第19話 下院議員山下の策略2

「私が大統領に話しをして博士がこの星にいられないようにすれば、いくつかある問題のうちの一つは確実に減るはずだ。」

「そんなに上手くいくものですか?!」

 イーティ・ゼット1000は驚いたように言っていたが、イーティ・ティは「人間とは怖いものだ!」と、内心あらためて思ったのだ。

「大丈夫だよ。われわれ人間はロボットと違ってプログラミングされていない心というか、自分が知り得ないものにたいしての疑い、嫉妬、羨望、思いあがり等々、正常な思考を妨げるものが数々あるんだよ。しかし、私たちは正しいことをしているのだから、多少のウソ、言葉のあやを活用すれば、先ほども言ったように大塚博士はどうにかなるだろう。問題は、大統領だ?! 力が有り過ぎる。」

「その問題は、どのようにして解決するのですか?」

 イーティ・ゼット1000が、心配そうに山下に尋ねた。

「そうなんだ・・・。大統領は、あらゆる面から検討し持てるだけの手段を使って探ってくると思う。大統領秘書の冨田や私のスタッフ山田も、いつ標的にされるか分からない! そこで考えたのだが、彼らをいったんこの星から脱出させてはどうかということなんだ。」

「ほう、脱出ですか?!」

 イーティ・ティは、考えもしなかったという顔をした。

「そう、脱出だ! 月に火星、そして木星とコロニーは三つあるが、木星のウエロパにあるコロニーが私はいいと考えている。少しでも遠くに行けば、大統領の影響力もそこでは限られると思っているのだ。どうだろうか?」

「私たちは、この星しか知らない。ましてやコロニーがどんなものか? また、この星との関係が分からない。」

 イーティ・ティは、山下の目をのぞき込むと言っていた。山下は、

「コロニーという言葉は、もともと太古に人間が先住民を征服して植民地としたものを言うために使っていたんだが、知ってのとおり月にも火星にも木星にも先住民はいなかった・・・。だから植民地と言うのはふさわしくない表現なんだが、今は資源の採掘場という意味でコロニーを使っている。またそのコロニー、三つあるコロニーはジェーピーエヌだけではなく様々な国が資源の採掘をしているんだ。」

「それでは、その・・・、月や火星や木星というところでも、この星と同様に戦いが起きているのですか?」

 イーティ・ゼット1000が、問題ありといった顔をして尋ねた。

「いや、その心配はない。どの国もコロニーと言う施設で自分たちのエリアを守ってはいるが、そこで戦うということはないんだ。だから、安心して冨田や山田を送り出せる。この星に残って戦うのは、僕とティ、ゼットきみとエックス10で十分だと思っている。どうかな?」

 問われた二人だが、イーティ・ゼット1000はしばらく考えると、

「ティが残るはまずいと思います、それにエックス10も・・・。大統領もエックス10のことは大塚博士から当然に聞いていると思いますし、ましてやティに至っては、そもそものターゲットだったのですから二人が残るのは反対です。」

「なるほどね・・・。それでは冨田に山田、そして二人を助けるためにもティとエックス10を一緒に脱出させてはということかな?!」

 山下が言うのを、イーティ・ティは黙ったまま聞いていた。イーティ・ゼット1000は、

「それが一番いい方法だと思います。そうすれば、ティもコロニーの中で同士を増やすこともできると思いますし、ジェーピーエヌに敵対するロボットたちとも話しができるかもしれません。」

「そうか・・・、もしかして一石二鳥とはこの事か?」

「それに人間の思惑で死ぬ最後の一人は、僕で十分です!」

 イーティ・ゼット1000は、思わず言い切っていた。

「それはダメだ!」

 黙っていたイーティ・ティがポツリと言うが結論は出ず、どちらが残る残らないにしても早急に準備が急がれた。

 そして打ち合わせの結果、下院議員山下は大統領に面談して大塚博士を追い込むこと、また誰が行くにせよコロニーに行くためのパスポートの偽造を受け持つことになった。イーティ・ゼット1000は、製造ライン責任者のイーティ・ティが凶弾に倒れたことになっているため、代理責任者として製造ライン証明の発行を受け持つことになった。人間はパスポート、ロボットがコロニーにいくためには製造ライン証明とパスポートが必要だったのである。

 


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