何年かした後の学生の同窓会って多分こんな感じ
「っ、ここは……」
「勇人さん!」
「大丈夫? 生きてる?」
「セリカ、それにリタか。あれ? そういえばどうなったっけ」
木陰の下でセリカの膝枕から起き上がる勇人。側頭部には大きめの打撃痕が出来ていた。
「あの、勇人さんが私たちを止めに入って、それから……」
「えーと……。すまん、あんまり覚えてない」
「あ、うん。それなら良いんだけど。……その、一応ゴメン」
「……? いや、なんかスルーしていい話題の気がしないけど。
確か、俺に突っかかって来たよな。なんでか教えてくれるかリタ」
「そうだったわね。勇人、アンタはアルシアを家出させたって本当なの。
アンタの事だからしょーも無い事で喧嘩になったんだろうけど」
「ぐっ。
……ああ、本当だよ。なんというか場の勢いでな、最初はほんの小さな小競り合いって程でもなくてよ。
だけどその内にお互いに今まで目に付かなかった細かいことが見え始めてな。
そうして段々、お互いに居心地が悪くなって、それで」
「…………勇人さん」
「……はぁ。バッカじゃないの?
そんなんで折角の同棲を滅茶苦茶にしたのね……。
ま、でも無駄に女の子にモテていた勇人にしては別の女の影が無いのは少しは評価してあげる」
作中、五人居るヒロインのみならず、ゲストキャラやポッと出のモブキャラの女の子までもフラグを立て、もしくはその寸前まで行く事が恒例の勇人。
ラッキーなスケベを誘発し、本人の意に関わらず起こる
「ああ、誓って俺にはそんなやましいモノはないっ」
「……………………」
「な、なんだよリタ。その目は」
「まぁいいけど。
セリカは、別にこの件には関わって無いって事でいいのよね?」
「あの、……ええ。実はその場に居合わせてたんですけど、それで」
「なるほどね……。わかった」
「別に俺とセリカは今はアルシアの事をどうこうってする訳じゃない。
俺たちはセカン王からの勅命で、このセカン王国を脅かしているっていう悪い魔法使いを捜している途中なんだ。
それが終わるまでアルシアの事に構う訳にはいかない」
「悪い魔法使い? もしかして、教団の残党が」
「いや、違うみたいだ。前にサルダンに会ったんだが、あいつの口からこの件に関しては全く関わっていないって聞いた。他の連中もあちこち行ってて分からないってさ」
「ああ、前にビーティルが部下と商売やってるのは見たわね。あと、レクスは改心してるし、ジャーク教団の連中はシロね」
「だとしたら、一体誰が……? 魔物を召喚出来る魔法使いはそう多くは居ない筈ですけど」
「そうだな……魔法使えるのも、魔物を召喚出来る奴も多くないしな……うーん……?」
「よし、わかった」
「分かったのか、リタ!?」
「こうなったら私も手伝ってあげる。アンタは一人じゃ何も出来ないでしょ? さっさとその魔法使いを取っちめてアルシアの処に連れて行くから」
「……そりゃ有難いけどな。
何、俺がアルシアのトコに行くのが前提なのか……?」
「当たり前じゃない。
何のために私が来たってのよ。いいから、サッサと行くわよ」
「まて、俺の意思は!?」
それから。
「ガァァァァア……」
緑色の巨体が大地に沈む。五メートルもの体躯が大の字に伸びる。
一つ目の巨人キュクロプスは黒い煙へと霧散していく。
「……ふぅ」
鮮やかに両腕に構えていたトンファーを腰に収納し、一息吐く青髪の少女。額の汗を拭うと何事も無かった様に後ろの二人を向く。
「終わったわ。前に戦った時より弱いんじゃない? 私一人で充分だったわね」(アニメ14話、原作5巻)
「うわ、やっぱ前より強いんじゃないか、リタ」
「私たち、何もする必要がありませんでした……」
「何してんの。今なら魔物を召喚した奴が近くに居るかも知れないじゃない、手分けして探すわよ」
そう言うなり踵を返してリタはスタコラ二人の視界の隅へと歩き去ってしまう。殆ど走っているくらいのスピードだった。
「……行っちゃい、ましたね」
「……だな」
「本当、凄いですよねリタさん。出会った時から強かったのに、あれから本当に一人で魔物を倒すくらいに強くなって」
「全くだ。俺の立場が無くなるっての」
「はは……。でも、勇人さんだって私やリタさんともクロスすれば物凄く強いじゃ無いですか」
「セリカ……。ありがとよ、そう言ってくれるのはセリカだけだ」
「あ、……はい。……その、勇人さん」
「なんだ、少し顔赤いんじゃないか?」
「これはっ、その。……は、勇人さんはどう、思いますか」
「どうって、何が」
「例えば、何処からか襲って来る魔物の事とか、……アルシアさんの事、とか」
「襲って来る魔物はどれも、サルダンやビーティル、レクスが使っていた魔物ばかりだ。これで六体目だが、共通してるのはそこかな。もしかしたら教団の残党の一人の線もあるかもな」
「確かに、魔物はもっと他に種類も有るらしいですし、それだけの種類の中でサルダンさん達の使っていた魔物だけが出て来るってのは一つのヒントにはなりそうですよね」
「と言っても、他に魔物を召喚出来る奴なんて居たかなぁ……。居たらどっかで出て来てると思うんだけどな」
「ですよね。……それと、その」
「ああ、アルシアの事か。
……ん〜。どうだろう? 怒ってる怒って無いとかじゃなくてな、むしろ向こうがどう思ってるかだ。
一応、俺も悪い所はあったとは思うぞ? ただ、アイツは色々人の為にばかり動いちまう奴だからな。
色々と俺の為に言っててくれたんだろうが、それを無駄にしちまってたんで、愛想、尽かされたんじゃないか?」
「そんなこと……でも、……。
わかりま、せんけど」
「さ、早く行こうぜ。早くしないとリタの奴にドヤされちまう」
「あの、勇人さん!」
「ん?」
「もし、もしですよ? 勇人さんが良いのなら、私が勇人さんの……か、彼女になってみるのは、どうでしょうか」
「……え?」
「や、その。今のはほんの冗談と言うか、言葉のアヤというか。
勇人さんにはアルシアさんが居ますし、ごめんなさい、あの」
「セリカ」
「はい!?」
「俺……」
ドスドスッ!
一メートル程の巨大氷柱が勇人とセリカの前方5、6メートル付近に着弾する。恐る恐る見る二人の視線の先には鬼の形相で仁王立ちをしたリタの姿が。
「そこ。サボってんじゃない!
特に勇人、アンタが狙われて居るっぽいんだから気を抜くなっ!」
「「イ、イェッサー!」」
束の間の甘い時間は絶対零度の鬼教官の前に掻き消えた。
その後、お互い気まずいので、特に話の進展もなく。調査は難航を続けた。
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