第一章 界軍入隊編
第1話 界軍入隊試験(1)
エーテルエネルギーと呼ばれる未知のエネルギーが
そんな魔獣から人間界を守る組織が存在していた。
それこそが人間界保安軍部。
通称、
人間界はコロニーと呼ばれる居住地で構成されており、それは第一から第九まで存在していた。
第一コロニーには界軍第一部隊が配置されているように、界軍は一つのコロニーに対して一つの部隊を配置している。
そんな界軍の第二部隊を一人の青年が訪れていた。
この場所にいるという母親に、彼は会いに来たのであった。
敷地に入ると、石庭が広がっており、
彼はその庭をもの珍しそうに眺めながら、城のような造りの建物へと足を踏み入れた。
建物の中は外観と違い、市役所のようなところであった。
彼はこの場所を初めて訪れていたため、右も左も分からなかったのだが、受付と書かれた立て札が置かれた窓口を発見した。
受付には数十人ほどの列が出来ており、彼もその列の最後尾へと並んだ。
しばらくすると、彼の後ろには厳つい男性も並んでいた。
青年は後ろからの圧迫感から、自分の順番が待ち遠しかった。
そんな中で前の人を観察していると、書類のようなものに何かを書いているのがうかがえた。
それは一人、二人がやっていることではなく、ここに並んでいる人全員がそうしていた。
受付で用件を済ませるだけでも手続きか何かが必要なのだろうと、この社会について何も知らない彼は考えていた。
「次の方どうぞ」
ようやく彼の番になり、受付のテーブルの前へと足を進める。
「では、こちらに記入をお願いします」
「はい」
手渡された書類には記入欄だけでなく、要項なども示されていたのだが、背中に突き刺さる早くしろと言わんばかりの視線に耐え切れなかった青年は、書類に目を通すことなくペンを手に取った。
記入日 4月1日
氏名 桔梗
年齢 20歳
性別 男性
などを明記していった。
そして、書き終えた書類を受付員に手渡した。
彼としては住所を聞かれることが一番の気がかりであったのだが、何の問題もなかった。
不備がないことを確認した受付員の女性からE-23と書かれた番号札を手渡された。
「では、あちらの控え室でお待ちください」
受付から離れ、後ろからの圧迫感からようやく解放された桔梗は、案内された部屋へと入室した。
中には、彼よりも先に並んでいた人たちも待機していた。
彼としては病院のような待合室をイメージしていたのだが、実際はスポーツ選手が使うような控え室に近い部屋であった。
彼は界軍の控え室なのだからこういう感じなのだろうと思うことにした。
その後も、列に並んでいた人たちが次々に入ってくるが、誰一人として外へ出ていく者はいなかった。
よく見ると中にいる人たちは緊張した面持ちをしている。
その上、体格のいい人も多い。
さすがにこれはおかしいと思った桔梗は、外へ出て確認を取ろうと立ち上がった。
その時、誰かが入ってくるのが分かった。
中に入ってきた女性は係員のような人物であった。
「お待たせしました。皆さんこちらへどうぞ」
彼らはその声に反応して一斉に飛び出していく。
ようやく場違いなことに気付いた桔梗ではあったが、その勢いに呑まれてしまった。
行き着いた先はジムに似たトレーニングルームのような場所であった。
総勢50人が揃ったのを確認した係員からアナウンスがあった。
「それでは、これより界軍入隊テストの一次試験を始めます」
「え!?」
今になって桔梗は気付かされた。
何せ、受付というのが試験の受付であり、先ほど記入したのは試験に関する書類であったのだ。
――あの時、もっとよく読んでおけば……いや、後ろのおっさんが悪い。あんなに睨まなくてもいいだろう。
そんな不満を溢しながらも、この状況自体はそれほど不快に感じてはいなかった。
「まあ、いいや。力試しにやってみるか……」
そんな意気込みの中で、桔梗は一次試験を受けることとなった。
一次試験の結果は直ぐに配布された。
桔梗はすぐさま『一次試験 結果』と書かれた紙を確認した。
パワー E
ディフェンス C
スピード E
スタミナ E
エーテル量 E
と書かれていた。
もちろんこれは五段階評価であり、AからEまでの判定がある。
「知ってたけども……」
予想通りの結果であるがゆえに、彼は思わず笑ってしまった。
『それでは次に二次試験を行いますので、こちらに移動してください』
「ふぅー、そもそも俺の目的はこれじゃないんだし、気楽に行きますか」
そんな風に気持ちを切り替え係員の後を追った。
部屋に入ると参加人数と同じ50人分の席が用意されていた。
――次はペーパーテストか……この世界のことはよく知らないんだよな。
半ば諦めながら自分の番号の席へ着いた。
しばらくして試験監督が入室すると、すぐに用紙を配布された。
「試験時間は60分です。開始してください」
桔梗も周りの人と同様に用紙を表に向ける。
全部で5問ある問題を桔梗は書き進めていく。
この世界に関する問いがなかったため、桔梗は難なく答えることができたのだ。
正直に答えたとはいえ、自分の回答を読み返すとひどいものだとは分かっていたが、彼がそれを書き直すことはなかった。
「それまで、後ろの人は集めてきて下さい」
試験監督の終了の合図よりも早くに、ほとんどの人が書き終えていた。
試験監督は用紙を集め終えるとすぐに退出していく。
それと入れ替わるように先ほどの係員が戻ってきた。
「皆様お疲れ様でした。次の最終試験は屋外にて行いますので、移動をお願いします」
次の最終試験こそは本気を出そうと心に決めた桔梗は、凝った体をほぐすように腕を伸ばした。
そして、さんさんと照らされている日光の下へと向かっていった。
屋外へ出ると、先ほどの人数とは比べものにならないくらいの人でごった返していた。
その数は700を超えている。
さらにそこでは3つのグループに分けられた。
それは100名ほどのAグループ、最も人数の多いBグループ、人数の少ないCグループであった。
桔梗はCグループに配属された。
しばらくすると壇上に一人の女性が現れた。
「私が三次試験を担当することとなったジェシカだ。時間もないので早速始めさせてもらう。Aグループは模擬戦、Bグループは能力判定、CグループはエリアCの観測とする。以上だ」
ジェシカが壇上を下りるや否や、他のグループは一斉に移動し始めた。
すると、桔梗たちの前に一人の女性が現れた。
「あたしがお前らを担当するカレンだ。置いていかれないようについて来いよ。言うこと聞かねぇやつは死んでも知らねぇからな。分かった奴だけついて来い」
もちろん残ろうとするものは誰一人いない。
こうして、Cグループの総勢64名はカレンの後を追い、界軍の城門を
界軍の敷地を出てからすぐに、先頭はもう一人の担当者である男性に変わった。
カレンには後ろから全員を観察する役割があったのだ。
「なんであたしがこんなことを……」
こんな役目を負わされたことが彼女には不満だった。
戦線にでて暴れたくて仕方なかったのだ。
しかし、以前に負った怪我が完治していないカレンに、無茶はさせられないということで仕方なくこの役目を引き受けたのであった。
何より、敬愛するジェシカの頼みを断ることが出来なかったのだ。
それから太陽が照りしきる荒野を歩くことおよそ三時間。
時刻はすでに正午を回っていた。
彼らの目の前には関所が設けられていた。
そして、その向こうには地平線が見えるほどの草原が広がっていた。
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