第5話 ソラの日記 一月四日
きのうでお休みは終わりだったらしい。窓から見ていると研究所にはふだんどおりおおぜいの人がやってきた。
とうやとはるきの家は高いかべで囲まれた研究所の中にあるので、とびらを開ければすぐ仕事だと、うれしいのか悲しいのかよくわからない口調ではるきが言っていた。ああいうのをぼやきというのかも知れない。
わたしはふたりのあるじなので、とうぜん働きに出る必要はない。とうやがおもに世話係で、はるきがおもに遊び相手。そして二人ともわたしのためにお金をかせいできている。
とうやはいつも朝八時半までに食事を終え、あとしまつをして家をでる。いつもデニムパンツに黒いタートルニットのかっこうで、職場ではこの上に白衣をはおるそうだ。
なにかあったらすぐ電話しろよ。
とうやはドアを閉めるまぎわに必ずそう言う。なにかってなんだろうといつも思うが、思い当たるふしはない。この研究所は世間からは「ひとく」されていて、いつもけいびいんが目を光らせているから、どろぼうや、ふしん者が入り込むすきはないのに。
はるきはだいたい九時数分前にドタバタとリビングにおりてくる。そのままねたのかよれよれのTシャツにだぼだぼのカーゴパンツ姿で牛乳だけ飲んで、じゃっ、と言ってでかけてる。上着がアロハシャツの日もあれば、上下スウェットで出社するぼうきょにもでる。
白衣を着ておけばだいたいOKというのは、はるきのセリフ。研究所というのはかなりゆるいばしょらしい。
だれもいなくなってようやくわたしの時間がきた。リビングの陽のあたるソファの上で丸くなる。こうしてうつらうつらしてるときが最高のじかんだ。
さみしくなんかないよ。いつでもオープンチャンネルで話しかければたいていはるきは応えてくれる。長話をしてるととうやにしかられるけど。
でも、今日は二人ともはやく帰ってきてほしいな……。そんなことを考えるのは、この数日ずっといっしょだったからかな?
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