03
思わずスマホの画面にくわっと目を近付けてしまった。
神より? 神だと? となるとこの画面表示は、あいつの置き土産ってわけか。
あの野郎め、こんな回りくどい演出しやがって。そんな暇があったなら、もう少し残って説明していけよ!
しかし今や別次元にいるあいつを恨んだって仕方がない(ていうか別次元って何だろう……)。
とりあえず押してみるかな。何だろう、神様の野郎に電話が繋がるのかも。
まさかトラップで爆発するとかじゃないだろうな……俺も神だからそれぐらいじゃビクともしないとは思うが。
「っし……」
ちょっとドキドキしながら、ほぼ画面一杯に表示されているその文字をそっとタップした。
その瞬間。
「!?」
最初に感じた違和感は、タップしたその感触がグミみたいに柔らかかったこと。
うわ何だこれ、と思ったのも束の間。
スマホが俺の手の中から勢いよく飛び上がり、空中で青白い光を……いや。
違う、光じゃない!
「うおおっ!?」
燃えている!?
重力を設定した部屋の中なのに、スマホは宙に浮いたまま煌々とした青白い炎に包まれていた。
うわ何か幻想的でめっちゃキレイっつーか、かっけー……でも見とれてる場合じゃない。
やっぱトラップか!? 青白い炎で俺を焼き尽くす攻撃魔法!?
ズサササ、とベッドの上で壁まで後ずさりする。
どうする? 存在ごと消すか? 俺が創り出したものじゃないから消せないかもしれないが……やってみるべきか? それとも様子を見るべき?
それより壁を消してもっと遠くに離れた方がいいのか。
どうするどうする、と頭の中がぐるぐる回転し始める。
しかし次の手を決めかねているうちに、その美しい青白さはしばらく燃えさかった後いきなりシュルシュルと収束してしまった。
ああ終わったのか……と思った途端、今度はスマホそのものが真っ青に染まり、ぐにゃああ、とスライムみたいに柔らかく縦横無尽に伸び始めた。
「な、何だよ次は!?」
慌てる俺の前で、スマホは膨らんだり触手みたいなものを伸ばしたりしまくった後、ぎゅうっと小さく収縮した。
そして。
ボンッ!
「うわあっ!?」
いきなりの爆発音らしきものに、思わず目を閉じて顔を背ける。
やたら演出が長いだけで結局は爆弾かよ畜生!
「……?」
けれどいつまで経っても爆風や衝撃が来ない。
おそるおそる目を開けてみると、そこには。
「いよう。元気か」
「……は?」
スマホの代わりに浮かんでいた<何か>が、そう言って俺に片手を上げていた。
何と言ったらいいのだろう。
ゲーセンのUFOキャッチャーで取れる、アニメとかゲームの登場人物のぬいぐるみってあるよな。ちょうど大きさ的にも形状としてもあんな感じの<何か>がスマホの代わりにフワフワと浮いていた。
ただ、ぬいぐるみと違うのは、そいつの見た目に明らかな生物感があることと、動いてしゃべっている、ということ。
漫画とかでよくあるデフォルメされたぷちキャラがそのまま飛び出してきたみたいなイメージだ。
っていうか……何なのコイツ?
「おい。何をあっけにとられたみてーな顔してんだよ」
「え、いや」
「ったく、神のくせに威厳のない奴だな」
ぬいぐるみはやれやれといった感じで首を振った。
口が悪いから言葉だけ抜き出せば男かと勘違いするかもしれないが、このぬいぐるみはどうやら女であるらしい。
さっきの炎みたいな青白い色の髪の毛は長く、純白のひらひらした服を着ている。ぷちキャラとはいえ顔立ちも女のそれだし、そもそも声が女声優のアニメ声みたいな感じ。
「だいたい何だよこの部屋? 広大な宇宙の中で、こんな狭苦しいところに入ってるなんざ、どうかしてんじゃねーのかテメー?」
「ほ、ほっとけよ!」
テメーときたか。声は可愛いのにギャップがひどい。
「まあ別にいいんだけどよ。部屋の大きさは器の大きさと同じだっつーし、テメーにゃピッタリの部屋なんじゃねえか?」
「うっさいな! そもそも何なんだよお前は? しゃべるぬいぐるみか?」
わけのわからん奴だ。見た目はえらくファンシーだし、知ったような口を利いてるが、何者なんだ。
それに……この部屋、重力あるはずだよな? 俺が「浮け」と念じたわけでは当然ないのに、何で浮いてる?
「アタシのどこがぬいぐるみだこのガキ。ぶっ飛ばすぞ」
「……ああ、うん」
「ったく。まあいい、テメーがミナミノ・ヨシトだな」
「知ってるのか?」
「当たり前だろ。神の野郎がアタシをテメーのサポート役として置いてったんだからよお」
「サポート役? 俺の?」
「そうだ」
そしてそいつは可愛い顔に似合わぬニヤリとした笑みを浮かべて、言った。
「アタシの名はイヴ。いわゆる<最初の人類>ってやつだ」
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