β 未来へ羽ばたく
ストーリー・作詞 紺谷紅
構成・作詞 M.O
~音響・アンサンブル~
【
《ピンスポ・フットライト》
『歌詞』
[動き・立ち位置]
(セリフを言うときの注意点)
―動作―
♪音楽
〈場面転換〉
*上手→客席から見て舞台右手。下手→客席から見て舞台左手。
【緞帳:上げる】
(♪ 『♪♪♪♪♪♪~Inst ver.~』)
~開演ブザー~
~放送アナウンス~
~笛の音~
笛の音が始まったらすぐにハーメルンとアリスは動き出すこと。
【中割り幕:閉じたまま】
[舞台上手階段よりハーメルン登場、礼]
ハーメルンが礼をしたとき、観客の拍手がある。
【中割り幕:(拍手と同時に)開ける】
~笛の音(少し音色を変える)~
[ハーメルン アリスが登場する方向を見る]
[アリス 上手階段より音につられて登場]
~笛の音止む~
アリス ―正気づく―
こっ、ここどこ?
っていうか、あんた誰?
ハーメルン ここは、ふしぎの国の入り口。
あなた様をお迎えに上がりました。
下僕なり奴隷なり、ポチなり何なりとお呼びくださいませ。
アリス はあぁ? 何でそんな偏った嗜好なのよ。
[チェシャ猫 舞台下手奥、アリスの背後から近づいていく]
ハーメルン 偏っている、と言われましても……。
アリス とにかく、今のは却下!
さっさと名前を教えなさい。
私に下僕呼ばわりされたがったくらいだから、何でもいうことを聞いてくれるんでしょう?
ハーメルン ……(しぶしぶ)ラッテンフェンガー・フォン・ハーメルン。
※初耳の人にとっては聞き取りにくい名前なので、途切れさせる場合は・のところだけで
アリス ラッテンフェンガー、フォン、ハーメルン?
長い! ハーメルンでいいわね?
ハーメルン もちろんです。
[チェシャ猫 アリスに抱きつく。]
アリス きゃああっ!
チェシャ猫 びっくりした?
ねぇ、びっくりした?
アリス そ、そうね。驚いたわ。
チェシャ猫 そんなびっくり仰天どころか、昇天しそうになってくれたアリスちゃんにプレゼント♪
みゅーじっく~スタートっ♪
↑
[アリス・ハーメルン以外 ポーズをとる]
♪『♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪』
《フット:赤・青・黄で交互にライト転換
ピンスポ:白 舞台上をぐるぐる巡らせる》
[チェシャ・ふしぎ ダンス。ふしぎは歌えるようなら歌う]
[アリス 手を取られたりなどの軽い動作]
[アリス・ハーメルン 中盤~終盤にかけてダンスに参加]
チェシャ 『♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
白ウサ オオカミ 信号ずきん
みんなふしぎの国の住人
チェシャ・歌娘
アリスが来る前の ふしぎの国は
扉がいつ開くかを気にして
女王様が おまじないを
かけては祈る 今度こそと
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪ ×4』
[アリス 唖然]
《フット:白》
チェシャ (歌終わってすぐ)ようこそ、アリスちゃん。お帰り、のほうがいいのかな?
↑読点を意識
ふしぎ (半拍~1拍)アリス、お帰り!
アリス (チェシャ猫たちを見て)ちょーっと待った、ストップ!
チェシャ ん? なぁに?
アリス (前を向いて)私はアリサ。トモダ アリサよ。
朝に田んぼって書いて
ふしぎ ―顔を見合わせたり―
チェシャ (アリスを見て)ふーん。
(前を見て)アリスか(右手を出す)、アリサか(左手を出す)。
どっちが正しいかなんて、自分で決めればいいよ。
(観客に向けて)ただ、ここの住人にとって、君は「アリス」だ。
[チェシャ・ふしぎ 礼、二手に分かれてはける]
アリス ―見送った先を少し追いかけて―
何だったのかしら、あれ……。
まあ、アリスとアリサ、似てないこともないし、いいのかな?
ハーメルン そろそろ参りましょうか、姫。
―アリスに近づいて手を取り、はけようとする―
アリス 手を離してちょうだい。
―手を振り払って、はける―
ハーメルン 待って下さいよぉ。
―アリスを追いかける―
*アリス・ハーメルンは階段陰で待機(公爵・三銃士シーンが終わればすぐ登場)
【中割り幕:閉じる】
〈帽子屋シーンへ場面転換〉
《フットライト:青、ピンスポ:下手二階》
女王 (手すりに手をかけ、見回すように)あやつはまだか! あの笛吹き男は!
アリスはいつ私のもとに来るのだ!
トランプ (女王見て)はっ。先ほどチェシャ猫のもとを発たれたとか…。
ですので、もうしばしお時間がかかるかと…。
女王 (トランプへ視線移す)遅い。そんなに待てぬわ!
(前を見て)帽子屋を呼べ! 今すぐだ!
(少し視線下げて)どんな手を使ってでも連れてくるのだ。
トランプ 承知いたしました。
―はける―
公爵 女王様。いくらなんでもやりすぎではございませんか?
女王 公爵夫人、アリスは生まれてすぐ、私のもとから連れ去られたのだ。
(前を見て)今すぐ、あの子に会いたい。会って、共に過ごすはずだった一七年間を取り戻すのだ。
(無表情)有無は言わせぬ。誰にも…。
※言わせぬ。までははっきりと。誰にも…。で余韻を残すイメージ
―はける―
《下手ピンスポ:女王がはけたら舞台上の三銃士へ》
公爵 (前見て)やはりやりすぎです、女王様…。
…三銃士。
三銃士 ―黙って素早く登場・片膝をついて―(揃える)はい、公爵夫人。
公爵 (前を見ながら)少し帽子屋が気になるわ。
アリス様をお守りして。
三銃士 (揃える)公爵夫人の仰せのままに。
―はける(小走り)―
《フットライト:白》
アリス ―下手階段より、後ろを振り向いて―
(ルンルン)ねぇ、ハーメルン、なんだかおなか空いちゃった。
ハーメルン ―時計をチラッと見て―
この時間なら、近くで帽子屋がお茶しているはずです。
なにかいただけるかもしれませんし、行ってみますか?
【中割り幕:開く(帽子屋のセリフ時点で少なくとも帽子屋とウサたんが見えるように)】
[信号ずきん 中割り幕の裾を持って開けているように見せる]
アリス お菓子はあるの?
ハーメルン もちろん!
……あ、見えてきました、あそこです。
帽子屋 はい、あーん。ウサたん、おいしいですか~?
そうですか~。良かったですね~。
アリス ―驚き、後退り―
え、あそこに行くの…?
ハーメルン まあ、ちょっとアレですが、悪いヤツではありませんよ。
アリス ちょっとどころか……。
帽子屋 ―アリスに気づき、ウサたんを抱えて立ち上がる―
(アリス! ずっと待ってたよ!)
そうだ、お茶でも飲んでいくかい?
※落ち着いてはっきり。
アリス えーっと……。
ハーメルン いただきましょう、アリス様。
アリス わかったわ。
ここ、座るわね。
帽子屋 ここはウサたんの特等席なんだ。
※↑もう少しゆっくり目に
座るならそっち。
アリス ウサたんウサたんって、ただのぬいぐるみじゃない……。
(手前の席)えーっと、ここ?
帽子屋 そうそう。
ハーメルン ―アリスが座るのを見届けてから―
(左膝ついて)では、私はアリス様の足下に…。
アリス そっちの椅子が空いてるじゃない。
ねぇ、帽子屋さん、そっちは誰かの特等席なのかしら?
帽子屋 いやいや、ここは空いている席だよ。
ささ、君も座って。
[ハーメルン 移動開始]
立ちっぱなしじゃあ、お茶ができないよ。
ハーメルン ありがとうございます。
―座る―
[3人 一服(思い思いにティーカップを持ちあげて飲む→机上に置く)]
*ハーメルンは次のシーンのためにティーカップを脇へ
アリス おいしいお茶ね。
帽子屋 わかるかい?
あ、お菓子もどうかな? おすすめはこれ。
なかなか手に入らないんだけど、ちょうど人にもらったところでね。
アリス ありがとう。いただくわ。
―食べる―
…なにこれ、甘っ!
帽子屋 イギリスの伝統菓子で、ファッジっていうんだけど…。
お口に合わなかった?
アリス ううん、最初は驚いたけど、癖になる味ね。
たくさんは食べられないけれど、おいしいわ。
―ふとハーメルンの方を見る―
そうだ、ハーメルン。
ハーメルン ―突然話しかけられて焦る―
は、はいっ! なんでしょうか?
《ピンスポ:帽子屋》
[帽子屋 2人の会話を横目に、ゆっくりウサたんを持って張り出し舞台上手へ]
アリス ずっと聞こうと思ってたんだけど、私はいったいどこに向かってるの?
ハーメルン このふしぎの国の女王様の下です。
アリス様を連れてきてほしいと、仰せつかりまして。
アリス どうして女王様なんかが私に?
何の関係もないじゃない。
ハーメルン それが、ですね…。
帽子屋 アリス、君が女王様の娘だからだよ。
アリス はっ?
―立ち上がって帽子屋に近づこうとして―
って、あれ…?
なんだか目がぐるぐるするわ…。
―目をこする―
ハーメルン ―紅茶を調べる。のち、立ち上がって―
帽子屋! どういうことだ!
なぜ紅茶に眠り薬なんてものを!
―少しふらつく。椅子に座り、眠る。(机上の小道具注意)―
帽子屋 悪いね。女王様の命令なんだ。ねー、ウサたん。
♪『♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪』
帽子屋 眠れよ この薬で
眠れよ 身を委ねて
[アリス 歌に合わせて舞台に倒れる]
【中割り幕:閉じる】
僕が連れていく
女王の下へ
だからおやすみ アリス
僕の薬で眠れ
[ハーメルン 中割り幕閉じ切ったらすぐ撤収]
〈女王の城へ場面転換〉
《ピンスポ・フットライト:消灯》
[消灯後:帽子屋・アリスはすぐ撤収、女王・公爵・トランプはすぐ張り出し階段より登場]
《フットライト:白》
トランプ 女王様! アリス様を捕らえたと帽子屋から連絡が!
女王 そうか、やってくれたか。
帽子屋を労ってやらねばな。
[トランプ 下手にはける]
公爵 (諭すように。だんだんと訴えかけるように)
女王様、実の娘に何をしたのか、おわかりでしょうか?
一刻も早く会いたいと焦られるお気持ちもよくわかりますが、アリス様は女王様の慈悲深さを知らないのです。
アリス様はどうお思いになられたか、一度お考えになってください。
失礼いたします。
―下手へはける―
♪『♪♪♪♪♪♪』
女王 『愛おしい娘 連れ去られた時
この世を嘆き 何もかも恨んだ
神様にお願いしたの
あの子をどうか お守りください
暗い夜に あの子が怯えても
光る道を どうか授けて
もう何も 恨まないわ(中央前方へ)
あの子が生きている それだけで
もう何も 望まないわ
あの子が私を母にしてくれたのだから』
《フット:消灯》
[消灯後:女王は張り出しの階段からすぐ撤収、アリス・ハーメルンは幕間から張り出し舞台にすぐ登場]
《フット:白》
[ハーメルン アリスに向かって土下座]
アリス ―目覚める。立ち上がろうとして転びそうになる―
わっ! っとと、危なかった。
足が縛られてるから、歩けないのね。
―ハーメルンにやっと気づく―
えー…と、あの、ハーメルン、さん?
ハーメルン 申し訳ございません、アリス様。
私としたことがっっっ!
アリス いいわよ、そんなこと。
顔を上げて。
ハーメルン アリス様っ!
アリス ―体育座り―
(前見ておずおず)ねぇ、私が女王様の娘っていうのは本当?
ハーメルン ええ、本当です。
アリス そう。
(ハーメルン見て)じゃあ、女王―お母様―が私を捕らえろっていったのよね?
(不安そうに)どうして? 私のことが嫌いなの?
邪魔だから、私を殺そうとしてるの?
ハーメルン アリス様を殺すなんて! 畏れ多い!
アリス ふざけないで。
ハーメルン ふざけてなんかいません。
(前見て)あなたが女王様を恨む隣国の者たちに連れ去られたあと、必死で行方を捜す女王様の姿をお見せできたらどんなにいいか。
誓って言えます。あなたは愛されていると。
(アリス見て)これだけは、このことだけは、誰にも歪めさせはしません。
アリス (視線落として)じゃあ、私がお母様と離れ離れになったのは、お母様の望みじゃなかったんだ。
(ハーメルン見て)あのね、ハーメルン。
眠っている間、やさしい声が聞こえたの。
(前見て)私を包みこんでくれるような、やさしい、温もりのある声が。
あれがお母様の声だったのかな?
……ううん、きっとそう。
あれがお母様の声だったのよ。
ハーメルン ええ、きっとそうです。
三銃士 ―下手階段より左膝ついて―
姫様~! アリス姫~! ご無事ですか?
アラミス あっ、良かった、生きてる!
ポルトス いや、普通生きてるから。
アトス ひとまずここから出ましょう。
[アラミス・ポルトス 慌てて姿勢を正す]
アトス ―手を差し出して―
さあ、アリス姫。
アリス …ここから出たいのは山々なんだけど、足が縛られてるの。
これじゃ、歩けない。
アラミス それは大変だ!
ポルトス 今すぐ
アトス いや、我ら3人で担いで行くという手も…
ハーメルン ―くすくす笑い―
アリス様、手は自由なんですから、ご自分で
アリス (やや焦ったように)い、今やろうと思ったのっ!
―紐を解く―
アトス アリス様、これからどういたしますか。
ポルトス 元の世界に戻りたいと思われますか。
アリス ―ゆっくり立ち上がって―
…そうね。
(前見て)でも、私、どうしてもお母様に会いたい。
会って、一緒に暮らしたい。
(三銃士見て)ずっと一人ぼっちだって思ってたの。
(ハーメルン見て)私には家族なんていないって。
(前見て)みんなが当たり前に持っているものが、私にはない。
ずっと悲しかった。寂しかった。悔しかった。
(片耳を押さえて)眠っている間に聞こえてきた声が、ずっと耳から離れないの。
私のことをどう思ってくれているのか、会って直接知りたいの。
―全体を見渡す―
[ポルトス・アラミス 会話、首を傾げる]
[ハーメルン・アトス じっと聞く]
アリス (三銃士見て)お願い、会わせて。
(ハーメルン見て)少し怖いけれど、今会わなきゃ、絶対後悔する。
(前見て)どっちにしろ後悔するなら、会わないで後悔するより、会って後悔したいの。
三銃士 ―顔を見合わせ、頷く―
我ら三銃士、あなた様のお言葉に従うのみです。
アリス ハーメルン、あなたは?
[ハーメルン 仏頂面で舞台下手客席側を見る]
アリス ちょっと、聞いてる?
ハーメルン …聞いてますよ。
アリス (しゃがんで)あなたの答えは?
ハーメルン ……。
アリス ハーメルンってば!
ハーメルン もちろん、アリス様の御心のままに。
アリス もう、何なのよ。
何で答えは決まってるのになかなか言わないの。
ハーメルン (ぽそっと)だって、三銃士に僕のセリフ、取られた。
※↑読点を意識
アリス・三銃士
え?
ハーメルン (振り返って)だって、僕のセリフ、取られたんだもん!
こんな、こんなポッと出のやつらに!
アリス・三銃士
(顔を見合わせ)何それ、面倒臭っ!
ハーメルン 私にも言わせてください。
私はアリス様のお言葉に従うのみです。
[アリス ハーメルンに手を差し出して立たせる]
アトス (気を取り直したように、前を向いて)
あなた様のお言葉に従うとは言ったものの、我ら三銃士、訳あって共に女王様の下へ行くことはできません。
※落ち着いて、はっきり
アリス どうして?
アラミス (立ち上がって前に少し進み)僕らは影の存在だから…。
アリス どういうこと?
ポルトス (立ち上がって)僕たちはこれからも影でこの国を支えていく。
だからもう、行かなくちゃね。
アトス それでは、王宮への行き方はそこの笛吹き殿にお願いしましょう。
※はっきり
[アリス 頷いてハーメルンを見る]
三銃士 (揃える)ご武運を!
※はっきり
―下手階段より去る―
アリス なんて素敵な人たち…。
ハーメルン ―三銃士が消えた途端に復活―
(晴れやか)それでは、アリス様、邪魔者も消えたことですし、女王様の下へ参りましょうか!
アリス ええ。
[ハーメルン 笛を吹く]
~笛の音~
【中割り幕:開く】
[アリス・ハーメルン 中割り幕が開いていく間、前を見て歩くふり。(足踏み)]
アリス ここが、お母様のいる場所…。
ハーメルン ええ、もうすぐそこに。
~(幕が開ききったら)笛の音止む~
《フットライト:白》
[アリス・ハーメルン 城の前で演技]
トランプ (驚き、切羽詰まった感じ。下手二階より)
ア、アリス様!
早く女王様にお知らせしなければ!
女王 何だ、騒々しい。
トランプ 女王様! アリス様がいらっしゃいました!
女王 アリスが? 今、会いに行くわ!
―体育館二階からステージまでダッシュ―
トランプ じょ、女王様! アリス様はそちらではございませんっ!
アリス 今から、本当にお母様にあえるのね!
ねぇ、私の格好、変じゃないかしら?
ハーメルン よくお似合いですよ。
青は女王様と対になる色ですし。
アリス (はにかみ)そうかな。
女王 (声のみ)アリス? どこにいるの?
アリス――――!
[アリス・ハーメルン 声の主を探す]
女王 ―舞台袖から飛び出す(ふしぎも後を追う)―
アリス! 本当にアリスなのね。
―アリスを抱擁―
《ピンスポ:アリス・女王に移す》
[ハーメルン 抱擁を横目に見ながら二人きりの世界にしてあげる(礼してはける)]
ふしぎ (顔を見合わせたりしながら思い思いに。バラけていてOK)
アリスだ! アリスが帰ってきた! 帰ってきたぞー!
[ふしぎ 静止]
《フット:青》
女王 ずっとずっと会いたかった。
―だんだんと抱擁を緩め、アリスの目を見る―
♪『♪♪♪♪』
女王 あなたが向こうの世界に行ってしまったとわかったとき、どんなに絶望したか知れないわ。
本当にたくさんの者に、いやな役回りをさせてしまった。
あなたに早く会いたいからって帽子屋までけしかけて。
怖い思いをさせてごめんなさいね。
アリス いいえ、大丈夫よ。聞いて!
(女王と向かいあって)
『お母様の声を
(前を見て)
確かに聞いたの
やさしくて 温かい
陽だまりのような声
女王 (アリスに向かって)
どんな魔法よりも
素晴らしい奇跡
あなたが今ここにいる
(手を離して前を向く)
私の腕の中に
アリス あなたのやさしさが
私を つつんで
女王 あなたのぬくもりが
私を 癒すの
[ふしぎ 二手に分かれ、女王・アリスをそれぞれ囲み、コーラスに参加]
《ピンスポ:舞台全体へ》
女王・アリス 二度と会えないと
女王・アリス・ふしぎ
いつの日か 夢は叶う
強く願うのならば
女王・ふしぎ (アリスを見て)
あなたとこうして 巡り会えたこと
アリス・ふしぎ
(女王を見て)
今ここで 話せること
女王・アリス・ふしぎ
(見つめ合って)
かけがえのない時間
アリス・ふしぎ
あなたのやさしさが
私を つつんで
あなたのまなざしが
私を 癒すの
女王・ふしぎ
あなたのひとみが
こんなに 愛しい
あなたのぬくもりが
私を 癒すの
アリス (後奏で女王に向かって)お母様に会ってよかった。
憧れだったの。こうやって、本当の家族と触れあうことが。
↑手を握る
アリス このままこうして手を取り合って、お母様の温もりを感じていたいの。
女王 アリス…
[女王・アリス 少し見つめ合う]
ハーメルン (声のみ)
たっ、たた、大変です~!
世界を繋ぐ扉が、もう…閉じかけています!
《フット:白》
女王 そう…。
(アリスとの時間を惜しむように)もう、お別れなのね。
あちらの世界とこちらの世界を繋ぐ扉は(一拍)いつ開くかわからない。
あなたがあちらに行ってしまってから十七年間、扉が開くことはなかった。
アリス、会いに来てくれて、本当にありがとう。愛してるわ。
アリス どうして? どうしてそんなことを言うの?
私はこのまま、この世界で、お母様と一緒にっっっ!
*生声はもっと大声で。(本番は音が吸収されるので聞こえません)
バッカルー (生声)そうですよ! 女王様!
オオカミ (生声)女王様のこんなやわらかいお顔、初めて見たんだ!
エインセル (生声)アリスがここにいてくれなきゃ!
白ウサギ (生声)アリス様、行かないで。
ふしぎ (バラけていてOK がやがやした感じ)
行かないで。
行かないでくださいよ。
ずっと一緒にいてください。
女王 (ふしぎが騒いでいるとき。軽く目を向けて。静かな、有無を言わせぬ声)
お黙りなさい。
[ふしぎ ぴたりと声が止む]
女王 (アリス見て)ねぇ、アリス。
あなたがこのままずっと、ここにいてくれたら、私はどんなにか幸せでしょうね。
(左斜め前見て)
でもね、それはいけないことなの。それだけは、私がやってはいけないこと。
アリス (近寄って)どういうこと? 全然わかんない!
女王 (前を向いて)
あなたの母が、もし私だけなら、迷いなく共に暮らしたでしょうね。
アリス 私のお母様はお母様だけよ!
女王 (アリスに向かって)本当にそう?
よく思い返してみて。あなたを育てたのは誰か。
あなたの、本当の名付け親は誰か。
こんなにやさしい子になったんだもの。
きっといるはずよ。
アリス (前を向いて)あ…。
女王 (アリスに向かって)そう。今のあなたがあるのは、その方のおかげね。
あなたは本当に愛を注がれてきたのね。
私はあなたを失った時、たとえようもないほどの悲しみを味わったわ。
これ以上、私のような思いをする人が出てきてほしくないの。
♪『♪♪♪♪♪♪』←前奏がセリフ中に収まるよう調整
女王 (アリスに向かって)
『年老いた王様 この世を去るとき
(前を向いて両手を広げる)
未来を信じ 言葉を紡いだ
「あの子がもし 愛された子なら
辛くても 別れを告げよ」と
「もう誰も 同じ苦しみを
味わうことない世界に」と
(アリスに向かって)
夜空の星の下で
あなたが生きてくれるのならば
あなたを送り出そう
母として出来ることを
今成し遂げよう
アリス (前を向いて)
お母様と共に 生きる道を
求めるけれど それは出来ないのね
私には 向こうの世界で
愛してくれる 人が待っているから
もう誰も同じ苦しみを
味わうことない世界のため
[アリス・女王の声、照明、緞帳、アンサンブル以外は舞台へ]
アリス 私はここを発つわ
あなたの愛をこの胸に抱き
それでも忘れないで
お母様がくれた命
繋げてゆくから
男子 愛とは 解き放つことだ
女子 愛とは離れてあげること
全員 自分の幸せのためでなく
涙こらえ 伝えよう
夜空の星の下で
愛を伝えに あなたの下へ
なりたいものになるため
星からの金を求め
一人旅に出てゆくのよ
険しい道を越えて
旅に出る』
《フット:消灯 ピンスポ:アリス》
アリス 私はアリサ。朝田アリサよ。
今までも、これからも、ずっとずっと、朝田アリサ。
《ピンスポ:CO》
[照明、緞帳、アンサンブル以外 配置につく]
♪『♪♪♪♪♪♪』
僕の心で
輝く思い出たち
瞼を閉じれば
蘇るあの頃が
君の温もりに
何度も救われた
遠い記憶の中で
君は笑う
十七年の歴史が
今も身体に流れてる
僕らの声を天高く奏でよう
力合わせて みんなみんな
時の流れに
生まれたものなら
ひとり残らず
幸せになれるはず
みんな生命を燃やすんだ
星のように 蛍のように
僕らの声よ天高く響いて
僕らはひとつ みんなみんな
僕らの声を天高く奏でよう
力合わせて みんなみんな
カーテンコール N.T E.N S.M
照明 M.S M.N K.M
アンサンブル N.K R.H J.M E.M
トランプ兵 Y.N (声:N.T)
チェシャ猫 R.T (声:M.N)
ふしぎの国の住人
白ウサギ A.I
エインセル E.O
オオカミ W.K
バッカルー K.T
信号ずきん・赤 M.S
青 M.F
黄 R.Y
三銃士
アトス A.N 声:T.M
ポルトス H.I 声:S.Y
アラミス G.T
帽子屋 H.H 声:K.K
公爵夫人 A.M 声:S.N
ハーメルンの笛吹き Y.K 声:Y.S
女王 K.O 声:F.K
アリス H.S 声:M.O
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