第67話 誰にでもできる受流し講座




ユズハ「えいさ」



ゴッ



何かが孝一の顔面に命中する。

大きなゴムボールだった。

本日の修行は・・・『ドッチボール』です。



孝一(・・・もはや、武術関係ない気がする・・・)




ユズハ「孝一君・・・想像してみて・・・いつもは体育の残り時間でしかできないドッチボール・・・今日は開始からドッチボールだった・・・」



孝一「・・・」




ユズハ「テンション上がる~」

孝一(・・・いや全然)




大海「・・・ユズハ師匠・・・私はドッチボール苦手です・・・」

大海は申し訳なさそうに小さい声で話す。


ユズハ「・・・わかるわ・・・私もあなたたちと同じくらいの年の時は ・・・『か弱いユズハちゃん』だった・・・」

孝一(絶対嘘だ、絶対嘘だ)




ユズハ「・・・でも、大丈夫・・・そのうち人に当てることが病みつきになるわ」

大海(・・・それはそれでどうだろう・・・)




【真田流ドッチボール ルール説明】

半径5mの円に一人が入る。

円の中央から大きく動かないこと。

他の2人が円の周りからボールを投げて攻撃する。


当たったらアウト

受流しセーフ


受流したボールを別のもう一人に当てることが出来たらボーナス点




ゲーム開始

円の中心:孝一

孝一「痛い」

孝一「痛い」


孝一(正面向けないから、両手で受けられない・・・ユズハ師匠・・・モーションなしですごい球投げてくるな・・・)

孝一はユズハ師匠の方を向く。


ユズハ「あら、いいのかしら?大海ちゃんの方を意識しなくて」

孝一(・・・)


孝一がちらりと大海の方を向くと、ユズハ師匠のボールがヒットした。

孝一「痛い」




円の中心:大海

ユズハ「ふふ・・・大海ちゃんにも容赦はしないわ・・・」

大海(・・・怖い)


孝一(・・・大海・・・こっちを見てないな・・・当てるのも気が引けるし・・・お尻にでも・・・)

孝一のゆるいボールは大海のお尻にぽよんと当たった。


ユズハ「・・・孝一君・・・それはセクハラだわ」

孝一「なんでだよ」





円の中心:ユズハ師匠

ユズハ「さあ、どこからでも来なさい。」


孝一はユズハ師匠の後ろから全力でボールを投げる。

ユズハ師匠は流れるような動作で横を向く、ボールはユズハ師匠を避けるように反れて、大海の方へ流れて大海の持つボールに当たる。



孝一(・・・後ろ死角だったはずなのに・・・)




なぜ、後ろからの攻撃に対応できるのか?

真田流の第一原則は『先読み』

あなたたちが次にどうするか考える・・・ボールを投げるタイミングを想像する・・・イメージとしてそれは湧き出てくる・・・その流れに沿ってボールの軌道を変える・・・


これが『受流し』よ





ユズハ「・・・『か弱いユズハちゃん』だった私は・・・放課後いつもドッチボールと受流しの練習をしていた・・・熊と・・・」




熊と?




ああ、ついに昔話じゃなくて現実にも登場しちゃったか・・・熊・・・

とその時思っていた・・・


その後本物を見るまでは・・・

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