第15話 手術室にて
肩に、しこりができて数年間、痛くもなく、痒くもなく、放置していたわけだが、
脂肪の塊だと言われ、なんか気持ち悪いので手術で摘出することにしたのだ。
手術といっても1時間ほどで、局部麻酔して切開して摘出という簡単な手術だ。
会社を早退して、皮膚科へ向かう。
「じゃあ始めましょうか」
(この先生、小籔千豊さんに似てるな~)
「うつ伏せに寝てください」
(似すぎて、標準語でしゃべっていることに違和感があるな~)
「麻酔しますね」
ベテラン感がある看護婦さんが躊躇なく麻酔を打つ。
(なぜ、麻酔注射はこんなに痛いのだろう……)
「しばらく楽にしていてください」
ベッドにひとり残される私。
ヒマなのだ……。
待合室に雑誌があったと思い、待合室で雑誌を選んでいると看護婦さんに怒られた。
「おとなしく待っていてください!」
(ダメらしい……鬼軍曹みたいな顔して怒ってる)
「そろそろ効いてくると思うんですが」
と小籔さん、いや先生が背中を突く
「どうですか?痛いですか?」
「はい……でも我慢できるレベルです」
「我慢はしなくていいいですよ、もう少し待ってみましょうか」
「そろそろ、どうですか?」
「さっきと変わりないような……でも頑張れるレベルです」
「そうですか~、じゃあ始めましょうか」
(あっ……いくんだ……)
ベッドでうつ伏せに寝かされる。
「あっ、何かに意識を向けていれば大丈夫かも知れないので、雑誌を何冊か適当にお願いします」
「だから、雑誌はダメです!」
(あっ軍曹……)
「桜雪さん、手術中に雑誌を読みたがる人いませんよ」
(小籔さん……そうなの?)
「メス入れますよ」
「はい」
(痛いよ……4割効いてないレベルで痛いよ……)
しばらく肩口の奥をスプーンのようなもので引っ掻き回される気持ち悪さと鈍痛が続く……。
(長くない……結構ほじってない?)
「結構、大きくて……深いな……」
先生の呟きが聴こえる。
うつ伏せなので何をされているかは、よく解らないが……痛みが増しているような気がする……。
(痛い…痛い…痛い…痛い…痛い………………)
「あっ!さぁさ!(方言かな?あっ!しまつた!)」
「先生!今、失敗したでしょ!」
「してませんよ」
「さぁさ!って言ったよね」
「言ってません」
「なんかやらかしたんじゃないですか」
「やらかしてません」
(絶対、なんかしたって!コレ!)
手術は長引いた……予定の倍の時間が掛かった。
最後に縫うあたりになると、麻酔が切れて痛いだけの罰ゲームである。
「先生、痛いんですけど……」
「あ~、あと数針縫いますから、ちょっと我慢してください」
「我慢いるんですか?」
「あなた、我慢するって言いましたよね」
「先生、我慢しなくていいって言いましたよね」
「はい、終わりです、ご苦労さまでした」
「先生、言ったよね」
「言ってませんよ」
「これが、脂肪です、思ったより深い所までありましてね、かなり大きいですよ」
「これが、埋まってたんですか?で、さぁさ!の部分はドコです?」
「言ってません、成功です」
とりあえず、現在も無事なのでOKである。
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