第18話 箱入り娘

 ミィは段ボール箱が大好き。

 体がぴったりとフィットする小さな箱から、中でゴロゴロできる少し大きなものまで段ボールであれば何でも大好きなのだ。

 宅配便の段ボールを開けて放置しておくと、いつの間にか中に入っているというのは、うちの日常の光景となっている。

 ただし、箱をかぶってスニーキングミッションをこなしたりはしないので、あしからず。


 そんな箱入り娘なミィだけど、それ以上に好きなことがある。

 それは、段ボール箱ごと動かしてもらうことだ。


 例えば、フローリングの床の上をずるずる引っ張ってみたり、ていっ!と押して滑らせてみたり。

 箱ごと抱えてあっちの部屋へ行ったり、こっちの部屋へ行ったり。

 抱えた箱をぶるぶるしたり、ゆーらゆーら揺らしてみたり。


 そうやって箱に入ったまま遊んでもらうのが大好きなのだ。


 お、お嬢だ……!

 自分では一切動かずに、僕ら家族を使って遊んでいるのである!

 甘やかしている自覚はある。あるのだけれど、箱の中に入って上目遣いで「遊んで」と訴えかけられると、どうにも弱い。

 ついつい、箱を持ってゆーらゆーら、と揺らしてしまうのであった


 まあ、人間の子どものように際限なく「もっと!もっと!」としつこく要求してこない――実はもっと遊べと思っているかもしれないけれど――のは救いかな。

 後、あんまりつれなくしていると、逆にミィに嫌われるのではないか、という気持ちが僕ら家族の中にはあったりする。


 あれ?僕らの方が飼い慣らされている!?

 ……ふ、深くは考えないようにしよう、そうしよう。



 さて、話を段ボール箱に戻そう。

 ミィはなぜか、段ボール箱をかじるのも好きだ。あ、食べてしまったりはしていないのでご安心を。僕らも、最初見た時は食べているのかと思って焦ってしまったものだった。


 それでは何のためにかじっているのか?


 知りません!!


 あ痛!?ちょっ!?危険だから猫缶を投げるのは止めて!?

 だって本当に知らないんだから、仕方ないじゃないかー!


 僕の予想としては、歯磨きの代わりなのではないかと思っている。だけど、食後にやっているのかと聞かれると、よく分からなかったりする。

 歯が弱くなったり、虫歯になったりすると、餌が食べられなくなって衰弱死してしまうという話も聞くので、飼い主としては大事にしてもらいたいところではあるね。


 そんなこんなで、ミィは今日も段ボール箱の中に入ったり、段ボールの端っこをかじり取ってはその破片をまき散らかしたりしているのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る