第8歩 『子鬼』
誰の影もない、部屋の入り口でレイは立ち尽くしていた。
ーーー彼女が、フラエが連れさらわれた!?
誰に!?
何に!!?
何の為に!!?
荒らされた部屋を見る限り、誘拐としか考えられない。
「あ・・・う・・・・・・・・・ッ」
レイの動悸が速くなっていく。
「どうすれば・・・!どうしたら・・・・・・・・・!?」
ーーーと、とにかく。後を追わなきゃ!
窓が開いていた。
外を見ると、草木がなぎ倒されて、森の奥に続く道が出来ていた。
レイは窓を飛び出し、道を辿る。
ただ、この時、レイはこの森に入る前に他の冒険者に言われた言葉を思い出していた。
◆◆◆
「お前、“鬼の森”に入る気なのか?」
「え?ダメ、なんですか?」
「いや、ダメって訳じゃあねぇんだが・・・」
その冒険者は言いずらそうに、頭をかいた。
「あの森に入るのなら、注意した方がいい。あそこには、・・・・・・・・・ゴブリンの王がいる」
「ゴブリンの、王?それって強いんですか?」
レイが問うと、彼は身を乗り出し、
「強い!?んなもんじゃねぇや!!アイツはなぁ、何十年と戦ってきた冒険者が束になっても、一瞬で殺しやがる!そんなヤツなんだっ!」
彼の叫びは、そのモンスターの凶悪さを表していた。
◆◆◆
レイは走った。
もしかしたら、彼女は人間にではなく、ゴブリンに連れ去られたのかもしれない。
レイはゴブリンは、子供や女性を好き好んで襲うと、母親から聞いたことがある。
幼い頃で、レイは「なんで、ゴブリンは女の人を襲うの?」と聞いた。
母親は、言いずらそうに苦笑しながら目を逸らした。
結局、その答えは分からなかったが、もしフラエを攫ったのがゴブリンなら、彼女が危ない。
レイは走った。
転びそうになりながらも、自分を助け、笑いかけてくれた彼女の元へ。
そして、たどり着いた。
そこは、まるで要塞のようで、周りにはゴブリンが傭兵のように、配置されていた。
ーーーやっぱり、ここに続いてたんだ・・・・・・!
ここが、ゴブリンの巣・・・!
ここに、ゴブリンの王がいる。
レイの手が震え出す。
「・・・・・・・・・ッ!!」
剣を構えた右手を左手で押さえつける。
ーーーそれでも、僕は決めたからっ!!
誰かを守る【英雄】になるんだっ!
僕を助けてくれた、彼女を今度は僕が助けるんだ!!
レイは、門番のように構えているゴブリンに向かって走りだした。
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