咳をしても一人

咳をしても一人


――尾崎おざき放哉ほうさい





 自由律俳句を代表する俳人の一人、尾崎放哉の代表句の一つです。わずか九音の短律の中に、言いようのない孤独感が込められています。

 この句は放哉の晩年、小豆島に小さな庵を構えていた頃のものです。小さな庵の中で、咳をするも、その音が響くだけ。咳き込む放哉に声を掛けてくれる人は誰もいない。

 死を前にした放哉の孤独がありありと感じ取れます。


 翻って現在。「咳をしても一人」、そんな状況になったことはありませんか。私はあります。

 そんな時、私はこの句を思い出して、一人なのは私だけではないことを確かめるのです。

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