天使の望んだ一枚【二九〇文字】
――かしゃり、シャッターが閉じる。
それは終を告げる鐘の音だった。
行き交う雑踏が、人々を運ぶ電車が停滞していく。ゆっくり、ゆっくりと速度が失われていく。
眠りを知らぬと言われた街は今、停止へと傾いている。
人々の笑顔が止まる。活動が停止する。
それは終。けれど、とうの昔に訪れていたはずの終。
いままで引き伸ばされていたもの。
終を祝福するように、街の頭上に光冠が浮かび上がる。
街の左右から翼が開かれる。
鐘が鳴る、鐘が鳴る。
天使の覗くファインダーは、終の鐘を鳴らし続ける。
そして全てが止まった時、天使は瓦礫の上で涙をこぼした。
停止した街は……ああ、彼女が目指した最高の一瞬で完成していたから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます