第18話 お祭りにて

毎年、祭りと花火の日にいる、お偉いさん。

今年も当然、居るのである。

「ちゃうで、偶然や!祭りに合わせて出張しとるわけないやないか!」

「よく、ホテル取れましたね」

「まあね~常連ちゅうことですわ、市長からも誘いの電話きますねん」

「市長と行ったらいいじゃないですか」

「そないなこと言うなや~、定時であがりや!晩飯食いにいこか、せっかくやし祭りも見てきますわ」

「そうですね……」


本当に毎年居るよな~。

祭りの日に。


ブラブラと屋台を見て回る。

「すごいわ~技術やね~感心やわ~」

「ひとつ買いますか?」

「いらん!」

「珍しいわ~初めて見たわ~去年はこんなん無かったで」

「買ってみますか?」

「いらん!」

(なんも買わない)

「好きなモン食いや、あっ領収書会社で落としてや」

(まただよ…提出すると嫌味言われるんだよ…俺が)

「いいですね~、常務と夕食ですか?」

とか、おつぼねに言われるんだよー。

そんなときだけ敬語なんだよ、あの人は。


「なんでこないに混んでんねや!」

「祭りですから…」

「コイツラ他に行くとこ無いんかい!」

「祭りですから…」

「もうええ!歩くの疲れた~、タクシー呼ばれへんの?」

「通行規制で車入れません」

「ほなね!急病人でたらどうすんねん!」

「緊急車両と許可車両は入れます」

「理不尽や!」

ドンッ!

「どこ見てあるいとんのや!」

「よしてください。オバサンじゃないですか、怒鳴らなくても…」

「真ん中歩いてきよったで!」

(あんたも真ん中歩くから、オバサンにぶつかるんだよ…どっちもどっちだよ)


「帰ろっかな~」

「そうしましょう」


「それでは、御馳走様でした」

「おうおう、ええで、ええで」

(ええやろな~会社の金なんだから…)


ホテルの受付で、大きな声で

「来年も部屋取っといてや!」

(1年前予約かよ…)

だから、ホテル泊まれるんだよ。

偶然じゃないじゃん。

遠慮なしに食ったから…いいか。

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