シュレディンガーの箱庭 レポート4
主催者の思惑通り、能力者たちは疑心暗鬼の渦に飲み込まれていった。目の前で一人が死ねば、理性などすぐに恐怖に塗りつぶされる。死とは、それほどまでに強烈に本能に訴えかける概念なのだ。
慌てふためく能力者たちを、主催者たちは高みから見物する。今回は彼らにとっても少しイレギュラーがあった。米澤とかいう小賢しい能力者がリーダーシップを発揮し、能力者たちを統率し、冷静さを取り戻させてしまった事だ。
もちろん、これまでも何度か、そういう能力者はいた。一人ずつ命が失われ、徐々に狂気が支配し始めると、最も愚かな、主催者たちにすれば楽しいおもちゃとなるのもリーダータイプだった。その変化を楽しむこともできた。
だが、今回は事情が違った。主催者の一人が短期決戦を望んだのだ。最近の宴はマンネリ化している。一週間もだらだらと付き合う暇はない、と。
ひとたびそんな声が上がると、他のメンバーも同調し始めた。そこで仕方なく、主催者たちは米澤を気づかれないように殺害した。彼らのルールを少し変えたことになる。最初は良心が咎めたが、宴が面白くなったのでそんな心はすぐに消えてしまった。
翌日には二人も死んでしまったからだ。たまにはこちらから状況を操作するのもアリだ、と主催者たちは笑顔を浮かべた。
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