第13話 ミィの好きなおもちゃ

 この世の中には多種多様な猫用のおもちゃがある。


 人間用のおもちゃで遊ぶことや、おもちゃでない物で遊ぶ――そ、それだけは勘弁して!と叫びたくなるものもあったりなかったり――こともあるけれど、それはまあ一旦置いておくとしよう。



 で、猫用のおもちゃである。

 うちにもいくつかある。

 定番の『にゃんこじゃらし』を始め『ネズミさん人形――ネズミなのに人形とはこれいかに!?――』に、大きいものでは『あ○ちこ○ちレール(某ネコを集めるアプリゲーム内の名前)』がある。


 買ってくるのは主に弟だ。

 大抵はミィへのプレゼントなのだが、たまに僕の財布から『ゆきっつぁん』や『いっちょーちゃん』が消えるという怪現象が発生することがある。


 不思議だ……。



 それはともかく、ミィの好きなおもちゃ、で外せないのはこれ『ネズミさん人形』だ。


 前足ではじいて一人で追いかけっこをしたり、尻尾――ウサギか何かの皮でできているそうな――をかじったりしている。

 なので、うちのネズミさん人形は投入して数日経つと尻尾がなくなっている。


 今ではどのネズミさんでも遊ぶが、最初の頃はホワイトなネズミさんがお気に入りだった。

 あんまり熱心に遊んでいるものだから、心配になったうちの父親がミィに触ろうとしたところ、「邪魔しないで!」と言うように「フシャーー!!」と威嚇してきたくらいである。


 ちなみにミィが僕ら家族に威嚇をしたのはこの時と、階段にいたミィに気付かず僕が『リアル猫踏んじゃった』をしてしまったときだけである。

 あの時はミィに本気で嫌われてしまったのかと思って心配で夜も眠れず、おかげで翌日のお昼寝はいつもより長くなってしまった。


 おっと、閑話休題。いつものことだが、話が横道にそれてしまった。



 ミィは基本さびしんぼである。遊ぶ時もそれは変わらない。

 ネズミさんで一人で遊んでいたかと思えば、いつの間にかそれをくわえて近くにやってくると「一緒に遊んであげるから、投げなさい」という顔で待っているのだ。


 お嬢である。上から目線である。ツンデレ……かどうかはよく分からない。


 で、ミィに向かってネズミさんを投げると、それをキャッチ、または前足でたたき落とす。

 それを再び僕らの所まで持って来てくれれば『フリスビー犬のようなにゃんこ』としてテレビに投稿する、ゲフンゲフン!いや、遊び相手をするのも楽なのだが、そこはやはりお嬢なので、その場に放置である。


 仕方なく拾いに行くと、いつの間にか新しい場所でスタンバイしていて、こちらが投げるのを待っているのだった。



 『ネズミさん人形』以外、というかおもちゃ以外でも同じ遊び方をするものがある。針金の芯が入った塩化ビニールだ。

 お菓子とかの袋を縛っているあれだ。あれを輪っかにして放り投げてやると、楽しそうに遊び始める。


 そしてやっぱり、しばらく経つと「投げさせてあげる」と言わんばかりに僕ら家族の近くに持って来るのだった。

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