戯勢
告白部の夏合宿が終わり俺達は帰ることになった。俺は、というと月橋とシガネの荷物を持つのかと思っていたが
さすがに気を使っているのかシガネも月橋も自分で持つと言い張っている。
HPはというと、既にフル回復している。精神的にも俺はトラウマをすぐに忘れるという特技があるため
思い出そうとしなければ蘇らないため俺としては気を使われるようなポイントはないのだが
それでもまあ、持たなくてもいいというなら持たない。働かなくてもいいなら働かない。そのせいで働かなきゃいけなくなるのは
もっと勘弁なので色々問題が起こったら猿飛も居るんだし猿飛に押し付けよう。
それでその猿飛だが行きは俺達とは別に来たが帰りは一緒に俺達と行くそうだ。ということはつまり俺が
猿飛とリリス先生まで運ばなければならないのだ。何で働かなきゃいけないのか。などとは言うまい。
それを考えたら負けだろう。そもそも何で猿飛は魔力が少ないんだよ。そのせいで俺が車に魔力を供給しなきゃならないんだぞ。
と言う事で俺達は今、坂道を下っている。俺が思うに行きよりも長く掛かりそうだ。下りなのだから楽なはずなんだけど
猿飛と月橋とシガネとさわやかイケメン君とリリス先生がもう、ばりばりしゃべりまくっててちょっとムカつく位だ。
まあ、そんなんで話しまくってると自然に歩く早さも遅くなる。俺はそういうのに入るのも嫌いだし
歩く早さをあわせるのも嫌なのでもう、ホントいらいらする。前日の事も考えてしまったりして
いらいらばかりしている。胸糞悪い中途半端な感情が胸の中で行ったりきたりして、吐き気さえする。
その苦痛な時間が2時間ほど続きやっと、車にたどり着いた。もう、働きたくないとか考えるのもいやなほど
疲れたのでおとなしく魔力を供給する事にした。するとその素直さに驚いたのか魔王先生が感心したような声を出す。
「お、服部。やっと人のために働く事のよさが分かったか。」
「そんなんじゃないですよ。俺自身さっさと帰りたいんで。まあ、それだけなら跳んで帰っても良いんですけど
どうせそれだと後で長々と御説教を受ける事になるんでしょ?働かない為に努力して結局働かなくなるぐらいなら
はじめから極限まで働かないように働くってのが俺の座右の銘なんで」
俺が生意気にも言い返すと先生は「がっはっは」と笑って俺の頭をなでた。
そして俺は全員が車に乗った事を確認して魔力を供給し始める。俺は後ろに乗った5人を見てふと魔力供給率を
下げてみたくなった。何故だかこの光景を少し見て居たくなった。
先生は、「ふっ」と微笑むとその気持ちを汲み取ったのか何も言わずに車を運転し始めてくれた。
車は空を飛びゆっくりと車が動き始める。俺は、両手を頭の後ろに添えると後ろをそっと眺めた。
そして、ふと考え始める。
今年中にこの世界は神に消される可能性が高い。そして今日が7月の7日。大まかに考えて後5ヶ月ちょっとって所だろう。
それまでに何か行動を起こさないといけないのは分かっているが、魔王先生のいう話だと
今現在、俺たちには何も出来ない。だとしたら何も出来ない上で、後々必要になって今出来る事はないだろうか?
例えば力を手に入れること。神はたぶんかなり強い。もしかしたらステータスという概念も何の価値も
もたらさないのかもしれない。ステータスをはるかに凌駕するレベルの力だとすれば
俺に出来る事は最大限の力を手にする事。幸い俺にはスキルを盗みステータスを盗むスキルがある。
それを使えば何かしら手立てはある。だが、俺の聞く話によるとこないだのような強いモンスターは
もうこの世界には存在しないらしい。それを考えると野生のモンスターを殺してもあまり意味はない。
だとすればもっと早くて良い手段をとらなくてはならない。
・・・・駄目だ思いつかない。よし、俺の強さの要因から考えていこう。
俺の強さの要因はステータスとスキルだろう。ステータスの点ではこの世界で一番のものだ。
そしてスキルはというとスキルの多さもまた強さの要因だ。龍のスキルとか色んなスキルがある。
それを得ることになった原因は暴食スキルだろう。そしてそれと同じぐらいに強欲スキルも俺の中では重要視されている。
そして思考能力の点では腐敗。暗殺の点ではSD能力の高さだろう。腐敗のようなスキルが別にあるのかは分からない。
分かっているのは強欲、暴食に並ぶスキルがまだあること。先生が持つ憤怒。リリス先生の持つ嫉妬。
嫉妬は自身の魔力を他のステータスに一時的に変換するものだ。
そして他に七真罪の子である猿飛がもつ七真罪スキル。無知、勇気、存命、団結、向上、虚飾がある。
これらはかなり強力だ。ん?良く考えたら七真罪なのに六つしかないな。聞いてみるか。
「先生、七真罪って六つしかないですよね?後一つは何なんですか?」
「あ、ああ。それがな、七真罪の7つ目のスキルは無罪。罪を持たないことなんだが、その無罪のスキルだけは
彼が持ってないんだよ。だが、この世界にあることは間違いないんだがな。」
俺は軽く礼をしてから考え始める。
無罪。罪を持たぬことが罪。その考えは間違ってないのかもしれない。まあ、それはどうでもいいが
問題は誰が持っているかだろう。だが、それを考えたところで意味はない。
そして、七大罪の対となる七美徳のスキルも存在する。もしかしたらそれらを全て得ることが出来れば
俺はかなり強くなれるだろう。神ともまともに戦えるかもしれない。
色欲、怠惰、傲慢。これらの七大罪スキルも所持者が居るのだろう。七大罪の子は
話しによると色欲のスキルを持っているそうだ。だとしたらその人に頼んで七大罪を得るしかない。
後の二つはスキル欄から探し、見つからなければ持っている人間を探すしかない。
そして、いつかは猿飛にも頼むしかない。七真罪をも得ることが出来ればきっと力が手に入る。
そしてもう一つ、それらのスキルをLVをマックスにしなければならない。
それが出来れば神にも匹敵する力が手に入るかもしれない。
そのために足掻くしかない。あと、5ヶ月。これがぎりぎり。もしかしたら明日かもしれない。
だから、すぐにでも動かなければならない。だから進むしかないのだ。考えをめぐらせていると無意識のうちに魔力の供給量が増えやがて行きに集まったところに戻った。
その頃には、子供たちは眠って・・・・・なんてことはなくもうバリバリ元気だった。
それどころかこの後、遊びにいこうだとか言い出していた。もう、ばっかじゃないの?大人の人が止めないとやばいよ。
なんて思っていたらリリス先生ものりのりでまあ、それだけなら分かるんだがまさかの魔王先生も
賛成してしまって結局止めるまともな大人が居なくなってしまった。もう駄目だなこのグループ。
「ハトも行くでしょ、打ち上げ」
「は?いかねぇよ。てか、打ち上げってことになってたのかよ」
てっきり夏休みなんだしとりあえず遊びたいから何でもいいや的なのりかと思っていたら一応打ち上げという大義名分が
あったらしい。だがまあ、そういうのはめんどくさいので即断る。当然だ。君子危うきに近寄らず。
つまりぼっちには君子の才能があるに違いない。全国のぼっちには国を作る事をお勧めしよう。そうしよう。
もっと考えればナマケモノが次世代の文化を発展させてくれるんだから働かず、ぼっちでいる人間は
新世界の王になるとしか考えられない。全国の引きこもりニートさんたちには新世界の王をお勧めしよう。そうしよう。
それはそうと月橋は崩れるようなしぐさを見せてきた。何?俺が行くとでも思ってたの。
行くわけないじゃん。元々打ち上げって何?打ち上げちゃうの?何でもかんでも打ち上げりゃいいってもんじゃないでしょ?
打ち下げとかないの?どっちにしろいかないけどさ。
とかまあ、いろんなことが頭では思いつくんだが口には出せないのがぼっちの特性である。
つまりぼっちは、論文とかを書けば多分最強。全国のぼっちは君子になってから文で命令して喋らなくてもいいようにすればいい。
俺とてその考えに行き着いた現在、ちょっと興奮している。俺やばいな。天才かも。
「何で行かないの?」
「いや、どう考えたって俺が行く意味無いだろ?実際今回のことだって俺は何もしてないし。
それに俺はそもそも告白部の部長と顧問に入部届けを出してないんだから形式上は部員じゃないしな。
でも先生に指示されてるから部員って言うより手伝いって言ったほうがいいかもな。
だからまあ、その勝負、俺は全くの部外者な訳だからな。成宮の場合は次の勝負の対象な訳だし全くの部外者じゃないけどよ。
つまり打ち上げに俺が行く道理はないわけだ。それに行ってもこんな面倒私にな奴がいたら空気を悪くするだけだ。」
若干、悲しそうな顔をする月橋を完全に論破する。あれだな、ぼっちは一度喋るとスッゴイから弁護士も目指せるな。
弁護士になってやってないとか別にして全員無罪にしてその分犯罪者どもから金を巻き上げる事もできるな。
後々、警察に通報して犯罪者達に復讐に遭ってそれにイラッときてそいつらを皆殺すまで有り得る。
俺に手を出した時点で死を覚悟するべきなのは明確だしな。
さて、とりあえず完全に論破したし帰って飯でも食うか。こう見えて自炊には自信がある。
何故なら一生ニート生活しても困らないようにする為だ。すごいな俺。先のことを見て行動できている。
こういうのを将来の事を考えた行動っていうんだよね?
「はっはっは。甘いな服部。いいか?魔王の前では無理が通るのが当たり前。そして無理が通れば道理は引っ込むのだよ。
無条件にお前は打ち上げに行かなくてはならないのだ服部。」
「何て無茶苦茶な先生だ・・・・・・・・。でも先生。俺は既に先生と同レベル以上の力を持っています。
なので、先生に無理を通す力があるなら俺にだって無理を通す力ぐらいあるはずですっ」
「なっ。く・・・・さすが私の教え子。中々頭の切れるめんどくさい奴だ。だがな、舐めるなよ。
私には物理的な力だけじゃない。権力がある。世の中権力の時代なんだよ。武力行使に意味など持たない。
だから君には無理を通せない」
やばい。この先生無茶苦茶だ。この無茶苦茶さにはちょっとひかざるを得ない。なにこの人大人げない。
権力とか何とか。ただ、筋が通っているので反論が出来ない。
他の奴らも呆れた表情で俺と先生を見ている。ただ一人リリス先生は笑ってるが、てかもうこの人先生とか呼ばなくてよくない?
先生とはほんとに思えないんだけど。
「先生、甘いですよ。いくら権力で脅かされようと逃げてしまえば何の問題もないんですよ。」
「っな。確かに。」
俺はそういうとぱっとジャンプして逃げようとする。しかし先生に足をつかまれた。
「魔王に歯向かうとはいい度胸だが捕まったからには今日は朝まで付き合ってもらうからな」
不敵な笑みを浮かべる先生を背後から見て俺は逃げる。実を言うとさっきのは分身。
しかもかなり高度な奴だしあの一瞬だと先生でも見抜けないはずだ。その間に逃げてしまえば問題ない。
やばいな俺。怪盗の才能あるかも。いや、これはもうどうかんがえたってスーツ着るしかない。
ていうか怪盗って何でアニメだと皆スーツ来てんの?あれスッゴイ動きにくいんだけど。
まさかあれか?あえて動きにくい服装で相手を油断させておいて実は特訓のおかげでスーツでも問題なく
動けるようになってるパターンか。そうに違いない。じゃあ俺もその練習をしてかっこよくマジックでもして
怪盗になるか。そうすればもてるに違いない。いや、怪盗にも女ったらしなサルみたいなのと
クールな手品師みたいなのと二種類いるな。でもまあ、もてなくてもいいか。
と言う事で俺は華麗に帰っている。というか既にもう家の前だ。集合場所からジャンプ一回で軽々とついた。
家のドアを鍵で開けて入ろうとしたところで気付く。何にって鍵が開いていることにだ。
やばい、泥棒か?だとしたらもうほんとに怪盗になってギガダイヤモンド的なの探して
金を稼ぐしかないな。と思って警戒しながらそれと犯人を見つけたら殺してしまいそうな自分を抑えながら
そっとドアを開ける。すると驚く事に少女?と思われる人の靴が放ってあった。
まるで遊びたいからさっさと靴を脱いで脱ぎっぱなしだから母ちゃんに怒られる子供みたいじゃないか?
俺の場合、遊びたい人が居ないから毎日きれいにそろえてたらむしろ逆に母さんに心配されて
挙句の果てには嘘ついてでも外に行かなければならなくなった。というまたしても微妙な記憶が残っている。
でもまあ、とりあえず靴をそろえておいて警戒しながら進むことにした。
するとリビングについたあたりであっちの世界のテレビによく似た魔具「ティレビ」が
きっちりとついていてそこにはだらけている少女が一人と何故かあっちと全く同じように作られている
スナック菓子の空き袋が数個、放ってあった。
てかさ、テレビもそうだけどさすがにスナック菓子があるってのはおかしいと思うんだよね。
尋常じゃない適当さ。何でここ異世界なの?っておもうぐらい適当。それぐらいなら異世界にしなきゃいいのに。
何でここって異世界って設定なの?ホントゲームだったらすごい雑なゲームなんですけど。
で?こいつ誰。こいつ誰?そう思ったことってあるよね?例えば学校行くときとかに多分近所の人であろう人に声かけられたときとか。
あれが「いつもありがとうございます」とかだと更に困る。何やったか思い出せないから俺も感謝すべきなのか
あっちが一方的に感謝すべきなのか全く分からなくなる。声をかけて欲しくないつながりで言えば
コンビニの店員な。キャンペーン期間中とかでくじが引けるとかの時はホントきつい。言われるがままに動いてしまう。
因みにそのコンビ二もこの世界に存在する。なのでもう最近は諦めるしかないとまで思っている。
・・・で?こいつ誰?
「おお、お兄ちゃん。遅かったじゃん。早く晩御飯作ってよ。」
「・・・・・・・・・・・?は?はぁぁぁ?」
何、こいつ。急に変なこと口に出し始めたぞ。そのせいで変に大声出しちゃったし。・・・駄目だ。
全くついていけない。何?そもそもこいつ誰?まあ、それは分からないとしていやいや分からないとかその時点で駄目でしょ?
は?えっと・・・・・・整理しよう。こいつが行った事を整理すれば何か分かるかもしれない。
まず一つ目の単語、「おお」だったな。まあ、これには深い意味はないだろうけどこの感じだと何か
やりながら気付いたら待ち合わせ相手が来てた時にいうような台詞じゃん。
まあ、いい。次の単語。「お兄ちゃん」・・・・・。はぁぁぁ?
意味わかんねえ。そもそもこの世界生まれの人間じゃないし。それにあっちからこっちに来るとかかなりムズイはず。
何せこことあっちは他の異界よりも密接度が高いから行き来するのが難しいはず何だけど。
だとしたら人違いだろ?でも待てよ。人違いで家に入り込まれるとかそのほうがやばい。
ならこいつ誰?
「えっと・・・・お前誰?」
「・・・あ、そっかお兄ちゃん知らないのか。でもまあ、説明、めんどいからとりあえず晩御飯作って。
ちょうどスナック菓子もなくなったし早く。」
・・・聞いた自分が馬鹿だった思う。駄目だ。こいつは完全に駄目だ。めんどくさい。関わりたくない。
ていうかもうめんどくさいので晩御飯つくるか。あれこれ言ってるがホント無駄だと思えるめんどくささ。
俺はキッチンに行くと卵とご飯とケッチャップとその他もろもろを使ってオムライスを作った。
まあ、このぐらいの料理ならお手の物だ。だが、よく考えると卵を割るのとかよく出来たなと思う。
力の加減が普段は出来ないのに意識してないときに限って出来ちゃうんだな、これが。
と言う事でものの30分で完成した。ご飯は俺のもろもろの魔力で炊飯器型魔具に魔力を一気に注いだ為
速攻で炊き終わったしそのほかもちゃっちゃとやってしまえば簡単なものだった。
不本意ではあるが二人分のオムライスを盛り付けなぞの少女にスプーンを添えて渡す。
「お、オムライスか。まあ、微妙だね。でもお肉がいいな。ステーキとかハンバーグとか
お客さんをもてなすときにはそれ相応のことをしなきゃだよ、お兄ちゃん。
あ、それに妹にも優しくしなきゃ。妹の好みとかを考えて妹が喜ぶようなメニューにしないと駄目だよ。」
いきなり文句をたらたらといってくるなぞの少女は、文句を言いながらも食べている。
だが、食べてもらえてうれしいとかはない。そんなことより話してもらいたいのだが。
「・・・で?お前誰?」
「お兄ちゃん、さっきからそれしか言ってないじゃん。生き別れ?みたいな形式上の妹との再開に
それはないんじゃないの?」
何、こいつうざい。しかも顔は結構というか無茶苦茶可愛いから殴ったり出来ないのが更にいらって来る。
しかも、こいつ俺と同じで魔力が規格外だ。MPは∞だしMNも俺とそう変わらない。
ほんとに警戒対象になりうる人物だ。
「で・・誰?ほんとに答えないと怒るぞ」
「・・・・・・・・あーあ。分かったよめんどいな。いい?めんどくさいんだから一回で済ませるから。
二回は絶対言わないよ。
お兄ちゃんは、運命の子『イザナギ』でしょ?でもって他に『イザナミ』は2人いるんだけど
私はイザナギの妹・・・・まあ、結局はイザナミなんだけど他のとはちょっとちがくて
私は本当の妹って言うかもっと言うと炎鹿の妹じゃなくて服部氷馬、神名、|伊邪那岐(イザナギ)の
妹の|伊弉冉(イザナミ)なわけですよ。」
「待て、神名って何だ?」
「あ、ああ。炎鹿って言うその体の持ち主は運命の子じゃん?でもさ、お兄ちゃんは違うんだよね。
お兄ちゃんは、神様なんだよ。まあ、神様の中でも嫌われちゃってるから神様に狙われてるんだけど。
ああ、因みに言うとお兄ちゃんは|濾鬼(ロキ)の策略によって体を失っちゃったから
運命の子である炎鹿さんの体に入っちゃったんだよね。それがさあ、もうスッゴイの。
お兄ちゃんの体とこの人の体瓜二つでさ。お兄ちゃんの体再生したからとりあえずこっちに入って。」
・・・色んな頃いっぺんに言われたな。まず整理しよう。という間もない。
この自称妹はぶつぶつと何かを言った。するとだんだん意識が薄れていって・・・・・・・。
ん・・・・・。まだ視界がぼんやりしている。体にも幾分か違和感がある。
だがああ、とりあえず動ける。くるりと周りを見渡すと自称妹がいた。
「よし、お兄ちゃんはとりあえず戻ったね。あ、炎鹿さんは月鴉さんの指示で神様のところに連れてったよ。
・・さて、じゃあ説明を続けるよ。私とお兄ちゃんの関係はというとまあ、実際血はつながってないけど
そもそも神様同士血がつながってるなんて事ないしね。だから紛れもなく妹だよ。
で、私の名前は神名だと伊弉冉その名前はやだってことでザナミって名前になってる。
お兄ちゃんは今までどおり氷馬だけどね」
何だか分からないが俺はまた厄介ごとに巻き込まれているらしい。俺はオムライスを完食し、ザナミの皿を受け取り洗い物をする。やばいな、自然に働かされている。
しかもザナミとか言う奴はそれが当然のようになんの躊躇いもなく振舞っている。
それにしても、妹だとか神だとか信じがたい話ではあるのだが実際何となく体の感触も違うしステは同じだけど
別の体っていう自覚はある。だがまあ、それで信じられるかといえばまた別の話だが色々ややこしくなるし
ホントかどうかなんて確かめようがないからとりあえず分かる事を整理してみよう。
俺はどうやら神らしい。だが濾鬼とやらにはめられ体を失った。そして魂は運命の子で更に俺と瓜二つの
炎鹿の体の中に入っていった。多分、ちょうど新しい人格を作成していた炎鹿も無意識のうちに
自分の人格だと錯覚したのだろう。それで俺は今まで氷馬として過ごして来たが今頃になって神としての妹に当たる
ザナミこと伊弉冉が俺のうちにやってきて俺の体を再生して俺の魂をそっちに移してくれたわけだ。
ていうか、そもそも俺が原因ってのは変わらないけどその原因が運命の子である炎鹿のせいじゃなくて
俺が神で、追放?的な感じで濾鬼に狙われてるからこの世界が終わるのか。申し訳ないな。
あ、でも神の体になったってことはもしかして力が増強されてたりするのか?と思ってステをみてみたら
何にも変わっていなかった。種族も変わらずじまい。神の体って意味無いの?あ、あれだ。久しぶりに
この体を使ってるから少しづつ回復しないと危ない的な感じのだ。多分そうだ。
そういえば、伊邪那岐って大和神話?での始まりの神的な奴だったと思う。何?俺って始まりの神なの?
いやあ、それはありえる。俺の怠けることへの執着は文化発達を0から始められるレベルだからな。
「はい、じゃあ質問は、ないね、はいじゃあ私遊ぶから」
「おい、あるっつぅの。そもそも一番、始めっから意味が分からん。俺はそもそも何年生きてるんだ?」
「え?ああ、今お兄ちゃん何歳だっけな。・・ああ、たしか16歳か。だったら16年だよ」
「少なっ。俺って神なんだよな?しかも始まりの神だよな?伊邪那岐って?」
「ん、ああ違うよ。お兄ちゃんは137代目伊邪那岐だから。確かに伊邪那岐は世界を作った神の一人だから
その子孫であるお兄ちゃんや跡継ぎ不足によって孤児院から引き取られた私の地位はかなり高いんだけど
まあ、同じく137代目の濾鬼に敵視されちゃってるしね。だから神様として天界に行っても
神様達に攻撃されるだろうな。まあ炎鹿さんみたいな運命の子達はそういう神様達の争いに人が巻き込まれないように
お兄ちゃんが力を与えた人たちだから神様の阻害を受けないんだけどでもまあ、神様の|排除(デリーター)魔法は
運命の子でも継続的に受けると消されちゃうけどね。」
・・?運命の子には俺が力を与えた?意味が分からない。俺がそんなことを?そもそも記憶が何にもない。
神だったときの記憶はない。だからそれが嘘かホントか全く分からない。
「えっとじゃあ、何で嫌われてんの?」
「ああ、濾鬼って奴さ、超面倒くさいんだよね。派遣だの派閥だの権力だの神様の伝統だの。
で、私とお兄ちゃんは普通に神様の教えだの何だのめんどくさいから平和に生きていこうとか思ってて
それで濾鬼にイラッと来られちゃった、みたいな?」
「そんなことで体消されるのかよ。どんだけキレやすいんだよそいつ。ていうか俺、記憶がないんだけど。
神のときのこととかまったく覚えていないんだけど。」
「まあ、そうだろうね。でもまあ、どうしようもないし。だからお兄ちゃんは私を養いながら
あっちが攻撃してきたら対抗できるようにするんだね。お兄ちゃん、まだ完全に神の力戻ってないし。
進化すれば少しは戻るんだろうけど。それ以外で力を引き出すにはあれだね。神札、あれ持ってるでしょ?
あれを使えば一時的に神のときの力を引き出せるよ。お兄ちゃんのは確か払、って書いてあったっけ。」
養う?何で?そんな事しなきゃいけないのか分からないがそんなことよりちょっと濾鬼とか言う奴ころしたい。
ホント何なの?平和でごろごろと暮らしたい=怠けたい=進歩なのにそんな感情を持っただけで
体を消すなんてマジうざい。ホントくたばれよ濾鬼。
まあ、それはともかくやっぱり神の力が戻ってないのは分かったな。でも自然に戻るんじゃなくて
レベルアップしなきゃいけないのが納得いかないんだけど。
進化か、後3レベルか。長いな。特にこの世界には強い奴居ないしな。まあゆっくりでいいか。
「何で養わなきゃいけないんだ?出てけ。俺は人のために働きたくないんだ。」
「えー。お兄ちゃんのケチ。昔から私に厳しかったのは確かだけど昔はそんなに腐ってなかったよ。
ていうかもし私を養ってくれないならこの世界を壊しちゃうだけだし。この世界は私のものだからね。
あ、だからゲームとかもあるんだよ。お兄ちゃんが作って発展したアースのゲームはマジよかったからね。
だからそれをまねしてゲームとかもう色々アースにあるものがある世界にしたんだよ。」
おい、雑な設定作ったのはお前か!!!仮にも妹だとしてこんな妹が居るだなんて恥ずかしいよ。
てか、俺が住んでいたであろうアースは俺が作ったものなのだと始めて知った。
まあ、それはともかくこの妹の言ってる事は通りもくそもないようなことなのだがよく考えるとこの世界を
壊すという事だけは現実味を帯びていた。
「そ・れ・に、血はつながってないしそもそも私は普通の世界の孤児院から引き取られて神の称号を与えられたけど
でもまあ、一応たった一人の可愛い妹だし、養ってくれるよね?」
「・・・・・・・・・ああ、分かった分かった。」
「よし、交渉決定。じゃあ、毎月お小遣いは3万円でお菓子とマックスコーヒーを毎日必ず用意しておく事。」
「・・・・・・・・は?」
あまりにも理不尽な要求に俺は何も言えなかった。そもそもこの世界は円の制度なのだが
その三万円はまあ、これもまあそこそこというかかなり楽に調達できるのだがそもそも推定で中学生ぐらいの年齢だと思われる
少女に3万円も毎月渡してもいいのだろうか?勉強はまあ、思考能力があれかもしれないがでもまあ、
子供の頃にゲームやらアニメやらテレビやらをたくさん与えるのは危ない気がしなくもない。
それを裏付けるようにお菓子とテレビを与えただけでこの少女はほぼだらけモードに入っていたのだ。
それですむならいいが問題は毎日お菓子とマックスコーヒーを用意する事。お菓子は安いし買えるが
それを買うとなると買い物に行かなければならない。今までは諸所の討伐以来でゲットした食料で食いつないできたが
しかしながらお菓子は売っているものを買うしかない。マックスコーヒーもまたしかりだ。これはまあ
コンビニにも売ってる。というかこの世界は不思議な事にマックスコーヒーが色んなところで売っていて
かなり浸透している。まさか、それもザナミの仕業?そこまでして自分の理想的なだらけ空間を作る為に
力を尽くすとはちょっとすごいな。まあお金に余裕もあるし妹だしかなり可愛いし養ってやってもいい。
それにこいつ体力も俺並だし魔力系も俺並なのに防御、攻撃、スピードは、人よりは少し優れているが
それでも俺からすればかなり低い。これが普通の世界の孤児院から連れてこられた、元は普通の人間ということを
裏付ける事なのだろうか。
「分かった。じゃあ、毎週日曜日にスーパーに買い出しに行く。さすがに野生のモンスターの肉は食べさせられないしな。
だから、小遣いは渡すしお菓子云々も出来るだけ飲む、そのかわりその買い出しに付き合え。
そのときにお菓子も買う。これでどうだ?」
「・・・・・・・うん、分かった」
ザナミはしぶしぶ受け入れた。そしてその日が終わり、夏休みが本格的に始まった。やっと仕事から解放されたのである。
無茶苦茶うれしい。やることないしザナミの相手でもしてやろう。今日は機嫌がいいからな。
それで、そのザナミだがほんの数日前まで家になかったティレビを使いゲームをやっている。
あ、詳しく言うとネトゲをやっている。この世界にもネトゲがあったんだな、と思うはずだったが昨日、衝撃に事実を
もういろいろ言われまくっちゃったせいでなんであるのかも見当がつくしそもそもそんなこと考えまいとしている。
要するにこの世界がゲームっぽいのもザナミの趣味。そしてこの世界はファンタジーゲーム要素と
アースの文化やら色々で構成されていてアースにあったものは基本色々あるのだ。
例えばジャガイモを薄くスライスしてあげたチップスとか茶色か焦げ茶色っぽいしゅわしゅわした飲み物とか。
それに携帯とかスマホとかもある。これもザナミの趣味で創られているからというだけで納得できてしまうから怖い。
俺は、朝起きたばかりでまだ目が覚めていないので顔を洗い「ふぁぁ」と欠伸をする。
久しぶりにこんなゆっくり寝たかもしれない。1学期はずっとその日の食料はその日のうちに調達してたから
毎朝、3時おきで狩りに行ってたんだっけ。今思えば地獄の日々だったな。
ふと、そんなことを考えながら俺は、いつからか家にあるベッドに座る。どうやらベッドもティレビも
その他もろもろもう色んなものが買い足されているようだった。一体この代金はどうしたのか?
「おい、ザナミ。この辺の家具ってどうやって買ったんだ?」
「え?ああ、金庫があったから開けてお兄ちゃんのお金で買っといた。どうせ私が住むなら必要になるし
別に問題ないでしょ?だって神様って言っても私、天界から追放されてるからお金とか出せないしね。
だからお兄ちゃん、頑張って働いて!!」
うわぁ、こいつ駄目な人間・・・神様だ.こんな駄目な神様が作った世界なら多少理不尽な事があっても
納得できてしまう。あれだな、廃神だな。あ、でも俺は一応それのお兄ちゃんらしいから
何とかしなきゃならんのか。それにしても今現在もだっらだろ寝転んでお菓子をたべながらゲームやってるしよ。
もう、この怠けっぷりは病的だな。何とかならんものか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
あ、よくみたらこいつ怠惰のスキルを持ってる。しかもカンスト。やばいな、もしやそれでこうなってるんでは?
怠惰が何なのかみてみると怠けるときと本気を出すときに明確な差を設ける。そのことにより怠けるときは
より怠け、本気を出すときはその分ステータスが上昇し、友好オーラを発する。だ、そうで
俺の見立て通りこのスキルのせいで怠けてるとも考えられるがもっと考えてしまうと怠ければすごい怠けるが
怠けるという意思がなければ怠けないとも考えられる。そして怠けたいという思いが強いから
それをサポートする形で怠け補助が掛かってるだけなのかもしれない。やばいな。
でもまあ、楽しそうならいいが。それより考えるべきはどうやってお金を稼ぐかだが実を言うと既に
一生遊べる額のお金が存在している。あれだ、たまに竜を倒してたときに報酬で何億円ってもらってるんだ。
ジャンボ宝くじ?ってぐらいの額だよな。ホント俺でも驚きだぜ。
でもまあ、楽できるわけじゃないけど。むしろそこらのサラリーマンよりもっと大変な仕事が待ってる。
いや、すっごいよ。サラリーマンといえば社蓄になって頑張ってサービス残業して・・・・・。
地獄なんだからそれより地獄って相当だよ?ホント洒落になんない。
そうこうしていると俺の携帯がプルルルと鳴った。これが二度目。一度目に着信が来たのは例の合宿の時だ。
だから実は携帯にはいい思い出がない。今回は誰かと思えばむしろ必然的に一人に絞られる。
魔王先生だ。魔王先生以外には番号教えてないしそれに用がありそうなのも先生ぐらいだ。
そしてその先生から電話が掛かってくるというのは正直言うとかなり危ない出来事である。
神との戦い云々にしろ・・・・もしや部活?にしろ・・・え?部活なの?嘘、嘘でしょ・・・・・・。
「お兄ちゃんうるさい。さっさと出て」
「ったくうるせえな。分かったよ」
ザナミに言われてはしょうがない。やむを得ず電話に出る。
「もしもし、先生。どうしたんですか?」
「あ、ああ8月の終わりに夏祭りがあるだろう?それで告白部と奉仕部が対決ではなく業務提携して
成功の為の実行委員会を設置することになった。」
「はあ?まだ仕事があるんですか?俺、こう見えて忙しいんで・・」
「問答無用!!先日君は打ち上げから逃げたんだ。それぐらいやってもらわないとな」
・・そう言われてしまうと言い返せないのが実情である。だが、よく考えると俺は神!言う事を聞く必要はない。
だがまあ、この人は俺からすれば人生の先輩なわけだしこの人は理不尽だけどでも
間違いは決して出さない人だ。そして何より少し楽しい。
だから従うのもありかもしれない。
「それで、だ。今から学校に来い。2時より会議を始める。」
「な、無茶苦茶な。無理ですよ、俺にだって事情と言うものがあってですね・・」
「だから問答無用といったはずだ。早く来い!」
「じゃ、じゃあ他のやつも一緒に連れてっていいですか?」
こうなったらザナミも連れて行こう。道連れだ。兄だけに苦痛を負わせて家でゲームしている妹など居ない。
「・・・まあいいが。とりあえず早く来い」
「うす・・・・・」
この理不尽な召集から読み取るに他の奴らは既に集合しているんだろう。何せ今が1時50分。
ここからだと人間の足じゃ1時間かかるが俺の足だと10秒で十分だ。
ザナミはまあ、抱えていけばいいだろう。
と言う事でどうやら俺は休暇を得ることが出来ないらしいと言う事で、俺は電話を切り、それと同時にザナミの元に向かう。相変わらず寝転がりゲームをしている。
俺が近づいてきたのに気付いているのにザナミは振り向こうともしない。
普通、「何?誰から?」とか聞いてくるものだと思うのだが・・・。妹云々という前にそこそこ親しければ
そういうことに気になって聞いてくると思うのだが・・・・・。
「あ、お兄ちゃん」
ザナミが口を開く。いまだに振り返ってはないがでも多分「誰から?」とか聞いてくるんだろう。
「どうした、ザナミ?」
俺は答える気満々で聞くとその後には俺が予想もしなかった答えが出たのである。
「お兄ちゃん、マックスコーヒーは?買ってくる約束じゃん。買ってきてよ」
「おう、お兄ちゃんのたんに・・・・・って、はぁ?何言ってんだよ?普通今のは電話、誰からだった?とか聞いてくる
ところだろ?てか、それぐらい我慢しろよ。お前、いまお菓子食べてゲームやってるだろ?」
ついついノリツッコミをしてしまった。いやいや、ほんとにノリツッコミだから、聞いてくると思って先走って
答えちゃった的な展開じゃないから。ホントだからね。そんなの恥ずかしくて軽く死ねる。
因みに俺が死ねばこの世界は安泰だったりする。それを考えると俺が死ぬべきかもしれないが俺が死んだらアースがなくなるし
そもそも誰かのために犠牲になってやるつもりはない。なんなら死ぬ気もない。
「えー。いいじゃん、お兄ちゃん買ってきてよ。ザナミは今ゲームで忙しいから。ほら、早く」
ザナミはもう、ホント生意気に言ってくる。マジでむかつくんだけど。いつからこんな生意気な&わがままな子に
なってしまったのだろうか。どっちみちこの子の親と家族を見てみたいもんだぜ。どんな駄目人間なのか。
あ、一人は俺知ってるな。確か無職希望の高校生だった気がするな。誰だろうなぁぁ・・・・・・・。
まあ、それはおいておこう。おいておこう。いい?おいておくからね。このおいておくは保留的な意味じゃなくて
もう一生お蔵入り、カビが生えても気付かれないところに追いやって消去していくって意味だからね?
で、おいておいて俺は今現在ものすごくいいことを思いついてしまった。やばいな、俺天才だな。と思ってしまうほどだ。
あれだな、神童って言葉があるけど俺はそもそも神の子供らしいし俺みたいな奴を神童って呼ぶんだろうな。
つまり俺みたいな奴はこの世にもどこの世にも居ないので逆説的に神童神って呼ばれていいのは俺だけってことだな。
・・・駄目だな。話を戻さなくては。俺って思考を脱線させる天才かもな。って思ってしまった。
あれだな、神童って言葉があるけど・・・・・・。え?しつこいって?そう、じゃあやめておこう。
で、俺の作戦は何の為かといえばザナミを道連れにするための、それだけのまぬけな作戦だ。
そういえば、何か「ぬ」ってまぬけっぽい字だよね。比較的「ま」は、頭よさげなのに・・・・・・・・・・・・・・。
で、まあ、俺の作戦がどういう作戦かを説明しよう。端的に言って物でつるのだ。人も神もついでにモンスターも
自分が欲しいものには歯が立たないのである。こいつの場合はマックスコーヒーをお菓子とゲームだろう。
「なあ、ザナミ。俺は今、高校の先生に呼ばれて外に行かなきゃならん。だが、色々とめんどくさくてな
そこでだ、お前が一緒に来てくれれば帰りにお菓子とマックスコーヒーを買ってやる。
もし望むならゲームを買ってやってもいい。どうだ?行くか・」
「うーん・・・・・。マックスコーヒーにお菓子・・・。それにゲームか。めんどくさいなあ。
でも、ちょうどライジングデイショメンをねだろうとしてたからな。うーん・・・。
グラフィックもストーリーも期待度マックスだし何より初回限定版にはぬいぐるみが付くからな・・・・・。」
やばいな。既にこいつオタになりかけてる。でもまあ、それぐらいどうってことないだろう。
俺とてゲームは好きだ。
「・・・・よし、お兄ちゃん。一緒に行ってあげるからその代わりにマックスコーヒーとお菓子と
それとライジングデイショメンの初回限定版を買って。」
「ら、ライジング・・・・・・ま、まあいいだろう。でも初回限定版なら帰りじゃ売り切れちゃうかもしれないな。
・・というかそれっていつ発売なんだ?」
よく考えるとこれじゃ俺がザナミに普通に何かを買ってあげてるだけで道連れでもなんでもない。
だがまあ、ザナミはこう見えても義理の妹だ。家族の記憶がない俺からすればたった一人の家族である。
「勿論今日発売だよお兄ちゃん!!」
「だよな。さすが俺の妹。初回限定版は予約&即日購入をしっかり行っている。よし、じゃあ売り切れたら困るから
行きに買ってから行くか?いや、それよりもあれだな。お前は着替えてろ。その間に俺が買って来てやる。」
もし来てくれたのに売り切れなんて事があったら可哀想だしな。それに時間もない。
一緒に行けるほどゆっくりはしてられない。
「分かった。じゃあ着替えてくる・・・・・・。ってお兄ちゃん大変だよ。私このパジャマ以外
服を持ってないよ!」
「なっ。何で持ってないんだよ。ったくしょうがないな。じゃあ男用だけど俺がまだ着てない服が
何着かあるからそれを使え。」
この世代の女の子はおにいちゃんの来た服とかマジで本気で着たがらない。いや、着ないのが普通だし
そもそもマジと本気って意味同じじゃね?
「ありがとうお兄ちゃん。じゃ行ってらっしゃい。」
珍しく満面の笑みを見せてきた。というかここまで可愛い笑顔だと本気で恋しそうだな。
まあ、お兄ちゃんとしての仕事を果たしますか・・・・・・・・。
俺はゲームショップをの場所押さえておいてある。実は夏休みに買いに行ってゲーム三昧をしようとしてたところだ。
それにしてもライジングデイショメンとはチェックし忘れていた。そういえばあったなそういうゲーム。
グラフィック、ストーリー性、操作性、どれをとっても期待度マックスで更にオンラインプレイも可能。
むしろそのオンラインプレイが醍醐味だったりするゲームでやりこみ要素があるだけでなく稀に
アカウント独自のスキルを習得できる事がある(マイアビリティ)というファンタジーゲーム。
そうだ、そういえばチェックはしていたな。ただ、合宿が嫌過ぎて忘れてただけだ。
ホント、この部活やめたい。さて、俺はというともう全力で着替えて速攻で家から出ている。そして一気にジャンプして
ゲームショップに向かう。ゲームショップはこの町にも既に5つ以上あり、しかもそれら全てが
もう、かなりコアで色んなものがある。もしやもしやこれもザナミが自分の住むところによりよい環境を
作り上げようとかそういう考えで作られているんでは?それってもう権力の私的利用でしょ?
ああ、それはもう今更か。既にもう何十回ってそう思うポイントがあったしな。うん、しょうがない。
で、まあ、俺は既にこれらのゲームショップのポジション、バリエーションの傾向、そして客、店員のタイプなど
全てを把握している。これ、もう天才だな、とか思ってしまう次元だな。何でこういうのが必要かなんていわなくても分かるよな。
まず、バリエーションの傾向については店舗ごとによってバリエーションが違う。
広いのだが、それでもカバーできないレベルにこの世界はゲームが多い。やはりこれもザナミのせいだ。
ホントうちの妹が何か申し訳ないな。でもまあ、いいか。ゲーム好き、というか人と遊ばないので
ゲームぐらいしかやることがない俺としてはもう喜ばしい事この上ないのである。
そんなことを考える暇もなく、もう約1秒でたどり着いた。今回セレクトしたのはファンタジー系ゲームに特化した
ゲームショップ「ゲムメイト」である。ここの客層は幅広く小さくて小3、大きくて80代までである。
そしてここは店員が非常に干渉してこず客には一切興味がない。なので変に親しくしてこられたりはしない。
ホント、ああいう時に話しかけるのやめて欲しい。あれだよな。カードないってわざわざ聞いてこないで欲しい。
と言う事で俺は迷わず初回限定版を購入する。そこでふと思うのだ。やばいな、このゲーム欲しい。
やっぱ目星付けてただけあってちょっとすごい欲しい。でもなあ、これ、パラステルションを持ってないと出来ないんだよな。
うーん・・・・・。よし、じゃあ機体ごと勝っちゃうかなぁ。もともと買うつもりではあったし。
と言う事で、俺はザナミ分の初回限定版と俺の分のパラステルション&初回限定版を購入して
帰還する。時間にして3分しか経っていない。それでも後5分で会議が始まってしまう。
急いで帰ろう。ゲームを抱えながら超速で家に帰る。急いだ為時間にして0.5秒で着いた。
「ほら、ザナミ着替えは終わったか?とりあえず買えたぞ。」
「お、お兄ちゃんありがと。じゃあいこっか?」
お?珍しいな。俺が予想してた感じだとこれを買ってきてたからじゃあもういっか・・・・・・・。
みたいな、感じで駄々をこねるかと思っていたのだがそういうことはなく素直に従うようだ。
「じゃあ、これはとりあえずおいておくか。さあ、急がないといけないから早くしろ。」
俺は、ザナミに言って外に出る。ザナミもやがて外に出るのだがふと見ると驚いた事に家にいたときとは全然違う。
雰囲気というかなんと言うか・・・。あれかな?人当たりなのかな?外用フェイスって奴なのかな?
引きこもりだけどこういうことは出来るんだな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「じゃあいこっか。さ、お兄ちゃん早く早く」
どうやらザナミは、俺に運んでもらえると既に考えているようである。まあ、それだからズボンなのだろうな。
「・・・・まあいい。じゃあ行くぞ」
俺はザナミを抱えようとしたんだがよぉく考えたらどうやって運ぼうか・・・・・と言う考えが出る。
まあ、いっか俗に言うお姫様抱っこって奴だな。俺が抱きかかえてもザナミは別に嫌がる様子も無い。
年頃の乙女だと思っていたが精神的には腐っているっぽいな。まあ、ありがたいんだが。
「よし、じゃあ行くぞ」
俺はザナミに呼びかけると一気に全力でジャンプして学校に着く。さすがにその圧力に耐えられないのか
ザナミは俺に無茶苦茶しがみついて来る。やっぱり耐えられないよな。俺も初めの内はきつかった。
まあ、それから2秒ほどたち俺は学校の校門に着く。そこから会議室である2階に飛び乗る。
出来るだけ力を抜いてやらないと壊れるのであれだな・・・・気をつけよう。
と言う事で会議室にたどり着き、ザナミを降ろす。因みにこうやってジャンプしてる間に上履きに履き替えておいた。
なので先生に怒られることはない。先生マジで怖い。魔王先生はホント死を感じる。
「あ、えっと初めまして皆さん。私、服部の妹のザナミと申します。一応、妹ですがまあ、義理なので
かなり性格は似てないと思いますがよろしくお願いします」
ザナミは俺から降りてすぐに「にこっ」っと笑顔を振りまいている。既にこの場の全員が困惑し
俺も俺とてちょっとすっげえなと感心するところだ。ってかザナミやっぱり人当たりがいいんだな。
外用フェイスの力すっげえな・・・・・。マジで感心してしまう。
「え、ああ、えっとお兄さんが入っている告白部の部長の月橋優嘘って言います。よろしくね?」
月橋が自己紹介をするとそれに続きシガネも自己紹介を始める。
「マスボラール・チャケルシガナスっていいます。私も告白部の部員です・・よろしく」
「えっと・・・僕は・・・。えっと・・・・・・」
さわやかイケメン君が自己紹介をしようとするが中々進まない。なぜかといえば彼はどういう立場だというと
全く説明できないのである。依頼人、といえば話は早いがでもそれって一時的なものだしな・・・。
それを考えると「僕って何?」とか思ってしまうのも当然だろうな。俺とて日常茶飯事で
俺って何なの?って思うことばかりなので俺としてはまだまだ甘いな!!と思ってしまう。
「成宮悠斗っていいます。お兄さんの・・・弟子?です。よろしくお願いします」
「っっ。で、弟子?」
やばい、さすがにびっくりしてしまった。ぐ、ぐ・・・やばいのどがつまった。
それにしてもさわやかイケメン君って俺のことを師匠だと思っているんだな・・・・・・・・・・・・。
そういう認識で見られてたんだな・・・。まあ、しょうがないかぁ・・・・・・・・。
「お、じゃあ、俺も自己紹介しようかな。僕は猿飛雷馬。奉仕部っていう告白部と似たような部活に入ってます。」
猿飛もさすがな技術レベルで自己紹介をしている。なんだろうな・・・・真似できない。
「じゃあ、私達も自己紹介しておくか。私はまあ、魔王だ。リリスとだけ呼んでくれ。服部の妹か。
さぞ大変なことだろうなぁ。こんな廃人ニート世話しなきゃいけないもんな。」
「あはは。ホントに大変なんですよ。昨日引っ越してきたばっかりなのにもう昨日の夜とか大変でしたもん」
おい、ザナミ嘘ついてんじゃねえよ。マジ許せねえ。むかつくの域を超えている。
俺は、ザナミを睨みつける。一応睨みつけるがザナミは俺にもにこっと返してくるだけだ。
「私はリリス。奉仕部のほうの顧問。因みにリリスは告白部の顧問。よろしくね?」
リリス先生も自己紹介が終わりとりあえず全体としての自己紹介が終わった。
それにしてもこいつ人当たりいいな。「それにしても君はいつ妹が出来たんだ?全然話さなかったじゃないか・・・」
魔王先生が豪快に高笑いして言ってくる。いやあ、そんなこと言われても俺も昨日まで知らなかったしな・・・・。
「ま、まあ、昨日まで知らなかったしな・・・・・・・。」
「っな・・・。まさか、あれか?長年生きてきて高校生になって教えられた衝撃の事実って奴か?」
魔王先生が興奮した感じで言ってくる。いやいや、まあ、実際そうだけど、でも何か先生が期待してるのとは
全然違うと思うんですがねぇ・・・・・・・・。でもまあいっか。それより会議会議・・・。
仕事したくないんだけどなぁ・・・。いつから俺はこんな社蓄になってしまったのだろう・・・・・・・。
俺かなりショックだな。働かない、無職希望の最強戦士のつもりだと思ってたんだけどな。
まだまだ経験地が足りないな。もっと修行して完全にして最強の|無職希望(ニート)になる。
「せ、先生、会議は?」
「お、ああ、そうだな。さて、じゃあぼちぼち始めるか・・・・・・・・・・・・・。」
魔王先生が全員に言うと全員席に座る。そして魔王先生はホワイトボードに文字を書きはじめる。
夏祭り実行計画
その無機質な文字だけがホワイトボードに書かれている。ザナミは俺の隣に座りなんだか人当たりのよさそうな顔をしている。
やっぱりすごいなこいつ。俺にはまず真似できない・・・・・。てか真似したくもない。
「よし、じゃあ何か案を出せ」
「・・・いやあ、そんな急に言われても。」
「いや、考えてくるだろうが普通。」
先生が俺に言ってくるが俺が思うにその言葉は間違ってると思う。イラッとしてはいないがそれでも
俺にだって言い分がある。それを言っておかないとこのままじゃ負けになってしまう。
「先生、いつも言ってるでしょ?俺に普通を求めないでください。そもそも俺が普通だと思いますか?
いつも先生は俺に普通を求めてないわけですしそもそも普通というものの定義は主観であって
明確な定義は存在しないわけですよ。なら先生が言う普通と俺が言う普通全くは別なわけですから
俺の言動を勝手に決めつけないでくださいよ。」
「・・・・うわ・・。ひねくれてる。うざいな・・・・・ハト。」
「そうですね。服部君、今日もうざさマックスですね」
「お兄ちゃん、まさかいつもこうなの?」
ここにいる三人の女子から一斉に言葉の暴力が降りかかってくる。言葉の暴力反対。マジで絶対。
しかもシガネ、今日もうざさマックスですねってどんだけ毒舌になったんだよ。
おかしいなぁぁ。であった当初はかなり行儀がよくて礼儀がなっていて良い子だったんだけどな。
世の中の諸君。これを覚えておくが良い。世界の女性はすぐに変身するのだ。
気をつけないと。一目ぼれとかホント無駄だからね。もう一目ぼれとかしちゃった暁にには自分が病気だと思ったほうが良い。
俺はというとひとめぼれどころか人に,むしろモンスターにも恋することも惚れることもないので
その心配もない。さすが俺。何の心配もなく堂々としていられるとかやばいな、俺・・・。
「そうか、じゃあ、案を出せ」
「いやいや話し聞いてましたか?考えてないし思いつくわけない。」
「だからこそ出せ。普通考えてないというのならばこちらにも意見がある。そもそも夏祭りと言うこと自体
非日常、普通ではない生活なのだ。つまりその普通は完全に通用しない。」
っぐ。魔王先生もかなり成長したな・・・・・・・・・。そして中々やる!!!くそ、敵わないぜ。
でも俺も負けるわけには行かない。何か策を、策を考えなくては。ここはもう夏祭りの案を考えている場合じゃない。
この先生から回避して仕事しない手段を考えよう。
「先生、そもそも俺みたいな青春や非日常と全くの無関係である俺に意見を求めてはいけないんですよ。
そもそも非日常どころか日常にすら入る事が許されていない身ですから。」
っふ。完璧に俺が論破したな。先生が成長するならば俺は更に成長するのだよ!!なんていう格闘アニメみたいな
発言を堂々としたくなるレベルにうれしいし喜ばしい。
「お兄ちゃん、やめて。それ以上は恥ずかしいし・・・・・・。」
「うん、ザナミちゃんがかわいそうだよ」
「そうですね。それにそれ以上は身の破滅を呼ぶだけですよ」
う、また三連コンボ。怖いなこの三人。既に息ぴったりじゃんかよ。俺としてもちょっと恐るべき存在なんだけど。
魔王先生よりな月橋。冷静で礼儀正しいふりして実は無茶苦茶毒舌なシガネ。そして身内からの哀れみを向けるザナミ。
この三人には逆らえる気がしないのだが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
既に魔王先生よりも恐ろしい存在かもしれない。
「ったく、面倒くさいな。しょうがない少し意見を考える時間をやろう。約1分考えろ。」
「1分って無茶苦茶な・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「何を言っている。君の思考能力は既に時間をゆっくりと感じさせるぐらいに達しているのだろう?」
そういわれてしまうと反論できないのが俺である。しょうがないのでくるりと周りを見渡しながら考える事にしよう。
ん?そういえばザナミは親切っていう七美徳スキルを持っているな。まあいっか。
それにしても思いつかねえな。今までこういうのに行ったことないし言ったことあったとしても記憶がないからな。
考えるにも考えられない。最低限の知識があるがそれだって屋台と花火とかその辺のレベルだ。
でも、何とかして考えないとなぁ・・・・・。折角戦って得た時間だ。怠ける事に使おう。
さッさと考えて怠けよう。考えろ考えろ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
こうして俺は考える。止む無いしなさて、何かいい案はないだろうか・・・・・・・。・・・・・・やばい俺がドンドン社蓄と化していってしまいそうでやばい。
お金はあるのに働かなきゃいけないとか意味が分からないよな。もう、何も報酬がないじゃんそれ、ブラック企業?
でもまあ、これはいい機会だ。今まで嫌いだった夏祭りに行くようなリア充どもに復讐するのもいいだろう。
そこで、だ。何か人間関係を崩していくような良い案はないだろうか。案外こういう自分に都合のよいことは思いつくのが
人間で、まあ、俺は神だけど今は人間とも言えるらしいから俺もその一種なのだろう。
やはりすぐに思いついた。欠伸をして、一息つくと先生は終わったと悟ったのか考える時間を止めてしまった。
ああ、だらける為の時間が・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「よし、考え付いたようだな。言ってみろ」
先生が言ってくるので俺も先程考えたガチで自身がある案を言う事にする。もうホントに自身があるので
立つ事にした。わざとドシーンと音を立てて席を立つと目の前にあった机をバシーンと叩いてから話し始める。
「えっと、夏祭り中に俺の幻影魔法でガチの龍を作ってあわてさせる集団版肝試し。」
「却下。よくもそんなくだらない事をそんな自信満々に言えたな。」
先生が呆れたように言ってくるので俺としてもこの企画をもっとプレゼンしなければと思う。
「先生、くだらないって言い換えると下らないつまり悪くならないともいえるんですよ。一定の範囲より悪くならないなんて
夢のようじゃないですか。つまりこれはもう逆説的にくだらない企画を考えたら勝ちな訳ですよ。」
「っぐ。また馬鹿みたいなことを自信満々と・・・・・・・・・。筋は通っていないし正しくないんだが
否定しにくいのが余計性質悪いな・・・・・・。」
「先生何を言ってるんですか今更。人間なんてそんなもんですよ。正しくないとは分かっているのに
否定しておいて自分が同じ過ちを犯したら後で叩かれるから否定できない、そんなもんですよ」
俺は、先生の言葉に向かって自信満々、堂々と言葉を口にする。するとさわやかイケメン君は「あはは」と笑っていて
猿飛は、言葉もなくリリス先生は音も消さずに大笑いして三人組は軽くひいている。
「すごいね、ハト、揚げ足を取ることでは、誰にも負けない・・・・・・」
月橋がなにやら悪意と皮肉のこもった事を言う。いやあ、酷くね?うんうん、マジで酷いと思う。
「おい、揚げ足を取るとか人聞きの悪いことを言うな。一つ一つの言葉をしっかりと受け止めてよく考えて
意見を述べているといってくれ。」
「う・・・・確かにそういってしまうと人聞きはよくてすごい事をしてるように感じますね・・・。」
「ああ、全くだ。表していることは同じなのに言葉によって捕らえ方が随分と変わってしまうのが
言葉の面倒なところだからな。それに服部が言うと更にその面倒臭さを感じるから不思議だ。」
「「「確かに」」」
女子三人組がそろいもそろって同調する。いや、酷くね?俺結構正論言ってるつもりなんだけど正論に向かって
あなたが言ってるから悪く感じてしまう・・・みたいに自分が言ってることじゃなくて自分の存在を否定される
感じが一番手も足も出ずに困る。論議をしているのに話してる人ディスるのやめろよホント。
「で、服部君?その企画について詳しく聞かせて。先生面白そうだから賛成だよ」
「面白そうだからって・・・・・・・・。まあいいです。まずこの企画には3つほど目的があります。
一つ目がまあ、夏だから肝試しをしてもらって涼しくなってもらおうかと。リア充連中がいつもやってる
あれをスケールをでかくしてやればすごく騒ぐんじゃないかと。・・主に悲鳴が・・」
俺が一つ目の目的を言い終わると何故だか全員が納得している。何?皆もしかしてリア充を憎んでるの?
悲鳴が聞きたいの?怖い、案外皆闇を抱えてるんだな・・・・・・・。それでも俺は闇を抱えたくない。
皆が抱えてるからって皆と一緒になって闇を抱える必要なんてないのだ。何で皆もつらいんだから、
とかいって自分がつらい事を容認してしまうのか?集団と一緒になら何をやってもいいというのだろうか。
「まあ、肝試しは楽しいよね・・・・。」
「はい、そうですね。お兄ちゃんも企画案自体は腐ってるのに目的はしっかりしてるんだよな。
どうやったらその目的からこんな腐った案が出るのか・・・・・・・・」
なにやら月橋とザナミが同調してるぞ・・・・。お、シガネも同調してる。なにあれ楽しそう。
それにしてもどうやら皆は悲鳴が聞きたいんじゃなく単に肝試しがいいと思ってるらしい。
「で、二つ目の目的が2学期を前にして恐怖によって現れる本性をあらわにして人間関係をより・・・恐虚な物にする」
因みに強固ではない。恐虚だ。恐ろしくて虚ろな人間関係にしてやる。しかしながら全員強固だと思ってるようで
納得してしまっている。いや、あれかな?恐虚な関係が実際に見たいのか?
「なるほど・・・。服部さんにしては人間心理をうまくついた作戦ではあります。」
「ホントに、お兄ちゃんすごいね。よくこんな立派な目的がある中でこんな腐った案を作れるよね」
酷い。マジで俺をディスってしかいないんじゃない?ホントやばいんだけどこの三人
「で、最後の目的が、恐怖を植えつける事によってリア充どもが一生夏祭りにトラウマを持つようにする」
「あほか、お前は。何でそこまで来て最後にこの目的が出てくるんだ。というかそもそも目的としてはそれが
最も大きくとられてるんじゃないじゃないのか?むしろ安心したよ。ここまで来て最後もまともな目的だったら
本当に君の精神を心配しなければならないところだった。」
先生が俺の頭を叩きながら言う。ていうか皆、俺の企画案が腐ってる事前提で話さないで欲しい。
どう考えてもこの案は腐ってなどいない。俺は腐ったみかんじゃない。
「最後が私的な気がするんだけど・・・・・。」
「そんなにも恨みがあるんでしょうか・・・・・・・・」
「お兄ちゃん、酷い。」
「いいや、私的じゃない。全国の非リア充どもおそらく人口の90%の意見を代弁したまでだ。」
うんうん、私的じゃない。やっぱり意見を代弁とか俺、政治家の素質あるな。気に入らなかったら世界ごと作り変えられる。
ゆくゆくは非リア充とニートとぼっちによる非リア充とぼっちのための政治をしよう。そうしよう。
「いいじゃんいいじゃん。そうしようよ。ね?サテラ」
リリス先生が賛成してくれるのは大きい。先生が一人賛成すればなし崩し的に何とかなる。
「いや、さすがにそれはまずいでしょ、先生」
猿飛が口を挟む。そういや今日はやたら静かだったな。でも恐怖を植えつける系の事は許さないか・・・。
やっぱりこいつはぶれないな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「えー。まあ、雷馬が嫌うような案だけど。でも、この目的以外にも面白いことが色々あるし・・。」
リリス先生も譲る気はないようだ。となれば俺も加勢するまでだ。
「じゃあ、猿飛デメリットを考えてみろ。何かあるか?」
俺が、聞くと猿飛は行くと物デメリットをいいだす。
「まず、来年からの夏祭りの来場者に支障が出てしまう」
「そんなこと知ったこっちゃないしそれにむしろそれをかっこよく先生が倒せばショーみたいにもなるし
むしろ増加すら出来る可能性がある」
「じゃあ、ものを壊す危険がある」
「その辺は先生の再生で何とでもなる・。」
「・・・怪我人が出る・」
「俺の幻影だぞ。それぐらい制御できるし何なら相手からは触れられるけど幻影は自ら触る事ができないようにする」
「来場者の精神面に支障が発生する」
「それも同じだな。先生が簡単に倒せば先生への信頼度も上がって更に希望を持って生活できる」
俺が何でも言い返してしまうのでさすがの猿飛もデメリットがつきかけたようだ。
「でも、それをやったら幻影を出した君はかなり大きなバッシングを受ける事になる。」
「・・・・・・・・それぐらいなんてことない。」
最後に発してきた猿飛のいったデメリットには反論がしがたかった。いや多分違うのだろう。きっとこのどこか
哀れむようなこの言葉が俺は怖かったのだ。欺瞞の固まりな気がして怖かったのだ。その後も会議は続いている。俺の出した案についての会議がずっと続いているのだが俺とリリス先生、
さわやかイケメン君は、賛成派として意見を出し猿飛と月橋とシガネ、ザナミは反対派として意見を出している。
魔王先生はというとどっち派でもないらしく話し合いに参加していない。いや司会としてやってるな。
「先生、お兄ちゃんの企画をやるにしろやらないにしろ結局準備する事ってあまりないと思うので
何か準備が必要な事もやって同時進行で進めていくのはどうですか?このままだと遅くなっちゃいますし
準備して出来る事でやることを決めて準備をしながら全員意見固めてきて明日また話し合うとか。」
ザナミが魔王先生に提案する。我が義理妹ながらさすがの対人スキルだな。あの先生と初対面でそんなに物怖じせずに
話すのはホント普通に考えて出来ないぞ。あれだな、妹、弟は兄、姉の駄目なところが特化しているのが定番だしな。
「さすが、服部の妹。そうだな。それが良い。では何か準備が必要なものでやりたいものを挙げてくれ」
魔王先生が全員にそういうが正直なところ俺にはもうわからない。準備=働くという事でありその働くという行為を
嫌う俺に準備のある行動を考えろとかそのほうが無理ゲーだ。だから準備がないやつ出したのに
何でザナミは準備がある奴を追加する方針にもってっちゃうかな。もう既に準備があるやつはやるという風に決まっている雰囲気だ。
「はい」
「お、成宮。何だ?言ってみろ」
さわやかイケメン君が挙手して魔王先生がさわやかイケメン君を指名する。するとさわやかイケメン君は
立ち上がり意見を言い始める。うわー自信満々で物言おうとしてる人ってこんなに醜いんだな。気をつけよう。
「劇とかどうですか?この人数なら色んな事出来ると思うしそれに劇なら子供、大人、高齢者どんな世代にも
ウケると思います。この時間があれば衣装作りから本格的に出来るし・・・・・」
劇。それは発表会だなんだでまず挙げられるといってよい出し物である。このほかに同種としてミュージカルがあるが
俺が思うに劇はやる側の恥ずかしさと見る側の眠気で100%だがミュージカルは更に「一緒に歌いましょう」的な
言葉をかけられたときに気まずさとかがプラスされるためミュージカルはああいうのに向いていない・・。
てか、悲しくてもうれしくても何があっても歌ってるってミュージカルの登場キャラは皆リア充なのかよ・・・。
でもまあ、どこかに派遣して音楽をやってもらうよりは安く済む気がする。そしたらその分衣装などにかけられるので
劇は案外いいかもしれない。ただな、この感じだと俺もやらなきゃいけなくなりそうなんだよな。
そこでだ、俺は監督兼マネージャーをやることにしよう。そうしよう。そうすれば口は出せるけどやらなくてすむ。
「音楽もいいと思うんだけどな・・・・・・・・・・・・・・・」
そういったのは月橋であった。その声はそこそこ小さかったのでほとんどの人には聞こえてない気もするので
言ってやろう。音楽にすれば自分達で演奏すればより安くなるし、それにプロデューサーになれる。
「音楽といいんじゃないか?アニソンとかやれば子供とコアな層に受ける。そもそも高齢者には
厳しいからなここの夏祭り。」
「あ、うん、そうなんだよね・・・。ここさ人がたくさん来ちゃうから結構きつい。って私のおばあちゃんも言ってた」
月橋が俺に同調してくる。実際、毎年高齢者はあまり足を運んでおらずその理由が人が多いから、である。
それに加え俺の企画をやるとなるともし高齢者がコケでもしたらそれでも危険だ。回復してやればいいのだが
気付かない可能性もある。それを考えれば高齢者を考慮しなくてもしょうがない。
「アニソン・・・・・。よし、お兄ちゃん劇とアニソ・・・・音楽を両方やろう!!
私、演技に自身あるしそれに音楽もうたえるしギター弾けるしドラム叩けるしピアノ弾ける。だからね?」
ザナミが言うが俺には何となくこいつの考えている事が分かる気がしなくもない。まずアニソンをやるのはまず決定。
さらに劇にも食いついてる事を見ると何か企みがあってもおかしくない。だが、駄目な妹が働く気になったのは喜ばしい・・。
はっ。やばい。危ない危ない。まじでザナミの心配して働くことを肯定してしまった・・・・。
「まあ、いいんじゃね?俺全体の指揮取るし。後は・・・音楽できる奴いる?」
「あ、私は出来るぞ」
「私も」
魔王先生とリリス先生が同時に名乗りを上げる。ああ、出来そう。出来そうなイメージがある。
それは皆思ったのか頷いている。やっぱりね。だってこの二人そういうことしてそうだもん。バンドとか。
「音楽ですか・・・・・・・・・・。私、横笛と角笛ぐらいしか吹けないですけど・・・。」
シガネが言うが正直言って横笛がふけるのはすごいと思う。そしてアニソンをやるのならあったほうが便利だ。
「私、歌なら歌えるな・・・・・・。」
月橋がボソッとつぶやく。さすがに聞こえる声ではあるがちょっと返答に困る。だがまあ、こののりは
自分も音楽がやりたいけど出来るやつがない・・・的な感じなのだろう。
「ボーカルも必要じゃね?」
一応、フォローをすると「そうだよね」とやる気にあふれた表情を見せてくる。
「じゃあ、女子は全員音楽をやるってことでいいな?でも、残ったのがさわやかイケメン君と猿飛しかいない。
こんなキャスティングじゃ女性客しか集めらんねえだろ。なにこの手札。詰んでるの?」
「あ、そうだね・・・・じゃあ女子、劇もやろっか。」
「いや、それだけじゃ駄目だ。全員に同じように仕事を与えないと。そうしないと結局自分の仕事じゃないのに
手伝わされた挙句何をやればいいか分からないで手伝ってもらってるくせに逆ギレされるだけだ」
「う・・・・・・・・・想像が妙にリアル。」
月橋がひいた感じで言ってくるが実際に多分そういうことがある。手伝ってもらってるくせに何の説明もなく
やらされてそれで何やればいいか聞いた挙句には「それぐらい自分で考えてよ。私、忙しいんだけど」ってなるし
聞かないで考えてやると「そうじゃないよ。何でやる前に言ってくれないのかな」て言われ
それが嫌だから仕事を断れば「何、勘違いしてんの。拒否権とかないんですけど。」みたいに言われる。
この3連コンボはマジで怖い。ホント天地創造と同レベル。でもまあ、実際に神様天地創造が容易くできちゃうから
マジで同レベルなんだよね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「よし、じゃあ男子も男子で別に音楽をやるだんだ。頑張れ二人。猿飛とさわやかイケメン君のことだ
音楽ぐらい出来るだろう?」
「あ、うん。ギターとか音楽全般は出来る。歌うのも出来るけど」
「ぼ、僕も結構出来ます。師匠に力鍛えてもらったから激しい動きも出来るしドラムとかやれると思います」
「よし、じゃあ頑張れ!」
俺は一言そういってから作業に指示だしを始めようとした。しかしながら止められてしまった。
「何でハトは何もやらない感じなの?ステータス高いなら音楽もそこそこは出来るでしょ?」
「ああ、でもしょうがないかもしれませんね。服部君は教室でも影が薄いですしもしステージに出ても
一人だけ『この人誰?』みたいになってしまうかもしれませんしね」
「そんなもんじゃない。俺が出ても俺の存在に気付かないまでありうるんだぞ。」
俺もシガネに同調して言う。・・・あれ?ちょっと待って。シガネさん今俺の存在全否定した!!
しかも俺、それに同調しちゃった!?やばい。ついに自覚してしまった。
「でも服部もやればいいじゃん。案外服部は目立ってるよ。多分。だって合宿のときにもあんだけ頑張ってたし」
猿飛そういってくる。確かに俺はもしかしたら悪目立ちしているかもしれない。
「そうだ。どうせやるなら劇をやめて音楽の衣装作りとかパフォーマンスとかに時間かけて男子と女子で
パフォーマンス対決とかしたら楽しそうじゃない?そしたら曲選びとかも真剣になるしさ」
「あ、それ良い。」
月橋の進言に劇考案者のさわやかイケメン君が同調する。
「おい待て。それでも俺は出ないぞ」
俺はかたくなに拒否しておく。予防線を張らないと危険極まりない。俺は先が読める男!
「えーー・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「お兄ちゃん・・?」
三人組に威圧される。もう怖い。さすがに折れよう。
「やればいいんだろうやれば」
「「「その通り」」」
三人組の息ぴったりだな。ちょっと怖いレベルだわ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「じゃあ詳しいことを決めていくか」
先生がそういった。
俺は離れられぬ仕事と向き合うしかないようだ。
男子、女子に分かれて使う曲や役割分担を話している俺としてはホントやりたくないんだがこの空気で
やりたくないとかいうと「え?何勘違いしてるの?君に断る権利とかないんですけど」みたいな空気になりかねない。
ぼっちはそういう空気を作ってはいけない。空気を乱すなどぼっち失格なのである。
それはそうと俺は正直言って音楽が得意とは言えない。そもそも人前で声出すのが苦手だしそれこそ誰だよこいつ。
みたいになりかねない。何度も言うがそれはぼっち失格なので駄目である。なので出来れば後ろのほうで地味に居座ってたい。
「じゃあ何やりたい?楽器で出来るのがあったら言って。」
やはり猿飛が話し合いを仕切る。さっきまでも仕切ろうとしたのだろう。だがまあ、俺みたいなめんどくさい奴が
かなりいる中でその集団を仕切るのはかなり酷な仕事だろう。そもそも仕事が酷なのに更に酷い仕事をやらされるとか
マジでブラックなのかな?コーヒーよりブラックなの?微糖すら入ってないみたいな?
まあいい。そんな事考えてもしょうがないので俺が働かないということ意外は考えずにいこう。
「僕、ドラムやりたい」
さわやかイケメン君が言う。確かによく知らんけどあれ体力使いそうだもんな。うん、俺が鍛えただけあって
いいと思う。むしろさわやかイケメン君じゃないと駄目だろう。叩きすぎて俺や猿飛だと確実に壊す。
「そうだな。ドラムはあったほうがいいし。それに俺や服部はドラムできないからな。」
やっぱりこいつもそこそこ頭が切れるようで俺が考えていたところまでは考えていたようだ。
実際さわやかイケメン君も俺が部室をぶっ壊したのは見てるわけだからな。何故出来ないのかはわかるはずだ。
「じゃあ俺たちか。お前、何できる?」
俺が猿飛に聞く。しかしながら何となく罪悪感が残っているのか申し訳ないように感じる。俺にこいつと話す資格があるのだろうか
俺は、確実に猿飛の記憶に何らかのものを埋め込んでしまったはずだ。そもそも人を刺す。それだけで罪悪感に
駆られるのだ。それが更に人の前、相手からは許可をもらっても周りがないも知らない場合もっと罪悪感は増すし
更に後者の場合周りの人間との関係も危うくなる。だから、俺は思うのだ。俺のやったことは正しかったのか、と。
もっと考えれば俺が自ら刺すという手もあったはずだ。その場合猿飛でも過ちを犯すもろい人間なのだということを示せない。
だが、それも考えれば分かったはずだ。こいつは、猿飛はきっと身を犠牲にしても過ちを犯さないのだろう、そのことが
分かったはずだ。だからそこまで考えが及ばなかった自分の浅はかさを悔いている。どんなに忘れようとしても
こいつの顔を見てしまえば思い出してしまう。だからだからこそ俺は忘れよう。絶対に。
「俺か。俺はギターとかも勿論出来るし歌も出来るからな。服部はギター弾けるか?」
猿飛は、俺の問いに迷わずに答えまた俺に質問をしてくる。そこに迷いはなく元からこうであったかのように見える。
それをみてるとこの猿飛と言う人間が恐ろしく見えるしかわいそうにも見える。無機質に動く、なのに感情がある機械のようだ。
「あ、まあ、ギターは出来るな。歌も歌えなくはない。」
俺が目をそらしながら答えると猿飛は「にこっ」と笑い思いついたように口を開き始める。
全く、こいつは化け物だ。何事も忘れたようで、でも俺には見える。何一つ忘れてないことを。
それでも守ろうとするこいつはすごいのだろう。でもでも俺にはまねが出来ないし真似する気もない。
すごいとは思うし恐ろしいとも思うが俺はそうはなりたくない。俺は俺のままでいたい。そして俺は俺のままでしかない。
多分猿飛も同じようにこいつにはなりたくない、と思ってるんだろう。
「じゃあ、二人で歌いながらギター弾くか?」
「いや、それはちょっと・・・・・・。」
「じゃあ、三人で歌おう。パフォーマンス対決なんだからはでに行くべきだ。」
「まあ、それはあるな。さわやかイケメン君、歌えるか?」
「え、何を歌うかにもよりますが師匠が歌うならば歌います」
・・いつからこんな風になったんだろうな。まあ、いっか。三人で歌えるならまあいいだろう。
後ろのほうで地味にしてれば何とかなる。悪目立ちもしないだろう。
「じゃあ、曲何にする?」
猿飛が聞いてくるが正直これといった歌が思いつかない・・・・・・・・・・・・・・・・。
駄目だな、俺、アニソンしか知らないけどあっちがアニソン使うから二番煎じになってしまう。
「そのこと何ですが、歌詞とかって作れませんか?もし出来るなら歌を作りたいなって」
「「えっ」」
さわやかイケメン君の思い付きみたいな一言に俺も猿飛も戸惑う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
まあ、パフォーマンス対決ならオリジナルソングとかはかなりポイント高いだろうな。
こちらには猿飛がいるんだ。多少臭いことしても何ら問題はない。むしろ高ポイントだ。
「じゃあ俺が曲作るから服部は歌詞作ってくれないか?時間掛かってもいいから」
手を合わせて猿飛に頼まれる。するとさすがに断れない。だが断るべき内容だ。でも断れない。
これはもうしょうがない。失敗して大恥をかいたほうがいいな。
「まあ、いいけど。その代わりクオリティは低いからな。」
一応この予防線を張っておかないと後々責められるかもしれないからな。まあ、そういう奴じゃないだろうけど。
「じゃあ、出来るだけ急ぎめででもゆっくりでいいからな。じゃ、後は衣装だな。」
ゆっくりでいいけど出来るだけ急いでね、というあれだ。ホントあれは怖い。遠まわしに問答無用で急げよ。
みたいなことを言っていると思っても過言じゃないと思う。
「衣装か・・・・・。制服でいいんじゃね?」
「・・・まあ、そうだけどな。でもどうせだから特別なのが良いなって」
「・じゃあ女子と合同でTシャツ作れよ。告白部と奉仕部の合同Tシャツ。そうすれば他にも色々あったときに
それを使えるだろ?」
「ああ、それいい。僕それがいいと思います、師匠。」
「うん、それいいんじゃないか。じゃあ女子に話しつけてくる。」
俺が思いつきで言ったことだがまあいい感じで発展してしばらくして女子からもOKが出た。
で、問題はデザインなのだが告白部で全員で寄せ書きをしてそれをプリントすることになった。
それを聞いたときには俺、書く場所ないかもな、とか思っていたがさすがにそういうことは無くしっかり場所で分けるそうだ。
と言う事で俺たちの夏が始まった。Tシャツの話も決まりとりあえずその日は解散、ということになった。ひとまず会議は終わったが
実際には終わったわけでもかたがついたわけでもがついた訳でもない。結局的には本題をずらす事で
迷走していた会議を無理やり進ませただけでいやむしろ進んですらいないのだからもう強引に動かしただけといえる。
俺は、我が妹ザナミに呆れながらも学校を後にする。帰ったらゲームが出来る。いや、歌詞を作らないといけないのか。
まあ、償いの意をこめて受けた依頼だから断るわけにもドタキャンするわけにも行かない。実際、仕事というのは
ドタキャンしたり断ったりするほどにノルマが増え、自分に割り当てられる仕事がより苦痛なものになる。
つまり、仕事とは頼まれたらサボらずやるかいっその事くびになってやるかのどちらかしか選択肢は無いのだ・。
だからこそ俺は元から仕事をするという選択肢を取らないで生きていこうと思います。この選択正解。
で、まあ、しょうがないので考えるがゆっくりで良いと言われたのでゆっくり考えよう。実際思いつく気もしない。
今日は夕飯作ってその後ゲームかな?どうやら明日も会議があるらしいので明日はゲーム三昧日ではない。
「おい、服部、ちょっといいか?」
不意に後ろから声が聞こえる。声の元は校門まで俺たちを送ってくれている魔王先生だ。
俺に何か用がある様だ。ザナミは月橋、シガネと女子会トークで盛り上がってるので素直に呼び出されるしかない。
何の事だろうか。世界について?それとも夏祭りについて?てか、心当たりのスケールが違いすぎる。
俺が軽く引く次元とかやばい。で、まあ魔王先生は普通に冗談とかじゃなくて何か言おうとしてるの聞こう。
「何ですか?」
「今回の夏祭りの議事録、報告書の提出を命ずる。さし当たっては本日分の議事録を提出せよ。」
「は?」
理不尽な指示故ガチで聞き返してしまった。え・・・・・。議事録。報告書・・・・・・。
マジで?俺依頼断ってないんですけど。なのになんで仕事が増えてるの?太古より仕事は終わらずに増えるかやめるかするしかない。
というがいっその事やめたほうがいいだろうか・・・・。でもなあ、ここでやめたら絶対他の仕事回される。
「・・・・・分かりました。でも妹の夕飯を作ってやらなきゃいけないんで早く帰んないと・・・」
「君だってパソコンぐらい持ってるだろう?だからそれを使って作れ。そして私に送れ。私のメアドを
教えておくから終わり次第送信する事。いいな?」
先生はそういうと俺に自分のメアドを教えた。俺はまあ、覚えるのは得意だが一応メモを取りながら聞く。
・・え?ちょっと待って聞き流しちゃったけどまさか俺って帰っても仕事しなきゃいけないの?
マジかよ・・・・・・・・・・。太古から仕事は早めに終わらせろ。さすれば早退でき、結果として
仕事を任せられなくて済む、という。仕事はさっさと終わらせないと怠けていても憂鬱な気分になるし
しょうがないから今日中に二つとも終わらせよう。絶対に終わらせる。因みに夏祭りまで後、5週間。
今が七月の中旬で夏祭りが8月の終わりだ。だからそこそこ余裕がある。
でも、そうやって高をくくると仕事ってのはミスして時間オーバーになりくびになるのだ。・・え?くび!
間に合わせないほうがいいかもしれないな。うん。ん?いや待てよ。よく考えたら先生に殴られるな。
ステ的には俺が断然勝ってるけどそれでもそれは死を争えばって話で実際先生のパンチは俺でも痛い筈だ。
だから嫌でも真剣にやる羽目になる。しょうがない、マジで終わらせよう。
「ザナミ、さっさと帰るぞ」
「お、分かったよ、お兄ちゃん(キラキラ)」
おい、嘘だろ。外用フェイスぱない。マジで怖い。ちょっと、マジでホントに無理なんですけど。
そもそもあのだらけ方が人がいるとここまで変わるとか二重人格を疑うよ。まあいいけど。
「じゃあ、ザナミちゃんとハト、また明日ね」
「ご苦労様でした」
シガネと月橋が俺たちに挨拶してくるのを見ながら俺はジャンプした。そして物の数秒で家に着く。
それを確認するとザナミは自ら降りた。すると家にとっとこといきドアを開ける。おい、いつの間に鍵を作ったんだよ。
まあいっか。ザナミは家に入るとゲームを取り出して自分の部屋(勝手に主張してるので部屋にしてやった)にかけて行った。
俺はというとゲームをやりたいがその気持ちを押さえパソコンに向き合う。パソコンの電源をつけてる間に
着替えをする。ここは俺の部屋なのでその辺に投げておいてもいいのだがそれは結局後でやることになるのでやめておこう。
着替え終わると俺はパソコンに向き合いカチカチと議事録を書きていく。時間は既に7時を回っている。
そろそろ夕飯の支度をしなければいけない。パソコンと向き合って30分ほどして仕事から一時的に逃げて
夕飯をぱぱっと作る。疲れているので簡単なもので済ませてザナミを呼ぶ。するとゲームをしながら歩いて
リビングに来るといすに座りゲームを止めてさっさと食事を済ませる。ゲームがやりたいのか
ホント軽くつまんだだけで食べるのをやめてしまった。いるよな、ゲームやりたいから食事もろくに取らないやつ。
「そういえばさ、お兄ちゃん。お兄ちゃんもライデメ買ったんでしょ?やってるの?」
「いや、まだだ。仕事があってな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
ライデメがライジングデイショメンのことだとはすぐに分かった。なので俺も事実を話す。別に嘘つくことじゃない。
「そういえばお前、中学行かないのか?・・・・・・?いや高校1年かお前?」
「あ、うん高1だね。まあ、行っても良いんだけどさでもあんま意味無いじゃん。だから遊んで暮らしたいかなって。」
「いや、でもどう考えたってお前だって自立しなきゃだろ。この世界守れても神には戻れないんだし
金はあるけどでもでもこの世界じゃ暇なだけだろ?」
「・・・・・・まあそうだけどさ」
ザナミはそう一言言うと部屋に戻っていく。反抗期の娘ってこんな感じなんだろうか?ま、いいけど。
それよりも重要なのは仕事だ。早く仕事をしよう。さっさと終わらせないとマジでやばい
洗い物を済ませると俺は議事録を書きに部屋に戻った。多分さっき時間が掛かったのは議事録じゃない仕事、
歌詞作りを考えてしまったからだろう。議事録はそれこそ5分掛からずに終わった。それで歌詞作りだが
俺の能力で時間の進む速さを10分の1に感じさせて10分間考えても(結果的に100分考えている感覚)全く思いつかないので
やめることにした。急がないほうがきっといいものが出来るよ、と自分をごまかそう。
さて、明日も会議。でもまあ、ゲームやるぐらいの時間はあるだろう。リビングで飲み物でも飲みながらゲームするか。
あ、そういえばお菓子とマックスコーヒー買ってないな。買って来てやるか。今は仕事が終わって機嫌もいいし。俺は、近所のコンビニに向かい、歩くことにした。まあ、別に俺的には跳んでも良いんだけどゆっくりしたいのと
正直こんな風に力の指摘利用をしてるのはよくないんじゃないかと思う。このままだと世界が壊れかねない。
なので歩いてもいいときは歩くことにした。それがフェアプレイの精心てっやつだな。まあ、実のところは
疲れてるので夜風でも当たりながらゆっくりと外でも眺めたいと思ったのが大きい。
というか歌詞作りは別としても議事録については断ってもよかったはずだ。誰かに任せて押し付けて。
そういう醜さが人間の真骨頂なのだ。それを思えば俺も今は人間なのだし人間らしく誰かに押し付けてもよかった。
心の中じゃやりたくなかったし仕事なんかしたくないし。それでも俺は仕事を受けた。それには俺なりの理由がある。
信念なんてたいしたもんじゃないし誰かの為!だなんて立派なものでもない。ただ、俺は俺のために受けたのだ。
そうでなければきっと俺は動かない。自分でも説明できないけれどきっと俺はそんな理由で仕事を受けたのだと思う。
どうせ、議事録なんて簡単な仕事だ。そんなに負担じゃないし問題は歌詞作りのほうだ。こっちだって俺が自分のために
やっていること。自分で勝手に償った気になっているただの自己中野郎だ。まあ、元々誰かを思って行動できたら
こんな人間は生まれないしそもそも俺は自分のためじゃなきゃ動けない。だからそれについて咎める気は無い。
でも、きっとあれが最善の策だったはずだ。実際あれ以上の策を思いついた奴なんかいないし俺だって思いついていない。
だからあれが最善の策だったはずなのだ。それの犠牲に猿飛がなってしまっただけ。それだけだ。俺がどう足掻いても
これ以上の犠牲しか出なかった。これ以上犠牲を少なくは出来なかった。だが、もう一つ思う。
あの時俺が犠牲になる方法もあったんじゃないかと。あそこで俺がもっと機転を利かせることが出来たんじゃないかと。
でも、それを考えれば考えるほど俺がとったやり方が間違っているのだと、そう肯定している事に気付く。
肯定しているのに気付いてあわてて否定する。全力で間違ってないのだと。間違っていたとしても誰かが決めた正しい事を
やるよりもよっぽど良いのだと、間違うことの何が悪いのか?と、そう得意の屁理屈で否定するしかない。
それしか出来ない俺に絶望している自分もいる。でも俺はこれだ。これが俺だ。それに変わりはないし俺がこれ以外じゃないことなんて
実感する事も確かめる事もできない。だから分かる真実だけを信じれば良い。これが間違っていたのか、
猿飛を傷つけたのか、犠牲にしてしまったのか。それだって俺以外のことなんだから確かめようが無い。
手早くザナミ分のお菓子とマックスコーヒーと俺の分のマックスコーヒーを買っていく。
実際兄妹だからなのかマックスコーヒーは俺もザナミも好きだし甘いものも基本大好きだ。この辺は兄妹だからなのか
元、神だからなのかはたまた魔力が多いからなのかは分からない。でも甘いものって魔力によさそうだな。
荷物を浮遊で浮かせて何も持たずに家までたどり着くと俺はザナミを呼ぶ。
すると、ものの数十秒でザナミは自分の部屋から出てリビングに下りてきた。
そしてさすがの洞察力であらかた理解したらしくいすに座ってゲームを一時中断する。
「仕事は終わったの?」
「ザナミ、いいか?仕事に終わりなんか無い。仕事はやめるか増えるかしかしないんだ。でもまあ、今日の分は終わった。」
俺は、ぶつぶつとザナミに言い聞かせてやるとザナミは引き気味ながらも笑う。それは何なんでしょうね。
哀れみとかそういうのなんでしょうかね・・・。ホント、クラスの状況とか知らない転校生の男子が
ぴりぴりしてる女子に話しかけたときに先生の前だから怒れずに「あはは・・・」みたいな笑いするのとかは怖いよな。
経験は無いけどそれでも俺、∞組に入ったときとかそういう笑い向けられたな。話しかけても無いのに。
何?それって俺が面白いんじゃない。うんうん、俺はいるだけで面白いのか。じゃあ芸人になるしかないな。
「じゃあ、ゲーム、やれるでしょ?一緒にやろうよ、お兄ちゃん」
「まあ、ゲームはやるけど。でもいいのか?お前はてっきり廃人ゲーマーで誰とも話さず暗闇で
ゲームをやりまくりたいのかと思ってたんだけど・・・。」
「いやいや違うから。暗闇でやるとか目、悪くなるし。それに誰かと話しながらのほうが楽しいじゃん。
お兄ちゃんをぼっこぼこに出来るしね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そういうとザナミは「ニコッ」と可愛めの笑顔を作る。
「いや、良い笑顔で言ってるけどそれってようは始めたばっかの初心者をフルボッコしてスカッとしたいみたいにしか
聞こえないんだけど。何?もう行き詰ったの?」
「な、違うし。でも私のところまでは簡単にいけると思うよ。キャラセレクト終わってチュートリアル進めただけだから」
ザナミは、俺が買ってきた一口饅頭をもぐもぐと言う。食べながら喋るのやめろって一応女の子だし、
むしろ女神に属される次元だろう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「まあな。じゃあ、ぱぱっと終わらせるか。」
俺は、キャラを作ってからチュートリアルを手早く終わらせた。その間にザナミはおやつタイムをしていたらしく
一口饅頭は、ほぼ空、他のものもプリンは無くなっているしクッキーも無い。だがポテチには
手すら触れられてない。何故?色々お菓子取ってるのに何で?
「なあ、ポテチ食べないの?」
「いや、それ脂っこいし嫌い。」
お、案外女の子らしい言葉が聞こえたぞ、何てばっかみたいなことを思いながら欠伸をする。
「終わった?」
「おう・」
俺が終わったのを知るとザナミは手を洗ってからゲームを始めた。
「じゃあ、とりあえずマルチクエストやろっか」
「まあ、そうだな。いいけど。でもマルチクエストって難易度高いし数十人でやる奴だぞ。
実際マルチクエストとはイベントで時期ごとによって追加され倒すと報酬と名声が手に入るのだが
その分、難易度が滅茶苦茶高く、マルチでグループ戦をやらないと勝ち目はないしそれをやっても勝てるかわからないと
警告されていた。こういうので警告されるって相当やばい証拠なんだよな・・・・・・・・・・・。
「まあ、初回だし、負けてもいいじゃん。デスペナもそこまで多くないし。」
「そうだな。」
俺もザナミに賛同し負け覚悟でマルチクエストに挑む事にした。だがしかしながら思ったように行かず
案外勝ってしまってボスのHPを5分の4以上減らしていた。これはいけるかもしれないので
これは頑張るしかない。リアルで居場所が無い俺もゲームなら居場所を作れる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・お兄ちゃん時間稼いで」
「おう。」
俺もザナミもアタッカーなのだが俺のほうが回避が得意なのでおのずと時間稼ぎも任される。
実際俺とザナミのゲーム内でのステはほぼ同じ。ようは操作能力なのだ。
「・・・・・・・・よし決めた。」
ボスを倒すことが出来無意識にそんな声が漏れた。そして二人とも力が抜ける。
「やばいね、お兄ちゃん。私たち一番最初の撃破プレイヤーだよ。それに二人で。てかお兄ちゃんなんでそんなに上手いの?」
「いやまあ操作能力もあるが俺、マイアビ持ってるしな」
「え、マジで?」
「おう。マイアビリティ『特殊ジョブ暗殺者』ってのをな。まあ、今回は使ってないけど」
「え・・・じゃあ結局は操作じゃん。でも暗殺者か・・・微妙。」
まあ、実際使いにくいことこの上ない。だがまあ俺には実に操作がやりやすいジョブなのだ。
「お、経験値もすごい。アイテムもレアなのばっかりだ。武器とかすごいのばっか。」
「あ、でも俺武器が特殊なのなんだよな。だからこの辺は暗殺者だと装備できないし。だからドロップは
お前にやるよ。」
「え、いいの?やった」
ザナミが無邪気に喜ぶ。まあ、実際装備できないからいらないしそれに装備できても妹の無邪気な顔が見られれば
結構それで満足だったりする。さてじゃあ明日も頑張りますか・・・・・・・・・・・・・。俺たちはその後もかなりゲームをやってその後、明日に備えて・・・・既に0時を越していたので今日に備えて。
眠ることにした。だがまあ、俺はその限りじゃなくて歌詞を考える為に徹夜することにしていた。
ついでに議事録を読みながら今日の会議について振り返る。どうせ暇だしまあ、眠いけど一日寝てないぐらいならどうってことは無い
俺は、まあ文系には強いしそもそも理系は得意の前考えたり暗記したりすれば解けるので俺的には強いとかそういう前提に入ってない
でもまあ文系、特に文学はその限りじゃなくてそもそも答えが無い、とかそう言う分類らしいのでそうなったときに
極めようが無いのでまあ強い弱いが出る。でも、結局答えが無い、とか人によって感じ方が違うとかそういうものって
ろくなもんじゃないんだよな・・・・。実際さ、感じ方が違ったとしてもいいって言うくせに桃太郎読んで残酷な話だと思いました
とか書いたら絶対大人たち心配するだろ?それと同じだよ。口では正解なんて無いとか人それぞれの感じ方とか言ってるくせに
結局は指令者や権力者の意見や捕らえ方が全てなんだ。古来より集団生活していたおろかな生物は
本能的にそうしてしまうのだろう。でも実際俺は違う。記憶は無いけど、でも分かる。俺のそばには誰もいなくて
それを容認してそして炎鹿の体に乗り移った。俺に「俺」なんてあるのだろうか。自我なんて持ってるのだろうか。
まあ、話がずれたが結論を言うと俺は文学が好きだ。だから、歌詞作り自体に抵抗は無い。でもそれを誰かに披露するとなると
話はまったく別のものになってしまう。オリジナル曲を作るとき、そして聞かせるときのデメリットが
いくつでも見つかるほどにオリジナル曲とは危険であり不利益なのだ。それでも一人で鼻歌程度ならまだいい。
だが多くの人の前、しかも他人の多く集まる夏祭りにそんなことをしたらホントにやばい。危険すぎる。
分からないであろうリア充のためにデメリットを教えてやろう。まず手始めに誰でも思いつくこと。
恥ずかしい。まあこれはまさかのリア充でも分かるだろうけどでもまあリア充というのは集団のリーダーの言うことなら
何でも受け入れてしまうのだ。そしてそういうリーダーになる人物は限られていて例えば猿飛みたいなやつなどが挙げられるが
それらは必ずといっていいほど非リア充どもも纏め上げその上でリア充どももまとめる力を持っている。
クラスで一緒なのに誰にも名前を覚えてもらってないような非リア充&ぼっちのやつの名前も完全に覚えていて
さらにはそういう奴としっかりと話すことで非リア充からは「あいつ優しいな」みたいな仲良くしたいオーラを出せれ、
結果的に非リア充を纏め上げ一方リア充勢にも「やっさしい・・・。あの人にならついていけるぅ」みたいな目で見られ
リア充勢を纏め上げる事に成功するのだ。俺はそういうリーダー格の奴らをリア神と呼んでいる。因みに
リア神書いて最後に(キララ)とか(笑)がつく。まあ当然っちゃ当然だろう。だって俺は元神なんだぜ。
その俺が色んな奴から「プークスクス」とか言って笑われるんだからリア神も神なんだし笑われるだろう。
そうじゃなきゃやってられるか。やってられない、マジで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
で、まあ、もう一つデメリットを挙げておくと恥ずかしいだけじゃなくその後町でも学校でも冷たい目で見られ
笑われるというのがある。因みにこれで厄介なのが笑われることだけじゃなくて周りのリア充に
「ねえこないだの歌超よかったからもういっかい歌ってよ」みたいに言われる事だ。非リア充どもよ誤解しちゃいけない。
これは決してほめてるわけじゃない。実際は「ねえこないだの歌マジ受けたんだけど。しばらくこれで笑いたいから
歌えよ、ボケナス」みたいな意味が含まれている。まあ、いいのだが・・・・・・・・・・・・。
でもホントにこれにだまされて歌ってはいけない。そんな事した暁にはもう自由な時に歌わせていいのだと思われ
何度も何度も歌わされる羽目になるのだ。でもまあ、勝手に歌ができるなんて事は無く
この世界のどの歌も誰かのオリジナル曲なのだ。それを考えると作詞家の人とかマジで命知らず。
鈍感な非リア充かリア神かのどちらかの種族としか考えられない。リア神と並ぶとか非リア充勢はすごい。
で、当たり障りの無い詩にしたいのだが実際問題、どんなに当たり障りの無い曲を作ったところで
結局はどこか痛い所を突かれる。童謡みたいなのにすれば「なにあいつ、ださ」ってなるし
ポップなのにしたら「なにあいつ、きも」ってなるし演歌にすれば「なにあいつ、古」ってなるだけだ。
だから実際、どうあがいても無駄なのだ。そしてそんなことリア神の猿飛に分かるはずも無く何の理由も無く
ただ、俺が得意そうだからって理由で歌詞作りを任せてきたのだろう。だから俺は誰かを憎めるわけじゃない。
それにどんなにリア充を憎みたくても彼らは欺瞞に満ちた日々に生きているんだ。可愛いそうに、と思えば
憎めなくなってしまうしそもそも誰かを憎むぐらいなら俺は全て自分でやる。
憎むときの人ほど、醜いものはいないから。だから俺は憎まないのである。そもそも猿飛を憎む理由は0だが・・。
「・・やばい、全く思いつかねぇ」
俺は一人部屋で絶句する。さっきから俺の脳の60%を回転させてる為体感的には30時間以上考えているのだが
まあ、実際は2時間ほどしか考えていない。まあ、それだけ思考能力がすばらしいのだが逆に考えれば
ここまで回転速度を早くして考えても無駄ってどういうことだよ。これ以上回転させるのはさすがに俺にも出来ない。
人間が10%も使えないとかいってたきがするがそれの6倍というのはマジですごい。でも考え付かないとか
世界の作詞家さんはどんだけ頭がいいんだよ。ちょっと軽くひくレベルだわ・・・・・・・・・・・・・。
でもまあ、思いつかないので寝るか、と思い俺はベッドで横になる。思考能力を使いすぎたせいで
マジで頭が痛いし眠い。でも、頭が痛すぎて眠れないので糖分でも取る為に甘いものでも食べるか・・・・。
俺はリビングに降りてもろもろを漁る。だがまあ、いいものは何にもなくまじで甘いものがマックスコーヒーと
砂糖と黒糖ぐらいしかない。あと・・・卵も甘い?いやそれは砂糖とか入れてるからだな・・・。
ほっとんど使えねえ。マックスコーヒーだけ無茶苦茶ストック買ったからすごいたくさんある。
しょうがない、これを飲んで糖分を吸収するか。ペットボトルに入ったマックスコーヒーをコップに注いで
ちびちびと飲むことにした。マックスコーヒーを飲みながらも俺はふと考え始めてしまった。
不覚にも夏祭り、仕事のことを考えてしまった。でも実際しょうがない。俺の出した案はぼつだろうし
でもパフォーマンス対決だけだと地味だ。確かに盛り上がるかもしれないけれどもそれでもまだ足りない。
何か、いい方法はないだろうか?ぼぅっとしながら考えてたので時間どおりの感覚だったがそれでも
1時間ほど消費してしまった。最後のほうにはさめ始めたマックスコーヒーを少しづつ飲んでコップ一杯分が
なくなったころには既に4時を回っていたところだった。今から寝たとして会議が9時からだと考えると
結局寝れても微妙な時間に起きなきゃいけなくなった結果、会議中に眠くなるだけだ。
それを考えると今は寝ずに何か眠気を覚ます方法を考えたほうがいい。
しょうがないので俺はやることを考えることにした。とはいってもさすがにこれ以上歌詞を考える気にはなれずにとなれば何をやるかと言うことだが
今回の会議もかなり遅くまでやりそうだということを考慮するとやはり腹ごしらえが必要だという事が思いつく。
それを考えれば昼飯を作るべきだろう。どうせ腹へって買出しに行って来なきゃいけないわけだしそこで
ああだこうだ言われても面倒なだけなので大人しく全員分作ることにした。となればサンドイッチとかおにぎりとか
そういう系の奴がいいだろうか。でも、どっちかに偏ると米派とパン派がいた場合めんどくさいし両方をある程度
作ることが大切だと思う。ホントめんどくさいことは回避したいのが人間であって俺である。
なので、ある程度の手間はかけてもめんどくさいことにならなければ良い。やばいな俺。気付かないうちに社蓄になってしまったか。
ホントにマジで怖い。将来が不安。マジで奉仕活動とか無理、マジで。一生働きたくないのに駄目妹のせいで働いてしまっている。
・・・くっそ・・・。いいんだ。将来、将来大きくなったら養われるから。そのときに備えてもらってくれる人を探そう・・。
ん?よく考えたら俺をもらってくれる人とかいないじゃん。やっばいな。でも、誰かもらってくれる人はいるはずだ。
と言う事で俺は、米をたき食パンの耳を切りそしてスライスする。冷蔵庫から野菜をいくつか取りそして同時に
ハムやら何やらの地味な肉っ気のあるものを取り出す。そして色々と加工し・・・・・ここは企業秘密である。
別にマヨネーズを砂糖と絡めてハムに塗ってからサンドしたりはしていない。マジで。こら言っちゃうとホントに
もらってくれる人がいなくなる。そういう隠しだまはしっかり取っとくのが吉。さもなく養ってもらえなくなっちゃう。
さて、サンドイッチは終わり次はおにぎりなのだがこれが一番難関といっていい。何故なら人によって好みが大きく違い
鮭が好きな人もいれば昆布やらおかかやらが好きな人もいるし勿論何もいれずに塩だけってのが好きな人もいる。
だがちょっと待って欲しい。これからピクニックに行くリア充どももそれを妬む非リア充どもも待って欲しい。
俺が、おにぎりで完全無欠失敗しないお弁当作り(集団用)を教えてやる。これは俺が長年集団に入れてなかったであろう
憶測から編み出した究極の秘技であり実際のところ何の確証もない。まあ、こんな俺だ。集団に入れてはいなかったのだろう。
でまあ、そこの皆さん。おにぎり作りのコツですが皆さんはどうやって作ってますか?中身は分からないようにする?
あえて分かりやすいようにして好きなのを選んでもらう?でも待ってくださいよ。よく考えてみてください。
中身が分からなかったら出た中身が嫌いだったときに雰囲気悪くなりませんか?ある程度の新密度があればまだしも
そんなに仲がいいわけじゃないような奴が作った奴だと尚更。むしろそんな奴の弁当食べたくないとかそういうのはおいといて
どっちにしろそういう時って困りますよね?でもそんなときの裏技をご紹介いたしましょう。でもその代わり誰かもらってよ・・・。
まずステップ1.おにぎりを作る準備をします。これはいつも通りやって大丈夫です。あ、塩とかはそこそこまぶしとく事。
これしないと随分味気なくて食べる気なくされます。でもまあそれd目お言い寄って言う人や砂糖じゃ駄目?
って言う人はもう諦めて自分で作ってください。・・・さて続けます。
ステップ2.人数分のおにぎりを作り一つだけに辛すぎてやばい唐辛子マックス、もしくはわさびたっぷり
またはあっまいクリームをたっくさんを入れて形を整えましょう。この時感情を捨ててください。
変に躊躇うと何の意味もなくなり逆に失敗します。躊躇なんかせずに徹底的にやりましょう。普段の恨みとかはこめてOK.
ステップ3.お弁当箱に昆布や鮭、おかかなど具をおかずとして詰めます。こうすることによって皆が好きな具を選んで
それぞれトッピングしながら食べることが出来、更にロシアンルーレット風でこいつできる的な印象を持たせられます。
と、言う事で俺はおにぎりとサンドイッチを作り終えてお弁当箱に詰めた。その頃には既に7時になっており
俺はザナミを起こすとさっさと着替えて会議に行く準備をした。それと同様にザナミも寝ぼけながらも
着替え始め、髪を整え顔を洗った。すると驚くことにザナミはスッゴイ切り替え能力で顔を洗った瞬間に外用フェイスに
チェンジされている。これには俺も驚いた。というかどっちが素なんだかわかんなくなってきた。
「よし、じゃあ行くかお兄ちゃん。・・・てか、それ何?」
「あ、ああ弁当。どうせ今日も昼挟んで遅くなるんだろうからな。それで買い出し生かされるのも嫌だし。」
「へえ、やッさしいんだねお兄ちゃん」
「馬鹿か。俺は滅茶苦茶優しいんだよ。それに気付けない社会とかマジでもう冷酷」
俺はそう自慢げに言い返すと鍵を閉めて学校まで飛ぶことにした。因みに浮遊のおかげで崩れたりは絶対しないので安心。
それからものの数秒で会議室にたどり着くと上履きを履き各々の席に座る。少しして魔王先生が入ってきた。
するとこちらを見て驚いた様子を見せ、その後こちらに向かってきた・・・・・・・・・・。何?
「おお、どうした。随分と早いじゃないか。君もやる気が出てきたのかね」
「まあ暇だったんで早く来ただけですけど。そもそも俺物事にやる気がないだなんていってないでしょ。」
「見てれば分かる」
先生は微笑みながら俺の頭をごしごしとこすって言う。そのときふと思う。先生は何故俺を告白部に入れたのか、と。
初めの時も何も言われずにただ命令だとしか言っていなかった。まあ、人数が足りないというだけかもしれないし
面白そうだったからというだけかもしれない。でも、俺には不思議に思えた。何故なら先生だって俺がこの世界を
救わなければならないことを知っているのだ。知っていてそれでいてわざとこの部に入れた。先生は
こういう一人ひとりに向き合うしかないといっていたが実際この部に入らなくてもそんな事できたはずだ。
なのになんで?そんなことがふと疑問に浮かんで聞いてみたくなった。
「先生、先生は何で俺を告白部に入れたんですか」
「・・・・・・・・まあ色々あるのだよ。それをまだ君が理解していなかったのは少しばかり残念だがでもまあ当然か。
・・では逆に聞こう。この部活に入って、入らされて後悔しているか?」
「後悔ってのは選択肢を持つ人間が言う言葉ですよ。俺は、あの時選択肢を持っていなかったしだから後悔なんて出来ませんよ」
「ふ、やはり君は面白いな」
先生が悲しげに微笑む。それが何故か心苦しくて何を考えているのか分からなかった。観察眼や腐敗を使ってもそれでも
分からなかった。だからなんとなくそれが怖くもありそしてそれに惹かれもした。それからしばらくして月橋やシガネ、さわやかイケメン君や猿飛、リリス先生が到着し会議が始まった。
「今日は、先日話し合ったことについてもう一度話し合う。先日の服部の意見についてだ。
何か意見があるものは、即急に提案したまえ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
先生がそういって、全体がずぅっと重い雰囲気になった。沈黙が続き30秒しか経ってないのにずっとこうであったかのように
長く長く感じた。元来、人間とはそういう生き物である。都合のいいときは短く感じて都合が悪いと長く感じる。
これが、人間にとってはただただ苦痛であるしそれにそうやって時間が一定に感じられないから人はすれ違うのかもしれない。
だがまあ、その沈黙を破ったのは猿飛である。さすがにこいつはやることが違う。皆が何もいえないような雰囲気を破るのは
きっと選ばれたリア神にしか出来ない。俺なんかがやっても実際その発言力のなさから打ち破るなんてことは出来ない。
だからこいつは俺たちをまとめられるのだろう。リア神様なら俺たちみたいなろくでなしでも助けてくれるのだろう。
「やっぱり昨日の案には賛成できない。やっぱり危険だし安全性もない。確実性もないのにわざわざトラウマになるようなことをして
危険を冒す必要はないと思う。そんなことして失敗したら来年からの来場者もかなり減ると思う」
「まあ、それは言えてるな。俺も確かにそれは思っていた。でも今のままパフォーマンス対決だけだと派手さに欠ける。
実際派手さや質を求めないなら今のままでもいいけど。俺働きたく無いし。でもこの練習にだって1ヶ月くらいは
掛かんないだろうからだったら今のうちにやることだけでも決めておいたほうが後で暇をもてあそばなくて済む」
俺が猿飛に聞くと猿飛はあごに手を添えて考え始める。実際俺自身働きたく無いのだからやる事がないならそれに越したことはない。
でもこういう場合よくあるんだよな。時間余っちゃったしなんかやろっか?とかなってでも何やるか決まってないからマジで
急がなきゃいけなくなって決まっても色々やるのにすごい時間が掛かって結局、スッゴイ働かされること。
だから何でこういう記憶だけ残ってるんだよ。ホントこういう微妙なの気持ち悪いから記憶が戻って欲しい。
「うむむ・・・・・。確かにそうだね。でも何かやること決まってるの?」
「いや、それを考える為の会議だろ?何で俺がそこまで考えなきゃならんのだ」
「え・・・・・考えてないの・・・・・・・・・・・・・・」
いやいやなんで月橋とシガネがそろって引いてるんだよ。実際、俺がそこまで決めてくる筋合いも無いしそもそも誰か一人で
決めてしまうと「勝手に決めないでよ」的に言われてしまうのが定石なのだ。つまり考えないのが正解だというのに
考えても考えなくても地獄ってどんだけの拷問だよ。マジで俺も引くんだけど・・・・・・・・・・・・・・・。
「まあ、じゃあほかの事を何かやるのに反対な人」
猿飛が多数決を取ると誰も手を挙げなかった為他の事を何かしらやるってことになった。ああ、何で俺はもう一つ
やるなんて意見を出してしまったのだろう。まあ実際いつかやらされるのでしょうがない。仕事ってのは
予想してやんないと後々スッゴイ量のノルマが降りかかってくるのだ。なにそれ、仕事怖い。俺はマジで働かないことにしよう。
「よし、じゃあ意見がある人・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
猿飛が聞いてまたしても全員黙ってしまう。さすがにいい意見が思いつかないようで皆だんまりしてしまっている。
まあ、それが当然なのだ。考えてなかったことを聞かれても答えられないし普段楽しむ側の意見なんて
そう多くないのが実情だ。遊園地だってそうだ。お客さんなんかより従業員の人のほうが色々知っているし
実際に楽しむ側の意見を反映した乗り物は安定的に受けるこ当事者の意見なんてはない。元来、薄っぺらいし
自分優先の考え方だから自分以外が楽しめるような意見じゃない。提供する側の意見だって実際そんなものだ。
重要なのは普段から見る側にいる人物。第三者、全く無関係の外野の意見である。これの場合、当事者では分からないことに気付き
更に当事者の様子を知っているため当事者が統計的に何を好み何なら好まれるのか、が分かるのである。
つまり、当事者以外の第三者とかは最強であり非リア充どもは遊園地に行くリア充どもをうらむ前に彼らをかもにすることを
考えるべきだ。彼らの様子を眺めればおのずと結果は見えてくるのだから後は簡単だ。だからそれで商売してしまえば
ニート生活が出来るわけだ。やばいな俺、天才だ。これで社蓄になんかならなくて済む。これで人生勝ち組だ。
で、当然のごとく意見は出ない。意見が出ないという事はもうしょうがないのでほかの事をするしかない。
「このまま意見が出ないなら、とりあえず今日は本番のプログラムとかその辺を考えちゃったほうがいいんじゃないの。
決まってないところだけ開けておいてなんかやっといたほうがいい。有志だって人を集めなきゃいけないんだし
その辺考えたらそっちのほうを先にやっちゃっといてからでもいい。このまま意見が出ないで一日消費するよりはいい」
俺が、司会?の猿飛に提案する。でも、有志とかは集められてもその辺色々やるのめんどくさそうだな・・・・。
「そうですね。屋台とかやんなきゃってこと考えると早めに何とかしといたほうがいいですもんね」
ザナミが同意するとドミノ倒し式に他の奴らも賛成した。多分全員、このままずっと黙って何もしていないのにも
痺れを切らしていたんだろう。それは猿飛とて同じことらしく「そうだな」と賛成を出していた。
「先生どうしますか?今日の会議の議題を変更してしまったほうがいいのではと思うのですが?」
「まあ、そうだな。有志とかを集めたり屋台の参加店舗を決めたりルールを決めたりするのにも時間が掛かるし何より
ホームページを作らなきゃいけないからな。あれは、そろそろ挙げないとまずい。」
「じゃあ、何でそっちを先に言わないんだよ・・・・・・・・・・・・」
「何か言ったか?」
俺が独り言を言ったのを聞いて先生がピクピクとこめかみを震えさせながら言ってきた。いや、でもそうでしょうよ。
締め切り迫ってるのに言ってくれない先生が今回は悪い。後は社会と神が悪い。そして先生が悪い。
結果的に先生が悪いと行き着いちゃうあたりホント、ちっちゃい人間だなと自覚してしまう。会議の議題はその後、有志集めの為のさまざまな行動やホームページの作成について、そして屋台を出すに当たっての
ルールの作成に変わった。まあ、これらは実質目立たない仕事ではあるのだが実を言うとこういうことが一番大事になっている。
ホームページはいまどき作ったほうがいいしまあ、それはうちの高校のサイトにページを作るだけなのだが
それでもまあ、重要である。更に言えば俺たちは夏祭りの企画運営等々を全任されておりそこは、近所の人が・・と思うのだが
実際のところ毎年毎年地域との交流をコンセプトにしてこういった交流の機会を逃さないようにしているそうなので
その希望も既に絶たれている。それを考えると案外今の状況はやばかったりもするのだ。忙しいわりに人は少ない。
まあ、功ステータスが人もいるのだから何とかならなくもないと思わなくもないのだがスピードステータスは
ダッシュした時の早さであって仕事の速さとかは知能だったりやる気だったり手際だったりが一番重要になってくるため
ステータスはあんまり関係なかったりするのだ。だから実質的には普通の人間がそろっているのと変わらない。
むしろ高校生なので仕事にも慣れて無いし手際が悪いのだから効率が落ちるのはまず当たり前である。
そして力仕事だってさわやかイケメン君に任せないと後の奴らはありすぎて壊してしまう危険性がある。
力仕事といえばまあ荷物運びとステージ作りぐらいなのだがこの後いくらでも増えていくし前者は俺にも出来たとしても
後者はまず厳しい。実際繊細な作業は得意なのだが力ステータスが高すぎるあまりどうしようもない。
と、思っていたのだが実はものすごくいい案を思いついてしまった。自分をステハントしてしまえば一時的に
力ステータスを減少させて力を制御出来るのだと思いついたので後で練習しておこうと思う。
だがその前に、今はそれよりも解決するべき事案がある。いや実際は全部解決すべきなのだが最も重要視されるのが
有志の募集と広告だろう。これは遅れるわけにはいかないし出来るだけ早く終わらせないといけないような事案である。
何せ、有志として参加すると決めてから色々とあちら側もこちら側も準備するわけでこちら側の準備に2週間は
少なくてもかかるわけだからバッファを取って3週間前までには確実に参加者を定めておきたい。それを考えると
現状の最優先事項は有志の募集である。それと同時進行で広告も進められるだろうからそれもやらなくてはならない。
こんなかで絵が得意なやつって誰だろうか・・・・・・・。月橋は・・・ドジで雑そうだしシガネは・・・・まあなんともいえない。
魔王先生は・・・・・でもまあ何でも出来そうだがさすがに忙しそうなので頼むわけにも行かないし
リリス先生は・・・質には期待できそうだけど実際遊んだような絵を書いてしまいそうだ。ザナミは・・どうなんだろう。
でも、ゲームとか見るにかなり繊細な指使いが出来るから多分結構上手く書けると思うのだがでもまあ期待しちゃいけない。
さわやかイケメン君は出来そうといえば出来そうだけどでもいろいろと制作のほうに時間を割いてもらうことになりそうなので
さすがに頼め無い。それを考えると猿飛が一番無難でセンスがあるように見えてきたのだがでもよく考えると
これも中々いい案ではない。そもそも猿飛の場合、完璧すぎて手作り間が失われる為広告感が出ない。
「じゃあ、あれだ。広告については後で考えるとして有志募集のホームページは、告白部でやる。
そしたら、猿飛は先に首脳部で集まって日程の調整とかその辺をやっといてくれ。会議の日時とかその辺を決めて
そのほかにも締め切りの設定とかその辺をやれるだけやっといてくれ。俺が終わったらやる。
その辺は上手くバッファをかけながら調整しておかなきゃいけないから慎重にでも早くやってくれ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「おい、何で黙るんだよ。気まずいだろ。」
「いや、ハトがそうやって仕切るのはじめて見たから。」
「私も同じです。」
「うん。お兄ちゃんってそんなに上手く仕切れる人だったっけ?」
「ああ、それは私も思ったな。服部もついにやる気を出したってことか・・・。」
「師匠、何か仕事してるみたい・・・」
「服部がこういう仕切るのをやるのって意外だな。でも案外適職かもしれないな」
「おい待て。俺の適職はニートと専業主夫とぼっち国の国王だ。それ以外はありえない。」
全員がそろいもそろって俺のことをディスるので俺としてもいらっとして猿飛の言葉いちいちに屁理屈で返してしまう。
それにしても何?人が折角指示してあげてるのに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「まあ、そうだな。じゃあ俺は先生と話し合って設定して来るから告白部の人はホームページあげといて。」
咳払いをしてから猿飛が言うと全員フリーズから解け、それぞれが動き出した。
「あ、さわやかイケメン君とザナミはどっちだろうな・・・・・・。とりあえず二人とも猿飛について行ってくれ」
「分かりました・。」
「了解、お兄ちゃん」
二人がそういってから猿飛の指示を受けるのを確認して告白部の連中も仕事を始める事にする。
それにしても大変である。実際有志を集めるだけといっても前例をしっかりと確認しておいてそこから募集条件なんかを
記載しないと万が一にも去年と違かったときになぜ変わったかという変更理由を確認される場合がある。
なのでそれを考えるとしっかりと過去の前例を見て今までにどれぐらいの有志が集まったのか。
どのような有志が多いのか。そして募集条件や募集方法を確認しておくのである。それをしないとマジで大変だし
それをするとなると資料を読まなくちゃいけないので更に大変。なにこれ?マジでやばくない。
仕事がたくさんあるのだが既に時間は13時を回っている。お腹も減ってきた頃合なのでそろそろお弁当を食べようかと思う。
「なあ、腹減らないか?」
俺が全員に呼びかけると皆、時計を見て「あ、もうこんな時間か」などとつぶやいた。まあ、色々話し合ってたので
そりゃ当然だろう。結構沈黙の時間も長かったし何より会議が脱線しすぎた・・・・・・・・・・・・・。
「まあ、そうだな。誰か買出し行って来るか。近くにコンビニがあるそこでよかろう。・・・・・皆忙しいか・・。
じゃあ、私が行って来るか。買ってきて欲しい物はあるか?なければ適当に選んでくるが。」
魔王先生が悩みながら言うが正直なところ場所はどこにしようかと悩んだりとかそういうのは無駄である。俺が作ってきてるし。
だが、この場で言い出すのもちょっと気まずい。気まずさとは気まずさどころか人や空気とも無縁の俺でも
さすがに気まずい。まあ、実際のところ何が気まずいとか聞かれると「いや、ここで作ってきたとか言ったら何か
料理できるアピールっぽくてうざいとか言われそうだから」としかいえないのだがでもそれでも立派な理由だ。
でもまあ、そんなこといってる余裕もない。ここで言わないとマジで買いに行ってしまいそうだ。その場合「ああ作って来なきゃ
よかった。グウウ・・・・・」などと後でベッドにうずくまってなくことになり結果的にトラウマになってしまうので言うしかない。
「先生、俺作ってきたんで」
「そうか。じゃあ他の奴ら。何か欲しい物はないか?」
「え?」
俺が勇気を出していったんだが先生は俺の予想を裏切る発言をする。は?意味不明何だけど・・・・・・・・・・・・・・・。
他の奴ら・・・・・まさか俺が自分の分だけ作ってきててだから自分の分は要らないっていってるように聞こえたのか。
「あ、じゃあ私サンドイッチでお願いします。」
「私は・・・おにぎりで」
「あ、じゃあ僕もおにぎりでお願いします」
「俺は、サンドイッチで。
「サテラ。私はサンドイッチとおにぎり両方お願い」
やばい。全員要望を言い出した。ホントにまずい。このままだとベッドにうずくまって「くっそ・・・・」なんていって
号泣した結果トラウマになって二度と料理はしまいと決意してしまう。何とかして言い直さないと。
「ストップ。俺が言ったのは自分の分だけってことじゃなくて全員分弁当を作ってきたので買出しとか大丈夫ですって
意味なんですけど。それとも俺の作った飯なんか食べたくないからあえてスルーしましたか?」
「は?」
俺の言葉に場の全員が驚いたような素振りを見せる。やっぱり素で気付いてなかったか。もしホントに俺の作った飯を
食べたくないからスルーしてたならザナミが作っただのなんて嘘だぜだの言ってごまかして
引きこもりになって山とか全部壊しちゃうところだったぜ。でも、これはこれで傷ついた・・・・・・・・・・・。
あれなのかな。俺は人の分を作るような優しくて温厚な奴に見えないのかな。気付いてくれよ。俺平和賞もらえる並に
優しくて平和的だぞ。俺が並みの人間なら既に世界滅びてるしそもそも俺は友がいつもいないわけだから
昨日の敵は今日の友理論からするにいつも敵がいないことになる。やばい、俺超平和的。マジで平和のカリスマ。
「いや、まさか服部が全員の弁当を作ってくるだなんて想像もしてなかった。働きたくないからって言って
頼まれてもやらなそうだというのに。君も変わったものだな。先生うれしいぞ・・・・・・・・・・・・・・・」
魔王先生がマジで感心した感じで俺をまじまじと見ながら目をこすって感動の涙を拭く。おい、そんな快挙的な出来事かよ。
「俺ってそんな目で見られてたのかよ。まあ、間違いじゃないけど。まあ、今日は寝れなくて暇だったから暇つぶしにやっただけだ」
俺が誤魔化すように言う。まあ、実際暇つぶしも大きな理由の一つだけど買出しに行きたくないってのが理由だったからな。
先生が行ってくれるなら俺、作らなくてもよかったかもな・・・・・・・・・・・・・・・。ま、いいけど。
「嘘、ハト料理できるの・・・・。嘘でしょ・・・・。ま、まあハトのことだから手抜きかもしれないし・・・」
「おい、ちょっと待て。その驚き方おかしいだろ。俺は主夫志望なんだぞ・・・。それぐらい出来ないとやっていけない。
あ、ニートにも料理スキルぐらいは必要だからな。まあ、実際料理スキルなんてないけどよ・・」
月橋がリアルにすごく驚いていたので言い返したがこの驚き方はもしやこいつ料理が出来ないんじゃないか?
という結果にたどり着く。いや、まさかな・・・・・・。まさか。あはは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「まあいい。サンドイッチもおにぎりも入ってるから要望にこたえられるとは思う。」
俺が一言添えながら弁当箱を開けるとまたしても全員があっと、驚いた。おい、喧嘩売ってんのかお前ら。
お金払って殴られなきゃいけないとかそんなの買う奴居ないだろう。あ、Mには多いかもな。全国の商人さんは
喧嘩を高値で売る事をお勧めする。全国のMの奴らが必ず食いついてくるに違いない・・・・・・・。
「嘘・・・ここまできれいに出来るの・・・・。意外と家庭的なのかな・・・・・・・・」
月橋がぶつぶつ言ってるのはとりあえず無視して俺は説明をしておくことにする。質問が来る前に先回りするのは鉄則だ。
「おにぎりは具の好みがあると思ったので何も入っていない。だからおかずを選んで好きに食べてくれ。
因みにこの中に一つ激辛おにぎりが一つ入っている。まあ、それが分かるようなものは一切ない。」
「え・・・・・ロシアンルーレット・・。私辛いの苦手なのに」
「激辛ってどれぐらい辛いんだろう?食べてみたいかもしれない」
シガネと猿飛が言ってるのをよそに俺はサンドイッチの箱も開けた。こっちは彩と味に十分に配慮をしたので
自信がある。あ、飲み物。飲み物忘れたな・・・・・・・・・・。まあ飲み物は会議室の前に自販機があるからいいけど。
「じゃあ俺飲み物買ってくる。何か希望はあるか?」
「あ、私も行く」
俺が全員に言うと月橋が同調して言う。あれなのか?一応料理作ってきてもらったし気を使ったほうがいいんじゃないか的な
考えなのか?それなら申し訳なかったな。俺的には食事の買出しが面倒だったから作っただけだったんだが・・・。
「いや、お前は待ってろよ。すぐそこだし」
「全員分は持って来れないでしょ?」
「いや魔法使って持ってこれるけど。」
「で、でもいくの。皆は何飲みたい?」
何か強引に納得させられたがまあいいか。月橋が全員に要望を聞いて俺は会議室を出て自販機に向かう。
全員分の飲み物を買う間。ぼうっとしながら待っていると月橋が怒ったような様子でこちらを向く。
あれ?何か怒る事しましたっけ・・・。アレレ怒られないようにしたつもりなんだけどな。こいつ怒ると地味に怖いからな。
「何で先行っちゃうの?」
「いや、どうせすぐなんだし一人でいいだろ。」
「でも、一緒に行くって言ったじゃん・・・・・・・・・・・・。」
案外怒ってはいないようでむしろ拗ねている様な感じだった。それはどこか悲しげでもあったため何故か心が痛む。
「まあ、悪かった。今度から気をつける。今度があるかはわからんけど」
一言そう謝っておくと月橋は少し明るい顔になった。やがて全員分飲み物の買出しが終わり会議室に戻る。会議室に戻ると既にサンドイッチを食べ始めていた。食べながら仲良く話しそしてまた食べて話す。その繰り返しだ。
まあ、実際人生なんてそんなもんだろう。食べる為に働いて食べるときは知ってる人と集まって仕事の愚痴を話しながら食べ
そしてまた働いて愚痴をこぼしながら食べる。その繰り返しが人生だといってもいいのだろう。
だがそういう場合、その愚痴を話す人間がいない者はどうしているのだろうか。例えば俺が大人になって働くとしたら
どうなってしまうのだろうか。一生一人で過ごしていく勢いの俺に誰かが寄り添ってくれるのだろうか。
もし寄り添ってくれても、それは哀れみから来た欺瞞じゃないだろうか。そんな風に考え続けているうちはきっと
何も変わらないのだろう。でも、変わらなくてもいいのかもしれない。俺自身一生このまま一人でもいい。いや、訂正しよう。
今は、一人じゃない。何人かに囲まれてそれが欺瞞であれホンモノであれなんであれ一人じゃないのだ。これを一人なんていったら
それは俺が愛した孤独への冒涜だろう。だからこれを孤独なんていわないしこれをホンモノとも思わない。
一人でいることだけが真実だったはずのそう思っていたはずの俺のたった一つのホンモノは孤独でいる時間だったのだ。
だから誰かと一緒に居る時間はきっと孤独じゃない。
「友達に好かれようなどと思わず、友達から孤立してもいいと腹をきめて、自分を貫いていけば、本当の意味で
みんなに喜ばれる人間になれる」
これは、洋画家岡本太郎が残した言葉だ。訳すのならば人に好かれ様としなければ(一人でいれば)周りに迷惑をかけずに済み
周りから喜ばれる人間になる、ということなのだと思う。つまりこの人はぼっちを肯定しているのだ。
本当の意味で喜ばれるの「本当」が何かだなんて誰かに決められるものじゃ無いしそもそもその本当が周りと同じほうが
珍しい。だとするのに周りと同じだというのならそれはもう気持ち悪いしそれはきっと建前を履き違えているだけだ。
「細道で犬に出会ったら、権利を主張して咬みつかれるよりも、犬に道を譲った方が賢明だ。たとえ犬を殺したとて、
咬まれた傷は治らない」
これはかの有名なアメリカ大統領リンカーン氏が残した言葉だが争わないことはすばらしいのだと、そういっているに違いない。
あくまでも俺の解釈でしかないがでももし実際そういう風に言いたかったのだとしてそれが何だというのだろうか。
傷なんてもの譲ったところでついてしまうのが常識だ。実際道を譲らないと噛み付いてくるような犬が譲ったところで
噛み付いてこないなんて保障は無いし現実だって同じだ。議論がぶつかり合ってそれで譲ったところで後々、
あいつはあーだのこいつはどーだのとないことあること混ぜられて傷をつけられるだけなのだ。きっとこの人は
ぼっちのことを全く理解していない。そもそも誰かの心を理解するほうが難しい。何せ人というのは自分が生きているという事以外
実感する事はできないのだ。むしろ人はそれすらも実感できていないかもしれない。死の恐怖に立たされたり
自分を見つめ直さなければ自分なんて見つから無いしそれをやったところで見つかった例のほうがきっと珍しい。
だというのに他人を理解できるはずがない。他人の痛みを想像はできても実感する事はないのだ。意識がつながっているわけ
じゃないのだからすべて幻影だといわれてしまえば何もいえない。温かみを感じるなんていったってその感覚も夢だったら
意味は無いしだからこそ人は他の人なんて理解できるはずがない。理解できないものと生きるなんて不可能だ。
だから俺のように一人で生きる事は間違ってはいないはずだ。偉人達だってぼっちを肯定してくれるし
天才は人間関係に何があった人が多いとも言われている。だからぼっちは間違ってはいないのだ。
だから何の不安もない。こんなことを考えているから不安が出てきてしまうだけである。思考を全部しまいこむ。
「よし、じゃあ全員そろったしおにぎりを選ぼうか。じゃあじゃんけんで買った人から選ぶってことで」
猿飛がそう提案すると全員承諾してじゃんけんが始まる。俺ははずれがどれか知っているため参加が許されず
まあ、結果的に残ったのを食べるという事になった。そして全員じゃんけんをしてわいわいとはしゃぐ。
若干辛いのが苦手な軍勢たちがぴりぴりとしていたのはあったがでもまあそれも内輪ノリって奴だろう。
そして順番が決まり決まった順番どおりおにぎりを一つずつとっていく。と、そこまでしてふと思い出す。
何を思い出したかといえば実を言うとさっき寝ぼけていて二つのおにぎりを激辛にしてしまったのだ。
一つ目は分かるが二つ目がどれかは分からない。やばい、残ったのが二つ目だったらどうしよう。
世知辛いのが世の中であり人生なのだから食べ物ぐらい辛くなくてもいいじゃないか、と思ったので俺は辛いものが苦手だ。
だからはずれでも引いたらやばい。幸いなことに残った一個は一つ目のはずれでは確実になかった。
「じゃあ、せーので食べよう」
月橋がそういう。さて、ここで注目したいのが一つ目のはずれの位置だがザナミのところに行っている。
そういえばザナミは辛いの苦手だったっけか?まあ、あんまり話してないので分からないけど。
「「「「「せーの」」」」」
女子勢がのりのりで言うと俺を含め全員がおにぎりにかぶりつく。すると悲鳴を上げたのは意外な人物だった。
「辛い・・・・・・から・・・」
悲鳴ともいえないような弱弱しい声でシガネがつぶやくといすに座り机に伏せて半分気絶したようになった。意識はあるみたいだ。
「辛い・・・飲み物・・・・・」
シガネは、俺たちが買ってきたオレンジジュースを急いで飲む。すごく飲み込むのが大変そうだ。
「・・・お前、何を入れたんだ?」
「あ、えっとこの世界で一番辛いと名高い唐辛子『バステル』をジェルにしたものをまあ、10グラムぐらいと
後はこれまた一番からいと名高いわさび『ハツマレワサビ』をすったものを5グラム程度・・・・・」
「は?それだけ入れたらまず、意識が飛ぶような辛さになるぞ。馬鹿なのかお前?」
魔王先生に叱られ半分呆れられ半分で言われながら俺はザナミの様子を伺う、だが全く辛そうな素振りがない。
まさかこれは七美徳の親切による人当たりの補正なのか?それとも怠惰によってリアクションがめんどくさいと判断されたか・。
「ザナミ、お前それちょっと食べていいか?」
「いいけど・・何?」
俺はザナミからおにぎりを受け取り一口食べる。まあ、間接キスなのだが兄妹だしそんなの関係ないだろうと思っていたら
月橋もザナミも、つまりは比較的若い女子勢はシガネ以外(気絶中)顔を真っ赤にしていた。うそ、普通そんなの駄目なの?
だが、そんなこと考える余裕もない事態になっていた。
「かっら・・・・・・。お前、何でそんな平然としてられるんだよ・・・・・ぐ・・」
俺も正直毒を盛られた気分になりいすに座り伏せてしまう。口がしびれてめまいさえする。
「うそ?そんなに?食べてみよっかな・・・・・。」
そういうと月橋がおにぎりを一口かじる。これも間接キスになってるのに俺のときと違って反応していないのは差別じゃねぇの?
なに俺、そんなに気持ち悪がられてるの?酷くないそれ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「た、たいあにかあい・・・・うう・・・・ふゆ・・・・・ゆゆ・・」
月橋はマジで辛いのが無理なようでいすに座ろうとするがバランスが保てないのかこっちに倒れてくる。
見事に告白部3人がノックアウトされたのであった。少し気絶しそうになりながらもマックスコーヒーをごくごくと飲むことによって何とか中和され意識を取り戻すと
何とか立ち上がり他の被害者二人に近づき「大丈夫か?」と声をかけながら背中をさする。するとまあ二人そろって
びくっとしてこっちを見て来た・・というとあれだが睨んできた。まあ、一時的なものですぐに睨むのをやめたのだが
でも俺の扱い酷くない?何?そこまで俺って触られたくないような人間なんでしょうかね?いや神だけどさ。
そういえばこういう時は力抜けてるんだな。何でだろ?やっぱり何も意識しないとこうなるのかな?力について
何か意識しちゃうと力が入っちゃう感じっぽい。これってかなり不便だな。でもまあ参考にしよう。
「えっと・・・思ったより酷かった。すまん。今度から気をつける。」
俺は被害者の二人に謝罪の弁を述べるとザナミのほうを向いて口を開く。
「お前、どうしてあんな尋常じゃない辛さのもの食べて意識を保ってられるんだ?まさかそれもスキルなのか?」
「そんなわけないじゃん。辛さを中和するスキルなんか存在しないよ。・・・あ、酸耐性とかは別かも。・・まあそれはいいけど
私結構、辛いの大丈夫だからこれくらい余裕だったよ。あ、でもちょっとワサビはツーんとしすぎてたけどね」
当のザナミは何てことなかったかのような顔をして平然と言ってのける。嘘だろ・・こいつ。この辛さが余裕だと・・・。
俺は、確実に顔を引き攣らせていた。やばい・・・・マジで超人なんて次元じゃない。告白部三人を倒したこの辛さを
一人で乗り切ってしまうなんてこいつ異常だ。ちょっと怖さすらある。だが、同時にどこまでなら余裕なのか
試したくもなった。平たく言えばこいつにも「からーい」とかいう悲鳴を上げさせたくなった。
「よし、勝負だザナミ。まだ、唐辛子がかなりあるからどこまで耐えられるか勝負しろ。お前が勝ったらお前の
欲しいものをくれてやる。どうだ、いい勝負だろ?」
「・・・乗った。でもその代わりおにぎりは飽きたからカレーにして。」
「うむ、面白そうだな。では今日の夜その勝負を行うのはどうだ?そうすれば私も辛いものを集めてくるしここにいるメンバーを
集めてパーティー感覚で勝負を見ることができる。それに全員が審判になればズルも出来まい」
「・・・そうですね。じゃあ勝負は今日の夜7時から行う。で、他に来るやつは?」
俺がそう告げるとこの場にいるメンバー全員が手を挙げた。月橋とシガネも若干疲労の色を見せながらも手を挙げている。
宇和・・・・涙目になってるよ。超ウルウルしてるし。ていうかこういう風にみてると二人が可愛く見えてくるな。
・・・・いや実際この二人は男子からの人気もすごいし二人ともスクールカーストも上位にいるのだから可愛くて当然なのだが
でも、そういう意味じゃなくて告られたらOKしちゃいそうな可愛さ・・というかあざとくない可愛さというか
疑わなくていい絶妙な天然の可愛さというか・・・・・って何を語ってるんだ・・恥ずかしい・・・・・・。
「じゃ、今日は2時まで仕事したら一回解散にしよう。」
魔王先生が沿う提案したのを皆承諾しサンドイッチなどをわいわいと食べながら昼飯を終え、仕事に戻った。
だが実際のところ俺の今の仕事は資料集めで、それもこの学校の地下にある超広い資料室の中から探さなければならないため
かなりの時間が掛かる。今日のところはどこの辺にどんな資料があるかを探るだけで終わりそうだ。
資料室をとことこと歩いていると1冊落ちている本を見つけた。それはすごく砂を被っていて
払ってぱらぱらとめくると資料でないことが分かった。どうやらこれは童話らしい。題名は「払う腕」だ。
その題名の意味もいまいち分からなかったのだがどこか無性に引かれた。だからこの本を借りていくことにした。
さて、資料の場所を把握する事40分。まだまだ作業は進んでいないが2時になり解散することになった。
その後、先生は「辛いものを用意する」とのことで立ち去った。猿飛もちょっと用があるからといって帰ったが
一応勝負には来るらしい。リリス先生もそんな感じだ。さわやかイケメン君は残念ながら夜剣術の学校があり来れないとの事だ。
月橋とシガネは俺と一緒に辛いものとカレーの為の買出しに行くことになりザナミは大人しく家にいることを指示されている。
と言う事で俺は二人と一緒に買出しに行ってるわけなのだがちょうどいいのでここで気になってたことを聞こうと思う。
「なあ、月橋。」
「ん?どうしたの?」
「いや、お前って料理できないのか?」
さっき俺が昼飯出したときにぶつぶつと何か行っていたので確認しておく。もしこのまま料理できないのにカレーの手伝いする
とか言われちゃったらホントにザナミがお気の毒でならない。なので確認しておこう。
「あ・・・・・・えっとで、出来るし。超出来るし。何ならカレーは私が作ろうか?」
「やめておいたほうがいいと思います・・・。だって月橋さんすごく料理苦手ですし・・・・」
「な、何言ってるの。超出来るって。ホントホント」
シガネに指摘され月橋が超あせってるところを見ると多分出来ないんだろうな。料理実習とかで一緒になったんだろう。
もしくは去年の移動教室とか。二人は去年もこの学校に居たんだしその可能性もある。
「よしじゃあ、そんなに言うなら明日俺の分の弁当を作って来い。いいか?俺のだけだ。他のやつの分とか言って作りすぎるなよ。
処分する人と食材に悪いし他のやつらが可愛そうだ。あ、俺の分もホント少しでいいぞ」
「まずいのは前提なんだ・・・・・・・・。ひっどいな・・。あ、でも私お菓子なら多分作れるよ。
お弁当よりそっちのほうが得意なんだけどそっちでもいい?」
「おう、少なめで頼む」
「まずくないって・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「いや・・・・・去年のあれを見るとちょっと信用性に欠けますね・・・・。」
「やっぱ去年か。何があったんだ?」
「いえ、移動教室のときカレー作ったんですけど何か任せてとかいって味付けとか料理とかを三つのなべでやったうちの一つやって
結果的に月橋さんがやったのだけ食べれないようなものになったんです・・・・・・・・・・・・」
やっぱり前科があるようなのでホントに覚悟しないと・・・・・・・・・・・・・・・・。
「まあいい。さっさと買出しを済まそう。」
そうして色々とスーパーを回って買出しだけじゃなくもろもろ雑貨とかもみていい頃合になったのを確認して帰ることになった。
だが、まあ二人とも着替えて行きたいとのことなのでとりあえずここで解散して俺は家に向かう。
因みに二人は後で向かいに行く。後のやつは飛んでこれるがこの二人は来るのにかなり掛かりそうなので学校に来てもらうことにした
家に行くのもちょっと忍びないので・・・というか俺なんかを家に上げたなんてなったら大変だしね。
と言う事で俺の家でカレーパーティーとやらをすることになった。俺は全員分のカレーを作った後でザナミの分のカレーにだけ
先生と俺が用意した激辛食材を投入してよく煮て辛くする。結果、湯気を吸うだけでむせる・・なんてレベルじゃない。
近づいただけで目眩がするレベルの毒か?毒なのか?と思うようなものが完成した。
「先生、これって食べてもいいんですか?」
月橋がまるで毒じゃないんですか?みたいに聞いてくる。だが実際致死性は一切無いし致死性がでるぎりぎりで止めてある。
それにここには高ステ者が4人いるのだ何とかなるだろう。こいつ神だしな。
「じゃあいただきます」
そういってザナミは辛さマックスカレーを口にした。
月と僕は一人ぼっち 綱渡手九 @bugey
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。月と僕は一人ぼっちの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます