第70話 大海さん、孝一に話しかけるまで
大海さん視点
大海灯り、中学2年・・・
クラスで私は浮いていた。
クラスで一番かっこいいらしい悠馬君に告白されてそれを断った。
そのことがクラスみんなの反感を買ったらしい・・・
休み時間は、クラスに居づらくて、校舎の目立たない場所にいることが多かった。
校舎の壁にもたれかかってぼんやりと空を眺めていた。
「・・・空きれいだな・・・」
微かにお腹にビリビリと振動が走る・・・
50mほど となりに男子が立っていた。
何かぶつぶつ言いながら怖い顔で壁をにらんでいる。
孝一「・・・よし・・・今の感じでもう一度・・・」
何をしているんだろう?
興味はあったけれど
私はこの奇妙な おとなりさん と一定の距離を保っていた。
【一回目女子集団に助けられた後】
彼は今日も壁を殴っていた。
(助けてもらったんだから・・・お礼を言わなくちゃ・・・)
「何あれ・・・」
「ああ、あれは校内で有名な気が狂ってるって噂の・・・」
後ろを通り過ぎた女子の噂話が聞こえた・・・
急に話しかけるのが怖くなった。
私も同類だと思われてしまうかもしれない・・・
私は勇気が出なかった。
家に帰ってベットに仰向けになりながら考える。
直接言えないのなら、手紙にするとか・・・
便せんを用意して机に向かった。
・・・なんだかこれ・・・ラブレターみたい・・・
手紙作戦は保留にした。
【2回目先輩男子に助けられた後】
彼は今日も壁を殴っていた。
大海(・・・お礼が言いたい・・・)
お礼を言っただけで同類扱いされるなんてことはない。
王様だって平民が良いことをしたら「褒めて遣わす」って言うはずだ。
彼を見る。
とても真剣な顔で壁を殴っている。
それにしても・・・
どうして壁を殴り続けるんだろう・・・聞いてみたい気もしてきた。
そうだ・・・
手紙を書くにしても『名前』がわからないと・・・彼が自分宛でないと思うかもしれない。
彼は2年D組のはず・・・
D組に知り合いはいない・・・
ドキドキ・・・なんか緊張する・・・
「ん・・・壁を殴ってる人の名前?・・・ああ、名前は・・・何だっけ?」
「・・・水上孝一って書いてあるね。」
水上孝一・・・水上孝一・・・
その日家に帰ると
「・・・お帰り」
「ただいま・・・お母さん」
「・・・灯り・・・学校で何か『いいこと』でもあった?」
「・・・どうして?」
「最近、暗い顔ばかりしてたのに、今日はなんだかとても嬉しそうだから・・・」
「・・・そうかな?」
着替えてベットに仰向けになる。
「・・・いいことか・・・」
名前を知ることが出来たから?
なんだか顔が熱くなるのを感じた。
よし、手紙を書こう。
せっかくだし、クッキー焼こうかな・・・キレイにラッピングして・・・
・・・より一層・・・ラブレターっぽくなってしまった・・・
$$$
ヤジが聞こえた。
「やーい、やーい、妖怪壁殴り」
孝一「・・・小学生みたいな からかい方 しないでください・・・ユズハ師匠」
ユズハ師匠は校庭の壁の上に飛び乗って、声をかけた。
ユズハ「中学校か・・・懐かしいわね・・・あの頃の私は清楚で可憐だったなぁ・・・」
孝一(・・・今は?)
ユズハ「それにしても・・・孝一君がクラスで浮いているというのは事実のようね・・・廊下ですれ違う時、女子が微妙に距離をあけるもの・・・」
孝一「・・・気づいても言わないで欲しかったです。」
こっそりのぞいていた大海とユズハの目が合う・・・
大海はびっくりしてその場から逃げていった。
ユズハ「・・・今、可愛い女の子がじーっと私を見ていたわ・・・」
孝一「・・・」
ユズハ(・・・美しい私に見惚れていた?)
孝一(・・・すごく見当違いなこと考えてそうな顔してるな)
ユズハ「ああ、あんな感じの可愛い子がうちの弟子になって欲しい。さあ、ナンパして来い、孝一」
孝一(・・・女子に距離あけられてるって言った後にその命令は酷過ぎる気がする・・・)
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