだな」
「がぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「安心しろ、痛く殺さないから」
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁlぁぁl」
鳥にこんなこといっても伝わるわけがないか。
そうこうしているうちに、例のちょっとした町並みが僕の目に拡大して写り始めた。
着地するのは町のちょっと外がいい。なんせ、いきなり町に僕が急降下したらそれこそ人外者扱いは必死。
下には木がポツン、ポツンとある全体的に茶色の平地。ここら辺で降りるのが無難だろう。距離にしてまだ五キロ程ありそうではあるが。
魔気のコントロールをやめる。魔気をコントロールしながらゆっくり降りるのは面倒くさいので、重力の力を使い真下に頭から急降下。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー」
「晩飯さん、お口チャック」
ズドーーーーーン。
地面に当たる瞬間、そこに向かって魔力を放出した。
これにより、下に落ちる速度を反動により中和。僕を中心におよそ十メートル四方に円状のへこみができる。
が、これで終わりではない。そのままでは顔から落ちることになるので、中和した直後にくるっと前転をして足で着地を決める。
「百点満点の着地だろ? 晩飯さん」
「................................................」
「おーい」
「........................................................」
速度による気絶か。全く今日で気絶を見るのは二度目だよ。
........まぁいいか。おとなしくしていてくれるなら、それにこしたこともない。
ここからは町の近くだ。派手なアクションは避けた方がいいだろう。
町の者にもしも力を見られたら噂が広がりかねないし。
........しかたがない。歩いて行くことにするか。
と、思った矢先。
パカッパカッパカッパカッ............
馬の蹄の独特なリズム音。
僕の下には十メートル範囲で浅く凹んだ茶色の大地。
うっかりしていた。
視界だけに頼り、少し遠くになにがいるかを魔力で調べるのを忘れていた。
とりあえず一番最悪なのは僕が魔の力が使える者だとばれることだ。
それにはまず、この状況で顔を覚えられる訳にはいかない。
........いや、待てよ。あながち悪いことだけでもなさそうだ。
僕は残り五キロを歩くのが面倒なので馬が欲しい。高く売れるわけでもあるし。
だが、昔から向って来るものだけを殺すようにしつけられているせいか、殺すという路線も、あっちが殺る気じゃないかぎり避けたい。
そんな時、風が軽く吹く。
それで、後ろの赤マントが軽く揺れる。
これだ!
後ろのマントで顔を覆う。鼻の下で生地を結んで泥棒スタイル。
さぁ来い。バッチ来い。
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