第3話「契約してみたぜ‼」
「では、こちらに。」
俺たちはラートワ種の購入を決めた後、正式な奴隷の契約をするために司会の男に連れられてホールの地下へと来ていた。
地下は一本道で俺たち四人が横に歩いても大丈夫なほど広い。そして壁にはいくつのも装飾品や動物の剥製などが飾られている。
「んで、結局のところ奴隷ってどんな風に契約とかするの?」
「具体的にはするときにお答えいたしますが、簡単に言えば血による契約魔法ですね。」
「あ、やっぱ魔法の契約なのね。呪いとかじゃなくて安心したぜ。」
この世界には『魔法』というものが存在する。
簡潔に言うと、自分の体内の生命力を使って火や水を生み出すって感じと思ってくれれば大丈夫だ。
魔法と違って呪いっていうのもある。
魔法と原理は違わないけど、こっちは何かを生み出すとは違って攻撃や洗脳といった感じに生き物を攻撃するためのものである。
さらにいうと、この二つの合わせ技の呪法ってのもあるけどそれはまたおいおい話そう。
俺が司会をしていた男を契約の話をしている間、二人はというと、
「へぇ~ホールの地下ってこんな感じになってるんだ~。」
「あんまりきょろきょろするなよ。虫とかいないよな…」
こんな感じでぼーっと付いてきていた。
本当は上で待っている予定だったのだが、
「私も契約のとこ見てみたい~」
「ボスを一人にすると何をするか分かったものではないので。決して寂しいなどそのようなことではありません。えーありませんとも。」
っと駄々をこねられたので仕方なくつれてきた。
「あんまりうろちょろするなよ。迷惑かけるのはあれだし、何か壊して弁償ってなっても俺たちじゃ金がなくて返せないんだから。」
「はーい。」
「わかっております。」
そう言いつつ、シャトナは鼻をひくひくさせながら飾ってある装飾品といじってたり、オルガは剥製などが出てくる度にびっくりしてこっちの裾を掴んで来たりしていた。
これが可愛い女の子とかならいい感じにぐっとくるんだが、いかせん自分よりでかい男相手にされても何もぐっと来ない。それどころか気分が悪くなる気がする。
「付きました。」
一本道を抜けて開けた場所に着いた。
「ここで奴隷の契約をいたします。」
上のホールよりかは小さいが結構な広さがある広場で、その真ん中には俺たちが購入した奴隷のラートワ種が体育座りしていた。
未だに目が死んでおり、その目で何を見ているのか壁の一点をじーっと見つめていた。
「それでは契約を行うので代表者様の血を一滴いただけますかな?」
「ん?あぁ契約魔法に使うんだっけか。確か奴隷に血の魔法を刻む特殊魔法だっけか。」
この魔法は、呪いの類と似たような性質があるがあくまで魔法の類となっている。なんでも血を媒体に相手の生命力に干渉するとかで呪いのやり方とは原理が違うらしい。
「そうでございます。代表者様はオフィス様でよろしいですか?」
「あぁ。別にだいじょ…」
「あー‼あの子だ‼ほらオルガ。あの子がいるよー‼」
「今から契約するのだから当たり前だろう。…それにしてもあの目、最初に見た時から思っていたが気に食わないな。」
俺がさっさと進めようとしている時についてきた二人がラートワ種を見て騒ぎ始めた。
だから連れて来たくなかったのだ。
こいつらは何か興味があることがあると手が負えないぐらいに突っ走ることがあるから上手く手綱を握っていないとこっちに被害が来ることになる。
まぁそうやって騒がしいのがうれしい時もあるのは確かだけどな。
「あー今は黙っとけよ~。大事な話してるんだから。」
「ねーねー買ったのはいいけど本当にどうしよっか~ラートワなんて使いどころないよね~。」
「それはボスがしっかりと考えて…ないんだろうなぁ。何時ものことながらダメなんだろうなぁ…」
「おーい。話聞いてる~?あと、さりげなくディスったよね?俺の事、ディスったよね?」
「始まった‼オルガのネガティブ。こうなると面倒だよね~。」
「これからの食費、光熱費、武器や防具、服もろもろ…あぁ~どうすればいいんだぁ‼」
二人がぎゃーぎゃー騒ぎだして話が進まず、男も困っとようにおろおろとし始めた。
俺はいい加減頭にきて、
「いい加減にしろよ?黙れと言ったんだ。」
懐から愛用の魔法銃を取り出して二人に向けた。
魔法銃とは文字通り魔法を銃弾のように打ち出す拳銃のことである。
これは使う人の魔法の熟練度で威力や精度が変わってくる。
二人は俺が銃口を向けたのを理解すると手を挙げて「はい」と答えて黙った。
「さてと、バカな仲間がお騒がせいたしました。」
「い、いえ。それでは初めてもよろしいですか?」
「いつでもオッケーですよ。」
「それでは」と男は少女のいる中央に行き無理やり立たせて乱暴に服を引きちぎって胸のところに紋章を刻みこんだ。
「オフィス様こちらへ。」
「おう。」
俺は言われるがまま中央へ行き二人のところまで歩いた。
少女は未だに虚ろな死んだ目をしている。
服を破られたり、紋章を刻み込まれても声も上げずただなされるがままの状態であの目を続けていた。
「それでは、この紋章のところに血を一滴落としてください。」
「その前に少しいいか?」
「はい?」
俺は少女の頬に手を添えて少しばかり撫でた。
それでも少女の目も表情も変わらない。ただただ無表情に死を待つかのような灰色の濁った目だ。
「そうだな…灰色の目…うんお前の名前はグレイスだ。灰色のグレーからとった。いい名前だろ?」
男の方を向いてにかっと笑うと「え、えぇ…」とちょっと苦笑いされた。
「ということでお前はこれからグレイスだ。」
「ぐれ…いす…」
「そうだ。」
少女はかすかに声を出して俺が与えた名前をつぶやいた。
「グレイス。お前はこれから俺たちメッソーレムの家族だ。辛いこともあるかもだけど基本楽しいと思うから楽しく行こうぜ。」
「かぞく…」
少女は初めて主人である俺のほうを見た。
未だに死んだような目にあまり変わりはないが、目の奥にかすかに光が灯ったように見えた。
「ということでよろしくな。」
そう言って俺は小さい少女を抱きかかえて頭を優しく撫でた。
「うわー…ボスってロリコンだったんですね~意外です~。」
「流石にあそこまで小さい子に手を出すのは引きますね。」
「てめぇ~ら。後で覚えとけよ。」
その後、俺は言われた通りに血を一滴垂らして無事に契約はすみ、メンバーが一人増えたメッソーレム達四人はホールを後にした。
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