第13話 大海さんと母が会う話
私には息子がひとりいる。
ある日を境に息子はただひたすらに壁を殴るようになった。
たまに帰りが遅くなったかと思うと壁の前で泥のように眠っている。
私はどこで育て方を間違えたのだろうか。
私の仕事が忙しくてあまりかまってやれないのは大いに反省すべきだが、息子は学校でちゃんとやれているんだろうか・・・
この間の三者面談では・・・
先生「息子さんはアレですけど、最近は数学の授業も真面目に取り組むようになって良かったです。」
孝一「アレってどういうことですか」
母(アレってどういう意味?)
今日は珍しく仕事が早く終わったので、のんびり商店街で買い物をしてると
可愛らしい女の子が買い物をしている姿が目に付いた。
「大海ちゃん今日もお使いえらいわね。この大根サービスしちゃおうかしら」
大海「・・・いつもありがとうございます。」
母(大海?・・・この名前どこかで・・・)
母「あの・・・あなた、真田道場に孝一と通っていたっていう大海さん?」
大海「・・・ええ・・・そうですけど」
母「あの・・・申し遅れました、私は水上孝一の母です。」
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商店街から外れた場所にあるちょっと洒落た喫茶店・・・
私がたまにのんびりしたいときに通う場所だった。いきなり連れてきて、大海さんはやや緊張しているようだった。
母「悪いわね、付き合ってもらっちゃって・・・」
大海「・・・いえ、かまいません。」
大海(・・・うう、いきなり孝一君のお母さんとこんなことになるなんて・・・)
母「あなたのことは孝一からよく聞いているわ」
大海(・・・・
++++++++++
孝一「道場の後輩に女子がいてさー」
母「へーその子の可愛い?」
孝一「べ、別にそういうんじゃないから・・・まあ、結構可愛いかな?」
母「へー」
孝一「馬鹿、そういうんじゃないから」
++++++++++
・・・・みたいな感じだろうか)
母「なんでも・・・
++++++++++
孝一「道場に後輩がいてさー」
母「へー、どんな子?」
孝一「・・・結構優秀だな」
母「あなたとどちらが優秀?」
孝一「馬鹿そんな入ってきたばっかりの奴に負けてないし、負けてないし、道場内で早くも立場ないとかそういうんじゃないから」
母「へー(立場ないの?)」
++++++++++
と話していたわ。」
大海(ええ・・・)
大海(どういうこと・・・というか孝一君、立場とか気にしてたんだ・・)
母「ごつい大きな男の人だと想像していたけれど、こんな可愛らしい女の子だなんて、もしかして、道場に通っていたのはあなたのお兄さんかしら?」
大海「・・・通っていたのは私です・・・」
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母「あの変な意味にとらないで欲しいのだけど、孝一はあなたから見てどうかしら・・・」
長い沈黙・・・大海さんは意味をはかりかねていた。
大海さんは顔を赤くして俯いていた。
大海「・・・・・・わ・・私は・・・その・・・」
母「・・・・孝一は、その壁がらみで変わったところがあって、そういう噂があることも知っているわ・・・あの子もそれを察してか普段の交友関係を話そうとしないの・・・その普段の孝一がどういう生活をしているか他者の目で知りたくて・・・」
大海(・・・そうか、普段壁ばかり殴っているものね・・・お母さんも心配しているんだ。)
大海「・・・水上君は・・・多少アレな面もありますけど、ちゃんと接してくれますし、普通にいい人です。前に危ないところを助けてもらったこともあります。」
大海「・・・・」
母「・・・・」
母「・・・そう、なんだか安心したわ・・・」
夕食の食卓にて
母「・・・今日、大海さんに会ったわ」
孝一「へー・・・」
母「あなたのこと・・・多少アレだけど、いい人だと言っていたわ。」
孝一(多少アレってどういうこと)
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