第3話
あっさりと城下、というか門前についてしまって拍子抜けしている自分がいる。
もっとこうさ。あるじゃん?森の中でドラゴンにあって突然始まる超絶バトル!
いや戦うすべなんて持ってませんけれども。
しかしなんだね。
ひどく閑散としているね。
静かすぎるっていうの?人影一つ見えやしない。
門から見て真正面にそびえる城の前に炎が揺らめいていて、ようやく人の気配が感じられる。
進むしかないか。
周りを観察するためにマトンから降りる。
進めど進めど人はいない。
お店だったのかな?という場所や宿屋らしき建物に、昼間から飲んだくれてそうな酒飲みが居てもおかしくない酒場。
どこも人がいないのに、生活感は嫌というほど感じられて。
ここが一つの国だったのだとすれば国民全員で夜逃げしたという表現がぴったりだろう。
これなら今そこにあるリンゴをパチってもぐもぐ美味え。
なにこれ超美味え。
ちょっと路地裏に入って井戸水を飲む。この井戸はあの湖とつながってるのかな?
歩いても歩いても、人はいない。
もう少しイージーモードでもよかったんだけどなあ。
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城の前に到着したけれど、やっぱり閑散としている。
街の様子と明らかに違うのは、死体がたくさん転がっていることだろうか。
重厚そうな鎧を纏った騎士やローブの魔法使い的な人、明らかに人間じゃない人たちまでもが大なり小なり傷を負って倒れている。
というか、ね。もうムリ。
「ぉろろろろ……」
適当な草むらにリバースですよリバース。
ダメだこれ。
「ヴェエエェ?」
「ありがと、ムートン……うぷ」
ムートンの羊毛に顔をうずめているだけで気分が安らぐ。
おひさまの匂い、とか?そんな感じ。
むせ返るほどの血の匂いを我慢しながら、時々は羊たちの毛に顔をうずめて散策してみる。もしかしたら、もしかしたら生きている人がいるかもしれない。
小人?緑色の肌の集団は斧を持っていたけど、使う間もなく死んだのだろう。鎧を通して背後から一突きってやつだ。
巨大な槌が地面に突き刺さっている。落ちているとかならまだ分かったんだけど、突き刺さっている。何事だ。
からん……。
音がした?城の門の方か?
走って行こうとするとお前ら早いんだよ!歩幅が違うの!
ま、待ってー。
「めー」
お前は良い子だねえウール。
待っててくれ……うぉ!乗せられた。
遅いってことですかそうですか。
「なんだ!?薬羊?なぜ聖域の獣がいる!?」
薬用?ヤクヨウ?
まさか羊の種類判明かな。
「ヴェエエェ~」
「むぇ」
「べえーぇ」
「めー」
「なんなんだ一体!?
おわあ!喀血した!?
そこにいたのは背の低いヒゲモジャのおっさんでした。
でしたが鎧の胸元が割られて大量の血が出てる!
生きてるのが不思議なくらいだけどモツとかが流れ出てるわけじゃないから僕は平気。平気じゃないのはおっさんの方だ。
なんか無いの?
ほらファンタジーゲーム的なポーションとか魔法とか!
えーと、えーと……。
「ヒール!キュア!リカバリー!違う?シンプルに回復!これじゃない…ああもう、あのマッチョに教えてもらうべきだった僕のバカ!それとも使えないとかいう訳か?メイドに必要ないってか!」
「お、おい嬢ちゃんお前さん人族か?」
「ちょっと黙ってろ!」
「お、おう……」
今は喋ってる時間も惜しいのだ。
ヒュムノがどうとか構ってられない。
街、そうだ街!ポーションショップとかあるだろ普通に!
でも間に合わなかったら……?おっちゃんがその間に息絶えていたら……?
ダメだダメだ思考よ止まるな!
考えろ、考えろ考えろ考えろ!
すっ…とラムが寄って来て僕の袖を引いた。
なんだよ。今ヤバい状況なんだってば。
「べぇ。べぇーぇえぇ。べぇー」
「え……」
なんて言っているのか分からない。
分からないのに分かった。
これは、ある意味お約束だ。
意識してやらないといけなかったのか。
「ステータス、オープン」
目の前に現れたのは、半透明の薄い板。
ゲームやそういう小説なんかでおなじみの、ステータス画面だった。
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