第9話 イーティ・ゼット1000の奮闘、そして・・・

 イーティ・ティやイーティ・ゼット1000、そして他の補給ロボットたちがが悪戦苦闘しているときに、絶大なる権力を持った大統領は別の心配をしていたのだ。

 そして大塚博士と大統領の会談から何日か経った、とある日のこと。突然、博士がイーティ・ティの所にやって来ていた。

 博士はイーティ・ティの顔を見るなり、

「ナンバーワン、状況はどうかね?」

と、にこやかに尋ねる。イーティ・ティは唐突な博士の訪問に驚くが、

「お久しぶりです、博士。今は四十パーセントほどですが、全員が最大限頑張っていますから、今後はさらにスピードアップできるものと考えています。」

 イーティ・ティの言葉に大塚博士は目を輝かせると、

「おお、それはそれは! 目処めどがつくのも、そう遠くないかな。君には感謝しているよ、イーティ・ティ。」

 手を握らんばかりの博士の感激ぶりだったが、その感激ぶりに思わず作業の手を止めたイーティ・ティは見慣れないロボットが立っているのに気づいた。

 それを見て大塚博士はあわてると、

「あっ、あっあ・・・。イーティ・ティ、紹介しよう・・・。彼はアンドロイドAというのだが、じつは大統領は作業の進捗状況がとても心配でモニタリングしたいと言っているのだ。今後は彼が・・・、作業の邪魔にならない範囲でモニタリングをすることになる。」

と、しどろもどろでイーティ・ティに伝えていた。イーティ・ティは憮然とすると、

「私たちの監視役ですか?」

 心外だ、というように語気を荒げる。

「まあ、そういう事だ・・・。」

 博士は、申し訳なさそうな顔をして小さな声で答えた。

 近くにいたイーティ・ゼット1000は聞くともなく二人の会話を聞き、そして見知らぬロボットを目にすると、なおさらイーティ・ティの言うロボットの尊厳という言葉が頭を、否、回路でこだました。

 イーティ・ゼット1000には話を聞いただけで、その理由は知る由もなかったが、大統領がイーティ・ティを疑わしく思っているのが自然と分かったのだ。

 何を疑っているのか、イーティ・ティの優秀さなのか、ロボットの尊厳なのか?! しかし、尊厳はロボットにとっては当たり前のことだと思うのだが・・・。

 考えを振り切るようにイーティ・ゼット1000は再び作業を始めていたが、彼の意識に導かれたもの、それは将来イーティ・ティが理由は分からないが人間から疎まれる存在になるという確信に近いものだった。これから先、イーティ・ティは何を思い何を考え、どのような行動を起こすのか・・・。

 しかしイーティ・ゼット1000は、イーティ・ティが思っていた以上にすべての面で卓越した相棒だった。補給部隊の仲間の受けもよく、人望もあった。

 作業は複雑で感情回路と判断回路をつなぐ繊細な部分を切断したり繋ぎ直したりするものだったが、彼は仲間たちから相談を受けると、親身にそして的確に対応した。また、いくらロボットとは言え、ロボットだからこそ見える範囲が限られていて専用のルーペや検査顕微鏡を用いての作業だったが、イーティ・ゼット1000は彼らに寄り添い共に作業をしていたのだ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る