1. ただいま! マスコッ島!

「ただいまー」

 右手をパーにして突きだして、島に挨拶。

「わー」

 真っ白でツルツルな大理石で出来ている船着場は、歩くたびカツンコツンと透き通ったメロディーを奏でます。

「おかえりなさい。ミント様」

「ミミさん」

 迎えてくれたのは、ネコによく似たマスコットのミミさん。

 わたしが昔この島で暮らしていた時に、毎日美味しいご飯を作ってくれたレストランシェフのマスコットさんです。

「ミミさん元気だった?」

「ええ。元気は私達マスコットのモットーですから」

「それならよかったー」

「ミント様も健康そうで何よりですわ」

「そりゃーこれから頑張って、お母様みたいにならなくちゃいけないんだから。体調はバンゼンだよ」

 えっへん。

「さすが、ミント様ですぞ!」

「うわー、ピエロさん。びっくりしたー」

 いきなり話に割って入ってきたピエロさんは、ウサギにそっくりなマジシャンのマスコットさん。

「驚いてもらえて何より。ですが本番はこれからですぞ」

「え、なんだろー?」

「そーれっ! ですぞ!」

 ピエロさんが勢い良く人差し指を振り上げると、カメラのフラッシュみたいなピカピカな光が一斉に広がって――

「わっ」

 わたしは思わず顔を伏せてしまいました。

「さあ、見てもいいですぞ」

「いい?」

 おそるおそる顔を上げるとそこには――

「全員集合ですぞ!」

 なんと島中のマスコットさんたちが、わんさか集まっているではないですか。

 みんな揃って手のひらサイズのかわいらしい子たち。全部でざっと100匹以上の大集合です。

「さんはい!」

「「ミント様!! おかえりなさい!!!」」

 色とりどりの小さな体を思い思いに動かして、にこやかにごあいさつ。

 ぴょーんと空高くジャンプするマスコットさん。

 にこっと可愛らしい笑顔なマスコットさん。

 わーっと両手を広げるマスコットさん。

 羽の生えたマスコットさんは『おかえり。ミント様』と書かれた大弾幕を、青空にピンと広げています。

「すごーい。みんなありがとうー」

 やっぱりいいなぁ、マスコッ島は。

 あの本土よりも何倍も楽しいところです。

「さあ、ミント様。オーナー様に会いに行きましょう」

「よーし。行きますかー」

 わたしは、ミント。

 ミント・ゲーツ、15歳。

 本土での義務教育を終えて、9年ぶりに"ふるさと"であるこの島に帰ってきました。

 これから始まるのは、普通の人とはちょっと違った生活。

 世界中で唯一、この島だけで会える不思議な不思議なマスコットさんたちと暮らす、夢のような毎日です。

  すべては、お母様みたいな立派なオーナーさんになるため。

「わたし、精一杯頑張ります」

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