これってつまりフリーダム 1
魔王城を抜け出し、金髪さんを尾行して、おそらく五日程過ぎようとしていた。
ダンジョンの中は暗闇の如く暗く静かだ。洞窟内にある光といったら、金髪さんが焚いている松明ぐらいいだろう。
ダンジョンのモンスターには二人とも遭遇していない。
要因は僕にある。
........轢き殺すぞ。
こんな感じで、半径一キロ圏内にいる金髪さん以外の動くものに魔力を使い威嚇しているのだ。(僕が探知できるのは魔を帯びてる『魔物』とか、それを倒し、魔気が染み付いた『者達』)
それにしても勇者というものはすごい。戦闘力はともかく、この長い道のりを地図も持たずにスラスラと歩けるのだから。........なんだか、鮭が海から自分の故郷の川に迷うことなく戻れるそれみたいだ。
ぐぅ~~~~~~。
それはともかくとしてお腹がすいた。
悪魔の種族は種によって、絶食できる時間はことなるけれど、僕の場合はおそらく七日が限界かな?
そろそろ食事にありつかなきゃ........。
最悪、金髪さんから食料を強奪するか。
そんなことを思っていると、金髪さんがいきなり小走り気味に走り始めた。
彼の走る先には確かに光があった。
どうやら、ようやく僕は出口を見つけた見つけたようだ。
いやぁ、最高です。自由最高です!
光の中へと出て行く金髪さんの五十メートルぐらい後ろ、僕もユニバースに向かって走る。走る。走る。走る。
そして、ついに出た。僕は外に出た、出た!
太陽が眩しい。周りにはなにもなく、ただ緑の芝生が広がっていた。
思わず後ろを振り返る。........石段でできた洞窟。それがポツンとある。
一言いいかな? 不自然すぎるだろうが! なに? なんなの? なんかあれじゃん。突然できたパワースポットかよ!
さらに、僕はその横に衝撃的なものに遭遇した。
[この先、魔王とかいます。暗いです。足下注意です。あなたの命はあなた一人の者ではありません。死のうか悩んでいるならまずは軽めのリストカットから。ほら、痛いでしょ? ドMじゃないなら分かるはずです。あなたはまるで生きた屍ですが、生きています。とりあえずあなたはひとりじゃ 断定はできないけど多分一人じゃないです。いつもいってるコンビニの店員もあなたの顔を忘れてないような気がします。きっと大丈夫、私]
って看板かよ!
いや、おい! こんなん書かれても誰も自殺改めないよ!
なにがまずは軽めのリストカットだ! これ書いた奴が精神異常だ!
あと、[ひとりじゃ 断定できないの]この途中の空白なんなん! 普通に一人じゃないって書いてよ! あれなの? 本当に天涯孤独な奴がこれを見たらとか想定したの?
優しいの? ばかなの?
そして、コンビニの店員ってなんだよ!
確かにコンビニは魔王城の中とかにもあって便利だったけどさぁ........。
家族とかでいいでしょ! これもあれなの? 天涯孤独の人に気を使ったの?
........いや、待てよ。最後自分にあててるってことは........これを書いた人が天涯孤独なんじゃないか!
ほんとに馬鹿らしい。
金髪さんとの距離はそうこうしているうちに、およそ半キロぐらい離れた。金髪さんに染み付いた魔気をたよりにさっきの距離までの距離に戻り、尾行することは容易だ。
このまま、尾行をしていくか。それとも、ここからは一人で行くか。まぁ、魔気をコントロールして空からどこかに行くのもいいだろうけど。
ぐぅ~~~~~~~~。
お腹が鳴る。........とりあえず、なにか食料はないかな?
食べれるものなんて無いはずなのに周りを見渡す。
芝生や、土を食べれるなら食料はたんまりあるが、僕はそんなもの死んでも食べたくない。
しょうがない。速攻でどこかの町に行きなにか食べよう。........でも金がない。
そんなとき、金髪さんのビジョンが浮かんでくる。
それはダンジョンの中で五日間、尾行する僕の目線先で食料を食べる姿。
僕はなんにも食べれていなかったのに、金髪さんは食料を食べていた........。
僕が空腹になっていくなか、金髪さんは............。
ぐぅ~~~~~~~~~~~~。
そうだ! 金髪さんの荷物をおいはぎしよう。
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