第14話 ワインクーラーにて

酒屋で店長を務めていた頃、中途採用でワインアドバイザーの資格を有した人がバイヤーとして入社した。

一見して好きになれないタイプだったのだが……。


そのバイヤーの退職までの話である。


……アル中でした、極度のアル中でした。

店内に居ないな~と思うと、冷蔵室で酒を飲んでます。

もちろん勤務時間中です。

ビールからワイン、ウイスキーなんでも飲みます。

試供品からまで、なんでも飲みます。


……不倫の末、略奪婚しました。

パートの人妻に手をだして、結婚までしちゃいました。

もちろん、裁判沙汰です。


……自動販売機の金を盗んでました。

売上少ないな~と皆が不思議がってました。

あ~この頃、家を買いました。


……高級ワインをネットで売ってました。

もちろん、会社の金で仕入れて、売り上げはバイヤーの口座です。

棚卸のときにバレました。

ローンの返済に充ててました。


警察沙汰になったと思うでしょ……。

ならなかったんです。

自己退職で済んだんです。

おおらかな会社でしょ?


追及されたバイヤーが全部正直に認めたので、警察は勘弁したとのことですが、

バイヤーは最後にこう言ったそうです

「正直に話せて、楽になった」

「はっ?」

横領した金で楽々、暮らしていたヤツが苦しんでたのでしょうか?

辛かったとでもいうのでしょうか?


私が見てきた人間の中でも最低の人間です。

笑えないんです。


結末ですか?


離婚して、家売って、職安通いしていたとこまで知ってますが、その後は知りません。

いつかニュースで見る日が来るんじゃないかと思ってます。

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