第12話 証券会社への手数料
必要なところの記入が終わって申し込みボタンを押した。
数日後に証券会社から厚めの封筒が届いた。開ける前から何枚も用紙が入っていることが分かって少しうんざりする。
これを記入して郵送すればいいだけなのだが、なんか記入する気になれず数週間申込書をベッドの脇に放置したままにした。
漠然とした怖さと面倒くささがあったからだと思う。
株はべつに特別なものではない。
スーパーでお買い物をすることやコンサートチケットを買うことと同じである。
ただごく普通の日常のことであると気付いたのは後のことで、申し込みをする段階では、人生が変わるすごく大それたことをするように思えた。
ここで最後の選択があった。
売買手数料を『定率制』にするか『1日定額制』にするかである。
① 【定率制】
1回株を売り買いするごとに150円くらいを払うというもの。
② 【1日定額制】
1日の取引の合計金額が10万円までなら100円、20万円までなら200円とかになっているもの。
私はこの1日定額制のメリットがいまいち分からない。
1日何回でも取引する場合はこちらの方がメリットがあると言われているが、どうしてもそう思えなかった。
何回も取引すると結局20万円、30万円と合計金額が上がってしまい、手数料が高くなる。
また100万円の銘柄を1回買う場合では、定率制の方が手数料が安くなる。
そういう理由からも『定率制』を選択した。
これももちろん後で変更できるので、最初はどっちを選んでも大丈夫である。
数週間後にSBI証券に私の口座が無事に開設された。
あとは銀行からこの口座にお金を振り込めば、パソコンで株を買うことができる。でもまだ騙されているのではないかという思いがどこかにある。
本当は100万円くらいで投資をスタートさせようと思っていた。
でも疑り深い私は万が一騙されてもいいようにと、最初に10万円を銀行から振り込んだ。
後ほどパソコンで自分の画面にログインしてみたら、ちゃんと10万円振り込まれていたので、そこでやっと信用することができた。
そして翌日残りの90万円を振り込んできた。
こうして株の取引が始まったのである。
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