第2話 授業中にも君は居眠る

次の授業は古典だった。

最高にゆるい先生の最高な授業によって、早速彼は授業開始2分で目が半開きになりうつらうつらしていた。流石に早いよ。先生も引くよ。


―うちのクラスは、いわゆる「特進コース」。つまり特別に分けられたコースらしい。


ということは彼もそこそこは学業にも勤しめる人、ということなのだが、どうも普段の常時眠そうな態度からはその学力を外見で推し量れない。


ガンッ。


そう音が付きそうなほどに彼は大きく前方にヘッドバンキングした。

幸い、机とこんにちはするまでには至らなかったが大分大きく揺れた。

それでパッと目が覚めたのか「え…ここどこ…」みたいな顔で冴え切らぬ瞳を持ち上げる。


ゆっくり周りを見た彼は、観察していた私に気が付いたようだ。

その途端彼の口元が「あ…」と小さく開いて「見てた?」とでもいうように首を控えめに傾げた。多分周りが授業中であることを思ってのサイレントモードなのであろう。

彼も周りを気遣えるんだなぁ…と中々に失礼な感心を示しながら、私は断言するように彼の方を向き頷いた。


すると彼は一回真正面の黒板の方に顔を向け直してからまた僅かに首をこちらに回して私に目配せすると、


「忘れて・・・」


と口パクした。相変わらず無表情だったのでよく真相は分からなかったが、とりあえずなんか彼の方から言葉を貰ったのは珍しいことだったのでまあ私の内心は割と晴れやかだった。


私も本格的に授業に集中しようと、また前の黒板と先生の言葉に意識を傾けた。

はっきりと先生の言葉が耳に入ってくる。意識の切り替えってだいぶ大事だ。


次に意識を向けたとき、彼は頬杖(今度は支えを要したのだろう)をついて寝ていた。結局かよ。


たまには寝ないで授業受けてみたら。…あっ、次の休み時間にそれ言ってやろうかな。どうなるかな。

授業の終わりが一段と待ち遠しく楽しみになった。…の前に古典頑張ろう。

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