欺静

翌日、俺は部室に向かった。正直、行きたくないのが本音だが先生の逆鱗に触れると退学になってしまうので

別にそれでもいいけれど自分の目でイザナミを見極めたいので残るために部室に向かう。

すると一歩早かったのか月橋とシガネが既に着いていた。俺は昨日座っていた席に座る。

さわやかイケメン君は、今日は部活を無しにしてこっちに来るそうだ。まあ、賢明な判断だろう。

俺が、人と話すのが嫌いだと知っているのか連れてくるという選択を選ばなかったのも褒めるに値する。


と言う事で5分程度待った。すると部室のドアが開いた。さわやかイケメン君が到着した。

「ごめん。遅くなった」

さわやかイケメン君は、待たせてしまったときの対応もイケメンらしい。

さすがだ。まあいっか・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「いや、とりあえず、全員動けるような服装にして屋上に集合」

月橋がそういった。因みに、何で先に着替えておかなかったかというとそれで変なタイムラグが出来ると

のぞきととかそういうラブコメイベントが発生しかねないからだ。しかも危険な・・・・・。

まあ、そんなわけで少しして全員着替え終わって屋上に到着した。

「えっとじゃあとりあえずさわやかイケメン君には5キロの重りを4つ体につけてもらう。」

俺はそういうと、ぱぱっとさわやかイケメン君の腕、足に重りをつけた。

「重っっ」

さわやかイケメン君は重りの重さと剣の重さで立てるのが精一杯になっていた。

「怪我したら俺が治す。とりあえずその状態で俺に攻撃を当てる事。」

そして、残酷で冷酷な地獄の訓練が始まった。主にさわやかイケメン君にとっての・・・・・・。

「う・・・・・・・うを」

何とか歩くのが精一杯なようだ。月橋とシガネには、水の受け渡しと言ういかにもマネージャーっぽいことを

させている。俺にはアドバイスする余裕があるし立ったら何人もがアドバイスしたら頭に入りにくいという事だ。

と言う事で俺は、渇入れ&アドバイス係をしている。

「く・・・・・・」

すごくつらそうだ・・・・・・・・・・・・。いまだに剣を一振りも出来ていない。

立って歩くのが精一杯だ。

俺が鑑定で見てスタミナが切れそうなら水を渡して休憩するようにする。スタミナも俺の100分の一とは行かなくても

10分の一ほどはある。むしろ俺は、スタミナだけ異常に低いらしい。

防御力とか抜くと・・・・・・・・だが・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「がぁ・・・・・・・・・・・・」

やばい、スタミナがなくなる・・・・・・・・・・・・・。

「休憩タイム。水を渡してあげてくれ・・・・・・・・・・・・」

俺の指示で月橋とシガネがさわやかイケメン君の元に駆け寄り水を渡す。

俺の回復は疲労までは、回復出来ないっぽい・・・・・・・・・・・・・・・。

「氷馬さんもどうぞ・・・・・・・・・・・・・・・・。」

シガネが水を渡してくる・・・・・・・。俺にも?なぜ?意味が不明だな・・・・・・・・。

「あっ」

月橋が大声を出す・・・・・・・・・。何なんだ急に?こいつはこういうの多いな・・・・。

「大丈夫か?さわやかイケメン君。いけるようになったら言ってくれ。

今日中に体中の筋肉を一回殺しておけば超回復で多分筋肉とかもっとついているはずだから」

超回復とは、筋肉を痛めつける事で筋肉を強くする的なやつである。

「は、はいっっ。いけます」

さわやかイケメン君は、少し間をあけて俺に言った。すごいなさわやかイケメン君。

頑張りますな・・・・・・・・・・・。青春って感じでもしているのだろうか。

俺からすると残酷な虐めなのだが・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「ま、いっか。じゃ始めるぞ」

俺の言葉と共にさわやかイケメン君は立ち上がりふらふらとする。

やっぱり立つのが勢一杯らしい。それでも少しずつ歩いている。

今は、まだアドバイスはいらないだろう。そういう次元じゃない。


「アレー何やってるの?」

どこかから声がした。どこか、それは俺の少し後ろだった。俺の後ろに立っていた男子生徒・・・・。

俺はみたことが無いがどうやらさわやかイケメン君の知人らしい。

なるほど・・・・・・・ステータスは若干だけどさわやかイケメン君より上か。

スキルとかはさわやかイケメン君と変わらない。ということをみるとこいつも剣術関連をやっているということだ。

「波佐間・・・・・・・・・」

さわやかイケメン君はそうつぶやく。

「知人か?」

俺は尋ねる。まあ、多分知人だろうけど。

「決闘部部長の|波佐間剣(はざまつるぎ)だ。俺の幼馴染。」

さわやかイケメン君は、座りながら言う。さすがに立ちながらしゃべるのはきついらしい。

因みに決闘部、というのは剣術部と違って剣だけじゃなく斧や槍も使って決闘をする部だ。

その辺の違いがややこしいが決闘部のほうはかなりの実績を残している。

大会とかだと優勝候補に挙がるほどだとか・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「で?その波佐間さんが何のようですか?」

俺は波佐間に尋ねる、本能的にさん付け不要と認識した。

「いや、剣術部の部長が特訓してるって聞いて何してるのか見に来たんだけど

何?そんな弱そうなやつと特訓してるの?」

波佐間はやたら、俺たちを皮肉る発言をした。弱そうって・・・・・・・・・・・。

まあそこはいいんだけど、問題はその後である。

「それに何?そんな影が薄い女子をマネージャーにしてんの?だっさ・・・・。

全然可愛くもないし練習にも身が入らねええ・・・・」

あーあ。絶対月橋は、キレてるよ・・・・・・・・・・。

「影薄い・・・・・・・・可愛くない・・・・・・・・・」

怒るを通り越してただ凹んでいる。おいおい・・・・・・・・・・・・。

いつもの元気はどうした・・・?シガネのほうはなんともなさそうだ。

はあ・・・・・しょうがないか。

「おい、波佐間さん?女子は関係ないんじゃないの?影が薄いかは知らないけど

可愛いかどうかは人の好みでしょ?」

俺は、言う。あれ?これじゃ何にも変わってないな・・・・・・・・・・・。

「うるせぇ。弱いくせにグダグダ言ってんじゃねえよ。そんな大口叩きたきゃ俺に勝ってから言え。」

波佐間が言う・・・・・・・・・・・。勝ってから言えって・・・・・・・・・・・・・・・。

正直言ってたぶんこいつも月橋と同じようにしてしまう。それは面倒だな・・・・・・・。

「分かった。じゃあやろう。その代わりもし俺が勝ったら女子とさわやかイケ・・・成宮に

謝るんだ。」

俺は、そういった。何故そういうかというといい作戦を思いついたからだ。

怪我させない作戦を・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「へえ、勝つ自身があるんだな・・・・・・。いいだろうやってやる。その代わり

俺が勝ったら俺に土下座して謝れ・・・・・・・・・・・・・・・」

・・・・そんな結果はまずありえない。俺はお前には負けない。決して・・・・・・・。

「分かった。えっとじゃあ。月橋。審判頼む。」

俺は、月橋に審判を頼み位置に着く。同時に波佐間もさわやかイケメン君の剣を受け取り

位置に着く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

わずかな静寂が訪れる。

「|決闘(デュエル)スタート」

その合図と共に俺は剣を床に置き近づいてきた波佐間の攻撃を全回避する。

剣を床に置いた。これで剣で怪我させることは無い。

後は怪我させないように気をつければいい。そんなこと簡単だ。俺のSD値なら。

俺は、持ちうる全ての技で気配を消した。そして一気に威圧をかける。

それと共に波佐間を睨みつける。波佐間はそれだけで、いや、その究極的な技で崩れ落ちた。

意識はあるが、体が固まって動けないはずだ。体が死んだと錯覚している間は動けない。

後は、件を取り上げるだけ。きれいに剣を手から外して・・・・それで勝利・・・・・・・・・・。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

誰もが沈黙していた。静寂が再び訪れた。

自分はただ、彼に恐怖を植え付けた。それだけだ。しかし、人は時として恐怖におびえ

恐怖に囚われ恐怖に生きるのである。

つまり、”恐怖”とは、生きるうえで視野を広げる為の大きな武器となるのだ。

実質彼も我々に恐怖を教えてくれた。厳しい顔をして近づいてくる。

それだけで、人は恐怖を感じるのだ。自分が行った行動と彼が行った行動は、本質的には同じである。

ただ、植えつけた恐怖の大きさと植えつける側の意識、それが違うだけである。

しかし、法において法を犯す側の意識は、罰を決める上で大きな役割を果たす。

それは、この現代社会においても同じである。現代社会のルールである人の良識とは、

あいまいなものではあるが、しかしながらそれが実に重要な事である。

また、同様に法において法を犯されたら法を犯し返す、俗に言う「やり返し」も罪に問われる。

その上では、今回のように、自分が行った言動は現代社会においてのルールにおいて反するため

その言動には、大いなる責任が伴う。そしてその言動の責任は、必ず取らなくてはいけない。


しかしながら、今回の場合彼も了承の上でこのような言動に至った。

これはつまり、彼もこうなる事を予測したわけであり、彼が自身の言動に責任を取れないような

”薄っぺらい人間”でないのなら彼もまた等しく罰せられる必要がある。

自分が罰せられる事はいたって問題ない。しかし、自分が責任を取るのに

彼が責任を取らないのは同じ当事者という立場上で彼は、自分より下等な人物であったという事になる。

自身が下等だと認める生物は、自身の行った事への責任を確実に取る。

自分も今回のことが自身の判断ミスにより事故だと思い、自分の下等生物さを改めて

確認することが出来た。

ならば、彼はどうだろうか。他人を罵倒しそれだけでも自身の下等生物さを他人に躊躇い無く教えているというのに

言動への責任は、取らない彼は、一体何なのだろう?

その矛盾は、もはや下等上等の前に生物として呼べないのではないだろうか。


また、今回の件で自分と遺憾の意を表しながらも一緒に居た成宮悠斗、並びに月橋優嘘は全くの無関係ではないが

”当事者”とは呼べないであろう関係である。

彼らは、等しく被害者であり自身の言動に責任を取る必要どころか

何の言動もしていない。彼らが責任を取らなければならないというのならば自分は

この世界のルールに疑問を抱きこの世界への落胆の意を表すために身を投げる。

なので今回の件で被害者である彼らには罰を与えないで欲しい。

いや、与えられるはずなど無いのだからその心配は無用である。


話をまとめると自分は、言動への責任を取る常人であるからして何の躊躇いも無く言動への責任を取る。

しかし、もしも今回の件で彼が自身の言動に責任を持たないのならば

彼は、何なのであろうか。それを考えなくてはならない。ここでもし彼に責任を取らせなければ

彼は責任を取らせる側である人物の力不足のせいで彼が下等生物、いや生物以下になってしまう。

事実、彼は既に”薄っぺらい紙”ではあるのだが薄っぺらい紙でも見捨てなければいつかは育つ。

ならばそれを気長に待つのが責任を取らせる側に与えられる自信の役割への

義務ではないだろうか?


一言にまとめよう。薄っぺらい紙にも責任を取らせるべきである。




・・・・・・・・・・・。最近色々あって文章を書いていなかったから随分とレベルの低い文章になってしまった。

反省文を書くことでまた新しい反省を見つけたな・・・・・・・・・・・・・・・・。

「・・・服部。何だ?これは。」

|先生(まおう)がいう。何だって字とかは分かんないのか?

「文字ですが・・・分かりませんか?こっちの世界の文字ってあっちと違うんですかね???」

「本気でそう思うか?」

俺が聞き返すが先生は、答えてもらってうれしいとかの逆で舐めた答えへの怒りで

いっぱいである。おそらくスキル憤怒を使われたら俺も危ない。

「いや、反省文ですが?」

「これのどこが反省文だ!!!これでは、不服文か悪口か意見文にしか見えん。

私が書けといったのは反省文だは・ん・せ・い・ぶ・ん。

いいか反省文というのは自身が起こした問題に対して自身が今後どうすべきかを述べるものであって

事についてを分析するものではない。だというのにこれは何だ?

自分の反省どころか、ほとんどが波佐間への皮肉と悪口じゃないか?」

先生がそういう。

「いやあ、俺、悪口は言わない主義なんで。言うなら目の前でしっかり言わないと。

そうしないと相手の苦しむ顔が見れませんからね・・・」

いつから俺はこんなゲスになったんだろうか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

最近、よりゲスな感じが増えてきたように思う。

「はあ・・・・・・・・・・・・・・。で、詳しくは何があったんだ?」

「え、知らないで叱ってたんですか・・・・・・・・。そんな適当な人に俺は説教されたくないですね・・・。」

俺は、逆ギレしてみる・・・・。

「いいから言え。さもなくばどうなるか分かっているな?私は暴力が嫌いなんだ・・・。」

嘘つけ・・・・。魔王っていったら暇だからって山壊しちゃうような乱暴な女だぞ?

・・・俺も学校の屋上にヒビ入れたけど・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「いやあ、告白部の活動でさわや・・・成宮の剣術の腕を上げるために重りでの特訓してたんですよ。

そしたら波佐間が冷やかしてきてそれなら成宮の腕もまだまだだからしょうがないんですけど

告白部の女子の悪口まで言ってきて。でもまあ別にそれなら暴力振るうほどでもないし

口だけだしてみたら俺と勝負しろっ見たいな空気になってそれで謝るとか何とかそういう賭けになって

断りづらくなったんで怪我させないように一瞬気配消してから一気に威圧かけて睨みつけて恐怖を植えつけたんですよ。

手は出してませんし、怪我もしてません。失神するかどうかは波佐間の精神の強さがどれ位だったかってだけですよ。」

俺は、若干はしょりながら言う。・・事実だぞ?別に女子が悪口言われたぐらいじゃ

ホントなら決闘なんかしない。ただ、月橋がへこみながらこっち見てきたからしょうがなく

口で文句言ったら決闘みたいな流れになっただけで・・・・・・・・・・・・・・・。

「そうか・・・・。君が人のために動くとは素晴らしいな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

あ、そうだ。今回の件は許してやろう。その代わり明日から来る体育専門の教師に近づけ。

やつはイザナミだ。間違いない。紫色の髪で吸血鬼と契約している。

中々のきれものだ。気をつけたまえ」

俺はその忠告を聞いて|職員室(まおうのへや)を出た。告白部が受けた依頼は、まだ終わっていない。告白部が受けた依頼はさわやかイケメン君を強くすることであり

波佐間を倒す、とかそういうゲームのクエスト的な依頼じゃない。

なので、俺のやった行動は、正直言って依頼とは何も関係ない。鬱憤晴らし、自己満足もいいところである。

ということで俺は、|先生(まおう)説教をのお受けた後、嫌々告白部の部室に向かった。

・・・いつになったら辞められるのであろうか?出来れば早くやめたい。俺にだってやることがあるわけで

それこそ俺は、急いで世界を救わなきゃならんのだ。だというのに俺にこんなめんど・・・じゃ無くて大変な事を

やらせるってどういうことなんだ・・・・・・・・・・・・・・・・・?

あ、別に面倒だからやりたくないとかじゃないんだよホントに。時間があれば一人でならやりたい・・かも。

人と協力してやるってありえない。効率悪いし、俺ひとりでやったほうが確実に楽だ。

俺は、∞組の教室から若干遠い告白部部室にたどり着いた。

そういえばここ、いつもは何の教室なんだろう?ソファーとかお茶とか接待用品は大抵そろってるし

一体何の部屋なんだ・・・・・・・・・・・・・・・?

もしかしてこの部活専用の部屋なんじゃ?先生の権限を考えるとそれも有り得るかもしれない。

そして、それを知っているのは先生と初めからいた月橋のみ。

別に何か問題があるわけじゃないし、機会が無きゃ聞かないでおこう。

機会があったらついでに聞いとく程度でいい。人と話すのは億劫だから。まあ月橋含め∞組の連中は

敵として捉えていれば良い訳で特に気を使う必要も無いのだから億劫って程でもないのだけれど・・・・・。

まあいっか。そんなことより今日もさわやかイケメン君の成長を見るのか・・・・・・。

そんな、どうでもいいことを考えながら部室のドアを開ける。若干開きが悪いが

俺の力だと少しでも力を入れると壊しかねないのでそぅっと・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・駄目だな。何で今日はこんなに開き悪いんだ?

「ガタガタ・・・・・」

そぅっと・・・そぅっと・・・。俺は、ドアを開けようとするが開かない。何かが引っかかっているような感覚。

これは、もしや既に俺の力加減のせいでいかれてしまった的な感じか?

だとすれば申し訳ないな・・・・。とりあえず中に人がいるか確認しておこう。いなければ壊してから直そう。

「おい、中に人いるか?」

俺は、部室の中にいるかもしれない人に声をかける。・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

反応なし。ということは、いないということでいいんだな?じゃあ壊すか?

でも力加減を間違えるとドアどころか学校自体が壊れかねないので注意しなければならない。

ポンっと押す程度の力をほどよくドアにかける。グガァーーン・・・・・・・・・・・・・・。

ん?変な音がした気がするな・・・・・・・・・気のせいでしょ?気のせい。

俺の前には半壊した部室があった。半壊!!やばくね?とりあえずドアを酸で溶接して元に戻す。

でもって部室も・・・いやもうどうしょうもないな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

しょうがない、壊れて危ないところをコーティングして危なくないようにして・・・・・・。

・・・これでよし。元通り?だなっ。


しばらくしてドアが開き月橋とシガネが来た。そして青ざめた顔で俺を見る。

何?そんなに俺って気持ち悪い?ヒューマンウィアーとコミュ障のダブルコンボってやばいな・・・・。

「ねえ。何これ?」

月橋が呆れ果てるようなこれで青ざめた顔を・・・真っ青な顔をして言った。何って?

シガネと話してるの?何こいつ?何でここにいるの?部員だったっけ?みたいな?

「・・・・・・・・・・」

俺は、そう思って無言で居た。すると今度はシガネが恐怖を感じたように言う・・・・。

「あの・・・・。氷馬さん。これは何でしょうか?何があってこうなったんですか?」

俺に聞くってことは、俺の事じゃなかった・・・・。よかったよかった。

で?何のこと?・・・・いや分かってますよ勿論。

「え・・・ま、まあ立ち話でもなんだ。とりあえずこっちに来て座れよ。」

・・・さすが。紳士を完璧に演じている。気を使える俺ってすごい!!

「こっちに来いってハト、本気で言ってるの?そっちにいけるような人なんてハト位だよ?」

月橋がいらいらと呆れを見せながら言う。・・・・やっぱそうか・・・・・。

ばれないと思ったんだけどな・・・・・・・。しょうがない。真実を言おう。

「いや・・・・ドアの開きが悪くて・・・だからいっその事一回壊して直せばいいなって・・・・・・」

俺は、月橋と珍しくシガネも怒っている様をみて恐怖を覚えながらも笑って言う。

どんなときでも笑顔。これ大事。

「直せてないじゃない。直すどころかもう跡形もないよ。これじゃまるでアートだよっ。

これじゃ部室になんか使えないじゃん」

月橋がキレる。・・・・・やっぱそうか・・いいと思ったんだけどなぁぁ。

「い、いやあま、まあアート作品としてみればいいじゃん。特にこの辺のでこぼことかきれいだし。

アートとしてみてアートな部室で依頼を聞くって言うのもなかなかだと思うんだけど・・・。」

俺は、辛うじていまだに笑顔を突き通している。笑顔だ、大事・・・・・。

それにしても同年代の人に怒られるって初めてだな・・・・。何か新鮮。

「ばっかじゃないの?そんなの無理に決まってんじゃん。とりあえず先生に相談しに行こう。

私とシガネちゃんで言ってくるからハトは、そこでおとなしく反省文でも書いてて」

イライラがミシミシと伝わってくる。また反省文か・・・・・・・・・・・・・・。

「・・分かった。はあまた反省文か・・・。今度こそ死んじまうよ・・・」

俺は、ポツリと本音を漏らす。

「死ぬ?どういうこと?誰に殺されるの?」

月橋が聞いてくる。・・おい。そんな笑顔で誰かに殺されるの?とか言うなっ。

お前、どんだけ楽観的なんだよ。

「これ以上反省文で皮肉混ぜたら先生がマジでキレて憤怒スキル使われると思う。

そしたら俺でも多分勝てない・・・・・・・・。先生の事だし一度キレたら殺されるだろ?」

・・こんな事いってて先生が来たら今度こそ殺されるかも・・・。

「だったら皮肉を混ぜなきゃいいじゃん?」

月橋が「馬鹿なのこいつ?」みたいな感じで言う。いやこの言葉にはそういう意味があると思う。

「いやあ、皮肉混ぜなきゃ反省文なんか書けないだろ?」

俺は、本音を嘘つかずにいう。ホント、反省文なんか皮肉混ぜないと書いてられない。

「そっか・・・・・・。しょうがないな・・・・。じゃあハトのせいってことにはしないでおく。

私がお願いしたってことにすれば私に罪がいくでしょ?」

月橋が思いついたように言うがそんな若干優しい事実とは裏腹に俺のみには”魔”が近づいていた。

・・・文字通りの意味で・・・・・・・・・・・・。

「服部?何をしているんだね?」

・・|先生(まおう)である。彼女が月橋とシガネの背後にいたのだ。正確には来たのだ。

「い、いやあこれには事情があって・・・・」

俺が何とか言い訳を考えるがもう打つ手はない。

「月橋、服部。今すぐ職員室に来い。いいな?今日は帰れないと思って親御さんに電話でもしておくんだな。」

マジで、ホントにマジでキレていた。俺も本気で戦わないと死ぬし本気で戦っても死ぬかもしれない。

そもそも俺や、月橋を殺したら|先生(まおう)は、先生でいられなくなる。なので死ぬということは無いだろうが

それでも月橋からしたら精神的にきついだろうし更にいえばどんな罰が待っているのかも分からない・・・。

「は・・・・・はい・・」

俺は諦めて先生に着いていく。月橋もへこみながらついてくる。俺と月橋は|職員室(まおうのへや)に連行された。何をされるのか?愚問だな。

何をやられるかなんて考えなくても分かる。分かるどころか既にやられている感覚を得る。

端的に言おう。俺と月橋はおそらく死より恐ろしい罰を受けるだろうな。

お説教も魔王のお説教だと耐え難い苦痛である。もはや拷問である。

「さてさて、何をやっていたのか。全て教えてもらおうか?」

既に先生は魔王になっていた。先生といえるようなものではなくなっていた。酷いものだ。

これを魔王と言わずして何と呼ぶのだろうか?いや、むしろこの姿を見て人は魔王を魔王と名付けたのだ。

そんなくだらない事で現実逃避して|先生(まおう)の説教を聞き流そうと決意した。

「まずは、月橋の話を聞こう。服部、お前の話は後でじっくり聞くからな。」

|先生(まおう)は、まず月橋に話を振った。いい判断だ。俺に聞いてもまともな答えが出るなんて思っていないのだろう。

実際その判断は正解であり、俺は既に策をいくつか考えている。

「・・・・・・・・・・・・・・・これは事故で・・・。なのでハトは、悪くありません。

むしろ部長である私のか、獲得不易?です。」

かんとくふゆきだろ?どういう字で書くかは、知らんけど。それにしても月橋が俺をかばうのは、珍しいな。

まあ、俺に言葉で攻撃してきた事はないしおそらく俺何かに責任を押し付けるくらいなら

自分で責任を一人で負ったほうがいいとかそういう考えだろう。

「そうか。話す気は無い様だな。月橋、お前がそんな反抗的な態度を取るなんて珍しいな。」

先生が言う。・・・先生の顔に戻ってきた。とりあえずよかった・・・。

「別に反抗的な態度なんかとっていません。」

月橋が言う。いやいや、それが反抗的な態度なんだって・・・・・・。

こいつ、馬鹿なのか?うん、多分馬鹿だろうな・・・・・・・・・・・・・・・。

「そうかそうか。まあいい。じゃあ服部。お前の話を聞かせてもらおうか?」

|先生(まおう)は、魔王の顔に戻った。それどころか破壊神?邪神?そんなもっと酷い感じになった。

もう手も打てない。戦ったら即死するだろう。憤怒のスキル怖っ。

「あれですよ。持つ者の苦悩っていうやつですよ、多分。そ、そもそも破壊は創造を産むわけで

俺のやったことが悪と言う認識が間違っていてですね・・・・・・。」

俺は、考えていた策の1つ、悪と言う認識を改めようよ作戦を実行した。が、結果は予想通り。

上手くいくはずも無い。

「破壊?どういう意味だ?何をしたんだ?」

|先生(まおう)は、言った。キレ気味で。いや、気味じゃない。キレていた。マジブチギレていた。

やばい・・・・。更に悪い方向に行ってしまった。どうしよう。

何か方法は無いものか?考えろ・・・考えろ・・・・・・・・・・。

「だから、部室のドアが開かなくてですね。なので少し力を加えてみようかと思いまして・・・。

それでほんの少し力を加えてドアだけ壊してそれで直そうかと・・・・・・。

そしたら、部室が半壊しまして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

俺は、やむなく真実を話す。真実に意味なんてあるのだろうか?

嘘ついたほうが皆幸せなんじゃないだろうか?何て柄にも無い事を考えるほどピンチだ。

「半壊?あれがか?あれは半壊とは呼ばない。吹き飛んだというのだ。」

|先生(まおう)は、そういった。え?吹き飛んだ?いや、そりゃ床も天井も何もかもなくなって

俺が簡易的に作った柱が無きゃ崩れ落ちていたけどさ。そりゃ色々ふっ飛ばしちゃっては、

いるけどさ。吹き飛んだ、とかは言い過ぎじゃない?・・・・いいえ。違います。

俺が悪うございました。

「すみませんでした。直します。」

俺は第2の策。謝るを実行した。策でもなんでもない。まあ怒っている人には

これが一番だ。

「あのなぁ。私はそのことについてはいいんだ。私の再生魔法があれば数秒で直る。

だが、私が言っているのはその後だ。また反省文か。今度こそ死んじまうよ。だったか?

何だ、その言葉は?自分は悪いことをしたって言うのにその態度は。

おかしいと思わないのか?」

|先生(まおう)が言ってくる。・・それについては、俺にも思うことがあるので言う。

「先生、さっきも言ったでしょう?そもそも悪い事という認識は主観でしかないんですよ。

先生が悪と思っても俺にとってはそれは悪ではないんですよ。俺にだってきっちり、はっきりした

理由があってこういう行動に出たわけでですね・・」

やばい、変なこと言ってしまった。理由は開かなかったから。それだけである。

それ以上でもそれ以下でもない。でもここまで来たら後には退けない。

先生は、「ほう?」という目で珍しく見てきているし・・・・・・・・・・・・・・・・。

「ですから、俺にも理由があるんですよ。勿論客観的に見ればドアが開きにくかった。それだけの理由です。

事実の表だけじゃなくて裏も見ないと。客観的に見るというのは事実の醜い面に目を向けないという

見る側の勝手な価値観でしかないんですよ・。

今回の場合も先生の逃げでしかないわけでですね・・・・・・・・・・・・・・。

いいですか?今回の場合、ドアが開きにくいという事は、どんなに工夫しても

今後使う人間に不利益をこうむるわけですよ。だったら俺が壊しちゃって、先生に完全に作り直してもらおうかと

思ったわけですよ?それが間違っているというんですか?」

何かもうよく分かんない。何言っちゃってるの俺?おかしくなっっちゃった?

「なるほど。一理なくも無い。分かった。今回の件は水に流そう。その代わり来月の

夏休みで君に逢わせたい人物がいる。君と似ている人物だ。」

夏休み。そういった休暇もあっちと同じだ。今は、6月末。7月の中旬から始まり

9月にはいってから終わる。普通の夏休みだ。

だが、君たちと言うことは俺と月橋とシガネ、つまり告白部が含まれるという事を

容易く理解できる。人と関わる事が嫌なのに何で休暇までそんな事しなきゃならないんだ・・・。

とはいえ、似ている人物というのには興味がなくもない。

シンパシーというかそういうものを感じられるかもしれない。感じても何ら意味はないが・・。

「分かりました。どうせ拒否権はないだろうし。それに俺はこっちに親いないし何ならあっちの親も

基本顔とか覚えてないし。何でいいですが。でも月橋とシガネはどうなんですかね?」

俺が、月橋を見ながら先生に言う。

「ほう、成宮は予定がないと思っているのか?」

先生が言った。もうホント意味わかんないことを。成宮?さわやかイケメン君がどうしたの?

まさか君たちってさわやかイケメン君も入ってるの?

「もしかして成宮は入ってないと思っていたか?告白部だけじゃない。成宮も

告白部の君たちと同じぐらい面白いからな。あ、因みに成宮とマスボラールと月橋には承認済みだ。

本当は明日はなそうと思っていたがまあ、こんないい機会があるのならそれに漬け込まない手はない。」

・・・と言うことは月橋は、既にその夏休みの活動を知っていたのだ。酷い。何でいってくれなかったんだ?

・・あ、そういえば俺が部室壊したせいで会話できてないんだった・・・・・・・・・・・・・・。

あははは・・・・・・・・。

「まあ、拒否権はない。日時は後日連絡する。今日のところは帰りなさい。

私が再生するのには時間はかからないがあまり近くにいると巻き込まれる。再生に巻き込まれたら

大変だからな・・・・・・・・・・・・・・」

・・・やっぱり拒否権はないんだな・・・・・・。翌日。俺たちはそれまでと変わらず屋上でさわやかイケメン君の特訓に付き合っていた。

正直、飲み込みが早い。だが、俺からするとこの程度どうって事ないし、

それにこのままこの特訓をやり続けるのは多分得策じゃない。このままだとさわやかイケメン君の力はつけども

指導力の点では更に大きく欠落する。もし部員全員にこの特訓をやらせようとするのなら

部員は一気に減るだろうし残っても多分何人か体を壊す。

俺がちょいちょい回復しているからいいものの本来ならさわやかイケメン君だって

体を壊しているところだ。部員全員にこれをやらせるならば俺がずっとついていなければならないが

それはさすがに出来ない。だとすると俺は、他の方法を考えなくてはならない。


さわやかイケメン君の依頼は剣術部の戦力強化。その一つとしてこうやって部長である

彼の特訓に付き合っている。だが、それ以外にも手はある。

多分彼が強くなって、それで彼を見習ってもっと特訓しようとするものが出るだろう。

しかし、逆に力の差を思い知らされ挫折する者も出てくるだろう。

彼は、それを望むのだろうか・・・・・・・。

そんなことは、明白だ。答えは望まない。彼の強さへの執着は計り知れないがそれと比例するように

”皆でやる”ことへの執着もまた計り知れない。

つまり彼は今いる面子、皆で強くなりたいのである。

だとしたら今とっている策は、愚策でしかない。お世辞にもいいとはいえない。

今すぐにでも止めるべきだ。だが、それをしてしまうと部員全員が弱くなる。

挫折する者も関係なく何の向上もない。普通の部活での特訓なんてたいした意味をもたらさないのだ。

だとすれば、今俺は何をするべきなのだろうか????

俺は、その答えを見つけられない。だから、だからこうして立っている。

それだけで何もしていないのである。


それから、幾分か過ぎ、夏休みになった。俺たちは夏休みに入ってすぐに召集され

待ち合わせ場所である広場に集まっていた。

俺と月橋とシガネとさわやかイケメン君。皆しっかりそろっている。

一応課外授業や、合宿みたいな形なので制服できている。なので服装は大して変わらないが

いつもと大きくかけ離れている事といえば荷物の量であろう。

何せ、先生が3泊4日の合宿にするとか言い出したせいで着替えやら色々持っていく羽目になっている。

俺としては重くもないが、シガネはかなり重そうである。月橋といえば先日の決闘の件が

悔しかったのか力をつけるためにさわやかイケメン君にまざって特訓していたため力がついているのか

特にもてないということはなさそうだ。

そのさわやかイケメン君だが特訓のせいでかなり力がつきそれでも俺からすれば微々たる量なのだが

まあ、そのおかげでそこそこ軽々もてている。

「お前ら、大丈夫か?さわやかイケメン君はともかく月橋とシガネは重いだろ?

持とうか?さわやかイケメン君も持って欲しかったら持つけどお前の場合、そうやっていつでも

力をつけたほうがいいからな・・・・・」

俺は、らしくもなく心配したそぶりを見せる。ただ、これはこいつらの為ではなく

俺が荷物を持っているということを忘れないようにする為の処置である事を忘れないで欲しい。

働くという事はリターンがなければ成立せず、そのリターンも大きくなければ成立しないのだ・。

そして俺のこの行動は、労働ではなく自身のための活動である。ニートだって

ものを食べる時は口を動かして食べるだろ?そういう認識だ。ニートじゃないから知らんけど・・。

「そうだね。俺はいいよ。けど確かに二人は持ってもらったほうがいいかもしれないな。

僕も持ってあげたいところだけどさすがにもう一つ持つのはきつそうだ」

それが普通である。さわやかイケメン君は間違ってない。俺がおかしいのだ。

力の値で軽く0を4つつけている俺が・・・・・・・・・・・・。

「じゃ、じゃあお願いしてもいいですか?私、力がなくて・・。」

シガネがそういった。確かに体つきからしてひ弱だしステータスで見ても力とスタミナが致命的に少ない。

ただ、よく見ると魔力の値が結構多いな・・・・・。ま、いっか・。

「分かった。・・・・・で?月橋はどうする?持てなくはないっぽいけど、多分無理したらすぐにへばるぞ・・。」

シガネの荷物を受け取ってから月橋に言う。・・・・シガネの荷物随分軽いな・・・・。

女の子の荷物って重いんじゃないのか?俺の方が重いぞ?

俺だって着替えを最低限しか持って来てないし・・・・・・・・・・・・。

「珍しくハトが頑張ってるね・・・・・。いつもならハトは全部放置で他力本願の塊みたいな生活してるのに・・。」

月橋が言う。あながち、嘘じゃない。さわやかイケメン君の時も基本見てるだけだったし。

それにクラスであれこれするときもそんな風に人任せで放置している。

「いいか?労働には正当なリターンがついて来るんだ。だからこれは・・」

俺が続きを言おうとすると月橋が結構大声で言った。

「てことは私たちから後でリターンをもらおうとしてるって事・・・?

うわ、身の危険を感じるんだけど?何されちゃうの?シガネちゃんいいの?ハトなんかに

持ってもらって?」

おいっ。変な誤解するな。それじゃ俺が無茶苦茶ゲスい奴みたいになるじゃねえか。

「違う。何でお前らなんかから報酬をもらわなきゃならないんだ。いいか?この活動は

そもそも労働って程のものじゃないし、それに後々持って欲しいアピールされるのは

絶対面倒だしそれに先生の事だ女性の荷物も持たないなんてけしからんとかいって説教かますだろうし、

それに俺が荷物もってるって感覚を少しでも持たないとふとしたときに荷物の事を完全に忘れるからいってんだよ。

いいか?これは労働じゃない。因みに言うと奉仕とかエスコートとかでもない。

これは自分のための最低限の生活に必要な動作だ・・・・。変な誤解して俺をくずな奴みたいにいうなっ」

俺は、考えていた理由を全部一気に言った。大丈夫だろうか?月橋結構馬鹿だから

聞き取れてないかもしれない・・・・・・・・・。

「そっか・・・・・・。そうだよね・・・・。じゃないよ。別に持って欲しいアピールなんかしないし。

むしろハトなんかの為になるの嫌だし。自分で持てるっつうの。」

何だか激しく月橋が言う。始めは何か反省した感じだったが途中からスッゴイ怒られた気がする。

「そうか。じゃあいい。後で持って欲しいなんかいっても知らないからな?」

俺は若干イラッとしたのでそう警告しておく。すると月橋は「分かってるよ」とふてくされたようにいった。

これだから人は、これだから女性は嫌いなんだ・・・・。



しばらくして、先生が来た。また突っ込むところだが実はこっちの世界には

自動車や、飛行機まである。しかもそれは魔力を使った魔具で、スピードがかなり出るし

それに色々とすごい事ができる。ただ、そういうすごい事ができるほどの魔力は俺と魔王ぐらいしか持ってない。

「よし、全員そろってるようだな。じゃあ行くか?ということで服部、お前は助手席に、

それ以外は後ろの席に座れ・・・・・・・・・」

先生はそういった。これがどういう意味か。俺の事知ってるなら分かるかも。

俺も若干迷ったけどすぐに答えが出た・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「先生?まさか俺に魔力源をやらせるつもりなんじゃ?」

俺が一応尋ねる。もう答えは分かっている。多分イエスだ。

「ああ、勿論だ。魔力が無限なんだぞ。利用しない手はない。」

やっぱりだ。魔力無限とか確かに異常だもんな・・・・・・・・・・・。

断る権利はない。多分強制的にやらされる。ならしょうがないだろう。

「魔力無限?すごい。何で魔術部、入らないの?」

月橋が尋ねる。おい、馬鹿なの?そんなことも分かんないの?

「魔力無限だって魔術部の連中に知られたら絶対軽蔑の目で見られるだろ?

あいつらは努力してもたどり着けないのに俺なんかこっちじゃ魔法を一回も使ってないのにこれだぞ?

それに、もしはいってたら既に人殺しちゃってるだろ?馬鹿なのか?」

俺がそう答える。正直ちょっと傷ついた。俺だって始めはそうも考えたさ。

チート級の転校生とかカッコイイ。とか。でもヒューマンウィアー何て種族だしコミュ障だから

人なんか近づいてこないどころか軽蔑されるだけなのでやめた。

「そっか・・・・・。ご、ごめんね?何か嫌な事聞いちゃったでしょ?」

月橋が謝ってくる。あれ?こいつこんなに素直な奴だったっけ?

さっきこんな奴とか言われた覚えがあるんだが?

「まあ、何だ。別に気にするな。この程度じゃ傷つかない」

一応言っておく。このまま月橋に申し訳なさそうな態度をとられても面倒だからな。

それに、ほとんど傷ついてないし。この程度で傷つくほど柔じゃない。


そんなわけで合宿?が始まった。と言う事で、俺は魔力源になる事になった・・・・・。拒否権がないのだから仕方がない。

それに魔力無限の俺からすると別に何ら問題でもない。問題があるとすれば

何のリターンもないというのに誰かに与えているという行為自体が問題であるともいえる。

まあ、俺の魔力によって俺自体もすぐにつけるわけだしいいんだが・・・・。

「よし、全員乗ったな。じゃあいくぞ」

先生の合図によって俺は魔力を解放する。そして車に魔力を注ぐ。

車、通称魔車は、俺の魔力によって一時的に異空間にワープした。俺の魔力の強さがわかる。

普通なら少し早くなるだけなのだという。しかも消費も半端無い。

なので魔王でさえこれぐらいの規模のことはできてもここまで大きい事はできないし

それに長くで30秒で魔力が切れてしまうそうだ。俺のチートさがわかる。

こんなの見せたら馬路で怖いって。命とか狙われそう・・・・・・。

いや、俺の事だ。もし校内でそんな事しても誰にも気付かれないだろう。これは種族云々じゃなくて

俺の特技に一つ常時気配消しと気まずいので部活と誰かが探している(そんなことめったにない)時以外

オンにしている迷彩スキル&隠密スキルのおかげである。

主に言うと、俺の特技のおかげである。因みにこれはオンオフできない。

それだけ隙のない特技なのだ。スキルを超えてしまうぐらい使えて・・・・・・・・。

何?俺の影の薄さってスキルの効果をも上回るの?やばくない?むしろ部活の連中よく気付けてるな。

ああ、あれか。ヒューマンウィアーのおかげで相手の気分を無意識に害するから

それで気づくんだな。酷い。

「よしついたぞ」

先生が言う。時間にして40秒。因みに普通に行くと5時間かかる所だ。

やっぱり俺の魔力怖いな・・・・・・。制御できてる自分が怖い。

「「早っ」」

さわやかイケメン君と月橋がそういった。無論そんなこと当然なわけで魔王である先生は分からなくもないが

シガネについては相当冷静な人物だったといえる。

「まあな。彼の魔力は私よりも格段に強く多い。これはきっと才能だろうな・・・」

先生が言う。先生が言うとホントに聞こえる理論というものがある。

よくいるだろう?小学3年生ぐらいの子供が。

「先生が言ってたんだもん」とか言うのが典型だ。この世代は、もっとも純粋で

善悪の判断に長けている。幼く、されどしっかりと考えは持てる。

善も悪も知らないからこそ平等な判断が出来る年頃だ。

そしてその頃に現れるのが権力者に従うという生物的本能に従った理論。即ち先生が言うとホントに聞こえる理論である。

これについては既に立証済みで今回の場合も月橋とさわやかイケメン君が

純粋な心と生物的本能を兼ね備えている為納得している。


・・・そもそも俺に才能があるとしたら人に嫌われるのと存在を消す事ぐらいである。

「こっちだ。ついて来い。」

ここからは徒歩なようでそこそこの山道を各自の荷物を持って歩く。

結構高い山だそうだが正直デコピンで吹き飛びそうだ。まあ、やらんけど。

また死ぬかもしれないしな。反省文は絶対勘弁。

それはそうと、鑑定で見れば分かるが月橋の体力が大きく消耗している。

シガネも同様だ。さわやかイケメン君と先生だけが全然平気そうだが

それでもさわやかイケメン君の方は少し疲れ気味だ。先生と俺にいたっては

体力など減ってすらいない。いや、そもそも俺と先生に体力なんて概念ないといってもいい。

精神的には別だが肉体的には、体力の自動回復があり、それが消費を大幅に上回る為減るなんて概念ない。

それはそうとそろそろ月橋が倒れるレベルになってきたな・・・・。

シガネのほうは荷物がない分到着までに倒れるってことはなさそうだが

月橋の場合今にも倒れそうだ。なのにも関わらず「荷物をもって」とも、「休もうよ」とも

アピールしてこない。・・・さてはさっきの話で意地張ってるんじゃ?

こいつ馬鹿なの?何そんなんで意地張ってるんだよ?

「駄目・・・・」

そんなことを考えていると月橋が倒れた。おいおい・・・・・・・・・・・。

「大丈夫か、月橋?」

先生が声をかける。結構楽観的な口調だが・・・・・・・・・。

「ん・・・・・」

どうやら気絶してるっぽい。いや・・・・これ普通に死の危険あるな。

HPも減少傾向にあるし。体力0になるとHPが代わりに結構急速に減るからな。

「うーん。服部、回復してやれ。私は回復スキルを持ってない」

おい。先生ってそういう系を持ってた方がいいんじゃないの?

「分かりましたよ。結構ヤバイッすからね。」

俺は、リターンのない労働はしたくなかったがしょうがないのですることにした。

でも何だか悔しいのであとで何かおごってもらおうと思う。

まあ、これぐらいのやつなら回復で何とかなる。命の危機はあるけれどそれは回復がないときのみ。

回復があればどんな病もすぐに治る。知識があれば。

あ、寿命による死は別だけどな。

「よし、とりあえずこれで何とかなったな・・・・・・・。じゃあ服部。

もう少し目覚めるのに時間がかかるしおぶっていけ。」

・・・更にリターンのない労働だ。扱いが酷くないか?先生がおぶればいいだろ。

・・いや、実際先生は色々持ちすぎていてもうおぶれるような場所がないわけで

先生の浮遊スキルなら月橋を浮かべる事もできるけどまあ、それはちょっと本人にもかわいそうだし

しょうがない。絶対なんかおごらせる。


と言う事で、俺は、しょうがなく月橋をおぶり荷物を持っていくことにした。

途中でレベルアップしたのでどうせならと思い浮遊スキルを獲得し(何故かレベル1アップするだけで

1000のソウルポイントが得れていた。)俺とシガネと月橋の荷物を浮かせて運ぶ事にした。

「・・・あの先行っていいですか?」

俺はふと言う。この密着状況を打破したい。

「何故だ?お前でも耐えられないほど重いのか?」

馬鹿にしたような発言が聞こえた。ムカッとする。

「違いますよ。いまだに重さを感じてすらいませんよ。けどここまで人と密着しているのは

相手に害があるかと?ヒューマンウィアーだからってのもありますし

それに俺と密着しているのは普通に害があるかと・・」

イラッとした気持ちを言葉にする

「駄目だ。そのままのほうが面白い。

先生が言う。


最低だ。この先生。最低な先生の最低な思考のせいで俺は、一応女子であり人である月橋をおぶっていくことになった。

さすがに俺の熟練度だといくら魔力が強くても浮遊魔法で、月橋を浮かばさられはしない。

これも元はといえば月橋が意地張って自分で荷物を持とうとするのがいけない。

うむ、そのせいでリターンの少ない労働を強いられているのだ。

俺は、リターンの大きくない労働が嫌いなのである。そもそも俺は、食べ物など食べなくても良い訳で

それに俺は時たま草原に行って狩りをして戻ってきてとった毛皮やらを売っているので

そこそこ金もある。つまりこんな風に気遣いしなければならないのにカフェでおごってもらうぐらいの

リターンでは揺れないし労働をしたくはない。ただな。ここで置いていくと|先生(まおう)に何されるか

分かったもんじゃないしそれにそうやって皆においていかれるようなキャラは俺で十分だ。

まあ俺の場合気絶することも遅れをとることもないけど。まあ、防御力皆無だから

こけたりしたらダメージ大きいかも。まあ、その分HPが馬鹿になんないから大丈夫だと思う。

で、俺からするとスッゴイこの道が長く感じる。

走らせてくれたらいいのにと思うがそれも|先生(まおう)に禁じられた為

最悪である。先生にすらばれない様にスッゴイスピードを出すこともできるが

後でどうなるかと言うことを考えるとそんなことできるはずもない。うう恐ろしい。

それと、これはちょっとだけ思うことだがそんなにスピードだしたら月橋の体は真っ二つになりかねない。

いや、それでも悪くないんだけど人殺しなんていうのがついてしまうのは嫌である。

別に月橋のことを心配しているわけではない。俺が人を心配することなどない。

真実とは冷酷なのだ。反対に優しさは、嘘である。俺はそんな薄っぺらい嘘を並べたくはない。

皆が周りに優しさを与えるのだ。ならば、俺ぐらい冷酷で醜い真実の言葉を口にしてもいいはずだ。

俺が最も嫌うもの、それこそが欺瞞であるのだから欺瞞など決して生み出したくはない。

他が生み出す事も嫌いであるのだから自分が生み出すなんてありえない。

世の中とは嘘なのだ。嘘であり、冷酷な醜い真実などは隠される。

だから急に真実を突きつけられたとき「こんなつもりじゃなかった」とそう人は言うのだ。

俺はそうやってギャップに苦しむのは嫌だ。ならば、そういったことになる危険がある人間関係自体を取り除く。

それには嫌われるのが手っ取り早い。


『人間関係なんてすぐにリセットされる。特にリセットする方法が端的なほどにすぐにリセットされる。

人に嫌われるというリセット方法はもっとも理想的で望ましい』


である。だから嫌われるのが一番であるのだが今回のような場合嫌われるどころか|先生(まおう)に

お説教というなの尋問?をされるためおとなしく従うのが吉。

危険は絶対冒さない。俺も自分自身の自己防衛本能には感服させられる。

なのでせっせと運ぶ。それにしても軽いな・・・・・・・・。重量的には。

精神的にはスッゴイ重く感じるけど。というかさ、この人、軽すぎない?

あの剣術の剣の1.5倍ぐらいしかないよ?人間ってこんなもんなのかな?

今度聞いてみよう。

「ところで先生。俺たちに逢わせたい人って誰なんですか?」

さわやかイケメン君が尋ねてくれる。実は俺も気になっていた。確か俺に似ているといっていたな。

それってどういう意味で似ているんだろう?容姿的に?ステ的に?性格・・・いやそれはない。

俺みたいな腐れぼっちがこの世に二人といるはずがない。

「それはな、2学期から転校してくる転校生だよ。それで君たちにはあってもらいたい。

どういう奴か見極めて欲しい。とまでは言わないが服部。

君の観察眼と思考能力は私よりも鋭い。そして多分この世の誰よりも。

多分言わなくても君は、これから逢わせる人のことを観察するだろう。そして分析し弱点を見つける。

だから、多分面白いものが見れる。私は君たちにもそれに入ってもらいたい。

そして私に面白いものを見せてくれ」

・・・つまり、俺は力を最大限だしてこれから逢わせるやつと戦え、争え、潰しあえという事だろう。

俺がやれるのは、その相手を観察して分析する。それだけである。

そんなこと容易い行為である。俺の観察眼と思考能力は先生をも上回っている。

だからそんなことは容易い。容易すぎるほどのことである。

「それと、今回はその人にあってもらうだけでなく戦ってもらう。

詳しい話は後でするがこれから行くのは少し難しい少女のいる学校だ。

君たちより大体7歳ぐらい下だが少し難しくてな。そこで君たちには彼女の更正をしてもらう。」

先生がそう言った。珍しく先生はそういった。その言葉を言った。

”更正”そういった。つまりその少女には問題があるということだろう。

だが、それでも先生は更正なんて言葉を使う人ではなかったはずだった。

「そうですか・・・・・・・・。」

「・・・どこか不満そうだな?何か文句でもあるのか・・」

俺がつぶやいた小さな声にも先生はしっかりと反応した。ただ、多分俺の言葉はこの人にはわからない。

多分、先生の考える持つものゆえの苦悩と俺の持つ持たざるものの苦悩は全くの別種なのだ。

苦悩というカテゴリーでは一緒でも混ざることが一切ない別種。

例えるなら虫というカテゴリーでは一緒だけど全く別種のカブトムシと蟻。

そんな感じだ。大きさが違う。スケールが違う。だから言っても分からない。

「いや、何でもないっす。」

俺はその一言で終わらせた。そして思う。俺が見てみてそれで自分のやりたい様にやると。

労働ではない。奉仕でもない。端的に言うならば娯楽だ。もっと言えば掃除。

ごみを捨てるための掃除である。




しばらくして俺たちは、小さなキャンプ場にたどり着いた。

「よし、着いたぞ。」

先生が大声を出す。そのせいで全く運が悪い事に月橋がおきる。

「ん・・・・・・」

まだ寝ぼけているのかうなっている。今ならおろせば間に合うかも。

俺がそんな希望に賭けておろそうとすると声が聞こえた。

「服部何をしている?月橋を部屋まで送りたまえ。それまでは例え本人がおきてもおろす事は許さん。

いいな?分かったら行け。」

悪魔がっ。俺にはやはり拒否権がない。命が危ない。憤怒スキルはそれだけ怖い。

何せぼっち流風林火山。無視される事風のごとく、興味を持たぬこと林のごとく、怒れる事火のごとく

無表情な事山の如し。の火に入る部分である。つまりそれだけぼっちと身近かつ危険なものなのだ。

舌打ちを軽く打ちながら指定された部屋に行く。勿論月橋の部屋だ。

「ん・・・・・・。は、ハト?な、何で?何で私がおぶられてるの?

キモい、変態、うざい。早く離せ」

道半ばにして月橋が起きてしまう。くそ、間に合わなかったか。というか口調は荒々しいけど

結構暴れたはないんだな。こいつかなり非力だな。

「うるせぇ。元はといえばお前が無理して荷物を持つからこうなったんだぞ。

てか、離したくても離せないんだよ。そんな事したら死んじまう。」

俺としても不服だったので言った。

「そっか・・・・・・。ごめん。じゃ、じゃあ今までずっと運んでくれてたの?

・・・ハトのくせに優しいんだね。何かむかつく。

・・まいっか。じゃあ私の部屋までしっかり運んでね。」

月橋はさすがに反省したのか声を小さくする。おお、こいつ結構素直だな。

扱いやすい。



と言う事で長い長い俺のおんぶ道中はとりあえず終わりを告げた。俺は、何とか気まずさから脱した。俺もまだまだ未熟だな。この程度で

冷静さを失ってぼっちの掟を忘れてしまうなんて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

因みに、そのぼっちの掟、というのは俺がここ数日で編み出した気まずい思いをしないための掟である。

其の壱、名前を呼ばれたくらいで反応しない。

ぼっちというのは自分の名前がほぼほぼ呼ばれないので名前が呼ばれるとすぐ反応してしまう。

その結果、「何あいつ?どんだけ反応してんの?きもっ」とか言われてしまう。

其の弐、相手と仲良くなろうとしない。

気まずさとは、相手と仲良くしようとするから発生するのである。例えば、ラーメン屋とかでもそうだ。

たまぁに並んでいる前後の人と変に話そうとして気まずさを感じる奴がいる。俺は違うけど。

この掟、結構重要である。

其の参、風林火山を常に忘れない。

これは前にも言ったやつだ。無視される事風のごとく、興味を持たぬこと林のごとく、怒れる事火のごとく

無表情な事山の如し。全く持って正しい。これは心得みたいなものだが俗に言う初心忘れるべからずなんかより

全然ためになる。これ結構すごい。

其の四、優しさなんて無視する。

優しさなんかあるから勘違いもするし優しさは俺には哀れみにしか見えない。

いや、俺に優しくするやつなんて哀れみぐらいしかもってないのである。


と、まあ、こんなところだがこれらのうちほとんどを忘れていたのは完全な不覚だった。

俺の完全なミス。力不足である。ぼっちステータスが低いな。ホントに。

そんな感じで反省しながら俺は自分の部屋に向かう。俺の部屋はどうやら普通の人と同じだ。

よかった。虫けら扱いでどっかの呪われた部屋にされるかと思った。

いや、あながち呪われてるかも・・・。だが、幽霊とか怖くない。そもそも幽霊なんて確実にいない。

なぜなら、ここでは死んだ生物は、生まれ変わり転生する。なので必然的に

無念があっても転生するので死者がここにいるってのは有り得ない。

あ、幽霊的な種族はいるぞ。ゴーストバルケンとかゾンビックタリとか・・・・・・・・・。

何か、どっかのオタの趣味で作られたような世界だよな。ホントに・・・・・・・。


いや、世界とは実はそういうものなのかもしれない。俺がここで今こうして生きている。

それさえも確かだとは説明できない。これもデータで俺がデータの一部で

この世界もどの世界も全てデータだっておかしくない。データだって証明できないけれど

データじゃないとはもっと証明できない。「俺がここにいるから」なんてより過不足な説明しか出来ない。

だから、誰もこの世界がホンモノだとは証明できない。神さえも神さえも誰かの創造の中かもしれない。

それを考えると全てが偽りに見える。だからこそ俺は、人は時に自分の意思にそぐわない

行動をとるのかもしれない。体が勝手に動いていた、とかそういうのは多分そうなのだ。

誰かが操っていて俺達はゲームのキャラでしかないのである。

多分、そうである。そうじゃなければ俺みたいなハイスペックキャラがこんなくずみたいな

人間になる訳がない。これはもう、必然的に俺を操作しているやつがくずだという事だ。

そうだ。そうだよきっと。俺のせいじゃないって・・・・・・・・。



だとするのなら・・・・。だとするのなら俺以外の友達をしっかり作り、恋をする、そんな彼ら彼女らの

操作プレイヤーはきっととても優れているのだろう。

きっとそうなのである。彼ら彼女らは操られているだけなのである。

自由に動くなんていうのは欺瞞。きっと全ての事はプレイヤーが決めているのだ。

だから俺は、そんなプレイヤーに従うようなくずどもと一緒には暮らさない。

友達なんて不確定要素いらない。全く持って不要だ。


俺は、やがて集合場所に指定された場所、キャンプ場の入り口に何も持たずに行く。

ここはどうやらキャンプが出来てそれと共に宿泊できるキャンプ気分が味わえる、という

場所なのであろう。実際、家族連れの客も多い。鑑定すると魔人とかもいるが

普通、鑑定しなければ分からない。だが、もしかしたら何かの弾みに分かってしまったら

薄っぺらい感情はぶっ壊れ、差別が起きるかもしれないな。

絆なんていう欺瞞の塊が砕け散っていくのは実に美しい。醜いあの感じが俺は大好きだ。

「服部、何故腐った顔をしている。正直言って醜い。やめろ」

おい、教師がそんなこと言ってもいいの?ちょっと。自殺しちゃおっかな?

・・・・・いや無理だ。死ぬの怖いしそもそも俺が死ぬってどんだけエネルギーが必要だと思ってんの?

俺と同等に戦える魔王となら簡単に殺しあえるがそれ以外だとこの世界のエネルギーを全部使って撃った

砲弾でも多分死ねない。そんだけHPが多い。防御0なのに絶えるってどんだけHPがチートなんだし。

「いや、別にわざとやってませんし・・。元からですよ」

開き直って俺が言うと|先生(まおう)はため息を大きく吐いた。それはもうすっごく。あれだ。

若干風が吹くレベル。先生、あんた魔王なんだから気をつけないと。

「まあいい。これから君はもっと腐った顔をするだろうからな。

ところで、諸君は子供が好きかね?」

先生が聞いてくる。そんな問いが愚問であると分かっていないのだろうか?

「俺は好きですよ」

と、さわやかイケメン君。

「私も・・・・・」

「私、子供大好きですよ。可愛いですよね・・・・」

控えめにシガネが言った後月橋が明るく言う。何だろう?俺をちらちら見てきてる。

俺、何か悪い事やった?・・・おんぶの件?いや、あれだって月橋が行けないだろう?

「服部、君は?」

先生の問いに俺は不敵な笑みを浮かべて答える。

「先生、愚問ですね?ぼっちやコミュ障というのは子供が大抵嫌いなんですよ。

子供というのはコミュ力が求められる生き物ですからね。特に10歳前半。

コミュ力がただでさえないのにもっと多く必要とするような生物と関われるわけないじゃないですか?」

全く持って正しい。俺の意見に狂いなし。座右の銘が我が人生に一点の輝きなしの俺は

輝いていないからきれいな正論が言えるのだ。輝かないやつ最強。

ミラーボールとか何時代だよ?

「・・・・生物って・・・。そもそも人としてしっかり関わろうとか考えてないんだ。

一方的に生物としてなんかの研究対象として見てるだけなんだ」

「愚問だな。そんなの当たり前だろ?あんなの研究対象以外で見るか、普通?」

月橋は俺の答えに質問をぶつけてきたが俺がそれにさえも問題なく対応できているので

若干悔しそうだ・・・・・。いや、引いてるな、あれは。

「まあいい。さてそろそろ来る時間だな。せいぜい面白いものを見せてくれ」

先生の不敵な笑みがあってその瞬間に俺は凍りついたような感覚に見舞われた。俺達は、|先生(まおう)が言う逢わせたい人、を待った。時間にして1分。

そして、そいつは来た。男だった。年齢は俺たちと同じぐらい。多分顔立ちからしてそうだと思う。

俺は、鑑定をする。鑑定持ちの者からすれば当然の行為だ。そして普通鑑定される側は

気付かない。しかし、こいつは気付いて、俺を若干凝視した。

それで、鑑定結果だが残念ながら何も分からなかった。ステも表示されず、

『鑑定が阻害されました』と表示される。阻害?普通鑑定のカンスト状態なんて阻害できないんだけどな・・。

魔王である先生でも無理だしどんなに歴戦の戦士でも無理である。

俺は、こいつに恐怖を感じ、一歩、いやかなり後ずさりした。体中が戦闘状態に入る。全力で

いつでも戦えるように準備しておく。こいつは危ない・・・・・・・・・・・・・。

俺が、全スキルを駆使して存在を消す。しかしそんなもの効かないのか

彼は、俺を凝視している。睨んでもいる。そしてはにかんでもいる。いくつもの表情を

同時に行う、そのさまもまた恐ろしい。俺は、恐怖を紛らす為にこちらも睨みつける事にした。

威圧をかける。軽くではなくかける。睨みつける。全力で威嚇する。

しかし、彼は恐怖を感じる様子もなく堂々としていた。ここまで来ると俺は

ホントに恐怖を感じ、さわやかイケメン君の後ろに隠れる。さわやかイケメン君は気付いてないようだ。

「服部、何をしている?」

先生が俺に尋ねる。怒り気味で聞いてくるがそんなこと俺は聞き流す。しかし、俺は一ついい事を考えたので

先生に近づく。

「先生、ちょっといいですか?」

そういって俺は先生とともに少し遠くに移動する・・・・・・・・・・・。

ここまで先生が簡単に頼みを聞いてくれるのはやはり彼の異様な感覚に気付いたからだろう。

「で?彼は何者ですか?鑑定スキルは効かないし。俺の威圧をかけても全く効果ないし

俺の隠れる系スキル全投下でも全く効かない。あれは俺や先生と同じ、いやそれ以上ですよ。

何であんなに恐ろしい奴がいるんですか?」

鑑定が効かない、威圧が効かない、隠れる系も効かない。こんな化け物見たことがない。

先生にだって鑑定は効いた。

「彼は、七大罪の子。しかも第二のな。今まで考えられてきた七大罪

憤怒、暴食、強欲、傲慢、怠惰、嫉妬、傲慢ではない新しい七大罪、人呼んで

七真罪のスキルを持つものだ。あれは、権利のあるものが全てのスキルを持つようになっている。

だから彼は七真罪のスキルを全て持っている。確実に彼は

私たちより上だ。何せ七大罪級のスキルを7つ全て兼ね備えているんだからな。

多分、鑑定が効かないのは無知のスキルの効果だろう。

確か、他にも勇気、存命、団結、向上、虚飾があったはずだ。」

七真罪。多分それはかなりすごいものだ。それを7つも兼ね備えるのは

かなりの大変だ。俺だって二つの七大罪スキルはかなり重荷になり結果的に力をだすと物を壊してしまう。

だからそれを7つ持つのはかなり繊細な人間でなければ難しい。

「因みに、勇気というのは自らを犠牲にすることで多くのことをなす業で

死ぬものもあったり死ななくても動けなくなったりするらしい。

存命は、生きること。常にHPが10000回復する。それプラス、死んでも生き返ることが出来るらしい。

確か、魔力がある限り。

団結というのは確か、人と人を争わせる、スキルらしい。

向上は、強欲と同じようなものだ。虚飾は一時的にステータスを全アップさせる。

そして無知が、鑑定系スキルの無効化。まあ、私の目はごまかせないので

見えるがな。ステータスも。彼は偽ってない状態だと君より少し劣るが

虚飾によりアップしているときだと君をはるかに凌駕する。」

はるかに凌駕。それは、確実に勝てないことを示していた。まあ、戦う気なんてない。

だが、勇気にしろ解釈としては自己犠牲が罪って事だろ?存命は生きること

団結は群れる事、向上は向上心を持つこと、虚飾は・・まあ本家にもあるな。

8つの何ちゃら罪だったか。確かにな。言えてはいる。

「はるかにって、どれぐらいですか?

「全ステータスが君の2倍だ。MPと魔力を除いては。

魔力関係は君が上回る」

先生は、真顔だ。ふざけたはいない。だから真面目にその言葉を受け取る。

信じられないが、きっと真実である。

「よし、じゃあいくぞ。」

先生に促され俺は他の奴らのトコに戻る。それにしてもあいつ、怖い。

勿論能力もだが、俺は直視できない。こいつは人と関わるのが絶対うまい。

絶対に人と会話するのが得意だ。リア充だ。確実に。

俺は、多分、こいつが苦手だ。こいつの人をまとめるやり方が俺には出来ない。

俺が出来ないことをこいつは出来る。だから嫌いだ。別に張り合う気はない。

張り合う気はないが、ああやって人とつるんで仲良しごっこしているやつに

俺より上に行かれたくない。一人で頑張ってきたようなやつがごっこをしているような人間に負けて

今までのやり方を全否定されたくはない。

だからこいつは嫌いだ。きっとこういう人種は俺にさえもしっかりと関わろうとする。

しかし、そんなのは俺らには哀れみにしか見えないのである。

それを彼らは知らない。だから俺は彼らが嫌いだ。



「えっと、じゃあ自己紹介をしたまえ。服部、お前からだ」

先生がまた無茶を言ってるよ。もうね、コミュ障のやつからすると

自己紹介とか拷問だからね。あ、因みにカウンセリングとかはもっと拷問の拷を地獄の獄とか究極の極とかに

変えちゃうくらい拷問だ。・・あ・・伝わらない?

ぼっち&コミュ障には伝わると思うんだけど・・・・・・。まあいっか。

とりあえず、コミュ障流自己紹介のコツがある。

まずコミュ障は基本的に人と会話するのが嫌いだ。だからそのためには嫌われるのが

手っ取り早い。そして人とはどうやって好き嫌いを判断するか。

俺が思うにそれは1、自分にとって利益が生じるか(面白いか、うざくないか、利用しやすいか)

2、自分の恋愛対象になりうるか。3、過去に地雷を持ってないか(あるとうざい)

4、無茶苦茶つまんない話をするか・・・である。

つまりこれらを全て満たせば嫌われるのである。

だからコツ、自分が相手にとって利益をもたらさない事をアピールする。

次に、2、については何の問題もない。そもそも俺もてないし。それに相手は男・・・。

いや、隣に紫の髪の女性もいる。先生と同じぐらいの・・・・・。あ、あれがもう一人のイザナギ?

まあ、もてる要素がないのでいい。なので過去に地雷があることをアピール。

それを織り交ぜた自虐ネタを披露すればすべるので1石2鳥だ。


さて、俺は、この空気の中で自虐ネタを披露する事にする。

自己紹介に織り交ぜるのだ。そうすればある程度の親密度がない相手の場合引く。

完璧な作戦である。・・・というわけで俺は自己紹介をする。

完璧な案を考えていたのでちょっと興奮してしまった。

まあいっか。始めよう。

「えっと・・・。∞組の服部氷馬です。友達は・・・・いません。部活にも人が嫌いなんで

入ってないし、いやまあやむなく入らされているけどそれと・・・・・。特技は特にないか。

俺なんかに特技なんてあったらそれこそ

世界の終わりだしな。そもそも特技なんて特別な技なんだから皆持ってたら特別感なくなるだろ?」

・・・駄目だな。よく考えると自虐ネタも何も俺、記憶ないんだった。

何で記憶無くなったかな・・・・・・・。まあいっか。とりあえずいい感じにひねくれてる感じは出たし。

大抵のやつはこれでも引くんだが、駄目だな。月橋とシガネとさわやかイケメン君たち告白部勢は

引き攣ってるがやつは、微妙だ。微妙な顔をしているが特別引いているとかではない。

むしろ、こいつのこれは哀れみ。しかも普通のやつが向けてくるのとは違う。

すぐにそれが分かった。違うということが簡単に理解できた。何なんだ?こいつのこの目は。

「じゃあ、次、僕でいいかな?」

やつは、俺たちに、というより告白部勢の3人に確認してから自己紹介を始める。

「秋から∞組に入る、|猿飛雷馬(さるとびらいま)って言います。

えっと、得意な事は運動全般が得意です。後、勉強も少し得意で後は何かな・・・・・・・・・・・。

剣術と魔術が得意です・・・・・・・・・・よろしく」

100点な自己紹介であろう。名前をしっかりと言って運動が得意だという事実。

この時点でも人として100点。勉強が得意な事をアピールし、だが少しとつけることで

若干の控えめ感を出す。だしてはいるが聞いている側からすればしっかりと

得意だと聞こえる文句。でも本人は控えめに出ているという事実を持つ。

人の心理をうまく利用している。てか、運動とか魔術とか剣術とか出来て当然だろ?

七真罪だっけか?あれがあるんだからそりゃステも半端なくなるだろうよ。

だって草原で体だけ特訓していた俺にステで勝つんだぜ?一時的にでも。

それもうスッゴイからね。ホントに。・・・蛇芭もすげえな。草原でそんな風に生きぬいただなんて。

今どうしてるんだろう?わっかんないな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


まあ、そんなことを考えている間に告白部勢の自己紹介も終わったようだ。

じゃあまあ、あの後ろのもう一人のイザナミ?にも話しかけてみるか?

「で?そこの人は?」

俺が話そうとしていたらさわやかイケメン君が割って入ってきた。ひっどい。

まあ、さわやかイケメン君コミュ力高いし実はリア充だし。俺とは格が違うのよ。

そんな奴を俺は弟子のように育てている。・・おれすげぇ。うん。よし切り替え切り替え。

こんな事でうじうじねちねちしてもいられない。あ、今度から練習メニュー倍な・・・。

俺が威圧を全力でかける。他にも色々精神を蝕む系のスキルをとってやる。むかついた

「私は∞組の副担任になるリリス・マクライド・サテル。よろしく。」

そっけない挨拶をする。このリリスとか言う人結構やばい。鑑定で見てみたら

魔王である先生と同じぐらいのステータスだ。しかも種族がヴァンパイア。

吸血鬼である。しかもその吸血鬼の王に位置する種族。死と生をつかさどる吸血の神

ヴァル・ザテルである。この種族になるにはかなりの苦労が必要だ。吸血鬼に血を売って

契約し、その後自身の力を証明しなければならない。

その力を裏付けるかのように、リリス・・先生?は、嫉妬のスキルを持っているようだ。

効果を見てみると、一時的に対象者の能力の半分を自身の体内に吸収する。だそうだ。

俗に言うステ吸収。吸血鬼っぽい技だ。でもこれかなりすごい。

例えばこの場で俺や魔王を対象者に選べば誰よりも強くなれる。

だが、多分それをすると体がおかしくなる。暴走するか爆発するか。

どちらにせよ待っているのは地獄だ。そんなぶっ壊れスキル持っていてつらい。

それは、俺にも言えるがな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

因みに、鑑定は持っていた。多分、俺を鑑定しているところだろう。

・・・・ん?今何か気配を感じた。とてつもない恐怖?消される、いや消えるという感覚。

あざ笑うようなそんな感覚が俺の胸をえぐる。

「へぇ・・・。面白いじゃない。・・サテラ、あの件については説明済み?」

リリス先生が言った。あ、サテラってのは先生の名前だ。

ホント、平凡な名前で本人も嫌がってた。サテラって名前結構多いらしい。

サテラって横文字で書く人もいれば左寺とか佐照とかとかいてサテラと読ませる場合もある。

なんでも有名な神だそうだ。それも結構いい伝説の残っている。

「あ・・・・ああそうだった。言ってなかったな。告白部の3人に、言っておこう。

猿飛は、奉仕部を作る。一人だがな。で、内容は依頼者の依頼を解決する。

告白部と違うのはやり方ぐらいだ。彼は彼のやり方でやる。その違いだ。

で、リリスが顧問なんだがな、こう見えて結構退屈していてね。

なので内容が似ている部活同士戦ってもらおうかな・・と。

で、1回戦が今回紹介する少女の状態の良好化。次が成宮の依頼だ。」

・・つまりは戦え、つぶしあえってこと?めんどくせぇ。

「・・・なるほど。よし、シガネちゃん、ハト。やるよ。こっちのほうが先に出来てるんだから

負けるわけにもいかないし。」

月橋が随分乗り気だな。でもまあ、強制的に入ってる俺としては結構苦痛だ。

「え・・・・・・」

嫌々そうな声をだしてみるけどむしろ月橋に睨まれた。怖っ。蛇なの?

「えーーも何もない。拒否権無し、退部も許しません。」

あれ?月橋が魔王に見えたぞ。やばっ。怖いぞこいつ。末恐ろしい。

まあ、先生の提案なのだったら拒否権はないだろうな。・・あ、先生は口にだして

拒否権がないだなんていわないな。ふ・・・。まだまだ未熟なようだな。

「・・分かったよ。分かった。先生、今回の依頼はその少女?の”状態の良好化”で良いんですね?

なら、俺たちは俺たちでやらせていただきます。」

しょうがない。ホントはこんな事やってる余裕ないんだけどな・・・・・・・。まあ、そんな訳で告白部と奉仕部の対決が始まった。

と言う事で俺達はその少女がいる学校の校舎に向かった。俺たちがいるところから考えて

一般的な考え方でも徒歩2,3分ってところだ。俺の足だと0.5秒・・・・・・・・・・・。

ホントは行きたいのだがそうやって抜け駆けしてスッゴイやる気がある人みたいに

思われても嫌である。それに俺が全速力で行くとその学校の校舎が壊れるかもしれない。

その可能性高いな。うん、やめよう。いっその事|退部(やめ)よう。

やめたいよ。ホントに。何でこんな部活作ったんだよ。おい、作った奴誰だよ?

月橋?先生?どっちにしろ最悪じゃねぇか。何で俺の周りにはくずしかいないないんだよ。

答えは簡単。世界がくずで俺だけが清いから。うんうん。誰かと群れる時点でくず同然。

つまり誰とも群れない俺は清い。俺の清さは筋金入りだぜっっ・・・・・・・・。


そういえば、猿飛は、何の不快感も感じてなさそうだな。こうやってだらだら合わせて歩くの

疲れるのに・・・・・・・・・。ああ、そっか。こいつは月橋やらシガネやらついにはさわやかイケメン君さえもと

しゃべりまくっているからな。ああ、さわやかイケメン君。お前までそっちにいくか。

よし、後でお前にはもっと恐ろしい罰を与える。決定。裏切り者とかくずの風上にすら置けない。

お前も一応告白部勢だろ?という意をこめてさわやかイケメン君に威圧を少しかけた。

それだけで立つのがやっとになっている。歩けてなどいない。月橋やシガネが心配する。

おお、すっげぇな、あの他人を心配するスピード。普段の動きよりも格段に早かったぜ。

ああいうのって自分が後で責められないように急いで心配するんだよな・・・・・・・・・・・・。

ホント人って防御力強い。そして格差を作るという意味では知能も凄い。

いや、人ってすっげえな。それとあれな。俺が威圧をかけた瞬間俺の少し前にいた奴らと

先生2名の内4人、猿飛と魔王先生とリリス先生。それと意外だったのが月橋だ。

ホントそういう誰が攻撃してきたとかの犯人をを捜す力強いよな。俺でさえ少し驚く。

お前ら、探偵にでもなったら?寝台特急とか特別捜査課とかで活躍してきたら?

因みに今現在先生2名が俺に接近中。あれは片方怒ってますね。

あれ?片方笑ってる。おかしくなっちゃったのかな?吸血鬼になったんだっけか?

「服部?貴様ぁ何をやっている。仲間に攻撃してどうする?しかも人間に威圧だなんて。

それは普通苦行だぞ?人間からしたら少しの威圧も命取りなんだぞ?

と言う事で、貴様には今回の告白部勢の敗北時の責任を取ってもらおう。せいぜい負けないように頑張るんだな」

先生に俺はそんなお達しを受けた。何?責任?あれだろ?通常の、「責任取ってくれるよねキラっ」とかとは

全くの別物だろ?「おい、テメェどうしてくれるんだ?コラ?」みたいなのだろ?

「イザナギ君、おっもしろいね。なんの躊躇いもなく威圧とかどんだけいらいらしてんのよ?

あれだな、奉仕部の中に君みたいなのが一人いたら見てて楽しいんだけどな。」

あれだ、リリス先生はおかしい。ちょっと狂いめだ。苦類女だ。


ともあれ俺は長々とお説教を食らうわけではなかった。俺の日ごろの行いのおかげだ。

日ごろからこういうことをしてるから不思議がられないんだ。

で、問題は今近づいてきてる月橋だ。やっばいな。あいつホントに魔王先生に似てきてる。

歩き方で精神を語ってるところがそっくりだ。怒ってますよ感、凄い。

「ハト?何してんの?絶対今のハトだよね?何でそんな事するの?」

「別に、理由なんてないし。そもそも全ての事に理由があるわけないだろ?

理由があったとしてもそれがお前に理解できるか?俺が俺である理由は理解できるか?

お前がお前である理由は説明できるか?生きることの理由をしっかり説明できるか?

出来ないだろ?いいか?そもそも生きることに理由なんてないんだ。

もっと言ってしまえば今こうして起こっている出来ことも全て誰かの夢かもしれない。

だから理由なんてない。」

ふっ。完璧な説明。完全に論破しただろ?舐めんなよぼっちの開き直り力。

月橋は呆れたような雰囲気でため息を吐き戻る・・・・・・・・・戻らなかった。

他のやつらのほうには戻らず俺をジーと見ている。しかも近い。

これ、あれだ。街中でよく見る手つなぎデート中のカップル並みに近い。分からないかな?

あれ、ホント憎い。何であんなにも人って温もりとやらを求めるかな?

寒いならあったまればいいじゃん。機械で。

「何?」

「へ?あ、ああ監視してるの。次やらないように。」

監視って・・・。俺そんなに疑われてるほど日頃の行い悪いか?思い出そう。

部室壊して、依頼の名目で依頼者を苛めて・・・・・・・・・何?極悪人なの俺?

でもさ、この状況だと結構勘違いしやすいし。それに監視って言ったって

人間には分からないぜ。発動しても。ま、いっか。めんどくさい。

ちょっと離れてくれれば良い。


「もうすぐだ諸君。」

諸君って、先生らしくないですよ。ホントに。

それにしても空気がきれいだな。腐っている他のやつからすればホントに住みにくいだろう。

俺は誰より清いので全然問題ない。少し体が溶けた感覚を感じるけど問題ない。

多分、問題ゼロ。さて、問題はないがクエストはある。

ここにいるガキを全滅させよっ・・・・・・・・・。あれ違う?だってこんなに

うようよガキがいるしてっきり全滅系クエストかと思った・。

エリアドライブで一気に倒すぜっ。とかすると捕まる。普通に逮捕。

世界の救世主とか運命の子とか関係ない。世界は無情である。

「さて今日からこの学校は運動会でな。どうやら2日ほどかけて色んな競技をやるらしい。

かなり本格的だ。それで君たちはこの対象者の『|氏神可憐(うじがみかれん)』についてと

もう一つ、この大会の競技、エキシビションの剣術で猿飛に赤、服部に白の代表として

戦ってもらう。因みにこの競技でも得点が入る。しかも逆転できるレベルのな。

それが二日目。明後日だ。ということで頑張れ」

・・・おい、投げやりすぎるだろ?いまどきの教育厳しいね。さて、俺は、先生の指示で白組のエキシビションをやることになったので白組のクソガ・・・・じゃなくて

子供がいるところに向かった。先生の話だとその氏神とか言うやつは白組らしい。

それだと不公平な気がする。人数もこっちが多いし・・・と思ったのは少し前までだ。遠巻きにもみえる。

猿飛は、ものの数分で赤組全員の心をつかんだ。ぱっと見るだけでなく結構よく観察してみても

一人も心をつかまれていない奴がいない。どうやらこいつは人とのコミュニケーションが得意なようだ。

まあ、そんなこと当たり前か。さっきまでだってこっち側の連中もあいつのほうに行ってたしな。

告白部勢の俺含め4人は、白組にいる。月橋、シガネ、さわやかイケメン君は児童の監視らしい。

普通にボランティアじゃねえか・・・・・・仕事とかしてる暇無いんですけど。

早くしないと普通に世界消えるんですけど・・・・・・・・。まあ、先生が世界を同期しようとしてるなら

それさえ止めれば何とかなるだろう。でも、問題は何故同期しようとしているか。

多分、神の使いだと聞かれたのだから神に関わるところだろう。

前に聞いたときは自分で思考を変えてしまったせいで聞き逃したが多分そんなところだろう。

だとすれば事態はもっと深刻。こんな事やってる場合じゃない。

俺がそんなことを考えていると先生が近づいてきた。何か言いたげである。

「服部。世界が壊れるまでには時間がある。神が準備を進めているがまだ先だ。それまでに出来る事は

こうして一人一人を救済していく事だけだよ。だから今はこのことに集中しろ。」

心を読まれてるのか?何て疑ったが多分それは違った。先生のこの無力に絶望するような

顔はきっと自分がそう思ったのだろう。「こんなことしていていいのか?」と。

そして先生が出した答えがこれなんだ。今自分に出来るのは一人一人に向き合う事だ、と。

なら、従おう。きっとこの人のことだ。やらなければならない事はしっかりやっといてくれる。

「分かりました。」

短く返事をして俺は、覚悟を決めた。とはいえ子供の相手は基本、月橋にまかせっきりだ。

俺は氏神を探す。顔も知らない、雰囲気も知らない。どんな奴なのかも、難しいだけしか。

でも分かった。ぼっち同士ってのは惹かれあう運命なんだろうな。

俺は、集団の後ろのほうで孤立していた少女に話しかけた。

「何してるんだ。他のやつは皆固まってるぞ」

俺はその第一声を発した。少女は俺に話しかけて驚いているようだった。

多分、気付かれた事にびっくりしたんだろう。少女は隠密スキルを5まで上げていた。

上げていた、ではなくあがってしまったというほうが正解だろうがな。

俺は、この少女の事を知らない。だから断定は出来ないが多分、ずっと後ろのほうにいて

かくれんぼとかやっても最後まで見つからずに置いていかれて、いつも孤立して

そうしてこんなスキルが身についたんだろう。だが、それ自体は悪い事じゃない。

孤立しても良い。見つからなくたって良い。一人でいたくたって良い。

問題はきっと見つけて欲しいのに見つけられないことだろう。

その根拠に彼女は色んなスキルをとっている。どれも努力で取れるスキル。

多分、目立とうとしていつも努力してどれかどれかで秀でようとしたんだろう。

でも、気付いてもらえない。責められたり笑われたりするよりずっと性質が悪い。

気付いてもらえない、気づこうとしていない。近づこうとしていない。

本人が努力したって無理だろう。無理やり入っても多分悪目立ちするだけだ。

そして多分彼女は、責められたり笑われたりするならいざ知らず、陰で言われたりする、

そんな居心地が悪い状況を作りたくないんだろう。多分彼女はそういう状況に居たり

気付いてもらえない人間は劣っていると思っているのだ。彼女のその声色や

動作、俺を、全体を見る目からそう分析できた。

「お前が氏神だろ?」

「・・そうだけど。何?」

随分とげとげしい。そして俺を舐めたかのような声色。多分俺を劣等者だと見て舐めてかかってきている。

ぼっちは、生半可なレベルでぼっちだといっている奴が嫌いだ。多分、同じなのにぼっち

ぼっちがぼっちを哀れむような蔑んだ目でみるのも嫌いだ。

「お前は、間違ってる。劣ってなんか無い。気付かれなくたって影で言われたってそいつが劣等者って訳じゃない。

当事者の俺が、言ってるんだ、間違いない。」

「はぁ?何言ってるの。急にそんなこと言われても意味無いし。いるんだよね口で言っといて裏切る奴。

あなたもあそこらへんの人と一緒なんでしょ?」

あそこらへん。きっと同級生のことを言っているのだろう。そうか。

昔は仲がよかった。でも自分が劣っているせいではぶられていると思っている。

だから劣りたくない。そういうわけか。確かにそうだろうな。

皆と一緒に居たい。皆と同じラインに立っていたい。そう思うのは当然だ。

でもな、今いる世界で閉じこもろうとしなくたっていいんだ。認めてもらえないなら認めてくれる

人のところに行けば良い。人なんて皆同じなんだ。皆くず。それ以外の何者でもない。

だから、今いるために力を使うぐらいなら一人でいられると証明するれば良い。

力があると証明すれば良い。そして新世界の神になれ。そうすれば気まずさも消える。



だから俺は彼女に一人でいる奴として一人が多数により圧倒的に強いことを示し

そして新世界を作ってみせる。そしてその更に上。こいつらの小さな世界を

潰してやる。世界を壊せば皆一人なのだから。そうすれば世界を作れるような

強い人間が得をする。

赤、白共に全体競技である棒倒しの練習を始めている。

といってもやっているのは入退場の動きだけである。実際、作戦とかがばれるとかもあるが

学校側としても怪我させたくないのだ。責任は取らされるし・・・・・・・・・。

というかそう思うなら棒倒しなんてやらなくていいとおもうのだが毎年その辺は

もう決まってしまっている。組体操と同じレベルだ。もう変えられない。

保護者がなんと言おうとどうしようもないしそれを理解しているから誰も何も言わない。

いや、もしかしたら言えないのかも知れない。周りが言わないから言えない。

そうやって皆が言わないから何も起きない。そして犠牲は出る。

ここにいる子供なんて犠牲でしかない。可愛そうだどう考えたって。生贄にすらなってない。

まあ、今年は俺とリリス先生と魔王先生と猿飛という4人の回復が出来る人間がいるのだ。

先生だって再生の能力で確か回復できるしリリス先生も猿飛も回復スキルを持っている。

というか回復スキルなんてその道50年の人でもよほどの才能がなければ入手不可。

いや才能があっても普通無理。つまりこの4人以外で魔法的なことで回復できるやつは

一人もいない。このせかいに存在しない。聞くところによると人間は

ソウルポイント自体普通はゲットできないのだそうだ。

なので剣をふるって・・とか努力でスキルを入手しないと駄目らしい。


さて、そんなことを言っている俺だが竜眼と観察眼を使い氏神を目で追っている。

更に言うならば氏神の周りの人間を周りの世界を観察している。

それにしても腐っている。ポジティブ、明るい世界、集団といったら聞こえはいいだろうが

本質はかけ離れている。ポジティブってのは俺みたいなもう完全的な前向き思考の奴を言う。

まあそれはもっともだがそういうことじゃなくて俺の言っているのはあいつらの間違った

ポジティブの方向の事だ。ああいう考え方。あえて負ける、勝つ気がないどころか負けを楽しんでいる、

参加の意義を捻じ曲げている、集団に入らないものの存在を認めない。そんなポジティブさがみられる。

負けたら、勝ち負けが全てじゃない。むしろ勝ってしまったらメンドクサイ。

勝った後とかめんどくさいしね、みたいなああいうのが一番大嫌いだ。

俺だってこういう時は多分全力出さない。だから勝つ気が無いことについては咎められないし

咎めるつもりはない。だが、あいつらの勝つ気が無いことの理由が何かを馬鹿にしたり

馬鹿にされないためのものに見えてしまう。勿論これは練習だし、そもそも試合をやってないのでこれも

白組の現在の作戦かも知れないがなんていったって月橋にシガネにさわやかイケメン君だ。

そんなこと考え付くはずもない。

だがまあ、そんなことを動作を見ただけで分かってしまうのが気持ち悪い。

しかし、ああやって人間関係のために力をださなかったりするものが俺には欺瞞に思えて仕方がない。

そしてその欺瞞は、人間関係のために自分の全力や、自分の何かを捨ててしまうような

そんな行動が俺は大嫌いである。だから、この世界を壊すに値する。

こいつらの人間関係やらその考えやら、全てをぶっ潰す。


なんていってもそんなたいそうな事できない。だが知ってるか?何かを壊すのには

否定するのが一番なんだぜ。話し合いだって一つ否定意見を出せばそのうちにその否定意見を否定する意見を

だそうとして簡単にぼろが出て、そして結局誰もが心のうちに中途半端な感情を持つ。

言葉って言うのは一言で一生聞いた奴に気持ち悪い中途半端な感情を抱かせるものだ。

なので俺は否定から入る事にする。が、実は今の俺は白組にもそして当然のごとく赤組にも

更に言えばこの場所にも俺の居場所はない。もう既に棒倒しの練習が終わったらしくて

猿飛が赤白両方ともまとめちゃってる。おい。何やってくれてんの?

もう皆(氏神を除く)が猿飛の味方になっちゃってるじゃん。ここで変に発言したところで

何の意味もないしそもそも今の俺に発言権とか無い。俺、人権無いの?

ああ、よく考えたら俺の種族って俳人みたいなだった。・・あ、間違えた。

廃人ね。俳人じゃない。でも俳句とかかけるんだけどな。

悲しくて ホント悲しい 超マジで・・・・・・。駄目だよね?

ステが無茶苦茶すごくて頭がよくてもそういうのはセンスだからさ。どうしようもないんだよね。

ていうか発言権が無いのはきついな。まあ俺にはスッゴイチャンスがある。

そのチャンスもおじゃんになりそうだがまあチャンスがあるんだからやらないと。

それにしても猿飛も中々の切れ者だな。ああやって赤白一緒にしちゃえば氏神に接触できるもんな。

因みにさっきの練習は、リハーサルで今日の午後から本番の運動会が始まるそうだ。

でもって俺の出番は二日目。もう寝ちゃおっかな?いやぁ、でもそんな事したら

魔王先生にこ・ろ・さ・れ・るのでやめておく。てかもし俺殺したら

ホントに来るべき日?とやらに神と戦えないんじゃないの?しかも俺はこの世界じゃ

最も優れた魔法使いだ。魔王である先生にも吸血王であるリリス先生にも

七真罪の力でパワーアップしている猿飛にも魔力とマナでは負けない。

まあ、だからエキシビションは剣術なのかな・・・・。魔術対決だと俺、絶対勝つからな。

じゃあどうしよっか・・・・。とりあえず猿飛はむかつく。あいつより優位に立っていたい。

なので剣術で勝つにせよ負けるにせよ勝てる可能性があるステにしておきたい。

確か剣術対決は魔法ありだったけど実際、魔法を使う気はあいつも無いだろう。

だから、俺も使わない。と言う事で俺は、その持ち前の力でジャンプして俺がもといた草原に向かった。

この草原は道を知らないと出るのが大変だがまあ、俺みたいにジャンプで言ってしまう分には

何の問題も無い。俺の予想だと蛇芭はそれで迷って転移を入手したんでつかったっぽい。

まあ、道が分からないからしょうがないが本来ならあれは使ってはいけない系のスキルだ。


さてここに何しに来たかというとだな、この辺のモンスターを狩りまくって全滅させる。

そして俺は倒すごとに強欲でステ強化、ここは輸送ルートになってたりするので

モンスターを全滅させればこの世界の住民は安全、安心。一石二鳥とはまさにこの事だ。

この辺のモンスターは俺より50分の一ぐらいの強さだがまあちりも積もれば何とやら、

ごみも積もれば立派な屋敷だ。まあ、そういうわけで俺は狩りを始めたわけだが実際俺はこの手のことを食費稼ぎとかもろもろで

やっていたのでかなり手馴れている。というか俺は1学期間、登校前にモンスターを10体討伐してから行っていたので

既に機械的な行動になっている。危険な場面なんか全く無くそれこそ超余裕だった。

それと、念のため俺がいつの間にか入手していたソウルポイント1000を使って幻影魔法を展開しているので

万が一俺がいないことに気付きそうになっても幻と一緒に居てくれる。

この幻、触れることも出来る、意識もコピーされる、話すことも出来る、考える事もできる、と

もはや俺より優秀なんじゃね?と思うが残念ながら俺の分身なので俺以上のことは出来ない。

猿飛をむやみやたらに増やしちゃえばもう世界の人間いらなくね?とか思い始めてしまうがそうするとそもそも

俺のやってること自体が否定されてしまうので考えるのはやめておこう。

そんなことを考えているうちに、また一匹と狩り尽くし、今では合計して100体は既に倒した。

それらはちょうど今頃小さい竜が大きくなる竜成長期なので竜が多く、全体の7割が竜、後がやたら大きい虫とかだ。

だが、さすがにこんな事を続けていくとほとんどモンスターはいなくなる。というか残ってるのは

超小さい虫とかばかりでしかもどれも踏み潰すだけで死ぬし害も成さないような奴ばかりだ。

ステータスはというと特訓開始時と比べると大体1.5倍ぐらいにはなっている。多分上位種族の竜をたくさん倒したことが

原因と思われる。これが弱いモンスター(小さい)ばっかりだと多分ほとんどあがってない。

むしろ竜70体以上分のステを合わせても俺のステータスの半分ぐらいにしかならないって

俺のステータスどうなってんだよ。というかやっぱあれだな。こんなトコでちみちみやってても無駄だ。

ここはもっと難しく強いモンスターがいるサブラル洞窟に行くしかない。

サブラル洞窟は、竜ばかりいてしかも原初の竜の住処とされているところで竜マニアに結構人気である。

しかし最近になって竜の上位種族この世界の種族の最上位に当たる龍が多く見られているので封鎖されている。

ここに俺が行って龍を全滅させれば1、俺のステがあがる2、竜マニアが喜ぶ3、龍討伐部隊を洞窟に送って

負傷者を出さずにすむ、のまさか一石三鳥である。ワンストーンスリーバード。

と言う事で俺はジャンプでサブラル洞窟に向かった。


サブラル洞窟に着くと俺は警備員に見えないようにすっごく早く入り口を通り過ぎた。

まあ、既に俺のスピードはというかステータスは単純計算だと世界一な訳でまあそれも猿飛の虚飾の

能力が無ければの話なんだが。虚飾によるステのアップはずるい。2倍とかない。

だがまあ、もう既に魔王である先生すら超えているわけでもし当初の俺にこんな力があったら

すぐ殺していただろう。でも今は色々あって殺す理由がなくなったからな。

まあ、なので俺はサブラル洞窟で特訓する事になったのだが序盤はまだ、

竜が多く、全然余裕だった。竜の鱗が微妙に光ってるので暗さも感じなかった。

そんな感じで俺は余裕綽々で深くまで進んだ。ただ、これをやると時間が分からなくなるんじゃ?

と思うだろ?でもぼっちのスキル舐めるな。伊達に一人で暇つぶししてない。

俺は、1秒1秒確実に計れる。感覚だけでも1は、ずれてもほとんど10時間を数えられる。

なので腹時計?というやつのおかげでいつ帰ればいいかも分かるのだ。

やばい、俺、時の支配者なんじゃない?時を知り尽くし全ての時を完全に消す。

(暇なのでいつもまだかな?と時計を見ている。暇に慣れているので全ての時間を起用に潰せる)

まあいい。俺の時の支配者説は置いていてとりあえず歩こう。どうせ龍なんてたいしたこと無い。

なんて思ってた自分がいた。それがフラグ立てだとも知らずに。

それから少し歩いて俺は体中、青く光って爪と牙は刀のように鋭く目は見たもの消し炭にするほど

迫力のある竜が現れた。龍である。(多分)

そいつが「ごぉぉぉ」とほえた瞬間俺のHPが0.5割減った。そして本能的に

悟った。こいつはやばい。俺よりも強い、と。

鑑定してみる。

「リミテッドドラゴニスLv10

HP5000/5000

MP1000/1000

SMP1000/1000

AT40000

SD30000

MN10000

スキル

威圧Lv10

竜眼Lv10

龍眼Lv10

龍爪Lv10

焉火Lv10    

輝鱗Lv10   」

何?やばい。ほとんど俺と同格。いや前の俺とだけど。でもこのステのがこんな一洞窟にいるとかおかしい。

ホント油断した時点で終わる。と言う事で俺は躊躇い無く毒や強酸をぶつけまくる。

ただあの鱗滅茶苦茶丈夫で全然効かない。なのにあっちの攻撃はかなり強いのでもろにダメージを受ける。

というところでぎりぎり回避しているから良いもののこのままだと集中力がいつか切れて負ける。

それにジリ貧になっていくと帰りが遅くなってしまう。だったら命がけの攻めを一発決めるしかない。

というかそんなことは分かっている。分かっているが策が中々思いつかない状況だ。

『暴食スキルがレベル1から2になりました。強欲スキルがレベル1から2になりました』

おや?スキルのレベルアップか。でもなんで?もしかしてこの手のスキルは

取得してからの時間とかなの?まあいいけど効果がどうなのか分からない。

ささっと合間を縫って鑑定してみると驚く事が!!!!!!!!!

まず暴食。相手のDNAさえ体に取り込めれば相手が死んでたりしなくても相手の肉じゃなくても

スキルを入手できる、という。つまりこれあの龍の皮膚を少しでもちぎって食べれば

スキル盗めるんじゃない?とはいかない。なぜなら効果が発揮されるのはこの場合1時間後。

今回の場合そんなに待ってられない。

で、強欲。相手のステータスを一時的に奪える。効果はかけた分だけ加算され1分につき1割奪う。

ただ、最大使用時間が5分。まあこれだけあれば勝負を決められるだろう。

因みにこれは使用時間を過ぎると相手にステータスが返還される。まあ当然っちゃ当然だな。

それにしても略奪的なスキルとかホントラノベっぽい、ありがちなスキルだ。

・・なんでだろう?こういう記憶はあるんだよな。なのにあっちでの事は分からない。やっぱり不思議だ。

俺はこの二つのスキルを使って決着をつけることにした。龍が雄叫びをあげる。だがそんなことでひるむほど俺はチキンじゃない。

ただし、人間となるとちょっと別だけど。近づかれるだけで多少ビビる。それが上位カーストの連中だと尚更。

敵だと認識してしまってるから攻撃されるという意識が生まれているのだろう。

だがまあ、実際今まで攻撃してこないと思っていた奴の攻撃ほど怖いものは無い。

意識が生まれてない、免疫が出来てない中で仕掛けられる攻撃ほど恐ろしいものは無いのである。

まあ、今回の場合は予想していたので龍の攻撃なんか容易くかわせる。それに俺のほうが

早さの上では上だし。いや他のステータスもだけど。まあいい、俺の考えた策を実践しよう。


まず攻撃をかわしながら強欲を発動。名付けてステハント。ステハントを実行したら

またしばらく回避を続ける。とりあえずはこれだ。

ステハントを受けてもさすがに龍の動きは鈍くはならなかった。龍の放つ攻撃が頬をかすめる。

俺も必死で回避する。しかし困った事にこの龍が中々我慢強くて既にステを三割削ってるというのに

こいつは同じペースで攻撃をしてくる。ここまで来ると俺も打つ手が狭まられてくる。

俺は、といえば毒を撃ってみたり酸を撃ってみたりとほんの少しの間にも出来るだけ攻撃してるが

正直これはあまり意味を為していない。それだけ奴の鱗は硬く出来ている。

それに猛毒や強酸も破壊力という点ではおそらく劣っている。確かにダメージ面ではかなり優秀だ。

だが戦闘における攻撃力と今回とでは全くの別物である。それこそ今回の場合は

動く障害物を破壊する。戦闘等ではなくただ危険物体を破壊する。そういったものになってくる。

そうした場合は対人戦と大きく異なっていく。対人戦なら鎧の隙間を付いたりだまし討ちをしたりするだけで良い。

しかし今回の場合求められるのはそういった緻密さで無く1,2撃で破壊できる豪快さだ。

つまり俺のとっている行動は間違っている。だとすれば何をすればいいか?

それを俺は考えなくてはならなかった。これが俺の策の第二手。龍のステータスを大体取れたら

強引に近づき全力で鱗を攻撃する。近接攻撃で徹底的に。俺の爪スキルに火炎スキルで作った炎を纏わせ

更に豪撃スキルで攻撃を底上げする。多分、これで鱗は壊れる。だが、それだけじゃ駄目だ。

念には念を殺るまで殺れよ。というように相手が死ぬ確率を100%にしなければならない。

多分じゃ駄目だ。少なく見積もってそれでも余裕で100%を超えなくては確実じゃない。

だから俺の得意な技を使う。まず、迷彩と隠密で気配を消す。それと共に俺のSDの能力で

完全に殺気を消す。これでどんなに勘のいい奴で俺の存在には気付けない。

殺気も気配も感情も消す。そして一瞬で殺気を放出させる。それを隻腕、右手に集中させる。

全て、全てを消す。俺は力を右手に凝縮させた。右手がスキルに耐えられず変形する。

これが伝説で聞いた魔具変形だ。俺も見るのは初めてだが聞いた話によると一定の魔力を

集中させたとき集中させられた部分が耐えられなくなり魔法に支配させれる。

俺なんかはその良い例だろう。まあ今の俺からすれば好都合だ。それだけ魔力が集まってる証だし

何よりこれをやることによってより攻撃力、破壊力は上昇する。

そして、俺は近づいた。龍の首元にたどり着くまでに時間、約0.01秒。そして俺は右手を振りかざす。

切り裂くように、とがった右手で首もとの鱗を全て破壊する。そして俺の殺気を、一気に右手に放出。

龍が俺の気付くよりも早く俺は龍の首元を切り裂いた。その瞬間俺も驚くほどの

衝撃波が発生する。それに吹き飛ばされ俺は地面に着地する。さすがに俺のほうもダメージが大きく

全体の7割ほど減少していた。ただ、この現象の多くは魔具変形の代償だろう。

どんな行動にも代償や責任が付き纏うのだ。それがもし正しき事だろうと神は容赦をしない。

神に歯向かっている俺だ。当然のごとく代償がある。しかしながら正しき事をなした人間が

代償や責任を取るのなら誰が正しきことをやるのだろうか?今回のことを言ってるのでなく

多分俺がこれからやろうとしていること。先生が言う一人ひとりに向き合う、その事について思ったんだろう。

そして俺おのずと猿飛と月橋とシガネ、成宮。その4人が浮かんだ。そして思う。

俺は気付かぬうちに彼ら彼女らに依存していたのだ。特に長い年月を過ごしたわけでもなく

むしろ何もしなかったようなそんな日々の中で俺はきっとああいうものに依存していたのだ。

そしてそれを猿飛なら持っている、そんな気がした。多分俺はそうだったのだろう。

だが、俺はそうやって他人に依存するような奴じゃない。炎鹿がそれを望み

そしてそういう俺を作り上げたのだ。なら、創造されたとおりに生きるのが定めだ。

だからそんなことは忘れる。忘れられない気持ちを右手に集中させる。右手がどうなってるのか。

それを確認してみるといまだに魔具変形したままだった。右手が疼くのを感じた。

ズキズキズキズキ痛んで痛んでそれで変な感じだった。だから決めた。

もう絶対これをやらない、と。痛いのとか考えのとか俺らしくない。あがくのももがくのも俺らしくない。


さて龍を見てみると一撃で死んでいた。滝のような、豪雨のような血が流れた。

俺は血を一滴だけ飲む。それだけでスキルが俺に移るはずだ。

まあ、一応肉も食べてみる。これですぐに効果が出る。まあ、お世辞にもおいしくは無い。

まあ、味は気にしてないので良い。とりあえずスキルとかが確認できればそれで良い。

回復スキルでHPを回復しながらステータスを見てみる。

「ヒューマンウィアーLv7

HP12500/12500

MP∞/∞

SMP2250/2250

AT85000

SD75000

MN40000

鑑定Lv10

観察眼Lv10

牙Lv9

工作Lv3

多重人格連携  

毒耐性Lv4

爪Lv6

毛皮Lv5   

弱点察知Lv10

猛毒Lv10

暴食Lv1

捕食Lv1

強欲Lv1

強酸Lv4

隠密Lv10

迷彩Lv10

剛撃Lv6

雄叫びLv6

竜眼Lv6

防御変換

腐敗

転移

回復

浮遊Lv2

威圧Lv10

竜眼Lv10

龍眼Lv10

龍爪Lv10

焉火Lv10    

輝鱗Lv10  

アビリティ

暴食      

強欲          

血マミレノ野獣  」

とりあえず、まずまずといったところか。そういえばMNだけ随分低いなこいつ。

もしかしてMNは上がりにくかったりするんだろうか?

まあ、ありあえなくは無い。俺の2万ちょっとでも世界で随一、しかも虚飾状態の猿飛にすら

勝つレベルだ。平均的なレベルが低いといってもいい。

とりあえずこれだけあればいい戦いは出来る。そろそろ一日目が終わる時間だ。

急いで帰りたい。さすがに夜の集会的なのに遅れるのはまずい。戦いは終わった。だから俺は急いで帰るのだ。だから俺は今、走っている。

だが、どうにも右腕が酷く重く感じる。疲労感がすごい。これが魔具変形の代償となると

魔具変形をやりたくない気持ちがより高まる。まあ、元々やる気は無いのだが。

俺が、走り出してすぐの事一枚のカードを拾った。カードが落ちてきたのだ。

拾うか迷いながらも俺はそれを拾った。拾わないと∞ループしてしまう気がした。

いつまでも変わらない、進まないなんてありえないのに。まあ、そんなことどうでもいい。

カードにはたった一文字書かれていた。漢字で一文字だけ、「払」と。

その文字の意味も俺は分からないが、そのカードは光って消えた。これがうわさの転移アイテムだ。

一時的にそのアイテムを空間内に転移させ必要なときに出せるというなんとも便利でご都合主義なアイテムだ。

ホント、こういう細かいところだけはゲームっぽくて困る。いや、もしこれがゲームなら

ゲーム製作者側の雑さが目立つ。リアルな風にしたかったのに細かいところや大まかなところはゲームっぽくしちゃってて

もしくはゲームっぽくしてるのに細かいところはリアルっぽくなっちゃってる。

まあ、一応拾ったものだし、それにこのタイミングだ。多分俺に関わるもの、もしくは龍に関わるものだ。

持って帰ったほうがいいだろう。隙があったら先生のどちらかに聞くとしよう。多分知ってるんじゃないだろうか。

ということでそのカードは消えたのでおかまい無しにダッシュする。

入り口をぱっと通り抜け置手紙を残しておく。中の龍は倒しました。とな。まあ、竜はまだ残ってるだろうが

竜ぐらいなら人間が何人かかかればどうにかなるレベルだ。なのでとりあえず大丈夫。

そんなことより身の心配をしよう。魔王の逆鱗に触れたくない。10秒ほどで目的地に着くと

既に空は暗くなっていた。まあ、実際空が暗くなったり黒くなったり赤くなったり青くなったり

してるわけじゃないんだよね、太陽の光の当たり方が変わってるだけだからさ。

まあいいけど。周りを見るとばらばらと小学生が寮に帰り始めている。

というか今気付いたんだがここって寮制度なのね。いや、先生言ってたかもな。まあ聞いてないけど。

それで俺の知ってる連中はというと、ちょうど集まり始めている。さて、じゃあ分身を消して俺もあっちに行きますか。


と言う事で俺は分身を消して何事も無かったように集まる。すると魔王先生がギロリとこちらを睨んできた。

ステータス上では俺は確実に上だ。しかしそれとこれとは別。強い人だって大抵は弱い人にも叱られる。

いくら数値で記されていてもやはり怖い人は怖いのだ。強い弱いではなくただ、怖いのである。

だから、俺は今回も恐怖を感じた。やばいな。ばれたか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

まあ、先生には分身が効くわけも無いな。それにしてもこの人恐ろしいな。よくよく考えれば

ステを見れるんだから俺が何してきたかも大体分かるはずだ。全てが分かってしまうのは怖い。

まあ、多分ステータスが全てじゃないだろう。実際似たような数値の月橋とさわやかイケメン君も

性格は、歩んできた人生は、信念は違うのだ。猿飛だってステータスだけ見れば恐ろしさを感じる。

でも、実際は月橋やシガネやさわやかイケメン君を既に手玉に取っている。

「服部、来なさい」

怒りをそっと抑え・・・・きれていない声が俺の耳に響く。服部?そんな奴いたっけ。

俺は、鳩川ですよ。多分。だってハトって呼ばれてるし。うんうん。

「いいから早く」

怒りが・・爆発していらっしゃる声が耳、だけでなく頭に響く。なにこの人、怖っ。

どうやら俺のほうを見てるみたいだな。俺の後ろには誰もいないっと。

じゃあ前は、・・・いないな。おい、前は居とけよ。そこはおかしいだろう。

一応集合してるんだからさ。しっかしあれだよな。集合とかかけられたとき

仲がいい奴が集まって座るからぼっちは端に追いやられるよな。その挙句もっと近くに来なさいとかいうし。

まあいい。しょうがないので抵抗せずに行くことにした。いや、投降する事にした。


「で?何をしていたんだね?」

魔王先生が怒りを抑えて言ってくる。いや、そんなこと言われても遊んでたわけじゃないし。

結構命の危機だったし。あ、あれか心配してくれてるのか・・・・・・・。ああそっか。

「いや、猿飛だって勝負に向けて色々やってるじゃないですか。それに今回の勝負内容は

子供たちのお世話じゃない。その辺は小学校の教師がやればいい。その上でお世話するのは

それが勝負の為になるから、それだけでしかないわけですよ。つまり勝負の為の準備をするのは全く問題ないわけだ。

だから、俺はその指示通り勝負の準備をしてきただけです。まあ、途中ちょっと危なかったですけど。」

とりあえず、自分に非が無い事を示す。まあ、ここまでは言い訳として当然だ。

しかし、俺は一学期間で言い訳を極めている。なのではっきりいえる。

非が無い事を証明して次に相手に非があることを証明する。今回の場合、先生が出した指示、

提示した勝負内容に非があると説明する。そうすると逆ギレかもしくは静まるかだが

喜ばしい事にこの先生は静まってくれる。逆ギレタイプだと注意が必要。焼け石に水になりかねない。

「なるほど、一理なくも無い。本来ならそれでも人として、といいたいところだが君には効力がなさそうだ。

だから君を咎めはしないがその分勝負で面白いものを見せてくれる事を期待している。」

優しく、いたずらっ子みたいに微笑んで、魔王先生は俺の方を優しく叩いた。

そういえばこの人力の加減が上手いな、と考えるぐらい恥ずかしかった。この人に、先生にこんなに優しくされたのは初めてだ。

うす、と返事をして俺は戻る。すると先生は話し始める。

「よし、全員そろったな。明日からはいよいよ我々も参加する。猿飛と服部の剣術対決は

子供たちがかなり期待している。二人とも頑張りたまえ。だが、それはサブだ。

メインは依頼したこと。これをどちらが先にそしてよりよく解決できたかを競ってもらう。

これについては私とリリスが個人の相対的な評価を下す。つまり告白部と奉仕部。大きくは分かれているが

個人での競争になる。そして累計としてどちらがより優れていたかを発表する。

なので、個で動くのは勿論の事協力する事もありだ。無論、部を超えた協力、奉仕部と告白部の協力も可だ。

成宮は告白部に加勢しているがもし君が奉仕部に加勢したいと願うなら合計したときに

君の評価を奉仕部のものとして考えてもいいがどうするかね?」

先生が俺たちにそういった。なるほど面白いルールだ。結局的に部に分かれるが

奉仕部の奴に手を貸すことも可能。むしろやろうと思えば猿飛を勝たせることも出来る。

そしてなにより成宮は部外者である。どちらに加勢しようが自由だ。

「えっと、告白部に加勢します」

さわやかイケメン君はそういった。魔王先生はすっと微笑み解散となった。そして最後に言う。

「成宮。少しいいか?」

どうやらさわやかイケメン君が呼び出されたようだ。まあいい。俺には関係ないのでいくとする。

と思ったのだが、ちょっと気になるので残るとするか。


「成宮、君は多分あの中で一番まじめできっと告白部の3人を支えてくれる。それは多分、月橋のような

引っ張る支え方とは違う。が、それは自由だ。どう支えても支えられた側は救われる。

だから、彼・・・・・彼ら彼女らを見守っていってくれよ」

先生は優しい声でそういった。優しかった。多分さわやかイケメン君には先生が言っているような力がある。

実際、依頼も彼から始まった。そして多分俺もその一件がなければあいつらに力を隠していただろう。

だから、多分そういう力を持っている。支えてくれている。

「いや、そんなんじゃないですよ。ただ、何も出来ないだけです」

まあ、確かにそうだろう。彼は意図して何かをやっては居ない。でも確かにその行動は

俺を大きく動かしてくれている。でもきっと認めないだろう。

人は、自身が本気でほめられたとき、心の底から、今みたいに優しく。

その場のノリじゃなくしっかりと落ち着いてほめられたとき認められないのだ。

先生は優しく笑ってそしてさわやかイケメン君を解放した。俺もばれないように部屋に帰る。


それにしてもあの先生はすごいな。俺を見てさわやかイケメン君を見て多分月橋も

シガネも、猿飛もよく見てきっといろんなことを教えてくれるのだろう。残りの2年生の日々そして

3年生での日々。多分このクラスは3年になっても変わらない。

勿論俺が俺たちが世界を守れれば、だが。でもこの人に教えてもらいたいと思う。

それだけは変わらない。世界がもし消えても。翌日、俺達は全員朝3時に起きた。というか起こされた。強制的に起こしてきたのが誰かといえば

考える余地もなく魔王先生である。ホント鬼畜だな、などと全員が考えていたがただ一人猿飛は理不尽さに

何の不快感も感じていないようだった。それに眠そうな様子も一切見せていない。

だが、俺にはわかる。培った観察眼の力でそしてずば抜けた思考能力のおかげでこいつがわざとそういった態度を

見せないようにしている事がすぐに分かった。だがまあ、何でそんなことをするのかは理解しがたい。

既に安全に構築された不落の人間関係があるわけじゃない。今ここに居る誰に嫌われようと

グループを作っているわけじゃないのだから大丈夫なはずだ。何よりこいつは

人間関係の構築に長けている。ここでこいつらに嫌われても別の人間とすぐに仲良くできるはずだ。

だったら、何故こいつはこんな事をするのだろう?そんなことは分かっても分かりたくなかった。

俺は、こいつじゃないしこいつも俺じゃない。いくらステータスが似ていても俺とこいつは全く違う。

全く違うこいつの考えている事なんて考えても意味はない。意味がないことなんて俺はしない。

だから、俺は考えない事にした。まあ、朝起こされてすぐと言うこともありメンドクサイというのもあったが。

そういえば、メンドクサイってよく言うけど本当はめんどうくさい何だよな。めんどいとかホント意味不明なんだが。

因みに面倒臭いと書く。実のところ面倒臭いって言葉自体理解不能だ。面倒臭いって何か面倒臭が

漂ってるみたいで聞こえが悪いしそもそも面倒のにおいなんて嗅いだ事ないんだけど。

もう、いっそのこと怠けたいにしちゃえばいいと思うんですがいかがですか?

まあ、そんなの言っててもしょうがないけどよ。でも人類の全ては怠けたいという感情で出来ていると思う。

ドンドン機会を作るのだって少しでも怠けたいからだろ?働くのも農業をやりたくない(怠けている)

頑張ってる人から買うために働くわけだろう?つまりもうこれは逆説的に考えて

世界一の怠け者であるニートさん達が世界を発展させるといっていい。俺もそういう一員になりたいと思います。

いや、待てよ。よく考えたらナマケモノさん達の方が怠けてるじゃないか。ということは人間が滅びたら

次に発展するのはどう考えてもナマケモノさん達だな。俺も生まれ変わったらナマケモノになりたいと思います。


ってことで現在俺達は二日目の打ち合わせ中何だが俺が思うに今やってる役割分担とか

1学期のうちにやってれば良かったんじゃないの?何で本番になってやってるの。

実際何をやるかも何も言われずに来てるから告白部の連中は何の用意もできていなかったわけだし

そのせいで疲れるとか知らずに居たからやけに思い荷物(人間からしたら)を持ってきてるし。

どちみち帰りはおぶって行きたくないから月橋とシガネの、あと場合によっちゃさわやかイケメン君の

荷物を持つがな。いや、実際は怠けたいので浮遊を使っておくけどな。それにソウルポイントもかなり入ったし

何か使えそうなスキルがあれば使うつもりなので。

さて、そんなことを考えてるうちにも役割分担の指示が右の耳から左の耳にスーと流れていく。

その速さ流水のごとく!!!!とか言ってると先生に頭を叩かれた。

酷い、何で俺の思ってること分かったんだ?見たいな目で睨むと先生はにらみ返してきた。

「服部、話し聞いていないだろう?君は集中していないとき腐ったオーラをだしているからすぐに分かる。集中したまえ」

何だよ、腐ったオーラって。あ、あれか俺の種族の特性的なもんか?だとしたら俺の種族って

かなり不便なんじゃないの?嫌だよ。並列進化できないかな?まああれ普通1%ぐらいしか生存確率ないんだけど

致し方ないので俺は指示を聞いた。こう見えて覚えるのは得意だ。何なら考えるのも戦うのも

睨むのも嫌われるのも集団の中で一人になるのも休み時間話してるグループに入れないのも得意だ。

え?俺、特技多いな。すっげぇ。やばいな、俺。

と言う事で俺は、特に仕事を任されなかった。解散したときにうれしくてガッツポーズしながら

「よっし、仕事無い」とつぶやいているとまたしても頭を叩かれた。何、魔王先生?これは、俺のせいじゃないですよ。

よくいる、「実行委員とか、ボランティアとかは進んで参加するわりに実は結構無能で結局出来なくても

進んでやってくれてるだけでもすごいんだよ、といわれて庇われちゃう人」たちが頑張ってくれてるんだよ。

と思って振り返ると月橋が居た。ついでにシガネも居た。

「いやいや、仕事あるから。しかも一番最後に言ったばっかりだから。どんだけ人の話し聞いてないのよ?」

月橋がキレている。シガネも呆れた顔で俺を見ている。え?仕事ぉ。そりゃ、分かってますけどぉ。

でもでも働きたくないよぉ。なんて言い訳しても無駄なようなので諦める。

「いや、分かってはいるけど。あれだろ?月橋とシガネも放送やってくれるんだしそしたら俺座ってるだけでいいだろ?

しかも、テントの下だから涼しい。え?やばいな俺。よし、お前ら頑張れ!!」

うんうん、勝ち組だな、俺。というか、なんかで上司を働かさせるような部下は凄腕だといってたな。

月橋は部長な訳だからそれを働かせる俺とかマジ、優秀!!世界のトップメーカーとかから

直々にスカウトマンが来てもおかしくない。人に仕事押し付けて金がもらえるとかホント俺勝ち組!

「ハトもしっかり働け。」

「多分仕事しないならテントからも出されると思いますよ?」

部長のお怒りと同僚の的を射た指摘が俺を攻撃する。痛っ。急所に当たって効果抜群が出ちゃったかと思ったぜ。

「なるほど、上司にばれずに上手くサボる方法はないか・・・・・。」

ついつい本音が口に出る。すると月橋が睨みつけてくる。そして鬼の形相になりそれをシガネが沈めている。

「でもまあ、服部君は昨日もサボってるのですから月橋さんの監視の下3人分働いてもらうのが一番でしょうか」

おい、シガネが丁寧な言葉のくせにとんでもない事言い出したぞ。こいつも鬼だな。

「俺は、監視があってもなくても堂々とサボる。だから無駄だな」

「もしそんな事したらその時点でテントからは出しますしそれに多分先生に炎天下の中長々とお説教されますね。

それは多分働くよりつらいのでは?」

シガネが急に話すようになったな。丁寧な言葉なのは変わらないのだが内容が俺は救済するように見えて

追い詰めるだけの言葉である。こいつ、かなり頭がいい。

「そ、そうだよ。だからハトも少しでいいから働く事。いいね?」

追い詰められている俺に月橋が声をかけるがもはや俺にはシガネが恐怖の対象でしかない。

なにこいつ?悪い方向で頭が良いんだけど。てかむしろ先生並なんだけど。

「ちっ。分かったよ。っつっても俺、放送とか出来ないしな。んじゃ、あれだ。各種目の始めのところの

原稿だけ考えてやる。それでいいだろ?」

始めの原稿を考えるぐらいなら簡単な作業だろう。普通に放送とかすると回りに気を遣わなきゃならん。

「・・・わかった。じゃあ5時までに考えて提出」

月橋が俺に課した目標タイムまであと30分だ。まあ、その時間内になら多分完成させられるだろう

全体の競技は合計で15個。一個につき2分以下で書けば終わるはずだ。

まあ、提出するときにかかるラグなどを考えると1分で一個終わらせたい。

始めの原稿なんてすぐ終わる。本の帯みたいな事を文章化すれば言いだけの事だ。

むしろ文が書くのが得意な俺にとっては、これぐらい簡単な任務だ。

じゃあ、順に考えていくか。

全校競技の棒倒しは・・・・・「幼い頃から蹴落とし合いを磨りこまれる無能共。この中に争う事をばかばかしく思う

有能な人間はいるのだろうか?」にしよう。人間のおろかさを示すいい言葉だ。

この調子でドンドン考えていこう。


そして俺はぎりぎりで提出した。その結果月橋もチェックしてる場合じゃなくなり

簡単にOKをした。そしてすぐに運動会二日目が幕を開けた。

まずは、児童入場である。ここでは初めの言葉がないため俺達はぼぅっとしている。

・・・いや違った。俺がぼぅっとしている。正直ほとんど寝ていないのである。しかも昨日は

国が手をこまねいているラスボス級の龍を倒してきたんだぜ?それなのにほとんど寝れないとか鬼畜過ぎる。

あれか、これがうわさのスパルタ教育なのか。円周率は少数十位ぐらいまで覚えちゃうのか?

まあ、正直言って俺はというかぼっちは暗記科目が得意である。ホントぼっちの記憶能力は半端無い。

それに俺の場合思考能力が極限まで上がっているのであれだな。叡智の塊といってもいい。

やばいな、俺。すごい、すごすぎるだろ。で、まあ円周率ならまだしも肉体労働というか精神労働的なのは

勘弁なのだ。体はスタミナがしっかりあるのでびんびんだが、心の中じゃサボりたいだの休みたいだの

ずる休みしたいだの思っているのが、人間だ。・・あれ?全部同じ意味じゃない?

ということは人間は心の中じゃ休みたいという一つしか思っていないといっていい。これで心理学究めたな。

で、まあ、そんなこんなで開会式まで終わりとうとう俺達の仕事な訳だが実際俺は、原稿を考えたので

仕事はほぼ無い。あるとすれば周りを見て実況原稿を早めにまとめ先回りして月橋、シガネに渡す事ぐらいだ。

実は、この仕事俺の天職といっていい。俺は考えるのは別として書くのは全力でやれば異常なほどはやい。

ステータスの乱用にはなるが薬物と違って捕まらない。締め切りと、罰則という言葉のほうがよほど薬物である。

それで書くのが早いので後は赤白を観察して各種目への関心度、集中度を考察し、原稿にする。

さらには、見てみてエピソード的なのがあれば即採用して原稿にぶち込む。

既に昨日、俺が出しておいた分身が見ている映像から幾つかはエピソードを得ている。

それにしても分身のおかげでそれまでのの記憶もあるとかホントやばいな、このスキル。


と言う事で一つ目の競技は玉入れ。網みたいのに玉を拾って入れるあれだ。ホントあれもぼっち殺しである。

集団で固まれる奴らは前のほうですっげぇ入れるのに対してぼっちは自然と後ろのほうになるし、

前のほうの奴らも玉、拾って行っちゃうからホントこの上なくやることないのだがしかしながら自然と

後ろのほうに行くと親の目にもつきやすくなり自分の組が負けると翌日、ビデオとか見た奴らが

何で何もやってないんだよ、お前のせいで負けただろ、的な感じで責めたててくる。

なので俺にも多分、良い思い出は無い。あっちでの事は覚えてないけど。それなのにぼっちのこととなると

わかっちゃう俺って無茶苦茶すごい気がする。これはもう何かすごい賞をもらってもいい気がする。

それはおいといてこの、前実況では俺の玉入れへの恨みを凝縮した原稿に仕上げている。

それを読むのは月橋。原稿を見てその瞬間、月橋が目をぱちくりさせてその後俺を呆れた目で見て

そしてついにはため息を吐いて口を開くのを躊躇っていた。

しょうがない、ここは俺が言ってやろう。怠けたいを座右の銘にしている俺はどうしても働かなきゃいかんのなら

早めに手を打ってしまうのである。それがナマケモノのやり方。

「さあ、ぼっち殺しの代名詞、毎年恒例玉入れが始まりました。今年はどのぼっちが責められるのでしょうか。

赤、白組のぼっち共、ここで負けたら学校生活終わるといっていい。せいぜい頑張れ」

ふ、完璧である。小うるさかった会場は一気に静かになりそれどころかフリーズ状態になっている。

何?俺って時を止められるの?やばいな俺。と思っていると会場中がどよめいた。

そして全員が放送席であるテントを見てくる。保護者達は「なんなの、この放送」みたいなことを

隣近所で話している。児童はといえば競技をやる1,2年生達は何の事か分かってないようではあるが

会場のどよめきを感じてやりにくそうにしている。3,4,5,6年はといえばそれこそ青ざめた顔でこちらを見ている。

が、よく見てみると数人の児童は他とは全く別の反応を取っている。

その中で俺の目に一際よく映ったのが氏神である。こいつは青ざめた顔どころではなく

頭痛がするのかこめかみを押さえているし、更に言えば目を瞑り何かを思い出しているようである。

そして絶望と決意に満ちた目を開く。こいつの事だ。多分、自分はぼっちじゃないのだと、

ぼっちにはならないのだとそう決意しているんだろう。だが、隠し切れない瞳に写る絶望の色。

それが多分本当の彼女の思いなのだ。どうあがいても自分が一人なのだと。そのことに絶望しているんじゃないはずだ。

つるんでいる奴らに劣っていると思うことがそれが嫌なのである。

誰もが通る道だ。それだけは、その頃のことだけはかすかに記憶があった。

具体的なことじゃないのにそういうことがあったのだという記憶だけは。そういう中途半端な記憶だけが

俺を組み立てている。ゼロから始まっている感覚なのに分かってしまうことばかりだから余計に|性質(たち)が悪い

でも、だからこそ感じなくてすむ事もあるのかもしれない。

因みに、リリス先生とシガネにはかなりウケがよかったようでシガネは笑いをこらえるので一生懸命だし

リリス先生は、スキル無音を使っていなければ会場中に注目されるところだった。

だがまあ、とりあえず沈黙していた月橋が気の効いたことを言い玉入れが始まる。

猿飛もしっかり動いているようだ。奴の仕事は児童席に居る事。その役割を生かして

氏神付近の人間と氏神を仲良くさせようと色々話を振っている。ただ、その策が有効だとは思えない。

氏神は集団に入りたいんじゃないのだ。集団に居る連中に劣っていると感じたくないのだ。

だから、ああやって誰かに手を借りて集団に入らせられる行為は多分劣等感を余計に感じてしまうだけだ。

劣等感と引き換えに集団に入りたいわけではないし、そもそも集団に入りたくはないのである。

ただ、劣って居たくないだけ。優位に立って居たいだけ。だが、人とは愚かな事に

誰かと比べたり一緒に居たりして確かめないと自分の能力や価値、楽しさを計る事も証明する事もできないのだ。

だったら、ぼっちは、たった一人でどうやって価値を見出せばいいんだろうか。それを俺は知っている。

そういう中途半端な記憶は俺にはたくさんある。でも多分氏神は氏神可憐はそのことを知らないのだろう。

だから、教えてやる必要があるのかもしれない。だが、戦う事誰かと競う事に意味が無いなんて

そんなこといってしまったらこの場の今というときの意味を完全に消失させてしまうのかもしれない。

出来ればそんなことしたくは無い。だ、なんて思いはしない。情けも、名残惜しさもとうの昔に捨てた。

だから、俺はぶっ壊すのだ。壊す事でしか生まれないものがあるのだから。

結局、玉入れでは赤組が勝利。その後も赤組が流れに上手く乗り点数を稼いでいった。

その結果、エキシビションの剣術と全校競技の棒倒しで白組が勝たなければならなくなっている。

まあ、俺的にはこういうのの勝ち負けは興味ないんだが、月橋やシガネさわやかイケメン君が勝つ気満々で

エキシビションが始まろうとしている今も応援をしている。しかしながら残念な事に

俺がエキシビションで全校の前に出た瞬間白組の親&子供は「え?」とか「あーあ」とかみたいな

声を上げたり表情を見せたりしている。やっぱりあれなのだろうか。さっきの言葉のせいなのだろうか。

それとも赤組の代表、猿飛があまりにもすごく見えるから俺と比べたときに俺が残念なものに見えるのだろうか。

これが相対評価のむなしさだな。だが、俺が思うにこいつと俺は”ステータス上”では俺が何枚も上手なんだけどな。

でもまあ、種族のせいってもいえる。なぜなら俺がヒューマンウィアーなのに対してこいつは

先生の話によると対のような種族、ホーリーヒューマンなのだそうだ。そして七大罪の子だそうだ。

この七大罪の子というのは世界に一人存在し七大罪系スキルを守り伝える家系の者の子を言うそうだ。

そしてあいつは第二の七大罪の子だ。本来なら存在しないはずの称号。それが与えられたのはおそらく神と

俺、魔王先生リリス先生の運命の子の間で起きている戦いのような何かによって生まれた七真罪が

奴のスキルになったからだ。だから、やつは七大罪の子でありそしてもう一方で一代目七真罪伝承者でもある。

そんなやつと俺を比べたら当然奴が上回っているといえるのだが誠に遺憾な事にここに居るほとんどが

それを知らない。つまりさっき俺が言った言葉か、もしくは俺のかもし出すオーラやら何やらで俺を

劣等者扱いしているといえるのだろう。いや、俺は悪くないんだがな。あの原稿を考えた奴が悪いと

俺は思うんだけどな・・・・。いやいやそれも俺でした。えっと・・じゃあ誰のせいだ?

どう考えても俺が悪いな。でもそもそも俺、昨日サボってるしそれで既に俺悪いじゃん。だから今更なんだよ。

と、開き直る事が肝心です。今日の俺の格言。


それはそうと既に俺をブーイングしている人間までいる。実を言うとこれが白組の奴らだったり赤組の奴らだったりと

もう、会場中からブーイングを受けているのである。むしろブーイングしていない人間が少ない。

というか、知人以外ほぼ居ない。氏神はまあ、知人と呼べなくもないが児童の中だと氏神のみである。

そして、酷い事に知人であるはずのリリス先生はもう、すっごい笑顔で子供たちと一緒にブーイングしている。

うわ、ひっでえなあの人。何「せーの(笑い)」だよ。ホントこの人人間としてどうなの?

・・・・・・あ、吸血鬼か。吸血王としてどうなのよ、この人。・・・・・・・吸血王はこんなもんか。

いや、まだ優しいほうかもしれないな。そのうち使い魔とかで攻撃してきたらやばい。

でも、多分仲間になったら急に弱くなるから大丈夫。

で、まあ、俺は若干耳障りな為というか、俺の計画の邪魔なので審判をぎょろりと睨む。

すると審判がとりあえず嫌な顔をしたが静めてくれた。嫌な顔するとかだめだろ。

審判は平等、公平じゃないの?いや、一説には審判は神らしい。つまり神が審判。

やばいな。神に逆らってる俺に勝ち目無いな。二重の意味で勝ち目ないな。てか、この人平等にジャッジしてくれるかな。

そんな心配はあっちも抱えていたようで俺に困った顔を見せてくる。いやいや、お前は有利になるだろ?

それとも何?正々堂々勝たなきゃ意味無い、とか?そういう奴は大抵、安全圏にいて危うさを感じずにいるのだ。

安全圏から物を言ってるんだからそんなきれいごといえて当然だ。だが、安全圏に居ない俺みたいな奴は

負けるだけで死ぬほどの危機が待っている。安全圏に居る連中には分からないほどの危機を。

だから、負けるわけにはいかない。だから、正々堂々じゃなくてもいい。勝てばいいのだ。そう思える。

そんな感情を読み取ったのだろうか?魔王先生が出てきた。出てきて審判に話をし始めた。

そこで俺は理解した。魔王先生は審判をやるつもりなのだ、と。そのことには俺より少し遅れて猿飛も気付き

お互いに剣を持って準備運動を軽くし始めた。魔王先生は他のやつらに言ってきたのだろう。

頭の悪い月橋やその近くに居るシガネ、さわやかイケメン君も理解した様子で待っている。

俺は、やるべきことを果たす為教えるべき事を教える為、氏神を一瞥し深呼吸をした。

ちょうどお互いの準備が整った頃魔王先生はルールを改めて説明した。

制限時間は10分。後は正規のルールと同様、相手にギブアップといわせるか相手の武器をフィールド内から出すか

相手の動きを封じるか。まあ、最後の場合30秒意識をとばさないと駄目らしい。

なので普通は使われないらしい。まあ、俺ぐらいしかあの技は出来ないが・・・・・・・・・・。

そして、先生の声が響く。

「ルール説明は以上。ではこれより試合を開始する。だが、その前に特別ルール、今回に限って

真剣を使い、どちらかが死んでも勝ちとする。そして殺して勝利したほうには

私より何物にも変えられないものを贈呈する。では、両名、頑張りなさい。では、決闘スタート」

その合図によって俺と猿飛のもとに真剣が一本ずつ投げられてくる。

それを俺と猿飛は上手くキャッチしてお互いに距離を開ける。

猿飛は若干戸惑った様子だが俺は一切戸惑っていない。驚いても居ないしむしろ落ち着いている。

なぜならこのルールは俺が頼んで作ったものなのだ。今回のために。まあ、最後の報酬については知らなかったが。

猿飛もこちらを見てそして理解したようだ。俺もそれを見て理解する。

こいつは俺と真逆だが、でもこいつと俺は似ているのだ、と。東と西だって反対だけど方角という点では同じだ。

勝利と敗北だって真逆だけど勝敗を表している点では同じだ。

俺とこいつも多分そういう関係なのだろう。でも、だからこそこいつは俺を理解できないし

俺もこいつを理解したくない。そして出来ない。だったら俺は俺を理解すればいい。

それだけで、いい。誰かに理解してもらおうだなんて思っていない。そういう甘えは人を傷つけるのだと

その記憶もまた中途半端にある。それが気持ち悪い。


だから、俺は全力で猿飛に近づく。そして剣を振る。やるべきことのために。

猿飛もさすがだ。俺の攻撃を回避し続けている。そろそろ俺も本気を出さなければならないだろう。

猿飛も同意見なようで虚飾によりブーストしてきた。これでお互いのステータスはほぼ互角。

ならば後は、本気で戦うしかない。それは奴も同じなようで本気で戦っている。

多分俺が死ぬ気が無いことを知っているのだ。そして自分も死なないことに。

このルール、実はかなり嘘っぱちなのだ。実際猿飛は死んでも死なないわけで俺とて先生の回復もあるので

剣でさした程度なら何とかなるしまあ、一般の人からしたら刺されただけっで死ぬが俺達からすれば

その程度かすり傷なのだ。だから、ハッタリだ。それを理解したうえでこいつは俺に攻撃を当てようとしている。

俺もまたしかりではある。猿飛からは純粋な負けたくないという思いが感じられた。

やはりそれが理解できなかった。俺なんかに負けたくないという醜い感情なんかじゃなく

俺には到底理解できない感情だ。だが理解しなくていい。

俺は、この行動の目的を果たす為にどんな方法でも勝つ寸前にしなければならない。

だから、幻影魔法をつかい俺は全力で隠れて幻影魔法で俺を隠しそして猿飛の剣をはじく。

すると剣はフィールドぎりぎりに吹き飛ぶ。だが、まだ勝ちじゃない。

何の意味もない。周りは一気に静かになる。猿飛が追い詰められた事を理解しどよめく。

これで、皆理解した。俺がぼっちが一人でいる人間が勝利する事に。

そして氏神は何より一人でいる俺が劣ってない事を知ったはずだ。ぼっちが劣等者ではないことに気付いたはずだ。

だから、後は世界をちっぽけな世界を崩してしまえばいい。これをするには

こいつらの心に中途半端な傷をつけてしまえばいい。中途半端な傷は痛いと割り切れないから

重傷なんかよりずっと痛い。それが永遠に続くのは苦痛だ。そしてそれが出来るのが言葉だ。

「お前らが作り上げた世界が何を生み出すのか見せてやるよ。さあ、やれ」

俺は、そう叫ぶと猿飛に近づき俺を刺すように指示する。

別に痛くはない。普通の人がやれば。でもそれだけじゃ血も出ずに死んだように見えない。

だからこいつに頼むのだ。こいつなら俺を瀕死状態に出来る。だから俺はこいつに俺の剣を渡した。

分身じゃ消えるときに死ぬみたいにはならない。それが出来ないと意味がない。

だから、戸惑う猿飛を睨んだ。うつむいた猿飛は歯を食いしばり拳をぎゅっと握った。


多分、こいつの役回りが一番残酷で酷くてやりづらい。でも、その役がいないとこれは

完成しない。俺の授業は完成しないのだ。だからやってもらうしかない。

それを理解したからだろう。猿飛は俺を全力で刺した。HPが75%ほど減った。

そして血を流しながら俺は倒れる。ガチで痛い。超きつい。

それを理解した先生がさっさと勝利者を宣言し俺を運んだ。はたからみれば遺体を運んだように見えるはずだ。



そして俺の授業は終わった。エキシビションの剣術が終わり俺が運ばれた。そして全員が戸惑ったようで次の競技である、全校競技棒倒しには

少しの間移れなかった。当然といえば当然だ。まだ、幼いと呼べるような歳の子が目の前で人が死んだと錯覚しているのだ。

気絶してもおかしくないレベルのはずだし下手すればトラウマになるような出来事である。

いや、むしろそのトラウマこそが今回の狙いだったわけなのだから今回の作戦は成功したといえる。

俺は、というと先生に応急処置を受けたもののさすがに回復程度では俺のHPを回復しきれなかったようで先生は

俺のHPが50%ほどになったところで回復をやめた。まあ、これだけHPが残っていれば万が一にも

危険な事はないのでいいのだが、先生が俺の死体を運んで払った(魔王は死者払いというお払いを行うから)と

思われているため、俺は運動会側には顔を出せない。まあ、その程度は俺にとって問題じゃなかったが

それにしても、猿飛の攻撃力の高さと思い切りのよさには驚かされた。あそこまで攻撃力が高いとは

さすがに思っていなかったからな。まあ、実際俺と同じレベルに達するモードな訳で俺のHPは、普通に考えたら

異常だけどそもそもHPも上がりにくいのか2万ないわけだし、それはつまり攻撃力がそれをはるかに超えてるわけだから

防御力で半分は消されても貫通ダメージが俺のキャパを超える危険性もあったぐらいだ。

だがまあ、それでも俺の計算内には収まってくれたのでよかった。それにしても危険だったが。

それにしてもホントなんでこんなことしなきゃならないんだろうな。やる気があるわけじゃないのに体張って

命かけなきゃならんのかやってらんないぜ、この部活。ホント早くやめたい。退部届け出したい。

いや、待てよ。こんだけ命がけでがんばったんだし報酬をもらってからじゃないとやめられないな。うんうん。

よし、ちょうど俺に付き添っているのが顧問であられる先生な訳だから報酬を希望してみるか。

「先生、さすがにこんだけ体張ったんだ。体を張ったものには正当な報酬を与えるのが王たる魔王先生の

仕事なんじゃないですか?」

「・・・馬鹿なのか?実際今回活躍したのは君ではなく猿飛だろう。確かに君の作戦ではあるし

君の活躍といえるかもしれないが彼が手伝わなければ出来なかった策ではある。

それに私が出したのは氏神可憐の環境の良好化、だ。それに比べて君が行ったのは何だ。

彼女の環境の良好化どころかあの学校全体の人間関係の悪化や劣悪な教育方針を提示し、結果として

全校によくない教育をしてよくない理念を生み出しそうになっただけでなくあの児童の中に

トラウマや恐怖を植えつけてしまった。これは私が依頼したものでもないし、おそらく氏神可憐は

その言動が自身に向けたものだと理解しそしてやがてそのことが大きなトラウマとなり

更なる悪化を招くだけだ。それなのに報酬だなんてよく言えたものだな」

先生は虚ろな目で俺を見た。哀れむようなそして悲しむような優しい声で俺に語りかけた。

ところどころで厳しい口調になっていたがしかしながら声のトーンは優しいままで何かを悲しんでいる様に感じた。

いや、実際にそうだったのだろう。その『何か』が何のなのかは俺には見当もつかないが、それでも悲しんでいることは分かった。

「あんな、誰かを敵にしてじゃないと成り立てないような関係、壊してしまったほうがよっぽど良いですよ。

それに、そういう関係性のせいでトラウマが出来てるんだから自業自得ですしね。

それと俺はあれが正しいなんて思ってないですけどでも正しい事だけを知ってたら正しい事のできない弱者を

理解できない人間になっちゃうじゃないですか。だから、若いうちに間違ってる事を教わったほうがいいんですよ」

俺がそういう間も先生は俺を優しい目で見ていた。やがて、俺の頭をなでた。そしてそっと語るのだ。

「ああ、確かにそうだな。君がやったことは正しくないがそれでもあの状態だとそれしか君には選択肢がなかったのだろう。

私だって他の選択肢が分かっていたわけじゃないしそもそもこの選択肢自体思いつくなかった。

だから、教師として君を否定してあげられない。でも、人として前に言ったはずだ。そのやり方は嫌いだから

使わないで欲しいのだと。それでも使うしかなかったんだろうな。

君は優しい。優しいから、自分とであって間もない氏神可憐の事もあの学校の児童の事も全力でどうにかしようとした。

その優しさは間違ってはいないし、そもそも優しさは計算式みたいに答えが出るものじゃない。

それでも、私は君にその選択肢を選ばせてしまった事を悔いている。

今回はダメージを受けただけだから回復すれば治った。でもな服部。そういう選択肢をとっていると

いつか必ず自らの手で自らをピンチに追いやってしまう。そして傷だけじゃない、

もっと深い何かを失ってしまう。だから、今一度言う。そういうやり方は嫌いだ。

だから使わないでくれ」

その言葉は、その前の言葉とうって変わって肯定的でそれでも俺を否定しようとそういう努力が見られた。

悔いている、か。先生が俺がとったこの方法を俺に取らせてしまったことを悔いているのなら。

ならば、俺はこの選択肢を選んだ事を悔いているだろうか?俺がダメージを受ける事で学校全体にずっと残る傷を負わせ

人間関係を壊し、そして0からスタートさせた。この方法に悔いているだろうか?

俺以外誰も傷つかず、ただ、自分で自分を責め人間関係にひびを入れた。それだけのこの選択肢に

悔いているのだろうか。いや、それだけじゃないのだろう。きっと猿飛も傷ついたはずだ。

だが、多分あいつはそんなこと気にも留めないしもし傷ついていても表には決して出さないだろう

でも、俺が取った選択肢は猿飛を傷つけている。つまりは不完全な、選択肢だったといえる。

だが、それでも俺が時間を何度巻き戻してもきっと同じ道を通るのだと思う。

何故なら、俺にはそれ以外の選択肢がなかったから。誰かに頼ることも出来ない弱者の俺だから猿飛に

やらざるを得ない状況を作り上げた上で無理やり協力させるしか選択肢は無かったのだ。

だが、選択肢が無かったからといってきっと悔いてないのとは別なはずだ。でも選べないところでいくら悔いても

結局は何の意味も無い。次からがんばるなんて事もできないしそもそも次なんて無い。

そして、いくら悔いても、その選択がだめだったと分かってもそれでも同じ道をたどるしかないのだ。

選択肢を持ち合わせていない弱者はきっと悔いる事もできないのだろう。逆に言うならば

強者は選択肢をいくらでも持ち合わせている。だから後は努力して正しい選択肢を選ぶだけなのだ。

そしてだから強者は言うのだろう。「後悔しないように努力しろ」等と。

でも実際に選択肢を持たない人間はいくら努力しても正しい答えを持っては居ないのだから選ぶ事も掴み取る事も出来ない。

だが、俺は思う。正しいものを掴み取れなくてもそれでも努力さえすれば慰めにはなるのだろうかと。

もしそうなら俺が頑張って龍を倒したりした記憶が俺を慰めてくれるのだろう。

それだというのに、今感じている中途半端なこの感情は何なのだろうか?



そしてその日の夜。俺達は宿泊所で一泊してから帰ることになった。各々が自分なりの過ごし方をした。

シガネは疲れたのか眠ろうとしたのだが月橋が食い止めさわやかイケメン君、猿飛と一緒に魔法を使って

花火をしている。どうやら宴会魔法とやらで専用の魔具にMPをすこし入れるだけで

手持ち花火みたいになるそうだ。因みに俺は、というと誘われはしたが疲れがたまっていたので断った。

魔王先生はリリス先生に誘われてお酒を飲んでいる。そのお酒はまあ、普通に発酵的な?そんなんで作られている。

それで俺はというと、実際眠たい。眠たいのだがこういう眠いときに限っていろんなことを考えて寝れなくなるのである。

今回もそういう感じで眠れなかったので星でも見ようかと外に出て夜空を眺めている。

広くて暗い空を眺めていると大きく光る月が見えた。ちょうど三日月に見えたその月は、どこか淋しげに見えた。


月と一緒に一人ぼっちでそこにただ立って俺はいつか一歩進める日を夢見る。

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