『プロローグ02』
――『ワームホール』。
今自分の目の前に広がっている、まるで揺れ続ける水面のような、宙に空いた虫食い穴のような、無数の星が螺旋を描いて渦になっているかのような、そんな時空の歪み。
これを彼等がなんと思っているのかは知らないが、向こうではそう呼ばれているらしい。
『
脳内に声が聞こえる。
今や絶滅寸前まで個体数が少なくなってしまった、貴重な存在だ。
「
自分はそう答える。
自分という個体を
自分は今、大きな自分に乗っている。
本当は戦うための兵器で、自分とは姿形は全然似ていないけれど、細胞同期は済ませているから、もう自分とあまり変わらない。
自分のすぐ近くでは、外では『戦争』が起きている。
いや、もう『戦争』とは呼べないかもしれない。
何故なら、自分達はもう滅ぼされるのを待つばかりなのだから。
永い永い戦いが、もう少しで終わりを迎えようとしている。
頭の触角を通して聞こえてくる、仲間達の断末魔。
その声は、どれも『
今こうしている間に大きな自分に乗り込み、時間を稼いでくれている仲間は、誰も彼も『
『
それほどまで、自分達は弱くなってしまった。
『……頼んだぞ、
『
これでもこの『
もっとも、それももう関係ない。
「了解……〝転移〟を開始する」
自分は特に思う所もなく答える。
これが自分にとって最初の任務であり、最後の任務となる。
自分は、目の前で蠢く時空の歪みへ入ろうとした。
だが、その時だ。
自分の背後にあった壁が、突然砕け散る。
同時に、〝何か巨大な物〟が自分に襲い掛かってきた。
自分は応戦しようとした。でも、間に合わなかった。
〝何か巨大な物〟はそのまま自分に激突する。
そして自分は、〝何か巨大な物〟もろとも時空の歪みへと放り出された。
自分の意識は――――そこで途切れた。
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