天使の望んだ一枚【二九〇文字】

 ――かしゃり、シャッターが閉じる。

 それは終を告げる鐘の音だった。


 行き交う雑踏が、人々を運ぶ電車が停滞していく。ゆっくり、ゆっくりと速度が失われていく。

 眠りを知らぬと言われた街は今、停止へと傾いている。


 人々の笑顔が止まる。活動が停止する。

 それは終。けれど、とうの昔に訪れていたはずの終。

 いままで引き伸ばされていたもの。


 終を祝福するように、街の頭上に光冠が浮かび上がる。

 街の左右から翼が開かれる。


 鐘が鳴る、鐘が鳴る。

 天使の覗くファインダーは、終の鐘を鳴らし続ける。


 そして全てが止まった時、天使は瓦礫の上で涙をこぼした。

 停止した街は……ああ、彼女が目指した最高の一瞬で完成していたから。

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