第11話 番外編その一、黒ウサギのラビちゃん

 ミィがやってくるまでに、僕の家では何匹かの生き物を飼ってきた。

 そして最初に数年間という長期間飼うことになったのが、この黒ウサギのラビちゃんである。


 さて、ここまででバニーながーるを思い浮かべてしまった大きなお友達は廊下で十分間反省すること。ラビちゃんは普通のウサギさんである。



 小ネタはさておき、ウサギと言われて皆さんは何を思い浮かべるだろうか?

 モフモフ?

 白い毛に赤い目?

 寂しいと死んぢゃう?

 あ、三番目は俗説で迷信らしいよ。実際うちのラビちゃんは一匹だけで育てていました。



 ラビちゃんが家にやってきたのは僕が小学生の頃、今から二十年いじょゲフンゲフン!……まあ、結構前の話だ。

 そしてあらかじめ言っておくと、もう死んでしまっている。

 動物を飼う上で避けては通れないこととはいえ、やっぱり悲しかったことを今でも覚えている。



 暗い話はこのくらいにしよう。



 ラビちゃんは弟が連れてきた。

 通っていた小学校で飼っていたウサギが産んだ子どもの一匹だった。

 子どもだった僕の両手の上に乗ったくらいだから、大人であれば片手の掌に乗るくらいの大きさかな。

 そのくらい小さくて可愛かった。


 体毛は黒。だけど両前足の先だけソックスを履いたように白だった。

 目は黒っぽかったけれど、多少は赤みを帯びていたかもしれない。

 何枚かある写真では赤目になっているけれど、写真には赤く写りやすいそうなのであまりあてにはならないみたいだ。



 飼い始めた頃は家の中にいた。

 あまり走ったりせず、ひょこひょこと動き回っていた。

 餌はタンポポの葉が良いと聞いていたらしく、よく近所の田んぼの周りに生えているものを取りに行ったものだ。

 キャベツとかも結構食べていた気がする。ニンジンは記憶にない。


 草食のみだと思っている人もいるようだが、ウサギは雑食に近い。なのでラビちゃんも色々食べた。

 特にカレーが好物で、口の周りをカレーだらけにして一心不乱に食べていた。

 いつしかラビちゃん用のお椀――幼児用のプラスチックの器――はカレー色に変色してしまっていた。


 後、ベーコンエッグとかも好きだった。

 ちなみにどこかの小学校で飼っていたウサギさんは炊き込みご飯が好物だったそうだ。



 さて、ラビちゃんが少し大きくなった頃、家の中では飼えなくなってきた。

 ウサギは常に前歯が伸びる生き物である。

 だから伸び過ぎないように色々かじる。


 カジカジ。


 などと可愛げに言っていられないくらい齧る。

 うちの場合、まず最初に被害にあったのは磨りガラスが入った木製の戸だった。今でもラビちゃんがかじった跡が残っている。


 そして電化製品のコード。

 このままではラビちゃんが感電死してしまいかねないので、急遽庭にウサギ小屋を建ててそこで飼うことになったのだった。



 そんなわけで庭で飼うことになったラビちゃんだが、彼女は僕らが思っていた以上にたくましかった。

 なんと巣の中からうちの庭の下中に穴を掘っていたのである。


 今でもその穴は残っているようで、うちでは時々車のタイヤが陥没することがある。


 ラビちゃん、恐ろしい子!



 さて、最後にラビちゃんが不機嫌だったり怒ったときの仕草を紹介しよう。

 ラビちゃんは怒ると後ろ足で床や地面をターン!と叩いていた。

 スタンピングという行為らしく、結構な音がします。


 ウサギの鳴き声を聞いたことがある、という人はあまりいないと思う。

 実際あまり鳴くことはないが、鳴けないわけではない。


 ラビちゃんは怒ったときに鳴いた。「ブー!ブー!」と。


 あ!信じてないでしょ!?ホントだよ!ウサギは「ブーブー」と鳴くんだよ!


 ホントだからなぁー!

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