1.5.クロエ
『……私と、お友達になってください!』
『ごめん。興味ない。というか、このクソみたいなリアルの世界に興味がないから』
『ちょ……』
おかしい。
私が好きになった人が、こんなおかしい人のはずはない。
狂っているのは、そう。
この世の中よ。
※ ※ ※
人は誰しも心に夢を描くもの。
金持ちになりたいというような、漠然とした大きな夢。
明日はあれを食べたいというような、具体的で些細な夢。
あの人ともっと親しくなりたいというような、淡く初々しい夢――
皆それぞれ何かしらの夢を実現するために、日々生きていると思う。
けれど、それはもう古い考え方。
今では夢を叶える必要がなくなってしまったみたい。
なぜなら、夢の世界の方から目の前に現れて、簡単にその中に入れるようになってしまったから。
『小説、映画、漫画、アニメ、そしてゲーム』
それらは、かつてその"夢の世界"の代名詞だった。
友達になってくださいなんていう告白をした無垢な私を打ち砕いたのも、そんな空想的でバーチャルな夢の世界だった。
要するに、私の告白相手は夢の世界に浸る"オタク"だったのだ。
『まああんな仮想世界、実は大したことなかったのよね』
それも今となっては笑ってしまう程度の過去であり、私がこの仕事に就こうと決めたきっかけでしかない。
月日が経った今、厄介なのは、そう。
ただ一つ。
『マスコッ島ランド』
この島。
小説だとか映画だとか、漫画だとかアニメだとか、ゲームだとかいった従来の現実逃避手段とは、まるでレベルが違う。
あんなものじゃ、済まされない危険な場所。
言うなれば、ここは――
『夢を夢のまま叶えてしまう、異常な楽園』
だから私は幼少期の苦い記憶に導かれて、死に物狂いでこの仕事に特化するための偏った勉強をして、圧倒的な速さで周りを認めさせて、責任を持ってこの島を監視するという任務を自ら買って出た。
こんな世界を許してはいけない。
この夢の島には絶対に何か裏があるはず。
探せば必ずボロは出る。
それを突き止めて、このまがい物の夢におぼれているたくさんの人を救うんだ。
それがわたしの使命。
わたしの生きる意味。
そのためだったら私は、きっとなんだってする。
『ちょろーっと、かっこつけすぎかねー』
こんな性格だから、やり方が荒っぽいとかよく言われちゃうのよね。
でも、いいじゃない。
目覚まし時計は、うるさくて不快な音だって相場が決まってるんだからさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます