第9話 大脱走!

 動物を飼う上で気をつけなければいけないことはいくつかあると思うが、その一つがこれ、脱走だと思う今日この頃だったりする。


 というのも先日、見事にミィにしてやられたからだ。



 その日、ミィが二階にある僕の部屋ですやすやと眠っている昼下がり、洗濯物を片づけていた。

 その際、僕が開けっぱなしにしてしていた玄関の戸から一瞬の隙を突いてミィが庭へと飛び出したのである!


 ……え?一瞬どころかずっとだって?

 隙、間、どころか全開だって?


 ま、まあ、最近ではそんな風に言うこともあるもかもしれないネ。

 というか、誰が上手いことを言えと!言ったのは僕だけれど!


 ……コホン。失礼。少々混乱していたようだ。



 とにかく、見事に脱走を果たしたミィは自由の世界に旅立つ、こともなく庭に置いてあったたんとなマイカーの下に隠れていた。

 そこを棒で追いやられて、あえなく御用。

 まあ、自分から家の中に入っていったのだけれど。


 多分ミィにとって庭までは自分の陣地なので平気だけれど、それよりも外は怖い所なのだろう。

 新たな世界へと旅立つことがなくて一安心だった。


 病気の面からも外は危険だ。

 なにせミィには室内用のワクチン三種盛り合わせしか受けさせていないのだから。



 なにはともあれ、雨降りの後とかではなくて良かった。もしも泥だらけになっていたら風呂に入れなければいけないところだったヨ。


 ミィの場合、お湯には大人しく浸かっているのだけれど、その後がいけない。ドライヤーが怖いのか本気で逃げ回るのである。


 当然爪も立ててくる。

 なので、とても痛い。


 以前風邪をひかないようにと夏に体を洗ってやったことがあったのだが、その時はこちらも薄着だったので、体中引っかき傷だらけになってしまった。



 今回は足の裏をウェットティッシュで拭ってやるだけで済んだのだけれど、これにも一悶着あった。


 ミィにどのくらい悪いことをしたという自覚があるのかは不明だけれど、怒られるというのは分かるようで、捕まえられない高い所、お気に入りの冷蔵庫の上からその隣にある食器箪笥の上へと逃げたのである。


 そしてちょっと手近にあった箱で突かれても降りてこない。


 困った僕は最終兵器として、丁度その辺にあったゴボウブレード――ただの牛蒡です。ちょっと土が付いていたけど、包装されていたので大丈夫!――を取り出して、なんとかミィを捕まえることに成功したのだった。



 追記。足の裏を拭いている間中、ミィは「うなー」とか「ふにゃあ」とか情けないながらも可愛いらしい声で鳴き続けていましたとさ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る