暗闇の誘い声

 深い闇には人を惹きつける何かがある

 

 例えば暗い竹薮の中

 例えば影に埋め尽くされた池の隅


 そう、それは昼間でも光が届かぬ世界

 絶対の闇、静寂の中


 冷たい風が吹いていて

 視線は闇の中をさまよっていく

 闇へ闇へ、より深遠の中心へ


 行ったら二度と戻れやしない

 そんな妄想が意識を乗っ取っていく


 闇の声に誘われて

 幾つの命が沈んでいったのだろう


 闇を恐れ火で武装した人間は

 自分の周りを光で満たしたけれど

 闇に生まれ闇に帰っていく自然の掟には逆らえない


 もしかしたらあの闇の中に本当の世界が待っているのか

 闇を見る度吸い込まれそうになる

 それは魂の本能が成せる技なのか


 今日もまた引き込まれそうな意識を押さえて歩く

 まだまだ旅の途中だと自分に言い聞かせながら

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