結局押し付けられちまったけど、どーすんだ編
考えてみて欲しい。
もし自分がたった一人で、何もない異空間に放り出されたとしたら。
誰もおらず、何も見えず聞こえず。
どうしようもない不安と孤独で気が変になるかもしれない。
ただし。
その空間は、何もかもが自分の思い通りになる場所……。
「やべーな……」
腕を組み、うーむと唸る俺。
神を自称する変な野郎が消えてから30分ぐらい経っただろうか。
俺はいまだに上下の区別がない宇宙空間の中をフワフワと浮かんでいた。
さっきからずっと混乱しっぱなしだったが、創り出したトーストを食べたら少し頭の中が落ち着いた気がする。
いつもの食べ慣れた味だったし。
「そうだよ、いつもの味だったんだよな……」
そのトーストも、家で焼いて持ってきたわけではなく、ついさっき俺が自分で生み出したものだ。
生み出した。
そうなのだ。俺が頭に思い描いたことによって、この何もなかったはずの宇宙空間に出現させたのだ。トーストを。
これこそまさに全知全能。
……んなわけない。
「マジかこの状況? そりゃトーストは美味かったけどさ……」
えーっと、と考えて、今度は缶コーヒーを思い描く。
やがて、ポンッ、と缶コーヒーが出現。やっぱマジで出て来たよ。
「……でも何だこりゃ」
その缶コーヒーをよく見ると、表面の印刷がぐちゃぐちゃになっている。どうやら色んなメーカーのパッケージが混ざっているらしい。
俺が「コレ!」と限定して思い描かなかったせいかな。曖昧なままで出現させると曖昧な物体になってしまうようだ。
飲んでみると、まあよくある缶コーヒーっぽい味だった。中身も混ざってるのかはよくわからん。
飲み終わった後、もちろん空き缶が残る。
試しに軽く投げてみると、そのままスーっと止まらずにどこまでも進む。
まさしく無重力。
消えろ、と念じると、段々遠ざかっていたその姿は、一気にパッと消えてなくなった。
創るも消すも自由自在か。
「……じゃねーよ! どうすんだよこれ!!」
叫んだところで誰もいないわけで。
いやホントどうすんだ?
あの神様の野郎、変質者じゃなくて本物だったってことだよな。
つまり俺はマジでビッグバン直後の宇宙に置いていかれたってことになる。
何にもないこの空間に、しかもいつまで居ればいいのかわかったもんじゃない。
考えれば考えるほどヤバすぎるだろ……。
「家帰れねーのか……」
さっきまで友人たちと帰宅している途中だったのに、いきなりこんな突拍子もないことになるなんて。
家に帰るどころか、元の宇宙に帰ることすらいつになるのか。
この宇宙には地球すらないんだもんなあ。
「あー……マジかよ」
しばらくグルグルと考え込んでいたが、いつまでもこうしていても仕方がない。
何でも出来るとはいえ、イチから全てを創っていかなきゃならんのだ。
マインクラフトみたいな世界に自分が飛び込んだと思って、どうにかやるか。
さてと。
それじゃあまずは、何から創ろうか?
何もないこの宇宙に。
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