第6話 文化祭前日 その1
小麦を手に入れるためのお手伝いが始まり十日間が経った。僕はこの十日間というもの、昼は学校、放課後は小麦おじさんの畑の手伝い、そしてその後に綾菜先輩の演劇の練習という過酷な生活を送った。過酷とは言ったものの、澄のお婆ちゃんからお饅頭修行を受けていた時期に比べたらそうでもないので、ほどほどに過酷と表現した方がよかったかもしれない。ほどほどに過酷ってなんだ。
それなりに忙しかったわけだけど、その分充実していたと思う。頑張った見返りはちゃんとあった。
僕は今、ついに明日に控えた文化祭のために教室の装飾作業に取り掛かっていた。『温泉部』が文化祭で使うのは特別塔──通称西館の三階の空き教室だった。白結第一高校は生徒が極端に少ないというわけではないけど、学校の創立当初に比べれば生徒数は減ってきているため空き教室が沢山ある。特に、西館は理科室等の実習塔となっていて空き教室が多いから、部活動として文化祭に参加する人たちは、大抵この西館に配置されていた。
緑色の垂れ幕を兎莉から受け取り、それを教室上部にテープで止める。脚立から降りると、僕は教室入り口を眺めてため息を吐きながらいう。
「はぁ…… なあ、兎莉。温泉旅館の娘ってみんなあんな感じなのかな……?」
「それは流石に……全国の温泉旅館の娘の尊厳を守るために違うと言っておくよ……」
「そこ! 聞こえているのですよ! 誰が小っちゃいですか! 誰が! これだから温泉部はダメダメなのです!」
「聞こえてないじゃないか……」
難聴の金髪幼女に僕らは顔を見合わせ苦笑いした。
秋風風子。僕たち『温泉部』を乗っ取るべく『温泉研究部』なるものを設立した張本人だ。
「温泉部の装飾、地味~な感じがするのです。こんな装飾じゃあ温泉研究部が本物の温泉部になっちゃうのですよ~!」
今回の文化祭売り上げ勝負を持ち掛けてきた彼女だけど、何故か僕らの教室の前でわざとらしく嫌味を振り撒いていた。まるで姑のような面倒くささで、端的に言うと……ウザい。
文化祭における『温泉研究部』の教室は西館の二階。つまり僕ら『温泉部』とは別の階だ。当初、僕と兎莉おまけに昌平は文化祭の教室が『温泉研究部』と同じ階にならなくて良かったと思っていた。もし同じ階になっていたら、澄と秋風さんが喧嘩し始めるのは火を見るよりも明らかだ。
だから事前抽選で昌平が神の引きを見せて『温泉部』と『温泉研究部』が同じフロアになると言う最悪の事態を回避できたと喜んでいたんだけど、残念なことに別の問題が発生していた。
「全く、浅間澄は流行というものを理解していないのです! こんなんじゃお年寄りしか近寄らないのですよ」
そう。教室の階が分かれた結果、本来二階で文化祭の準備をすべき人物が、三階にまでわざわざイチャモンをつけ始めたのだ。因みに、澄は秋風さんと同じように二階に降りて同じようなことをしているらしい。友人として、なんとも悲しい気持ちだ。
同じ階にならなかったことで水と油な温泉娘たちの熾烈な争いは起きることはなかったが、代わりにとても稚拙な戦いが繰り広げられていた。
「あんまり気にしてても進まないし、とりあえず無視して進めよう」
「う、うん……そうだね」
「そこ! 聞こえているのですよ! 誰が小っちゃいですか! 誰が! これだから温泉部はダメダメなのです!」
「壊れた機械かな?」
さっき聞いたイチャモンを繰り返され小声でツッコミを入れる。どうやら秋風さんは僕らが何か喋ったら反射的にイチャモンを付けてくるらしい。手元には何やらメモが握られていたので、クレーム用のレパートリーを事前に用意してきているみたいだ。その努力を別のところに向けてくれ!
しばらく秋風さんを無視して教室の飾り付けを続けた。十分かそこらの時間が経った頃だったと思う。反応がなくてつまらなかったのか、気付けば彼女はどこかに行ってしまっていた。
「秋風さん、いなくなったね」
「う、うん。これで集中できるね」
僕らは互いにホッと胸を撫で下ろした。監視されながらの作業はやりにくいことこの上なかったのだ。今教室には僕と兎莉が二人で、おそらく最高効率での作業ができる。昌平がいると絶対何かをやらかすだろうし、澄がいたら秋風さんと喧嘩を始めるだろうし……というか昌平はどこに行ってるんだ。
ここが進めどきと見極めた僕たちは、事前に澄に渡された設計図通りに一気に教室を装飾していく。どこでどの色の飾りをつけるだとか、どこに椅子を配置するかだとかの情報が細かく記載されたそれはとても心強い。些細な気遣いだが、「緑色の飾り」という文字は緑色のペンで書かれていたり直感的に理解しやすくなっているのも澄らしいと思った。
「澄ちゃんらしいよね。飾りの色とペンの色が一緒になってて分かりやすい。」
「兎莉もそう思う? 丁度僕もそう思ったところなんだけど……まさか心が読まれてる?」
「あはは。実は私、超能力が使えるんだよ……なんてね?」
兎莉は自信なさげにはにかむ。たわいもない話をしながらも、僕らは手を止めることはない。兎莉は欲しい装飾品を言葉にせずとも用意して、僕はそれは教室へ貼り付けた。澄の良くできた設計図に、僕らの幼馴染パワーが合わさり恐ろしいスピードで内装が完成していった。
窓の装飾が終わったところで、一度休憩を挟むことにした。全体の作業進度からすると、今丁度半分と言ったところだろうか。後は窓下の壁の装飾に机の配置、そして当日のスタッフ用のスペース作りくらいだ。
「そろそろ休憩にしようか」
「うん。お水用意しておくね」
端っこに寄せられていた机を二つ運ぶと、僕らは机を合わせる。兎莉は水筒から紙コップ二つに水を注ぐ。僕は受け取ると、一気にそれを飲み干した。中身は水道で入れたただの水だけど、作業の後だとどんなミネラルウォーターよりも美味しく感じた。
「そうだ、兎莉。さっき超能力が使えるって言っていたけど、他にも何か当ててみてよ」
「えっ……それはちょっと……」
「ちょっとしたことでもいいからさ。今日の晩御飯は何だとかのでもいいし」
すると露骨に兎莉は不機嫌そうに顔をしかめる。普段あまりしないのでムッとした表情が新鮮で可愛らしかった。
「……もう、颯太君イジワルなんだから。でも、面白そうだし何か予言してみるね」
すぐにいつもの苦笑い気味の面持ちに戻ると、兎莉は唇に人差し指を当てて考え込む。気分は名探偵といった具合に、彼女は精一杯緊張感のある雰囲気を出そうとしているように思えたが、外で聞こえる文化祭準備の喧騒のせいでそれは叶わなかった。それに、兎莉はそもそもキャラじゃない。いつもどこか自信なさげであたふたしているし、兎莉といると逆に緊張が解れてしまうのだ。
どうやら予言の結果が出たらしい。ゆっくりと目を開け時計を一瞥した後、兎莉は教室の扉を指さして口を開いた。
「今から十秒後、澄ちゃんがあの扉を開けて戻ってきます」
「そんな馬鹿な」
「ど、どうだろうね? ほら、五、四、三……」
兎莉は人差し指を左右に振りながらカウントを始める。僕は内心有り得ないと思いながらも、少しわくわくした気持ちもあった。
「……二、一!」
カウントを終えた瞬間、兎莉は教室の後ろの扉を指差す。彼女の指先を追うように僕の目線も扉の方へ。すると教室後方の扉がガラガラと音を立てて開いた。
「温泉部(仮)の皆さん、調子はどうですか~?」
耳に付く、特徴的な高い声。そうそれは……
「何だ、秋風さんか……でもすごいよ兎莉。本当に誰か来たね」
「えへへ……そう? でも、間違っちゃったね」
「……っ!? 秋風さんか~って何ですか!? 秋風さんか~って! 失礼なのですよ!」
僕と兎莉は互いに顔を見合わせて微笑んだ。ちょっとした思い付きで始めた暇つぶしのつもりが、本当に予言通りに誰かが来るだなんて。
秋風さんは僕たちの妙な遊びなど知らないので、わけもわからずプンプンと頬を膨らましていた。
隣を見ると、兎莉が首を傾げながら苦笑いしていた。
「どうかしたのか?」
「ええっと……自信あったんだけど外れちゃって、ちょっとショックだな……なんて」
「自信あったの!? なんとなく言っただけだと思ってたよ。もしかしてその自信は超能力から来ていたり……」
「あはは……超能力者なんているわけないよ、颯太君」
「ちょっと! 兎莉が最初に言い出したんじゃないか!」
そんなことを話していると教室のドアが再び開き、澄が戻って来た。そして、澄の背後から昌平がひょこっと現れた。頭には『真の温泉部』と書かれた鉢巻をしていた。
最悪の事態だ。澄だけならまだしも、昌平まで『温泉研究会』の小姑役になってしまうだなんて……恥ずかしすぎる。未だ顔を見たことのない温泉研究会の部員たちの困った顔を想像してなんとも居た堪れない気持ちになった。
そんな気持ちなど梅雨知らず、いつものように凛々しい表情で澄は言う。
「皆さん、お疲れ様です。そろそろ休憩にしましょう。風子さん、一時休戦です。貴方もお昼になさっては?」
「嫌な奴が戻ってきたのです……ふんっ! 今日の所はここまでにしてやるのです! 風子もお腹が空いたので、自分の教室に戻るのですよ~!」
「おとといきやがれ偽温泉部!」
「むっ……ふ、風子は心が広いのでそんな挑発には乗らないのです。この偽偽温泉部! なのです〜!」
そうして秋風さんはヒューンという効果音を伴い自分の教室へと帰っていった。偽偽だと本物になっちゃうんじゃないかな……?
一瞬だけ登場した嵐のような来訪者が去り、教室に暫しの静けさが訪れる。あれ、こんなに静かだったっけ。
もしやと思い、時計を見る。短針と長針はどちらも上を向いてピッタリと重なっていた。
「兎莉……なるほどそういうことね」
「えへへ……気づいちゃった?」
「何の話ですか?」
「いや、何でもないよ。それよりお昼ご飯にしよう」
兎莉をチラリと見ると、彼女は少し自慢げな表情をしていた。兎莉は何も当てずっぽうに予言をしていたわけではなかったようだ。いつからこんなマジシャンみたいなことができるようになったんだか。
澄は今までの僕たちのやり取りを聞いていないので少し首を傾げながらも話を続けた。
「お弁当を用意してきました。ひとまず、机をくっ付けてしまいましょうか」
「了解だぜ、姉御!」
「姉御はやめてください、お猿さん」
昌平の元気のいい声が響く。知らないうちに彼は澄の下っ端と化してしまったようだった。
*
机を四つくっ付けて昼食の用意をする。いつも通りの昼食準備も、いつもと違う教室だと気分が変わるものだ。西館の三階は日当たりも風通しがいい。少し開けた窓からは心地良い風が吹き込んで来る。図書館みたいな匂いが僕の鼻を撫でた。教室を丸ごと一つ使うなんて贅沢なことができるのは一年通してで今日ぐらいかもしれない。
昌平は教室をぐるりと見渡して言う。
「なんか俺たちだけだと寂しいよな! いつも騒がしいかといえば違うかも知れねえけどよ」
「あはは……私は気が楽でいいと思っちゃうな」
「なるほど、確かにあまりに静かだと違和感があるかも知れません。当日は何かBGMでも流した方がいいでしょうか? 昌平さんのくせにたまには良いことを言いますね」
「いや、昌平そんなこと考えてもなかったと思うよ」
「何言ってんだ颯太! も、も、も、もちろん俺は温泉部のために考えて提案させていただいたんだが!?」
「昌平焦りすぎじゃない!?」
「意図はどうであれ、当日あまりにお客様が少なかった場合を想定して、何か考えておいた方がいいかも知れませんね」
澄はそう言いながら、広くなった机の上にどこからか持ってきた風呂敷を広げた。スルリと布が暴かれて、そこから高く積み上げた五重の塔が現れる。その塔はおよそ一週間前では毎日のように目にしたものだった。僕のテンションが一気に下がる。始まると言うのか……またあの糖分たっぷりの昼飯が。
色々と鈍感な昌平は目の前の重箱に何故かテンションが上がる一方だった。
「それでは食べましょうか。皆さん遠慮しなくていいですよ」
「おお、でけえ! おせち入れる弁当箱じゃん!」
「重箱な、昌平」
「細かいことは良いんだよ! ……あれ、重箱? 俺はこいつを最近どこかで……」
昌平は途端に頭を抱えた。ウーウー唸るがついには思い出せない。
なんてことだ。昌平は嫌な記憶を消しているみたいだ。あのお饅頭で満たされた僕たちの昼飯を記憶を!
「何をおっしゃっているのですか、昌平さん。お正月でもないのに重箱を見ることなど普通ありません。記憶違いでは?」
「あ、ああ。そうだよな! じゃあ、開けてもいいか!? 開けちゃうぞ! もう開ける〜!」
澄はとぼけた様にそう言うが、口元は僅かに綻んでいた。確信犯だ。純粋な頃の昌平は目の前のご馳走に興奮を示していた。
いや、ちょっと待てよ。澄はあんな態度だけど、もしかしたら本当に料理の可能性もある。澄は飴と鞭の使い方が上手だ。明日が本番なんだし、準備の最終日くらい美味しいものを用意してくれている可能性だって十分考えられる。そう考えると……この澄の微笑は僕に対するものである可能性が高いのではないだろうか?
澄は文化祭で料理対決になるのを避けた。それは相手の秋風さんの料理の腕が相当なものであるからであったわけだけど、別に澄は料理が出来ないわけではない。僕なんかより、僕なんかと比べるのがおこがましい程に澄は料理が上手だ。中学の頃、調理実習のときに澄の班が盛り上がっていたから知っている。
最後の希望は昌平へと託された。やってくれ昌平。しょっぱめの料理をその箱から召喚してくれ……!
期待で胸が膨らみすぎて辛抱ならなくなった昌平はついに重箱の蓋を開けた。
「…………マジかよ……? うっ……この記憶は……」
箱を開けた昌平が呟き、同時に頭を抱えた。どうやら運命からは逃れられなかったらしい。僕は気分を落としながらも、確認のため重箱を覗き込んだ。そこに広がるのは予想通り一面のお饅頭。しかし……
「あれ? 生地が黒い……?」
僕は首を傾げる。温泉饅頭の中には生地に黒糖を練り込むものも少なくないと聞く。『あさま荘』で修行しているときに使っていた記事はプレーンなものだったから、きっとこれが兎莉が考えてくれていた新しいレシピなのかもしれない。確かに、白と黒のお饅頭が並んでいたら見栄えがいいかもしれない。
「なるほど、考えたね兎莉。白黒あったら両方買うって人絶対いるよ」
「うん。でも、颯太くん。それだけじゃないんだよ」
兎莉が鼻を鳴らしながら言う。この自信……この饅頭はまだ何かを隠している! 僕はその黒い饅頭を一つ手に取り、中を割って見る。
「これは……!」
「それはただのお饅頭じゃありません。これこそが兎莉さんの考えてくれた対温泉研究会最終兵器──クリーム饅頭です」
「ク、クリーム饅頭だって? というか急に物騒になったね」
「は、恥ずかしいからやめてよ澄ちゃん……ええっとね、生地を黒糖にして、中に生クリームを詰めたの」
兎莉は僕たちが小麦おじさんの下で働いている間、新メニュー作りに励んでいた。たった一週間で新メニューが考えられるなんて、やはり兎莉は饅頭作りの才能があるのかもしれない。
兎莉は手をモジモジさせながら控えめに言う。
「えへへ……結構自信作なんだよ? 颯太君も感想聞かせて欲しいな……?」
「兎莉がそこまで言うんだから美味しいんだろうね。というか『颯太君も』ってことは澄はもう食べたの?」
「いいえ、私はまだ食べていませんよ。皆さんと食べるのが初めてです」
きょとんとした顔で返される。澄はまだ食べてないってことは、昌平は食べたことがあるってことなのだろう。あからさまに気分が悪そうな顔面蒼白な昌平が視界に入る。記憶を取り戻した彼はこのクリーム饅頭に恐怖を抱いていた。
そういえば、この一週間昌平は一体何をしていたんだっけ……? 僕は過去の『温泉部』内の会話を遡ることにした。昌平の愚行が浮かんでは消え浮かんでは消え、ほとんど昌平についての記憶はこんな感じだったが、その中で僕は正解にたどり着く。
『それと昌平さんは兎莉さんの料理の味見でもしていて下さい。誰にでも出来る簡単なお仕事です、それならチャラメガネでも大丈夫でしょう』
『なんか、俺の扱いひどくね!?』
昌平は兎莉の新メニューの味見をしていたんだった。ということは、昌平のこの反応がどのようなことなのか大体想像ができるわけで、それを僕が告げる前に澄が悪戯っぽく微笑んで告げる。
「どうしたんですか、昌平さん? 青ざめてしまって。まるでクリーム饅頭を大量に試食して、あさま荘にぶちまけたときの記憶が蘇っているような顔をしていますよ?」
「澄、てめえその話をどこで……!?」
「お婆様から聞きました」
「あの鬼婆……!」
「…………言質取れました。あとでお婆様に報告ですね」
「マジすいませんでした。土下座します」
同級生に本気の土下座を見せる昌平。このままでは『学生時代に力を入れて学んだことは?』という問いに対して『熱意を込めた土下座の仕方です!』と答えるしかなくなってしまう。友人としてとても心配だ。
仕切り直しと言わんばかりに澄はパチンと手を叩いた。
「さて、この人のことは置いておいて早速お饅頭を食べましょうか」
「そうだね。僕も早く食べたい」
「颯太くん、澄ちゃんどうぞ……召し上がれ。昌平君は……昨日たくさん食べたもんね……?」
「目を逸らして言わないでくれ~!!」
逸らした瞳の裏にどのような光景が広がっているのか想像できるが、食事前に想像するのはとんでもなくはばかられることなのでやめておく。
半分に割ったクリーム饅頭を眺める。よく見てなかったから気づかなかったけど、クリーム饅頭にはあさま荘のシンボルマークの焼き印が押されていなかった。本家『あさま荘』で出していないから焼き印は押せないということだろう。
片割れを口に入れ咀嚼した瞬間、中からクリームがはじけた。そして、もう半分もすぐに頬張る。
「ん!? 凄い美味しいよこれ! クリーム入れると一気に……なんて言うんだろう、スイーツになるね!」
「はい。とても良い出来ですね。流石は兎莉さん。嫉妬してしまうほどの出来ですよ」
僕は兎莉の新メニューに対し手を叩き賞賛する。澄も表情にあまり出していないが、かなり気に入っているように思えた。一口で食べたから中からクリームが溢れてきて、それが餡子と混ざり合って……和洋折衷って感じだった。一度に二つの味が楽しめてお得感があるのもまた良い。
「二人とも気に入ってくれたようで……一先ず安心……かな?」
「気に入ったよ。良くこんなの思いついたね」
「えへへ……生クリームが入ったあんぱんってあるでしょ……?クリームあんぱん。私あれが好きで、真似してみたんだ……」
兎莉は頬を赤くしながら俯いた。自己評価がすごく低い彼女だけど、今回に限っていえば恐ろしいほどにセンスが良い。
澄は瞳を閉じてクリーム饅頭をよく味わっていた。咀嚼を終え、お茶で口を潤すと開眼した。
「なるほど。クリームあんぱんは私たちの高校の購買の人気メニュー。校内の生徒でこのクリーム饅頭に抵抗を持つ者はいないでしょう。いえ、寧ろ好印象を持っていただけるに違いありません」
「クリームあんぱんって購買で売ってたんだ。兎莉がたまに食べてるのは知ってたけど、それは初耳だな」
「颯太くん、本当にうちの学生なのかな……色々忘れすぎだね……」
「その言葉前にも聞いたな」
確か、入学式の時だっけ。温泉部なのに『秋風』を知らなくてそんな台詞を言われたんだと思う。前のは忘れてただけだけど、今回は本当に知らなかったんだ……
「ともあれ、このクリーム饅頭は温泉部の武器になるのは間違いありません」
「ん? どうしてだ?」
「客層の違い……ですね。確かに『あさま荘』のお饅頭は世界一ですし、お客が集まるのは必然なのですが……」
「その前提は必須なんだね……」
「当然です! コホン……飽くまであさま荘の看板饅頭で集まるのは既にあさま荘のお饅頭が美味しいということを知っていて、かつ、お饅頭が好きな人です。そうなると、往々にして温泉部に足を運んでくださるのは地域の高齢者の方々がメインになると予想されます。若い世代には残念なことにうちのお饅頭は広く知られていないのです」
「なるほど、だから学内の購買で売っているパンに近い物なら学校の生徒、若い世代を呼べるということか」
「その通りです。兎莉さんの新メニューは今の『あさま荘』の饅頭の欠点を完全に補うものだと言えるでしょう」
「あはは……そこまで褒められると照れちゃうね」
僕はポンッと手を鳴らし納得する。確かに僕みたいなクリームあんぱんを知らない例外中の例外以外はクリーム饅頭という名前だけでも食いつくだろう。お客の層が厚くなるのは心強い。明日は結構な人が入りそうだな。
安心したところで僕たちは再び饅頭を食べ進めた。
…………うん。いくつ食べても美味しい。僕なんか何だかんだ、もう四つも食べてしまった。澄が最後のひとつに手を伸ばし、重箱が空になった。
「ふう……食べた食べた。温泉部って文化祭の準備期間中にどれくらいの饅頭食べたんだろ? 結構食べてるよね」
「どれくらいだろう……? 数えるのが面倒なくらい食べてるのは確かだと……思うよ?」
「それに、まだまだお饅頭はありますからね」
突然の澄の言葉にその意味を噛み砕くのに時間を要した。そして僕はその意味を捉えるより速く、澄は机の下から新たな重箱を取り出す。
「まさか……」
今度の重箱は三段。一番上の蓋を開けてみると、初めに見た量と同じだけのクリーム饅頭がびっしりと詰まっていた。もしやと思いその箱をさらに持ち上げてみると、二段目、三段目にも同じようにクリーム饅頭が……
頭痛が痛い。そんなわけの分からないことを言ってしまうくらい、突如立ちはだかった壁は高かった。
「……澄、まさかこれ全部食べるの……?」
「もちろんそのつもりです。なにせ私たちには試食専門の心強い殿方がいますからね」
「……んっ!?」
澄の視線に気付き、噂の試食専門の殿方が身震いした。少しかわいそうな気もするけど、昌平は今日は一つも食べてない。学生時代に頑張ったことを土下座から饅頭大食いに変えるチャンスだ。
限界を決めるなと、僕は心の中で昌平に適当にエールを送る。昌平は顔をしかめ、頭を抱え叫んだ。
「もう、饅頭は嫌だあああああああああああああ!!」
「我儘を言わないでください! 男なら最後まで自分の使命を全うしなさい!」
「ひぃ! 饅頭が襲ってくる!! 饅頭怖いいいいいい!!!!」
「あら、それなら饅頭を上げましょうか? お茶が怖くなったらお茶もお出ししましょう」
「そうじゃなああああああい!!!!」
昌平は悲痛な叫びを上げて椅子から転げ落ちる。幸いなことに、それを聞いて同じフロアの生徒たちが集まり、彼らに饅頭を分けることが出来たため昌平の悲鳴は無駄にはならないのであった。
*
午後も同様に、僕たちは教室の装飾を進めた。午前と違うことといえば、澄たちがいるということと、秋風さんがいないということ。午前中を妨害合戦で費やした澄も秋風さんも流石にそれが不毛だと気付いたらしい。出来ればもっと早く気付いてほしかったけれども。
人数が倍になり作業のスピードは格段に上がる。普段ふざけがちな昌平も澄と一緒なら真面目に仕事をこなしてくれて、午後の三時には教室のセットが完了した。
「お疲れ様です、皆さん」
「意外と、あっさり終わったね……?」
「まあ、温泉部の筋肉担当が本気出せばこんなもんだぜえ!」
「あら、あなたは試食担当じゃありませんでしたか?」
「うっ…………忘れてくれ……」
挨拶代わりのボディーブローを受け昌平はうな垂れた。澄も分かっていると思うが、昌平みたいな力自慢がいると実際助かる。教室内から要らない机を体育館に移動させる必要があったのだけど、これが結構重労働。正直、昌平がいなかったらもっと大変だったと思う。グッジョブ昌平。午前中のことは水に流して昌平を見直した。
「一段落ついてほっとしていると思いますが、まだ準備は続きますよ。」
「んっ? まだ準備あったっけ? 飾りも机のセットも終わったよね」
僕は疑問符を頭に浮かべた。もしかして、打ち上げとかだろうか? 涼しい顔して澄は意外とサプライズ好きだったりして。
「颯太さんお忘れですか? 私たちはまだ最も重要な準備をしていません」
「最も重要……? 兎莉分かる?」
全然思いつかないので隣に座る兎莉に話を振ってみた。突然話しかけられて少し驚いたようだったがすぐに気を取り直して、口を開く。
「たぶん……お饅頭だよ、颯太くん?」
「あっ! そっか、まだ饅頭作ってなかったね……って、今から作るのか!?」
まずい、完全に忘れていた! お饅頭という存在が身近になりすぎて、それを作らないといけないことを逆に忘れていた! 見ると、昌平も忘れていたみたいでポカーンと口を開けっぱなしにしていた。男二人組が頼りなさすぎる。
澄は軽く咳払いをすると続けた。
「勿論そのつもりです」
「ええっと……澄ちゃん、いくつぐらい作るつもりなの……?」
「そうですね……」
兎莉の質問を受け、空を見ながら澄は作るべき饅頭の個数を計算しだす。
「……私たちの学校は高等部中等部合わせて大体七百人程度です。近隣の方々を含めて恐らく千人以上は文化祭に足を運んでくれるでしょう」
「なるほど、なるほど」
「五人に一人はお饅頭を買ってくれると仮定すると……二百個のお饅頭を作るべきとみて良いでしょうね」
「二百か……一人五十個って考えたとしても結構きついね」
最初にお饅頭を作った頃とは、僕らの職人としてのレベルが違う。だとしても饅頭五十個は決して少なくない。ここまでの量ともなると、体力の面でも大変そうだ。横を見ると兎莉も同じように辛そうな顔をしていた。
「兎莉やっぱり辛そうか?」
「ええっと……頑張ればなんとかなる……よ? ただ、慣れてるとは言えやっぱり大変だな……って」
この一週間で一番饅頭を作ってきたであろう兎莉が弱音を吐いていた。それでも頑張ればなんとかなると言ってくれたのは幸いだった。少しは希望が見えてくる。
「それじゃあ、今すぐ始めた方が良いよね。場所はあさま荘かな?」
「そうしましょう。長期戦になるのが予想されるので今日はあさま荘に泊まっても構いませんよ」
「ホントか!!」
突然先ほどまで呆けていた昌平が起き上がり歓喜の声を上げる。『あさま荘』は近隣ではかなり高級な温泉旅館だ。昌平が楽しみに思うのも無理はない。実は僕も結構わくわくしていた。
昌平の現金な態度に呆れながらも澄はにこやかに言う。
「勿論です。特に昌平さん、あなたは必ずあさま荘に泊まってください」
「いや、言われなくても泊まるけど、もう泊まる気でいるけど、何でだ?」
「あなたが初めてあさま荘に来た日を思い出してみなさい」
「あっ…………」
昌平は悪いことを思い出したかのように顔をしかめた。僕も覚えている。確か昌平、学校に遅れるからとかいう理由で学校に泊まって叱られたんだっけ。明日の文化祭本番で寝坊なんてされても困るから、やっぱり昌平は泊まるべきだ。それに、また黒い悪魔(カラス)に襲われでもしたら衛生的に問題がありすぎる。
「善は急げ、です。支度をしたら直ぐにあさま荘に向かいましょう」
「「「おー!!」」」
景気よく掛け声を上げ、支度を開始した。
支度をしながら窓の外を見てみると、鞄を背負った生徒がちらほらいるのが見えた。僕たちはこれから饅頭作りという一番大切な作業をしないといけないけど、教室のセットだけで済む出し物のクラスや部活動はもちろんある。例えば文芸部は教室準備をして、後は作品を用意して終わりだ。締め切りを守れない人が印刷を滞らせて前日になってあたふたするなんて話も聞くけど基本それだけ。話は逸れたけど、準備の少ない人たちはそろそろ終わる頃だし外の生徒たちはおそらく文化祭準備を終えた人たちだろう。
ところで、綾菜先輩のクラスはどうなっているのだろう。綾菜先輩のことだから心配いらないと思うのだけど……
僕らが帰り支度を終えたところで扉の向こうから声がした。
「どこからか私を呼ぶ声が聞こえるね……! ヒーローを呼ぶ声が!!」
「この声は……!?」
聞き覚えのある、張りのある声。聞き間違えることなんてあり得ない。間違いなく綾菜先輩だった。というか心の声を聞かれてる!?
バンッ!と教室の扉が開かれ少女のシルエットが浮かぶ。満点の笑顔を携えて生徒会長は西棟の廊下で存在感を放っていた。
「辻先輩、お久しぶりです」
「……お久しぶりです」
「先輩いいいい! ちょーお久しぶりです。会いたかったっす!!」
「私は会いたくなかったね!!」
「はうっ!!」
久しぶりの綾菜先輩に温泉部一同、綾菜先輩の下に集まる。僕はこの一週間も毎日綾菜先輩と会ってたわけだけど、他の人たちは本当に久しぶりという表現が間違いではない程に顔を合わせていなかった。
「いや~おひさ~! まあ、颯たんは昨日も会ったけどね!」
「あら、颯太さん。本当なのですか」
「そうだよ。ほら、前に澄には話したでしょ? 綾菜先輩の演劇の練習の手伝い、昨日もやったからさ」
「おいこらてめえ颯太! 先輩と抜け駆けってどういうことだ!」
「違うわ! この馬鹿昌平が! ヒーローパンチ!」
「ぐはっ!」
謎の勘違いをした昌平が、綾菜先輩の正義の拳を受けて倒れた。
「……あんまり八方美人なのはいけないよ、颯太くん……?」
「兎莉まで……深い意味はないよ。綾菜先輩は同じ温泉部なんだから力になるのは当たり前だろ?」
「むぅ……」
僕の一言に綾菜先輩は頬を膨らませ、ムッとする。確かに今の言い方は良くなかったかもしれない。まるで部員だから協力しているだけ、のようにも受け取れる。部員以前に綾菜先輩は仲の良い先輩だ。
ヒーローパンチをくらい倒れた昌平がサンドバックの様に起き上がる。
「それで先輩は何しに来たんすか? 温泉部の応援っすか?」
「何しに来たとは何だね、昌平くん。普通に応援さ~! 昌平に先に言われたけど~!」
手にモザイクをかけながら綾菜先輩がブーイングをする。修正大変なんですからやめてください先輩。中指を立てるのをやめると、昌平の頭をパチンと叩き先輩は続ける。
「皆がすみすみの家で合宿って聞いたからさ! そしたら応援に来れるの今しかないじゃん!」
「流石先輩、耳が早いですね。もしかして澄、先輩に泊まりの事言ったりした?」
「はい。部で合宿するのですから、先輩を誘うのは筋というものです」
「なるほどね。それで先輩も知っていたのか」
「確かに誘いはしました。ですが……」
声音を暗くする。言わなくても表情で分かる。先輩は合宿に来ないということだろう。
「まあ、そんな暗くならないのだすみすみ~! 私が行っても何も手伝えないからね! それに私だってちゃんとクラスの演劇の準備があるからね!」
「……そういうことなら仕方がないですね。先輩主役ですもんね」
「主役……というかメインヒロインだよ! そう! 私はギャルゲーでいうところの攻略対象なのだ~!」
どこからともなく現れたバレーボールで盛られた胸を張り、綾菜先輩はそう答えた。
先輩は自分をヒロインと言っているが、台本を見た感じ先輩の役である戦姫は主役だ。先輩のクラス──三年A組は文化祭で『帝国騎士と戦乙女』というタイトルのオリジナル演劇をすることになっている。題名からすれば確かに綾菜先輩の演じる戦少女はヒロインのように思われるけど、実際のところ戦乙女の方が帝国騎士よりも出番も台詞も多い。たぶんシナリオ担当の人は、綾菜先輩が主役をする前提で書いている。
綾菜先輩がガハハと笑う姿を見ながら、隣の兎莉の頬が少し緩む。
「……………………」
「ん? 兎莉どうかしたのか?」
「……何でもないよ、颯太くん」
何でもないと言っているが、幼馴染の僕には何か思うところがあるのは丸わかりだ。兎莉は一見何考えてるか分かりづらいけど、微妙な表情の変化を僕は見逃さない。この顔はバレーボールで巨乳化した姿に笑っているようには見えないし……
「もしかして、兎莉ギャルゲーとか興味あるの?」
「……っ!? 何言ってるの、颯太くん……!」
可能性がありそうな選択肢を取ると兎莉は慌ててそう言った。一瞬で顔がゆでだこのごとく赤くなる。兎莉……分かりやすすぎる。いつもこれくらい分かりやすい反応をしてくれたら、もっとクラスの人たちも兎莉のことを分かってもらえるのにな。
「意外だな。兎莉ってそういうゲームに興味あったんだ」
「…………違うよ。ちょっとやったことがあるってだけなの……!」
「なんだと!? うりうり意外とむっつりさんか! ほれ〜うりうり~!」
「おほっ! まさかこんなところで同志に出会えるとは! 不肖昌平、兎莉殿のことを今度から兎莉氏とお呼びしてもよろしいでござるか!?」
兎莉が白状したところで、綾菜先輩と昌平が彼女を取り囲む。所謂キモオタボイスといわれるであろう口調で話すので昌平の気持ち悪さが当社比三倍くらいある。昌平は見た目はカッコいいけど喋ると残念ボーイなのだ。
盛り上がる二人を眺めながら僕は一人物思いに耽る。いやはや、昌平がオタクなのは知っていたけどまさか綾菜先輩、それに兎莉もだったとは。
僕は別にオタクに対して偏見とかは持っていない。寧ろ逆で、オタクであれなんであれ何かしら打ち込めるものがあるのはいいことだと思っている。兎莉も僕に似て無趣味な人だと思っていたから、内心複雑な気持ちだった。まるで巣立っていく小鳥を見送る親鳥の気持ちだ。
「昌平はギャルゲーやるの?」
「まあな。颯太はやらねえの?」
「僕はやったことないな……」
僕の一言に、昌平はやれやれと言った様子で頭を抱える。
「颯太みたいな女子に恵まれてるやつには分からないかもしれないがな、世の中大半の恵まれない男子たちにとってギャルゲーは必要なんだぜ!」
「いや、決め顔で言われても反応に困るよ。というかギャルゲーってどんな感じのゲームなの? 小説のゲーム版って認識なんだけど」
「簡単にいえば女の子と◯ッチするゲームだぜ」
「…………昌平くん……!」
純粋な眼で金髪メガネはそう告げる。真顔で何を言っているんだ昌平は……
兎莉の反応見た感じ間違ってはないんだろうけど、あまりにもストレートだった。澄なんて、生ゴミとかゴキブリとかを見る冷たい目で昌平を見ていた。
「な、なるほどね。でも、僕たちまだ十五歳とか十六歳でしょ? 流石にそんなゲームは十八歳以上じゃなきゃ買えないんじゃ……」
「颯太……!」
おもむろに近づき僕の肩に手を掛ける。
「インターネットの年齢認証はギャルゲーのヒロインぐらいガバガバなんだぜ」
「ギルティだ……」
普通に犯罪だった。どうやら昌平はインターネットで購入しているようだった。兎莉もまさかインターネットで……聞くのは止めておこう。
僕たちの不毛な会話に耐えかねたのか先輩が口を開く。
「ちょっと! 話がすご~く脱線してんだけど!」
「そうでした」
「だけど、先輩もっとギャルゲーの……」
「うるさい昌平! 超ヒーローパンチ!」
「ぐはっ!!」
昌平は死んだ。超ヒーローパンチは超ってついてるだけあっていつものパンチより強そうだった。実際くらってないのでその真相は昌平のみぞ知る。先輩が仕切りなおして言葉を続けた。
「とにかく! 私は温泉部を応援してるよ。大切な……私たちの居場所だからね」
先輩はニカッと歯茎を見せて笑う。いつも笑顔でおちゃらけていているだけじゃない。しっかりと真面目にやるべきときは真面目にやる。先輩はそういう人だった。こういう分別がついているからこそ、二年間連続生徒会長として皆に認められているのだと思う。
「ありがとうございます。辻先輩。先輩の居場所は必ず守り抜きます」
「ありがと~すみすみ! まあ、そんなに固くならなくても良いよ! すみすみは『秋風』に勝つことを目標にして! そのついでに私の温泉部を守ってくれればいいから! そこら辺は適当に!」
「ふふふ……先輩らしいですね……」
澄が微笑むのを皮切りに温泉部全員に笑顔が伝播する。そうだ、先輩の最大の魅力を忘れていた──先輩といると皆笑顔になる。
「それじゃあ、行ってらっしゃい! 明日は私もお店に行くかもしれないから、美味しいお饅頭作ってきてね~!」
「「「はいっ!!!」」」
なんとも締まらない先輩の緩い激励を胸に、僕たちは気合を入れ直すのだった。
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