第17話 中国にて
「桜雪くんか?」
「常務、いま中国では?」
「せや、チャイナにおるんや」
「なんの用です?」
「頼みがあんねん」
「頼み?出来ることであれば」
「助かるで~金ないねん…」
「……そういうことでしたら、経理に送金させますけど依頼しときましょうか?」
「ちゃうねん!個人的に貸せ言うとんねん」
(取締役がヒラ社員に金借りる?)
「送金しましょうか?」
「いや、来いや!」
「中国にですか?」
「せや、ええやん…遊び来たらええよ~、なっ!会社には飛行機手配させるよて、なっ、3日後、フライトしいや~、香港に迎えいくよて、頼んます!ほなっ!」
え~っ、中国行くの……行きたくない……。
行くことになったわけだが…30万下ろして香港空港へ
「こっちや!悪いで~助かるわ~」
「いえ、1週間お世話になります」
「当然や!こっちで何社か適当に回って勉強したらええがな」
「今日はな、カラオケや!個室でショーを鑑賞しながら歌えるんや!コンパニオンも呼んどるさかい、愉しんでや!」
20畳くらいのカラオケルームにコンパニオン5人、個室の窓から1階中央で絶えずショーが行われる。
(高いんだろうな~ココ)
そこへ、何人か合流する。
会社の人かと思い、名刺を配って挨拶したのだが、よくよく聞いたら、常務が宿泊しているホテルの従業員だという。
こんな生活してるから金が無くなるんだよ。
一番驚いたのは会社関係の人が誰もいないことだった。
翌日、中国支社でインド支社の社長が来るとのことで、なんか慌ただしかった。
「なんか、お腹すいたわ~、ケータリングいっぱいあるな~、食べよか、先食べよ!なっ、待ってりゃ来よるわ、おっカレー食べよ!なっ、チャイナはマズイで~カレーは美味いと思うわ」
常務とカレーを食べた、野菜カレーでした。
2人でカレーを食べて、適当に摘まんでいると、インドの社長が入ってきた。
常務がにこやかに挨拶して、私を紹介してくれた。
「日本のな、せや可愛いがっとる社員ですわ~、友達みたいなもんや」
(ALL日本語で伝わってるのか?友達って……なんの?)
現地スタッフが怒られている…。
何があったのか、日本人スタッフに尋ねると、インドの社長用に肉の入ってないカレーセットを頼んでいたのだが、届いてないというのだ…。
(さっき食っちゃったーー)
「常務、カレーで揉めてます…」
「桜雪、言うたらアカン!とぼけるんや!カレーなんぞ食うとらん!」
「はい…」
こんな調子で1週間、朝から晩まで付き合わされたわけだが……。
色々あった……ジェットコースターのような1週間であった。
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