これってつまりフリーダム 2

 よいしょっと。クラウチングスタートの体勢を取る。

 目標の金髪さんのいるところまで、一直線で狙いをつける。

 そして、右足から前へと踏み込む。

 バコ。地面の少し縮む音と共に、僕の身体が頭から宙を切る。ある意味低空飛行状態だ。

 風を切って、周りに軽いソニックブームを起こしながら約一秒、


 ずぅどどどどどどど。


 地面をえぐりながら金髪さんの少し後ろに着地した。

 着地といってもすぐには止まらないので、地面を切り裂きながら金髪さんの少し前の方へと飛び出す。

 立ち上がるモヤモヤした土煙の中、斜め後ろに笑顔を作り僕は振り向く。

 「また、会いましたね。運命ですかね?」

 なにが起きたか分からないのか、この状況の意味が分からないのか、金髪さんは少しぽかんと口を開け、こっちを凝視し、固まっていた。

 とりあえず反応がないのでもう一度、訪ねるか。

 「おーい、聞こえてますか? 耳をソニックブームでやられましたか?」

 ............................................。

 「おーい」

 ....................................................。

 あれ? おかしいなぁ。

 近付いて、金髪さんの顔の前で手を左右に振るう。

 けど、反応がない。

 しょうがないから軽く肩を押してみる。すると、その場にばたっと表情も変えずに倒れ込んだ。

 これはひょっとしたらひょっとするかと思い、しゃがんで彼の心臓に耳を当てて生死の確認を一応とる。


 どくん。どくん。


 どうやら息の根はあるらしい。立ったままショックで気絶とはなかなか面白い。

 おいはぎもスムーズに進むし、万事オッケーだ。

 とりあえず、『魔王』になる予定だった僕は、今からおいはぎします。

 腰にある少し大きなポーチから干し肉、チーズ、ツナ缶三つ。

 甲冑の裏ポケットから、人間の一般通貨であるポト銀貨、ポト金貨。結構一杯入っていて、手のひらサイズの皮袋にいっぱいだ。

 とりあえず、これらはすべて没収した。

 あとはどうやってこの中二病全開装備を手放すかだ。

 金髪さんの甲冑にすり替えるのは........なんか生理的に無理だし。汗黄ばんでるし。最低でも五日間風呂に入らずずっと着てたわけだし........。まぁ、僕もそうだけど。

 どこかの質屋で高く買い取ってくれると助かるんだが........。

 問題はまだある。

 ............この角どうするかだ。まぁ別に僕の姿見てる人間は金髪さん以外、全員殺してるから次期魔王だったことはばれないし、エルフとかそういう珍しい種族も人間に混ざって生活しているって、じいやの人間考察本の朗読で聞いてるし。

 別に大丈夫だとは思ってはいるけど。........若干不安は残る。

 えい!

 もう、考えるのが面倒くさい。友達作んなきゃだし。便所飯からもバイバイしたいわけだし。

 ........出るとこ、出てけ! ってぐらいがちょうどいいのかもしれない。

 そうさ! 気楽に行こう!

 お金のことも、ここにある分がなくなるまでに考えれば遅くないだろうし。

 

 ぐぅ~~~~。

 

 いろいろ考えるのは後にしてまずは腹を満たすか。

 チーズに、干し肉、ツナ缶を三つ全て開けて口に流し込む。

 いろんな味が口の中でジェネレーションするが問題ない。

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