第2節「絡繰ノ幻月」 Episode2 "Karakuri Moon dog"

9話 神々の罠

Chapter9 "Trap of Gods"



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 口語伝承 "天地開闢カムイモシリ 叙事詩ユーカラ" 【ニノ記】

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 十二天将てんしょう地上テラでその姿を保つための巨大なかいを造った。

 "八十神やそがみ" と呼ばれた巨大な傀は、山、丘、川、湖を作り、魚やけもの、小動物たちを導いて自然のいとなみを整えると地上テラ界全体に人類を広め社会秩序の構築を始めた。


 人は天府ヘブンで創られ、時空門を通じて地上テラに満ち溢れた。

 むくろは土に戻り、魂は冥府ネザーワールドかえり再生される。

 八十神の働きは完璧であった。

 しかし、魂が "浄土エリュシオン" に辿り着くことは無かった。


 創造主のクローンはこれを良しとせず、人の中に神の傀の血を混ぜて浄魂をうながこころみを求めた。

 神の血によって、人は人のしきゅうの中で作られるようになり、浄魂が加速するはずだった。

 しかし、生まれ出てきたものは、異形いぎょう傀儡くぐつでしかなかった。


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      ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「罠って、どういうこと?」

 「… うっ …」

 苦痛に顔をゆがめる守人もりとにミコが問いかける。


「ミコ!引き返す方が先。何か方法は思い当たる?」

 太乙タイイツいさめる。


「そうね、でも、教わったこともやったことも無いし…

 太乙ぃ! ねっ、ねぇ、、

 どうすれば良い? どう思う?」


「くっ…も…紋章の…反…転…」

 墨と化した鳥のような塊が、メイの腕の中で呻く。


「反転? 従魁ジュウウカイ、分かったわ。そうね、やってみる。うん、なんとかなるかも…」

 ミコが落ち着きを取り戻すと、メイは慣れた手つきで従魁の体に薬草をひたし始める。

 イネが寄り添って守人の傷口の確認を始める。


(大した傷はない、従魁が包んで守ってくれたのね。自慢の翼をあんなにしてまで…ほんと貴高けだかい娘。)

 イネの大粒の涙が守人の顔にしたたり落ちる。


 ぴよよよ よよ~ん


 封人ふひとが守人と従魁に向かって、何か投げる素振そぶりを見せた。

 なぜか2人の息が落ち着いてくる。

 墨のような従魁の体にも赤みが戻り始めた。


「何をしたの?」

 メイが不思議そうに尋ねた。

「ハッ!」

 封人はゴーグルを外し、自慢気じまんげに敬礼してみせる。

「"ハゼリア" のポーション、やってみましたぁ!」


(ふふふっ、これ凄ぇかも… 効き目はどんな感じ…? ええっ?)

 

 うお、うぇ、げぇぇぇぇぇ…


 傷口をのぞきこむなり尻餅しりもちをつくと、手を振って後ずさりする。


「ダメ…ほんとダメ…  血はダメっす…」


「あはははっ、情けないやっちゃな…」

 イネの泣き顔から笑みがこぼれた。


「メイ…あの時、大吉ダイキチは…何…て言いヤガっ…た?」

 まだ話すにはつらそう声だが、守人が続ける。

神后シンコウが戻らない…のは…ナムチに取り込まれていヤガるから、と…

 そして…ナムチを奈落ならくに落とすだけでは…駄目…だと。

 そう言って…ヤガったんだよ…な?」


(そうだったかも…?)

 メイは手当を続けながら、何か思い出そうとしていた。


「…でも…奈落より強力な時空門じくうもん狭間はざま…から…ナムチはギガスを繰り出してきヤガッた…こ…これは…」

 「守人!メイ!まずはここからの脱出と傷の手当! 続きはその後で!」

 太乙がさえぎる。


(確かに。

 ん? 大吉って、あの時の神様みたいな存在のこと?)

 5年前、時空門をくぐった時の記憶をメイは探し始めていた。

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