磨いた石はどんな色? 虹かな? それとも【五二〇文字】

 僕たちは石ころをもっている。

 土がたくさんついていて、結晶の部分はほとんど見えないけれど、たしかに光る石を持っている。

 それは親が渡してくれたもので、とても大切なもの。


 だから、大事に大事に磨く。

 でも、磨き方はよくわからない。


 どうすればもっと光るのかな。

 どうすればもっと綺麗になるのかな。


 考えながら磨いて行く。自分なりに、何度も何度も間違えながら。


 磨くのを間違えるととっても痛い。

 だから、だんだんと磨くのが上手になっていく。

 石が綺麗になっていく。


 なのに、誰かが言うんだ。


「その磨き方は間違ってるよ」


 ううん、痛くないからあってるよ。

 そう言っても聞いてくれない。


 誰かは僕たちの手を取って彼なりの磨き方を強制する。

 痛くて、痛くてしかたないのに、やめてくれない。

 痛くないやり方をすると、しかられる。


 だから、痛くても痛くても我慢して、磨き続ける。


 そうすると、だんだん石が濁っていく。

 輝きが、なくなっていく。

 なのにそれを見て誰かは言うんだ。


「ああ、とても綺麗になったね」


 嘘つき、嘘つき!

 こんなに濁っているのに、こんなに痛いのに!


 それでも僕たちは逃げられない。


 石を綺麗にしたかったのに。

 石を濁らせるために磨くことを続けている。


 本当は、虹色に光る石になるはずだったのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る