第6話 ソラの日記 一月十日
家に帰ってきたとうやが今日ははかま姿の女子学生が多くて、ようやく成人の日だと気がついたよ、と言った。とうやは近くの大学の講師もやっているのだ。それで大学の大ホールを成人の日の式典ように貸し出していたらしい。
成人の日ってなに? と聞くと、十八歳になったら大人と認められて、お酒も飲めるしせんきょけんも与えられる記念日だということだった。
ふたごでいっしょに産まれたとうやとはるきはもう十八歳だから、式典には去年行ったと言っていた。そこではるきがなにかやらかしたととうやは言いかけたけど、とちゅうで頭痛でもしたような顔をして結局教えてくれなかった。いいもん、はるきに直接聞くから。
そんなはるきは祝日だというのに起きたらすぐ外にとびだしていった。
おおかた新成人のこをくどいてるんだろ、ととうや。その言葉にわたしの気持ちはずーんと暗くなる。
どうしてはるきは、あるじであるわたしをさしおいて、いつも人間の女の子とばかり遊ぼうとするのかな。わたしは家ネコだから外には出られない。とうややはるきがキャリーで運んでくれるときはいいけれど、一人で外に出ようとするととたんにわたしの足はすくんで止まってしまう。
そのことを以前はるきに話したら、それは生まれてすぐにカラスにさらわれたことがあるから、その記憶がまだ残っているのかも知れないと言われた。
自分にはそんなことはぜんぜん思い出せないのだけど、あまりにきょうれつすぎる記憶は脳がショックをやわらげるために忘れてしまおうとするんだという説明は、なっとくできるものだった。
でも、それをいいことに外で遊んでばかりのはるきはゆるせない。いつかわたしがもっと大きくなったら、絶対噛みついてやるんだから!
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